完結済み
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二つ結びの可愛いクラスメイトをあんまりにも自分勝手な理由で泣かせたナチュラルサイコパスこと司瑛士。あいつやばいやつだ…と、もれなく先生も含めたクラスメイト全員がドン引きしていた。私もその一人だった。だったというか、それから十年近く経った今でもこいつやばいな…と思うことは多々あるし、ナチュラルに畜生なところが年を重ねるにつれて増えていってるし、ぶっちゃけ料理に対する執念が常人の私には理解できない。隠し味なんて分からないわ…もう隠すなよ…ストレートに生きよう?と常にレシピ本はガン見な私が、司と付き合いはじめて三年目を迎えようとしていた。なんでだろう。気づいたらこうだった。小学校時代の友だちは「正気?」と聞いてくる。私もたまにそう思う。
「このお肉柔らかくておいしい」
「そっちの付け合わせと一緒に食べてみて」
「! 味が変わった。おいしい…好みの味」
「うん。名前は好きだと思ってた」
そう言って目元を和らげて笑う司はナチュラルサイコパスの色が全く見えない。いつもこうだったらいいのにな、と思いつつ何のお肉?と訊ねる。「うさぎの肉」「ぐっ」むせた。
「わっ大丈夫?み、水もってくる!」
あわあわしながら水を持ってきてくれた司に手振りで感謝を伝えて水を飲む。しばらく咳き込んでやっと落ちついた。死ぬかと思った。
改めて司の作ってくれたものをみる。もとの形なんて全くないし想像つかないけど罪悪感がすごいことになってきた。聞かなきゃよかった。「…おフランスってうさぎ肉使うんだね」少ししょんぼりしながら言うと「そうだな。あと鹿肉もよく使うかな。というかこの間作った料理の肉が鹿だよ」と返ってきた。もう奈良にいけなくなるかもしれない。少なくとも「鹿せんべいよ~」はできない。鳥牛豚は平気なくせにって感じだけど。
「……うさぎ肉はちょっと苦手かも」
「えっ。でもさっきは美味しいって…それにその料理に一番合うのはうさぎ肉だし」
そこじゃない。
本格的なフランス料理なんて普通の高校生の私が食べ慣れているわけがない。司の料理の試作を食べるくらいで、その辺のスーパーに売っている定番なお肉が一番身近なのだ。だから愛玩的に見てしまう生き物を食べることに躊躇を覚えるのは当たり前で。
こういうところが違うなぁと思ってしまう。
料理人として食材は食材と扱うのは当たり前なんだろうけど、あの破天荒な司の友だちの竜胆ちゃんでさえ「蛇の肉は平気か?」と先に訊いてくれた。こちらは躊躇の意味が180度違うけど、少なくとも竜胆ちゃんの頭の中には美味しいか美味しくないかは別として『私はそういう食材を敬遠するかもしれない』という考えがあった。司にはない。自分の料理に絶対的な自信があるのと、人としてなにかが欠けているからだ。ハイパーサイコパス瑛士くんとたまに本人に言ってしまうくらいに。「ええ…まぁ名前がいうならいいかなぁ」と本人も否定しない。否定しろよ。そういうとこだぞ。
「名前に気に入ってもらえると思っていたんだけどな…」
「あー…私は鳥肉が好きかなぁ。普通のお肉も好き。豚肉とか牛肉とか鳥肉とか鳥肉とか」
「鳥肉推すね。そうか鳥肉か…」
そう言ってお皿を洗いながら空中に目線をやる司。頭の中でレシピを作っているのかな。司が洗ったお皿を布巾で拭きながら口を開く。
「材料費どのくらいかかったの?払うよ」
「いつも言ってるけど気にしないでいいよ」
「いつも言ってるけど気にするってば。この日の為におこづかい使わないで貯めてるし」
「えっ名前おこづかい使ってないの?」
「うん。ツケ返せって言われたときの為に貯めてる」
「俺は名前にそんな風に思われてたの……?」
ショックですと言わんばかりの顔だった。いや言わなそうな台詞だけど念の為ね。高級フランス料理の値段を調べて腰が抜けかけたので最近はバイトをはじめようかとも思っている。ゼロがいっぱいだったよ…
「試作といえども…えーっとなんだっけ。じゅ、十魔神?の料理ってなかなか食べられるものじゃないんでしょ?タダじゃ罪悪感沸く」
「十傑だよ…十傑は料理の為だったら資金に融通がきくし本当に気にしなくていいんだ。それに名前に出している料理は試作じゃない」
「えっ?」
「名前に試作品なんか出すわけないだろう」
それが当たり前なんだと、当然なんだと顔も声も言っていた。
一つの料理を作るのにどれだけ手間暇がかかっているのか知っている。反対に、一つの料理を生み出すのにどんな苦労をしているかは私は全く知らない。想像すらつかない。司はいつも涼しい顔で料理をするから錯覚しそうだけど、卒業率がとんでもなく低い学校に今も在籍している、すごい料理人だ。そんな彼が、私の為の料理を作ろうと見えないところで試行錯誤してくれた。
なんというかとても愛を感じた。さらに言うと「俺の皿のためにおまえを使ってやってんだよ」くらいに思っていたから少しうるっときた。
布巾を置いてお皿を洗っている司の後ろにいって腰に手を回す。「えっえっえっ」と慌てる司を無視してぎゅっと力を入れた。
「名前…?あの、手に泡がつくよ…?」
「別にいいよ」
「えっ、と…俺はどうしたらいい?」
「ヘタレ」
「ええ…」
普段は気弱でおろおろしているのに料理のことになると非情で、畜生の権化みたいになる司。それ以外でも心が欠けている面があって、こいつやばいなって引くこともある。それでも付き合ってきたのは好きだからという理由以外に他ならなくて。考え方や性格が違っていても嫌いになれない。惚れたものの負けというやつだ。…何だか悔しいのでさらにくっつく。
「あの…振り返ってもいいかな」
「背中にくっ付いたままならいいよ」
「それって振り返っても誰もいないじゃないか…」
「うん。さあ振り返ってみよ」
「前から抱きついてくれるなら歓迎するんだけど…」
「いや」
「名前ー…」
181202
「このお肉柔らかくておいしい」
「そっちの付け合わせと一緒に食べてみて」
「! 味が変わった。おいしい…好みの味」
「うん。名前は好きだと思ってた」
そう言って目元を和らげて笑う司はナチュラルサイコパスの色が全く見えない。いつもこうだったらいいのにな、と思いつつ何のお肉?と訊ねる。「うさぎの肉」「ぐっ」むせた。
「わっ大丈夫?み、水もってくる!」
あわあわしながら水を持ってきてくれた司に手振りで感謝を伝えて水を飲む。しばらく咳き込んでやっと落ちついた。死ぬかと思った。
改めて司の作ってくれたものをみる。もとの形なんて全くないし想像つかないけど罪悪感がすごいことになってきた。聞かなきゃよかった。「…おフランスってうさぎ肉使うんだね」少ししょんぼりしながら言うと「そうだな。あと鹿肉もよく使うかな。というかこの間作った料理の肉が鹿だよ」と返ってきた。もう奈良にいけなくなるかもしれない。少なくとも「鹿せんべいよ~」はできない。鳥牛豚は平気なくせにって感じだけど。
「……うさぎ肉はちょっと苦手かも」
「えっ。でもさっきは美味しいって…それにその料理に一番合うのはうさぎ肉だし」
そこじゃない。
本格的なフランス料理なんて普通の高校生の私が食べ慣れているわけがない。司の料理の試作を食べるくらいで、その辺のスーパーに売っている定番なお肉が一番身近なのだ。だから愛玩的に見てしまう生き物を食べることに躊躇を覚えるのは当たり前で。
こういうところが違うなぁと思ってしまう。
料理人として食材は食材と扱うのは当たり前なんだろうけど、あの破天荒な司の友だちの竜胆ちゃんでさえ「蛇の肉は平気か?」と先に訊いてくれた。こちらは躊躇の意味が180度違うけど、少なくとも竜胆ちゃんの頭の中には美味しいか美味しくないかは別として『私はそういう食材を敬遠するかもしれない』という考えがあった。司にはない。自分の料理に絶対的な自信があるのと、人としてなにかが欠けているからだ。ハイパーサイコパス瑛士くんとたまに本人に言ってしまうくらいに。「ええ…まぁ名前がいうならいいかなぁ」と本人も否定しない。否定しろよ。そういうとこだぞ。
「名前に気に入ってもらえると思っていたんだけどな…」
「あー…私は鳥肉が好きかなぁ。普通のお肉も好き。豚肉とか牛肉とか鳥肉とか鳥肉とか」
「鳥肉推すね。そうか鳥肉か…」
そう言ってお皿を洗いながら空中に目線をやる司。頭の中でレシピを作っているのかな。司が洗ったお皿を布巾で拭きながら口を開く。
「材料費どのくらいかかったの?払うよ」
「いつも言ってるけど気にしないでいいよ」
「いつも言ってるけど気にするってば。この日の為におこづかい使わないで貯めてるし」
「えっ名前おこづかい使ってないの?」
「うん。ツケ返せって言われたときの為に貯めてる」
「俺は名前にそんな風に思われてたの……?」
ショックですと言わんばかりの顔だった。いや言わなそうな台詞だけど念の為ね。高級フランス料理の値段を調べて腰が抜けかけたので最近はバイトをはじめようかとも思っている。ゼロがいっぱいだったよ…
「試作といえども…えーっとなんだっけ。じゅ、十魔神?の料理ってなかなか食べられるものじゃないんでしょ?タダじゃ罪悪感沸く」
「十傑だよ…十傑は料理の為だったら資金に融通がきくし本当に気にしなくていいんだ。それに名前に出している料理は試作じゃない」
「えっ?」
「名前に試作品なんか出すわけないだろう」
それが当たり前なんだと、当然なんだと顔も声も言っていた。
一つの料理を作るのにどれだけ手間暇がかかっているのか知っている。反対に、一つの料理を生み出すのにどんな苦労をしているかは私は全く知らない。想像すらつかない。司はいつも涼しい顔で料理をするから錯覚しそうだけど、卒業率がとんでもなく低い学校に今も在籍している、すごい料理人だ。そんな彼が、私の為の料理を作ろうと見えないところで試行錯誤してくれた。
なんというかとても愛を感じた。さらに言うと「俺の皿のためにおまえを使ってやってんだよ」くらいに思っていたから少しうるっときた。
布巾を置いてお皿を洗っている司の後ろにいって腰に手を回す。「えっえっえっ」と慌てる司を無視してぎゅっと力を入れた。
「名前…?あの、手に泡がつくよ…?」
「別にいいよ」
「えっ、と…俺はどうしたらいい?」
「ヘタレ」
「ええ…」
普段は気弱でおろおろしているのに料理のことになると非情で、畜生の権化みたいになる司。それ以外でも心が欠けている面があって、こいつやばいなって引くこともある。それでも付き合ってきたのは好きだからという理由以外に他ならなくて。考え方や性格が違っていても嫌いになれない。惚れたものの負けというやつだ。…何だか悔しいのでさらにくっつく。
「あの…振り返ってもいいかな」
「背中にくっ付いたままならいいよ」
「それって振り返っても誰もいないじゃないか…」
「うん。さあ振り返ってみよ」
「前から抱きついてくれるなら歓迎するんだけど…」
「いや」
「名前ー…」
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