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光がインフルエンザで一週間ほど幼稚舎を休んだときに出会った女の子。その子は紛れもなく僕のはじめての友だちだった。
「……………なに泣いてるの」
砂かきをしながら一人でべそをかく女の子に話しかけたのは気まぐれだった。でもその女の子は僕が話しかけたことにすごく喜んだ。喜びを通り越して号泣していて少し引いたけど僕が作ったお城に目を輝かせてすごいすごいと笑う表情が印象的で、気づいたら「また作ってあげてもいーよ」と言っていた。女の子は嬉しそうに笑って「うん!またあそぼーねかおるくん!」と言った。
インフルエンザで光と全く会えない寂しさを女の子は埋めてくれた。素直で無邪気で泣き虫でけっこう馬鹿っぽい。でも毎日僕を見て笑ってくれる顔が嬉しくて、楽しかった。光が治ったら三人で遊ぼうと言おうと思ってた。双子の兄がいるんだ、きっと三人だったらもっと楽しいよ、と。でも言う前に、僕らの関係は終わった。
「もう一緒にあそんであげないから!」
ちょっと泣きそうな顔でそう言われた。なんで?また明日も遊ぼうっていったのに、そう思ったけど喉が震えて何も言い返せなかった。そこでやだって言えればまた違っていたはずなのに僕の世界はまだ光だけしかいなくて、はじめて出来た友だちに何て言えば分からなくて、僕は女の子から逃げ出した。
歳を重ねるごとに僕らの世界は狭くなっていった。初等部に上がると成績と家柄でクラスが分けられた。ちらっと見たクラス表には女の子の名前はなかった。そのことに密かに落胆しながら、友だちなんて作らずに毎日光と一緒に過ごした。クラスの前を通る度に見かけた僕以外の友だちと笑う女の子。ああ、もう僕はあの子の友だちじゃないんだ。嫌われたんだ。そのことが分かったときから女の子のクラスを覗くのをやめた。
「は?おまえだれ」
僕が諦めたときに女の子は僕の前に現れた。でも女の子の視線は僕の後ろにいる光と交互に行き来していて、僕が僕だと分かっていないことが分かった。まだ幼かった僕はそんなことすら許せなくて、今度は僕から女の子を突き放した。女の子はあのときと同じ泣きそうな顔をして何も言わず去っていった。
女の子のその顔を思い出す度に胸が苦しくて、頭から離れなかった。毎日毎日あの子の事を考えて、更に苦しくなって。僕はあの子のことを忘れようと必死になった。どうせあの子も周りの人間と同じだと思い続けた。そんな事を続けるうちに、女の子は僕の世界から消えていった。
『またラブレター?』
飽きないよね女って、と机に入っていた手紙を見て光と馬鹿にするように笑った。放課後に裏庭に来てほしいですとたどたどしい字で書かれたそれにいつものゲームをすることにした。名前なんて一切見なかった。
光のふりをして呼び出した女に迫った。女は顔を真っ赤にして制服の袖を握りしめていた。ああ…また同じ結果かと心が冷えていくのが分かった。それでも甘い言葉を投げかける。ずっと君のことが気になっていた、馨じゃなくて僕と付き合わない?と。
『……………ぅ、ッ』
女は泣いていた。我慢するように必死に唇を噛み締めて。そのことに一瞬思考が止まっていると女は僕の腕をはねのけて去っていった。その後ろ姿が、あの子と重なった。
『なんだよあの女』
『…光手紙かして』
『は?』
『いいからっ!』
驚いている光に気遣う余裕もなく手紙を奪った。そしてたどたどしい文字で最後に書かれた名前を見て、息が止まった。─名字名前。僕のはじめての友だちの名前だった。
「……………なに泣いてるの」
砂かきをしながら一人でべそをかく女の子に話しかけたのは気まぐれだった。でもその女の子は僕が話しかけたことにすごく喜んだ。喜びを通り越して号泣していて少し引いたけど僕が作ったお城に目を輝かせてすごいすごいと笑う表情が印象的で、気づいたら「また作ってあげてもいーよ」と言っていた。女の子は嬉しそうに笑って「うん!またあそぼーねかおるくん!」と言った。
インフルエンザで光と全く会えない寂しさを女の子は埋めてくれた。素直で無邪気で泣き虫でけっこう馬鹿っぽい。でも毎日僕を見て笑ってくれる顔が嬉しくて、楽しかった。光が治ったら三人で遊ぼうと言おうと思ってた。双子の兄がいるんだ、きっと三人だったらもっと楽しいよ、と。でも言う前に、僕らの関係は終わった。
「もう一緒にあそんであげないから!」
ちょっと泣きそうな顔でそう言われた。なんで?また明日も遊ぼうっていったのに、そう思ったけど喉が震えて何も言い返せなかった。そこでやだって言えればまた違っていたはずなのに僕の世界はまだ光だけしかいなくて、はじめて出来た友だちに何て言えば分からなくて、僕は女の子から逃げ出した。
歳を重ねるごとに僕らの世界は狭くなっていった。初等部に上がると成績と家柄でクラスが分けられた。ちらっと見たクラス表には女の子の名前はなかった。そのことに密かに落胆しながら、友だちなんて作らずに毎日光と一緒に過ごした。クラスの前を通る度に見かけた僕以外の友だちと笑う女の子。ああ、もう僕はあの子の友だちじゃないんだ。嫌われたんだ。そのことが分かったときから女の子のクラスを覗くのをやめた。
「は?おまえだれ」
僕が諦めたときに女の子は僕の前に現れた。でも女の子の視線は僕の後ろにいる光と交互に行き来していて、僕が僕だと分かっていないことが分かった。まだ幼かった僕はそんなことすら許せなくて、今度は僕から女の子を突き放した。女の子はあのときと同じ泣きそうな顔をして何も言わず去っていった。
女の子のその顔を思い出す度に胸が苦しくて、頭から離れなかった。毎日毎日あの子の事を考えて、更に苦しくなって。僕はあの子のことを忘れようと必死になった。どうせあの子も周りの人間と同じだと思い続けた。そんな事を続けるうちに、女の子は僕の世界から消えていった。
『またラブレター?』
飽きないよね女って、と机に入っていた手紙を見て光と馬鹿にするように笑った。放課後に裏庭に来てほしいですとたどたどしい字で書かれたそれにいつものゲームをすることにした。名前なんて一切見なかった。
光のふりをして呼び出した女に迫った。女は顔を真っ赤にして制服の袖を握りしめていた。ああ…また同じ結果かと心が冷えていくのが分かった。それでも甘い言葉を投げかける。ずっと君のことが気になっていた、馨じゃなくて僕と付き合わない?と。
『……………ぅ、ッ』
女は泣いていた。我慢するように必死に唇を噛み締めて。そのことに一瞬思考が止まっていると女は僕の腕をはねのけて去っていった。その後ろ姿が、あの子と重なった。
『なんだよあの女』
『…光手紙かして』
『は?』
『いいからっ!』
驚いている光に気遣う余裕もなく手紙を奪った。そしてたどたどしい文字で最後に書かれた名前を見て、息が止まった。─名字名前。僕のはじめての友だちの名前だった。