完結済み
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司がクーデターを起こしたらしい。意味が分からない。なにその戦国武将感。
月饗祭最終日の今日。金銭的な理由で司のお店にはいけないけど帰りは一緒に帰ろうと約束した。学校が別だからこういうのいいなぁと思ってたらこれだよ。彼女と約束した日にクーデター起こす普通。いや、そもそもなんでクーデター。しかも竜胆ちゃんも一緒に。竜胆ちゃんとクーデターって似合わないんだけどな。本当にどうしたの。
「ああ、名前は気にしないでいいよ」
「いやいやいや無理言わないで」
「美食界に必要なことだから」
そういってうっすらと笑みを浮かべた司。いつもより穏やかに見えるはずのその笑顔になぜか不安になってくる。
ここで引き下がってはいけない気がして「なんでクーデターなんかしたの?なにが目的なの?」と質問する。何時になく必死な私を見たためか、司は困ったような苦い笑みを浮かべて口を開いた。
「まずはそうだね…日本中の料理店を潰すこと、かな」
ただのいつものサイコパスだった。どん引きしている私に「あっでもちゃんとした店は潰さないから!」とフォローのようなものが入った。もしかして奴はこれがフォローになってると思ってるんじゃなかろうな……。「なんでそんな発想に…?」震える声で訊く。この会話続けるのすごく嫌なんだけど私から始めたからなぁ…
「話すと長くなるんだけど「じゃあ掻い摘まんででいいです」……名前もう飽きてない?」
「飽きてない早く」
「……。本当の美食を提供出来る店以外は必要ない。そう思ったんだ」
「…………」
突っ込みどころが満載で言葉が出ない。司の脳内を知りたいとか分かりたいとか思ったことがないせいか「何いってんのこの人…」という感想が強い。闇のゲームでもしてるのだろうか。早く帰ってきて。マインドクラッシュさせるぞ。
そんな現実逃避に向かうくらい、司の言葉は私の理解の範疇を越えていた。同じ料理人だったら分かったのだろうか…そう思いつつ、ひとつの疑問を口にした。
「あのさ、美食とやらの為に不必要なものを切り捨てるってことでいいの?」
「まぁ…簡単に言えばそうだね」
「じゃあ私いらないね」
「えっ?」
「だって私、味の違いとか分からないし司の料理のためにしてあげられること何もないもの」
「名前…?」
困惑の色が隠せない司の声に場違いに笑いそうになった。だってはじめて見たこんな司。あーあ少し前に仲直りしたばっかりだったのに。
「ばいばい 司」
なんでこうなっちゃうのかな。
***
「あー目の保養~名前の彼氏」
「でも基本的に頭おかしいよ」
「イケメンだったら問題なし」
この友だちは司のことを履き違えている。多分「残念なイケメンも可愛いじゃーん」くらいのノリだ。残念どころじゃないからな。性根が基本畜生だからね。「俺の料理を引き立たせる為には(他の人間を踏み台にするのは)仕方ないよね」を素で言っちゃうような人間だ。性根は畜生、気質はジャイ○ン。…割と最悪だな。ジャ○アンは気のいいところと、何だかんだいって友だちを大切にするところが好かれてる理由だ。「おまえの物も俺のもの」だけじゃ支援されるわけがない。…そう考えるとあの性格で日本一の料理学校の頂点にいった司って本当にすごかったんだ。再発見。
目の保養をちょうだいと私のスマホの画像ファイルをうっとり見ている友だち。司は写真が得意じゃないから私のスマホにいる司はだいたい顔が引きつっている。それを差し引いても格好いいらしく、友だちはさっきからうっとりしっぱなしだ。……そういえば司ってイケメンだったな…中身が濃くて忘れてた。
「そろそろスマホいじりたいな」
「あっごめんごめ…………名前ちゃん」
「何かな友だち」
「着信履歴がすごいことになってるけどスマホ壊れてない?」
「びっくりするよね。着信履歴ってそんなに表示されるって知らなかったよ。あっそれ多分全部彼氏」
「ええ…引く…」
司のヤバいところの片鱗が見えたらしい。速やかにスマホが返ってきた。でもこのヤバさは私もはじめてだったので少し驚いている。
『…それって別れるってこと?』
『ううん、しばらく距離置きたいなって。じゃないとめちゃくちゃ司のこと罵りそう』
『罵っていいから』
『え』
『気に入らないことがあったんだろう?だから俺のこと罵っていいから』
『いやでもね、』
『罵ってくれ』
『そういうのノーセンキューだから』
ひどい光景だった。遠月の一番が「俺のことを罵ってくれ」と彼女に迫るという地獄絵図。あれを遠月関係者に見られたら悲惨なことになっていた。竜胆ちゃんから「司が記事になってんよー!あははー!」みたいな連絡ないから大丈夫だったんだろう。…と信じたい。
「何でそんなことになったの?仲直りしたって言ってたばっかじゃん」
「んんん…なんていったらいいのかな。ごちゃごちゃしてるんだよね」
「ざっとでいいから」
「……」
私が司に言いたかったこと。
「司がいらないって言ったものに、私との思い出も入ってたから……悲しかった」
司との初デートは食べ歩きだった。竜胆ちゃんや茜ヶ久保さんの顰蹙を買った食べ歩きデート。司本人もあとで「もっとおしゃれな所に連れて行ってあげればよかったね…気が回らなくてごめん…」とイジイジモードになっていた。楽しかったから謝らないでといっても司はしばらく落ち込んでいた。本当に馬鹿みたいだった。私は司とこれ美味しいねとか、この生地なにを使ってるんだろうねとか、そんなささやかなことで幸せを感じたのに司が謝るんだもん。そういうとこだぞ。共感力ゼロ男め。
美食界のためにとか言われても疑問符しか出なかった。でも司が作るような完璧な料理しか認めないってことかなと司の口振りからと少し察しがついて、酷く落胆した。多分潰すって言ってる店は私と行くような平凡な店だ。どこにでもあるような、料理人がすぐそこにいて、美味しかったですとすぐに伝えられるような距離の近い店。…なんでいらないって言うの。めちゃくちゃいるよ。司の馬鹿。
「価値観違いすぎて疲れる」
「うんうん。価値観が近いのは大事だよね」
「でも嫌いじゃないっていうか今も普通に好きなんだよね。自分が信じられない」
「恋をしたらみんな馬鹿になるんだよ」
「ほんとそれ思う」
そんなことを話していたらスマホ画面が一瞬だけ光ってすぐに消えた。司からだった。司の着信はワンコールで切れるようにしてるから逆にすぐに分かってしまった。
「…………はあ」
会いたいな。
181206
月饗祭最終日の今日。金銭的な理由で司のお店にはいけないけど帰りは一緒に帰ろうと約束した。学校が別だからこういうのいいなぁと思ってたらこれだよ。彼女と約束した日にクーデター起こす普通。いや、そもそもなんでクーデター。しかも竜胆ちゃんも一緒に。竜胆ちゃんとクーデターって似合わないんだけどな。本当にどうしたの。
「ああ、名前は気にしないでいいよ」
「いやいやいや無理言わないで」
「美食界に必要なことだから」
そういってうっすらと笑みを浮かべた司。いつもより穏やかに見えるはずのその笑顔になぜか不安になってくる。
ここで引き下がってはいけない気がして「なんでクーデターなんかしたの?なにが目的なの?」と質問する。何時になく必死な私を見たためか、司は困ったような苦い笑みを浮かべて口を開いた。
「まずはそうだね…日本中の料理店を潰すこと、かな」
ただのいつものサイコパスだった。どん引きしている私に「あっでもちゃんとした店は潰さないから!」とフォローのようなものが入った。もしかして奴はこれがフォローになってると思ってるんじゃなかろうな……。「なんでそんな発想に…?」震える声で訊く。この会話続けるのすごく嫌なんだけど私から始めたからなぁ…
「話すと長くなるんだけど「じゃあ掻い摘まんででいいです」……名前もう飽きてない?」
「飽きてない早く」
「……。本当の美食を提供出来る店以外は必要ない。そう思ったんだ」
「…………」
突っ込みどころが満載で言葉が出ない。司の脳内を知りたいとか分かりたいとか思ったことがないせいか「何いってんのこの人…」という感想が強い。闇のゲームでもしてるのだろうか。早く帰ってきて。マインドクラッシュさせるぞ。
そんな現実逃避に向かうくらい、司の言葉は私の理解の範疇を越えていた。同じ料理人だったら分かったのだろうか…そう思いつつ、ひとつの疑問を口にした。
「あのさ、美食とやらの為に不必要なものを切り捨てるってことでいいの?」
「まぁ…簡単に言えばそうだね」
「じゃあ私いらないね」
「えっ?」
「だって私、味の違いとか分からないし司の料理のためにしてあげられること何もないもの」
「名前…?」
困惑の色が隠せない司の声に場違いに笑いそうになった。だってはじめて見たこんな司。あーあ少し前に仲直りしたばっかりだったのに。
「ばいばい 司」
なんでこうなっちゃうのかな。
***
「あー目の保養~名前の彼氏」
「でも基本的に頭おかしいよ」
「イケメンだったら問題なし」
この友だちは司のことを履き違えている。多分「残念なイケメンも可愛いじゃーん」くらいのノリだ。残念どころじゃないからな。性根が基本畜生だからね。「俺の料理を引き立たせる為には(他の人間を踏み台にするのは)仕方ないよね」を素で言っちゃうような人間だ。性根は畜生、気質はジャイ○ン。…割と最悪だな。ジャ○アンは気のいいところと、何だかんだいって友だちを大切にするところが好かれてる理由だ。「おまえの物も俺のもの」だけじゃ支援されるわけがない。…そう考えるとあの性格で日本一の料理学校の頂点にいった司って本当にすごかったんだ。再発見。
目の保養をちょうだいと私のスマホの画像ファイルをうっとり見ている友だち。司は写真が得意じゃないから私のスマホにいる司はだいたい顔が引きつっている。それを差し引いても格好いいらしく、友だちはさっきからうっとりしっぱなしだ。……そういえば司ってイケメンだったな…中身が濃くて忘れてた。
「そろそろスマホいじりたいな」
「あっごめんごめ…………名前ちゃん」
「何かな友だち」
「着信履歴がすごいことになってるけどスマホ壊れてない?」
「びっくりするよね。着信履歴ってそんなに表示されるって知らなかったよ。あっそれ多分全部彼氏」
「ええ…引く…」
司のヤバいところの片鱗が見えたらしい。速やかにスマホが返ってきた。でもこのヤバさは私もはじめてだったので少し驚いている。
『…それって別れるってこと?』
『ううん、しばらく距離置きたいなって。じゃないとめちゃくちゃ司のこと罵りそう』
『罵っていいから』
『え』
『気に入らないことがあったんだろう?だから俺のこと罵っていいから』
『いやでもね、』
『罵ってくれ』
『そういうのノーセンキューだから』
ひどい光景だった。遠月の一番が「俺のことを罵ってくれ」と彼女に迫るという地獄絵図。あれを遠月関係者に見られたら悲惨なことになっていた。竜胆ちゃんから「司が記事になってんよー!あははー!」みたいな連絡ないから大丈夫だったんだろう。…と信じたい。
「何でそんなことになったの?仲直りしたって言ってたばっかじゃん」
「んんん…なんていったらいいのかな。ごちゃごちゃしてるんだよね」
「ざっとでいいから」
「……」
私が司に言いたかったこと。
「司がいらないって言ったものに、私との思い出も入ってたから……悲しかった」
司との初デートは食べ歩きだった。竜胆ちゃんや茜ヶ久保さんの顰蹙を買った食べ歩きデート。司本人もあとで「もっとおしゃれな所に連れて行ってあげればよかったね…気が回らなくてごめん…」とイジイジモードになっていた。楽しかったから謝らないでといっても司はしばらく落ち込んでいた。本当に馬鹿みたいだった。私は司とこれ美味しいねとか、この生地なにを使ってるんだろうねとか、そんなささやかなことで幸せを感じたのに司が謝るんだもん。そういうとこだぞ。共感力ゼロ男め。
美食界のためにとか言われても疑問符しか出なかった。でも司が作るような完璧な料理しか認めないってことかなと司の口振りからと少し察しがついて、酷く落胆した。多分潰すって言ってる店は私と行くような平凡な店だ。どこにでもあるような、料理人がすぐそこにいて、美味しかったですとすぐに伝えられるような距離の近い店。…なんでいらないって言うの。めちゃくちゃいるよ。司の馬鹿。
「価値観違いすぎて疲れる」
「うんうん。価値観が近いのは大事だよね」
「でも嫌いじゃないっていうか今も普通に好きなんだよね。自分が信じられない」
「恋をしたらみんな馬鹿になるんだよ」
「ほんとそれ思う」
そんなことを話していたらスマホ画面が一瞬だけ光ってすぐに消えた。司からだった。司の着信はワンコールで切れるようにしてるから逆にすぐに分かってしまった。
「…………はあ」
会いたいな。
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