完結済み
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「………気絶するほど嫌われたなんて…」
案内された部屋のソファーに頭を埋める馨。馨の気持ちと連鎖するかのように降りかかる大粒の雨。そして雷。馨の心情を表したかのようだっだ。
「しかも鏡夜先輩の幼なじみってなに…殿なんかキング先輩って呼ばれてるし、何でそんなに仲良さそうなの、むかつく…」
言葉とは裏腹にどんどん元気がなくなっていく馨に光は何て励ませばいいか分からずに頭をかきむしった。
二年前、手紙を見てひどくうろたえた様子の馨に無理やり事情を聞き出した光。泣きそうな顔で語られる二人の話。そして思い出したのだ。幼稚舎時代に馴れ馴れしく遊ぼうと話しかけてきた女の子を。そして即座に追い払った自分に。光はサーッと血の気が引いていくのが分かった。…僕のせいじゃん……。
「い、いやっ鏡夜先輩も『ある意味持病だ』って言ってたし」
「僕に触られるのが嫌って意味でしょ…」
「夏バテだろ!今日暑かったし!」
「猫澤先輩の別荘寒いくらいなんだけど」
ああダメだ、今は何言っても通じない。いつもならウジウジすんなよと遠慮なく言えるのだが十年という長い年月の亀裂を作ったのは自分だ。言えるはずがない。
「…………名前の私服はじめて見た」
かわいい、白のワンピースかわいい、砂浜で一緒に散歩したい、かわいい、とクッションに顔を押しつけながら囁き続ける馨に光は息を吐いた。殿と一緒のこと言ってるよ馨…。
あの手紙事件以来、無理やり押し込めていた感情が戻った馨は罪悪感と後悔に苛まれながらも幼いときに生まれた恋心を膨らませていった。
「……でも僕は名前に酷いことを…っ」
そして膨らませては自分のやらかしたことを思い出して萎ませていた。
「だから僕も一緒に謝るって言ってるだろ!元々僕のせいなんだし!」
「ちがうよ、僕が意地にならないで早く名前に話しかければ良かったんだ、……話しかければ、気絶なんてさせずにすんだのに、」
「………」
肩を震わせる馨にどうしたらいいんだと光は頭を抱えた。原因は自分だ。馨が初めての友だち、初恋相手。それをぶち壊したのは自分だ。
──でもさすがに引きずりすぎだろッ!!光はキレた。いわゆる逆ギレだ。双子のキレやすい方が光。これはハルヒの言葉だった。あながち間違っていなかった。
「馨!!服脱いで!」
「え、何言ってるの光…ぎゃーッ!?」
馨の服を剥ぎ取った光は名前の部屋までやってきた。そしてそこでやっと頭に登った血が冷めていくのが分かった。
「………」
「紅茶しかないけど大丈夫?」
「あ、ウン」
「このティーセットね、猫ちゃん先輩のお手製なんだよ。ほら持ち手にに骨々の猫さんが。かわいいよね」
「あ、ウン」
全く可愛さが分からなかったが光はとりあえず頷いておいた。そしてティーセットから注がれた(名前曰わく)紅茶は真っ赤だった。そんな紅茶もあるのは知っているがティーカップと部屋の装飾(ホラーチック)により飲む気がどんどん失せていく光。何でこの部屋だけホラー色強いの…?と背中に冷や汗が流れた。よく殿この部屋にはいれたね…と名前が倒れたときに一緒について行った環のことを思い出したが彼は名前が倒れたことで一杯一杯だったために部屋の装飾なんか気にしている暇がなかった。気がついたら悲鳴のひとつはあげていただろう。
「猫ちゃん先輩に夏になったら別荘へ招待をしてもらってるんだけど毎年部屋の装飾を替えてくれるの。だから毎年楽しみなんだぁ」
「へぇ…」
おまえの趣向のせいかッ!と突っ込みたくて仕方ない光だったが、自分は仲がいいどころか弟との仲を引き裂いた張本人のために口出しが出来なかった。そして完全に名前のペースに引っ張られて肝心の話が出来ない。
「光くんって甘いもの大丈夫?クッキーあるけど食べる?」
「…クッキーは好きだけどお腹空いてないから大丈夫」
壺から出てきた骨型クッキーにびくりとしながら光はそう返した。「晩御飯食べそこなちゃったからごめんね」と謝りつつクッキーを頬張る名前。この子ってけっこう…といろいろ言いたいことはあったが全て飲み込み、口を開いた。
「………見分けつくんだね。僕たちの」
「うんそうだね。最初は分かんなかったけど」
「じゃああのときも…」
あのとき。光のふりをして名前のことを騙して泣かせたあのゲーム。最低なことをしたと思っている。今はそう思えるようになったが、あのときは何とも思ってなかったのだ。気にもしようとしてなかった。
「………うーんどうだったかなぁ」
光の切羽詰まった顔を真正面から見たせいか名前ははぐらかすように紅茶を口元に持って行った。気を使われている。そのことに罪悪感が生まれつつも光は少しホッとした。罵られるのも覚悟で来た。馨の代わりに。それだけのことをしたのだ。でも名前には怒りの感情は見られなかった。心から憎まれているわけではないらしい。まだ、馨との仲を戻すチャンスはある。
「ごめんなさい」
両手をテーブルにつき、頭をギリギリまで下げる光。名前が戸惑っている気配がしたがそれでも光は頭を下げ続けた。
「幼稚舎のとき、君を追い返したのは僕なんだ。馨じゃない。馨は君と遊ぶの大好きだったんだ。だから、君に避けられたと思って…嫌われたんだと思ってて、あんな態度取っちゃったんだ。馨は君のこと今でも友だちと思ってる。あんなことしちゃったけど、でも、手紙の件は、言い訳できない。本当にごめんなさい」
言葉が纏まっていないチグハグな謝罪。初めて人に頭を下げたんじゃないかと光は思った。でも全く苦ではなかった。これで弟のことを許してもらえるなら。
「………そっか」
「!」
名前の感情の読めない声に光は肩を震わせた。数秒間を開けて恐る恐る顔を上げる。
「………そっかぁ、まだ馨くんの友だちでいいんだ…」
そして静かに涙を零す名前に目を見開いた。
「…嫌われたかとおもった」
弟と似たようなことを呟く名前に光は肩の力を抜いた。…なんだ、一緒だったのか。馨も名前も気持ちは同じだったのだ。ただ少しずれてしまっていただけで。………そのずれを生んだのは自分だが。
「馨に会ってあげて。気絶させちゃったってしょげてるから」
「しょげ…!?ええ!?」
これで一段落かと光が軽い口調で冗談をいい(八割本当だが)名前が素っ頓狂な声を上げたときだった。
「名前ーッ!!!どこだぁあ!!」
「久瀬先輩うるさいです」
「おまえが付いていながら名前を傷つけるとは何事だ鳳!」
「そんなヤワじゃありませんよあいつは。それよりもその持ち方は止めてやっては貰えませんか?」
「うるさい!元はと言えばこいつのせいで名前が!」
「久瀬先輩の方がうるさいです」
「! ここかぁ!!」
バンッ!と扉が外れそうな勢いで部屋に入ってきたのは名前の幼なじみの久瀬と鏡夜、そして久瀬に首根っこを掴まれて意識が飛びかけている馨だった。
案内された部屋のソファーに頭を埋める馨。馨の気持ちと連鎖するかのように降りかかる大粒の雨。そして雷。馨の心情を表したかのようだっだ。
「しかも鏡夜先輩の幼なじみってなに…殿なんかキング先輩って呼ばれてるし、何でそんなに仲良さそうなの、むかつく…」
言葉とは裏腹にどんどん元気がなくなっていく馨に光は何て励ませばいいか分からずに頭をかきむしった。
二年前、手紙を見てひどくうろたえた様子の馨に無理やり事情を聞き出した光。泣きそうな顔で語られる二人の話。そして思い出したのだ。幼稚舎時代に馴れ馴れしく遊ぼうと話しかけてきた女の子を。そして即座に追い払った自分に。光はサーッと血の気が引いていくのが分かった。…僕のせいじゃん……。
「い、いやっ鏡夜先輩も『ある意味持病だ』って言ってたし」
「僕に触られるのが嫌って意味でしょ…」
「夏バテだろ!今日暑かったし!」
「猫澤先輩の別荘寒いくらいなんだけど」
ああダメだ、今は何言っても通じない。いつもならウジウジすんなよと遠慮なく言えるのだが十年という長い年月の亀裂を作ったのは自分だ。言えるはずがない。
「…………名前の私服はじめて見た」
かわいい、白のワンピースかわいい、砂浜で一緒に散歩したい、かわいい、とクッションに顔を押しつけながら囁き続ける馨に光は息を吐いた。殿と一緒のこと言ってるよ馨…。
あの手紙事件以来、無理やり押し込めていた感情が戻った馨は罪悪感と後悔に苛まれながらも幼いときに生まれた恋心を膨らませていった。
「……でも僕は名前に酷いことを…っ」
そして膨らませては自分のやらかしたことを思い出して萎ませていた。
「だから僕も一緒に謝るって言ってるだろ!元々僕のせいなんだし!」
「ちがうよ、僕が意地にならないで早く名前に話しかければ良かったんだ、……話しかければ、気絶なんてさせずにすんだのに、」
「………」
肩を震わせる馨にどうしたらいいんだと光は頭を抱えた。原因は自分だ。馨が初めての友だち、初恋相手。それをぶち壊したのは自分だ。
──でもさすがに引きずりすぎだろッ!!光はキレた。いわゆる逆ギレだ。双子のキレやすい方が光。これはハルヒの言葉だった。あながち間違っていなかった。
「馨!!服脱いで!」
「え、何言ってるの光…ぎゃーッ!?」
馨の服を剥ぎ取った光は名前の部屋までやってきた。そしてそこでやっと頭に登った血が冷めていくのが分かった。
「………」
「紅茶しかないけど大丈夫?」
「あ、ウン」
「このティーセットね、猫ちゃん先輩のお手製なんだよ。ほら持ち手にに骨々の猫さんが。かわいいよね」
「あ、ウン」
全く可愛さが分からなかったが光はとりあえず頷いておいた。そしてティーセットから注がれた(名前曰わく)紅茶は真っ赤だった。そんな紅茶もあるのは知っているがティーカップと部屋の装飾(ホラーチック)により飲む気がどんどん失せていく光。何でこの部屋だけホラー色強いの…?と背中に冷や汗が流れた。よく殿この部屋にはいれたね…と名前が倒れたときに一緒について行った環のことを思い出したが彼は名前が倒れたことで一杯一杯だったために部屋の装飾なんか気にしている暇がなかった。気がついたら悲鳴のひとつはあげていただろう。
「猫ちゃん先輩に夏になったら別荘へ招待をしてもらってるんだけど毎年部屋の装飾を替えてくれるの。だから毎年楽しみなんだぁ」
「へぇ…」
おまえの趣向のせいかッ!と突っ込みたくて仕方ない光だったが、自分は仲がいいどころか弟との仲を引き裂いた張本人のために口出しが出来なかった。そして完全に名前のペースに引っ張られて肝心の話が出来ない。
「光くんって甘いもの大丈夫?クッキーあるけど食べる?」
「…クッキーは好きだけどお腹空いてないから大丈夫」
壺から出てきた骨型クッキーにびくりとしながら光はそう返した。「晩御飯食べそこなちゃったからごめんね」と謝りつつクッキーを頬張る名前。この子ってけっこう…といろいろ言いたいことはあったが全て飲み込み、口を開いた。
「………見分けつくんだね。僕たちの」
「うんそうだね。最初は分かんなかったけど」
「じゃああのときも…」
あのとき。光のふりをして名前のことを騙して泣かせたあのゲーム。最低なことをしたと思っている。今はそう思えるようになったが、あのときは何とも思ってなかったのだ。気にもしようとしてなかった。
「………うーんどうだったかなぁ」
光の切羽詰まった顔を真正面から見たせいか名前ははぐらかすように紅茶を口元に持って行った。気を使われている。そのことに罪悪感が生まれつつも光は少しホッとした。罵られるのも覚悟で来た。馨の代わりに。それだけのことをしたのだ。でも名前には怒りの感情は見られなかった。心から憎まれているわけではないらしい。まだ、馨との仲を戻すチャンスはある。
「ごめんなさい」
両手をテーブルにつき、頭をギリギリまで下げる光。名前が戸惑っている気配がしたがそれでも光は頭を下げ続けた。
「幼稚舎のとき、君を追い返したのは僕なんだ。馨じゃない。馨は君と遊ぶの大好きだったんだ。だから、君に避けられたと思って…嫌われたんだと思ってて、あんな態度取っちゃったんだ。馨は君のこと今でも友だちと思ってる。あんなことしちゃったけど、でも、手紙の件は、言い訳できない。本当にごめんなさい」
言葉が纏まっていないチグハグな謝罪。初めて人に頭を下げたんじゃないかと光は思った。でも全く苦ではなかった。これで弟のことを許してもらえるなら。
「………そっか」
「!」
名前の感情の読めない声に光は肩を震わせた。数秒間を開けて恐る恐る顔を上げる。
「………そっかぁ、まだ馨くんの友だちでいいんだ…」
そして静かに涙を零す名前に目を見開いた。
「…嫌われたかとおもった」
弟と似たようなことを呟く名前に光は肩の力を抜いた。…なんだ、一緒だったのか。馨も名前も気持ちは同じだったのだ。ただ少しずれてしまっていただけで。………そのずれを生んだのは自分だが。
「馨に会ってあげて。気絶させちゃったってしょげてるから」
「しょげ…!?ええ!?」
これで一段落かと光が軽い口調で冗談をいい(八割本当だが)名前が素っ頓狂な声を上げたときだった。
「名前ーッ!!!どこだぁあ!!」
「久瀬先輩うるさいです」
「おまえが付いていながら名前を傷つけるとは何事だ鳳!」
「そんなヤワじゃありませんよあいつは。それよりもその持ち方は止めてやっては貰えませんか?」
「うるさい!元はと言えばこいつのせいで名前が!」
「久瀬先輩の方がうるさいです」
「! ここかぁ!!」
バンッ!と扉が外れそうな勢いで部屋に入ってきたのは名前の幼なじみの久瀬と鏡夜、そして久瀬に首根っこを掴まれて意識が飛びかけている馨だった。