完結済み
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私は小さいときから香南ちゃんと鏡夜くんにべったりだった。いや、今鏡夜くんにべったりかと言われれば微妙だけど、小さいときはお姉ちゃんとお兄ちゃんみたいに思っていて後ろをくっ付いて回っていた。そして起きたのがトランク酸欠事件だった。どれだけ鏡夜くんのこと好きだったんだろうと今となっては過去の自分に少し引いてしまう。ちなみにTくんとは今とあんまり変わっていない。だって昔からオレンジオレンジうるさかったから。
鏡夜くんが年長さんのときに年長さんだけの社会化見学(という名の遠足)があって、幼稚園で一人になった日があった。香南ちゃんとTくんは既に初等部に上がっていたからいるはずもなく、半泣きになりながら鏡夜くんを見送ったのを覚えている。私は同い年の子より香南ちゃんたちと一緒のほうが好きだったから同い年の友だちがいなかった。砂場で遊びながらこれがぼっちか…と小さいながらに理解した。友だちほしいと再び泣いた。砂かきしながら。
「……………なに泣いてるの」
そんな私に話しかけてくれたのが馨くんだった。一人ぼっち状態が精神的にきていた私は「いっしょにあそぼおお!」と泣きながら馨くんに迫った。馨くんは引きつつも一緒に遊んでくれた。小さい頃から芸術面に才能を発揮していた馨くんは立派な外国のお城を作っていた。すごいすごいと騒ぐ私にちょっと得意気な顔をした馨くんは「また作ってあげてもいーよ」と私に言った。それから私の好きなことに隣のさくらんぼ組の馨くんと休み時間に遊ぶことが増えた。鏡夜くんにはやっと友だちを作ったかと息をつかれた。六歳児のつくため息ではなかった。
そして一週間後、さくらんぼ組に行って馨くんに遊ぼうと誘いに行ったときに事件が起きた。
「は?何でぼくがおまえとあそばなくちゃいけないの?」
あんなに得意げな顔をしてお城を作って、虫を私の頭につけて悪戯をして喜んで、ときどき優しく笑っていた馨くんの態度が急変したのだ。冷たくそう言った馨くんに私もムカッときて「もう一緒にあそんであげないから!」と言ってさくらんぼ組から飛び出した。少しして私のクラスに来た馨くん。なぜかニコニコ楽しそうに笑っている馨くんにむかっときて私は同じことを言った。馨くんは泣きそうな顔をしていて、でも何も言い返さずに馨くんは自分のクラスに帰って行った。
そして馨くんが双子だと知ったのは小学三年生になったときだった。もしかしてあのとき冷たかった馨くんは光くんで、私のクラスに来たのが馨くんで………と今更ながらに理解した私はすぐさま馨くんのクラス、A組に向かった。でももう遅かった。
「は?おまえだれ」
胸に【ひたちいん かおる】と書かれた名札をしていた子は顔をしかめながらそう言った。後ろには【ひたちいん ひかる】の名札をしている同じ顔の男の子。違いが分からないくらい同じ顔で、感情も共有しているのかと言いたくなるくらいしかめっ面も同じだった。仲よしだった男の子に二倍責められている気分になった私は結局謝ることは出来ずに自分のクラスに帰った。
それからとずっと謝る機会を窺っているうちに、馨くんと光くんの見分けがつくようになった。馨くんと同じクラスになったらすぐに謝れるかも、友だちになれるかもと勉強を頑張った。不発に終わった。そんなことを続けているうちに馨くんのことが好きだったのだと気づいた。鏡夜くんには「今さらか」と馬鹿にされた。
そして謝る決心と告白する決意をし、実行に移してボロボロに打ち砕かれるという結末に終わった。何か私の人生は馨くんに左右されすぎだと思う。たった一週間遊んだだけの男の子のことがずっと忘れられないのだ。鏡夜くんや香南ちゃんが諦めろと言うのもちょっとだけ分かる。ちょっとだけ。諦めないもん。
そして自分の人生をベッドの上で振り返るなんて重大な病気にかかったみたいですねぇと号泣しているキング先輩に言うと「名前君諦めては駄目だ!俺も名前君の儚い恋を応援するぞ!だから死ぬなぁ!」と鼻水混じりで応援された。あれ私って気絶しただけだよね?別に不治の病とかじゃないですよ?そうキング先輩に伝えようとすると「はっ!こうしてはいられん!鏡夜に名前君が目覚めたことを伝えねば!」とキング先輩は私の部屋を飛び出して行った。キング先輩はいつも元気だなぁ。そして鏡夜くんは私をベッドに突っ込んだ後は自分の部屋にシャワーを浴びに帰ったらしい。通常運転だった。誰だろうあの人のことを仏様って言ったの。
「………儚い恋かぁ」
私のは執着も入ってるからなぁ。そんな綺麗な響きだけじゃない。純粋に馨くんのことが好きだった幼稚舎時代に戻りたい。…いやダメだ。前向きにがんばらないと。後ろ向きになっても何も変わらない。そう自分に鼓舞をした瞬間に雷が落ちた。天候にも見放された気がする。負けない。とりあえず鏡夜くんが来たら雷に打ち勝つ方法を聞こう。
──コンコン
「あ、どうぞー」
鏡夜くんとキング先輩かな、と思いつつ扉の向こう側にいる人へ返すと数秒間が空いて扉が開いた。そしてそこにいた人物に息を飲んだ。夢にまで出てくる大好きなひと、
「………話あるんだけど。幼稚舎のときの、」
「なんで馨くんの格好してるの?」
「……………」
……のお兄さんの光くん。目を見開いた来訪者、光くんは気まずそうに頬をかいて髪型をぐしゃぐしゃにして元に戻した。
鏡夜くんが年長さんのときに年長さんだけの社会化見学(という名の遠足)があって、幼稚園で一人になった日があった。香南ちゃんとTくんは既に初等部に上がっていたからいるはずもなく、半泣きになりながら鏡夜くんを見送ったのを覚えている。私は同い年の子より香南ちゃんたちと一緒のほうが好きだったから同い年の友だちがいなかった。砂場で遊びながらこれがぼっちか…と小さいながらに理解した。友だちほしいと再び泣いた。砂かきしながら。
「……………なに泣いてるの」
そんな私に話しかけてくれたのが馨くんだった。一人ぼっち状態が精神的にきていた私は「いっしょにあそぼおお!」と泣きながら馨くんに迫った。馨くんは引きつつも一緒に遊んでくれた。小さい頃から芸術面に才能を発揮していた馨くんは立派な外国のお城を作っていた。すごいすごいと騒ぐ私にちょっと得意気な顔をした馨くんは「また作ってあげてもいーよ」と私に言った。それから私の好きなことに隣のさくらんぼ組の馨くんと休み時間に遊ぶことが増えた。鏡夜くんにはやっと友だちを作ったかと息をつかれた。六歳児のつくため息ではなかった。
そして一週間後、さくらんぼ組に行って馨くんに遊ぼうと誘いに行ったときに事件が起きた。
「は?何でぼくがおまえとあそばなくちゃいけないの?」
あんなに得意げな顔をしてお城を作って、虫を私の頭につけて悪戯をして喜んで、ときどき優しく笑っていた馨くんの態度が急変したのだ。冷たくそう言った馨くんに私もムカッときて「もう一緒にあそんであげないから!」と言ってさくらんぼ組から飛び出した。少しして私のクラスに来た馨くん。なぜかニコニコ楽しそうに笑っている馨くんにむかっときて私は同じことを言った。馨くんは泣きそうな顔をしていて、でも何も言い返さずに馨くんは自分のクラスに帰って行った。
そして馨くんが双子だと知ったのは小学三年生になったときだった。もしかしてあのとき冷たかった馨くんは光くんで、私のクラスに来たのが馨くんで………と今更ながらに理解した私はすぐさま馨くんのクラス、A組に向かった。でももう遅かった。
「は?おまえだれ」
胸に【ひたちいん かおる】と書かれた名札をしていた子は顔をしかめながらそう言った。後ろには【ひたちいん ひかる】の名札をしている同じ顔の男の子。違いが分からないくらい同じ顔で、感情も共有しているのかと言いたくなるくらいしかめっ面も同じだった。仲よしだった男の子に二倍責められている気分になった私は結局謝ることは出来ずに自分のクラスに帰った。
それからとずっと謝る機会を窺っているうちに、馨くんと光くんの見分けがつくようになった。馨くんと同じクラスになったらすぐに謝れるかも、友だちになれるかもと勉強を頑張った。不発に終わった。そんなことを続けているうちに馨くんのことが好きだったのだと気づいた。鏡夜くんには「今さらか」と馬鹿にされた。
そして謝る決心と告白する決意をし、実行に移してボロボロに打ち砕かれるという結末に終わった。何か私の人生は馨くんに左右されすぎだと思う。たった一週間遊んだだけの男の子のことがずっと忘れられないのだ。鏡夜くんや香南ちゃんが諦めろと言うのもちょっとだけ分かる。ちょっとだけ。諦めないもん。
そして自分の人生をベッドの上で振り返るなんて重大な病気にかかったみたいですねぇと号泣しているキング先輩に言うと「名前君諦めては駄目だ!俺も名前君の儚い恋を応援するぞ!だから死ぬなぁ!」と鼻水混じりで応援された。あれ私って気絶しただけだよね?別に不治の病とかじゃないですよ?そうキング先輩に伝えようとすると「はっ!こうしてはいられん!鏡夜に名前君が目覚めたことを伝えねば!」とキング先輩は私の部屋を飛び出して行った。キング先輩はいつも元気だなぁ。そして鏡夜くんは私をベッドに突っ込んだ後は自分の部屋にシャワーを浴びに帰ったらしい。通常運転だった。誰だろうあの人のことを仏様って言ったの。
「………儚い恋かぁ」
私のは執着も入ってるからなぁ。そんな綺麗な響きだけじゃない。純粋に馨くんのことが好きだった幼稚舎時代に戻りたい。…いやダメだ。前向きにがんばらないと。後ろ向きになっても何も変わらない。そう自分に鼓舞をした瞬間に雷が落ちた。天候にも見放された気がする。負けない。とりあえず鏡夜くんが来たら雷に打ち勝つ方法を聞こう。
──コンコン
「あ、どうぞー」
鏡夜くんとキング先輩かな、と思いつつ扉の向こう側にいる人へ返すと数秒間が空いて扉が開いた。そしてそこにいた人物に息を飲んだ。夢にまで出てくる大好きなひと、
「………話あるんだけど。幼稚舎のときの、」
「なんで馨くんの格好してるの?」
「……………」
……のお兄さんの光くん。目を見開いた来訪者、光くんは気まずそうに頬をかいて髪型をぐしゃぐしゃにして元に戻した。