完結済み
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「名前ー彼氏が来てるよー」
なにこのデジャヴ。
窓から顔を出して見てみると校門の辺りに軽い群れが出来ていた。その中央には見慣れた白い頭がある。…なんか狩りに怯えた小鹿みたいになってる。
「…………」
「いってらっしゃい」
「…………………いってきます」
お昼に話を聞いてくれた友だちはニコニコ笑っていた。
***
「…………」
「…………これ、北海道土産……です」
「…………ありがとうございます」
なんだ修羅場かと野次馬が騒いでいる。うん間違ってない。
群れをかき分けて司の元にきたのはいいけどめちゃくちゃ話し難い。司もそう思ってるらしく視線があっちこっちに飛んでいる。ああどうしようか。何から話そう。そう頭を捻っていたときだった。野次馬から言葉が飛んできた。
「司くん第一席から落ちたって本当?」
「ああ、うん。本当だよ」
あっさりと司はそう返した。どこか晴れやかすら感じるくらいの声色で、真偽を疑う余地すらなかった。それなのに私の口からは「うそ…」と言葉が漏れる。司は私の言葉に苦笑を作った。「本当だ……」言葉が切れる。その理由は私が一番分かっていた。
「つか、っつかさ…ごめ、ごめんなさ、」
私が泣いているからだ。ポロポロと止める暇なく涙が落ちていく。ギョッとした顔の司が涙の膜から見えた。
「なっなんで名前が謝るの?俺の力不足の結果だ」
「っむしした…メールも、電話も」
「名前の連絡がなかったくらいで俺の料理に支障をきたすわけないだろう」
野次馬が司の言葉に引いている気配がした。分かる分かる。私も同じ。事実だけど言葉のチョイスが本当に悪い。「名前と話せないくらいでどうこうなったりしないよ。気にする必要なんかない」トドメを刺してきた。この共感力のないサイコパスどうにかして…
「ううっう、」
「あー…うん。もういっぱい泣いていいよ」
校門から連れ出されて司の借りている部屋にやってきた。司は私を泣きやませることを諦めたらしく前から抱きしめてくれている。
「名前が泣くの初めてみたなぁ…」
感心したような口振りが大変解せない。
「そんなにす、好かれてるなんて思ってなかった」
何でちょっと嬉しそうなの。本当意味分かんない。遺憾の意を示すために背中に軽くチョップする。「えっ違うの!?」違わない。手を戻して背中をぎゅっとした。私の反応に司は安心したように息を吐く。私から言わせてみれば何でそんなに疑われてるかが分かんない。司より好きとか言ってるし態度にも出しているのに。
「……名前、俺負けたんだ。一切手も抜かなかったし、俺の持っている全てを皿に乗せた。それでも勝てなかった。…………多分、俺がいらないと切り捨ててきたものが彼らにあったんだと思う」
「………そっか」
「うん」
力強い相づちだった。料理のことが分からない私でも司の目が前と違って見えた。何となく、何となくだけど司の料理はこれからもっとすごくなるんだろうなと思った。……よかったね、司。「この間、俺の料理の為に私はいらないって名前に言われて、確かにそうだなって思ったんだ」空気読んで司。しかも納得してんじゃねえよこら。
「味の違いも分からない、素材のよさも分からない名前に料理を出す意味があるのかなって」
「私のこと嫌いでしょ。前々からちょっと思ってたけど」
「ち、違うってば!今のは言葉の綾……じゃないけど」
さっきとは違う意味で泣けてきた。何でつき合ってるんだっけ私たち。思わず鼻をぐすんとすると目に見えてオロオロしだす司。もっと狼狽えろ。ずっと狼狽えろ。
「最後まで聞いて!」
「いや。もう司きらい」
「えっ……………それは結構傷つくな……」
ずーんと落ち込みはじめた司。私に限らず人に散々ひどいことを言っているくせに本人のメンタルはこれだからなぁ…。
私が司を慰める側になり、膝を立て頭を抱えてよしよしする。立場が逆転するのが早すぎないかな。もうちょっと頑張ってほしかった。そんなことを思っていると司がポツリと口を開いた。
「…………名前に料理を作るのは、」
「もういいってば。どーせ味の違いが分からない庶民ですから」
ふてくされたような口調でそう言うと司は顔を上げて私と目を合わせ、ふわり、と綺麗に笑った。
「楽しかったんだ。名前にどんな料理を作ろうか、どんな料理だったら喜んでもらえるか。多分それだけで…それだけだけど、必要なんだ。だからいらなくなんかないよ、名前」
濡れた頬に唇を当てられる。普段の司らしくない気障な仕草がとても優しくて、余計に涙が零れた。今日は司に泣かされる日だ。
「司、初デートに行ったとこ今度いかない?」
「ん…?ああ、あのあんこの煮詰め方が甘い店がある通り?」
「嫌な覚え方だな…だめ?」
「いいよ一緒に行こう」
「やった。…………そういえばあの鬼のような電話の数はなに?」
「あれは俺のいない間に他の男にちょっかいかけられたらって思って。名前は俺のなのに」
「…………嫉妬?」
「違うよ。牽制」
「?」
「ああしておけば名前は俺のこと忘れないだろ?名前は義理堅いから、俺のことがある限り他の男にアプローチされても見向きもしないだろうし」
「……………」
「? 名前?」
涙が一気に止まった。なにその思考回路引く。計算尽くとか本当に引く。……判断を間違えたと少し後悔した。少しだけなところが司にだいぶ影響されてるし、恋とは厄介なものだと心から思った。
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なにこのデジャヴ。
窓から顔を出して見てみると校門の辺りに軽い群れが出来ていた。その中央には見慣れた白い頭がある。…なんか狩りに怯えた小鹿みたいになってる。
「…………」
「いってらっしゃい」
「…………………いってきます」
お昼に話を聞いてくれた友だちはニコニコ笑っていた。
***
「…………」
「…………これ、北海道土産……です」
「…………ありがとうございます」
なんだ修羅場かと野次馬が騒いでいる。うん間違ってない。
群れをかき分けて司の元にきたのはいいけどめちゃくちゃ話し難い。司もそう思ってるらしく視線があっちこっちに飛んでいる。ああどうしようか。何から話そう。そう頭を捻っていたときだった。野次馬から言葉が飛んできた。
「司くん第一席から落ちたって本当?」
「ああ、うん。本当だよ」
あっさりと司はそう返した。どこか晴れやかすら感じるくらいの声色で、真偽を疑う余地すらなかった。それなのに私の口からは「うそ…」と言葉が漏れる。司は私の言葉に苦笑を作った。「本当だ……」言葉が切れる。その理由は私が一番分かっていた。
「つか、っつかさ…ごめ、ごめんなさ、」
私が泣いているからだ。ポロポロと止める暇なく涙が落ちていく。ギョッとした顔の司が涙の膜から見えた。
「なっなんで名前が謝るの?俺の力不足の結果だ」
「っむしした…メールも、電話も」
「名前の連絡がなかったくらいで俺の料理に支障をきたすわけないだろう」
野次馬が司の言葉に引いている気配がした。分かる分かる。私も同じ。事実だけど言葉のチョイスが本当に悪い。「名前と話せないくらいでどうこうなったりしないよ。気にする必要なんかない」トドメを刺してきた。この共感力のないサイコパスどうにかして…
「ううっう、」
「あー…うん。もういっぱい泣いていいよ」
校門から連れ出されて司の借りている部屋にやってきた。司は私を泣きやませることを諦めたらしく前から抱きしめてくれている。
「名前が泣くの初めてみたなぁ…」
感心したような口振りが大変解せない。
「そんなにす、好かれてるなんて思ってなかった」
何でちょっと嬉しそうなの。本当意味分かんない。遺憾の意を示すために背中に軽くチョップする。「えっ違うの!?」違わない。手を戻して背中をぎゅっとした。私の反応に司は安心したように息を吐く。私から言わせてみれば何でそんなに疑われてるかが分かんない。司より好きとか言ってるし態度にも出しているのに。
「……名前、俺負けたんだ。一切手も抜かなかったし、俺の持っている全てを皿に乗せた。それでも勝てなかった。…………多分、俺がいらないと切り捨ててきたものが彼らにあったんだと思う」
「………そっか」
「うん」
力強い相づちだった。料理のことが分からない私でも司の目が前と違って見えた。何となく、何となくだけど司の料理はこれからもっとすごくなるんだろうなと思った。……よかったね、司。「この間、俺の料理の為に私はいらないって名前に言われて、確かにそうだなって思ったんだ」空気読んで司。しかも納得してんじゃねえよこら。
「味の違いも分からない、素材のよさも分からない名前に料理を出す意味があるのかなって」
「私のこと嫌いでしょ。前々からちょっと思ってたけど」
「ち、違うってば!今のは言葉の綾……じゃないけど」
さっきとは違う意味で泣けてきた。何でつき合ってるんだっけ私たち。思わず鼻をぐすんとすると目に見えてオロオロしだす司。もっと狼狽えろ。ずっと狼狽えろ。
「最後まで聞いて!」
「いや。もう司きらい」
「えっ……………それは結構傷つくな……」
ずーんと落ち込みはじめた司。私に限らず人に散々ひどいことを言っているくせに本人のメンタルはこれだからなぁ…。
私が司を慰める側になり、膝を立て頭を抱えてよしよしする。立場が逆転するのが早すぎないかな。もうちょっと頑張ってほしかった。そんなことを思っていると司がポツリと口を開いた。
「…………名前に料理を作るのは、」
「もういいってば。どーせ味の違いが分からない庶民ですから」
ふてくされたような口調でそう言うと司は顔を上げて私と目を合わせ、ふわり、と綺麗に笑った。
「楽しかったんだ。名前にどんな料理を作ろうか、どんな料理だったら喜んでもらえるか。多分それだけで…それだけだけど、必要なんだ。だからいらなくなんかないよ、名前」
濡れた頬に唇を当てられる。普段の司らしくない気障な仕草がとても優しくて、余計に涙が零れた。今日は司に泣かされる日だ。
「司、初デートに行ったとこ今度いかない?」
「ん…?ああ、あのあんこの煮詰め方が甘い店がある通り?」
「嫌な覚え方だな…だめ?」
「いいよ一緒に行こう」
「やった。…………そういえばあの鬼のような電話の数はなに?」
「あれは俺のいない間に他の男にちょっかいかけられたらって思って。名前は俺のなのに」
「…………嫉妬?」
「違うよ。牽制」
「?」
「ああしておけば名前は俺のこと忘れないだろ?名前は義理堅いから、俺のことがある限り他の男にアプローチされても見向きもしないだろうし」
「……………」
「? 名前?」
涙が一気に止まった。なにその思考回路引く。計算尽くとか本当に引く。……判断を間違えたと少し後悔した。少しだけなところが司にだいぶ影響されてるし、恋とは厄介なものだと心から思った。
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