君煩い
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「あっきた銀くん」
「すまん! 名字、遅れたわ」
「ううん大丈夫だよ。お土産みてたの楽しいし」
「カップルみたいなやりとりすんな」
「八つ当たりやめろや! 侑!」
なんで侑がいるの。そう思ったけどこっちも治ちゃんと角名くんいるから似たような理由だろう。暇だったとか。
ホテルのお土産屋さん。そこで部活のみんなのお土産を買おうと銀くんと決めていた。北さんは「買ってこんでええからな」って言ってくれたけどそんな北さん達の代は買ってきてくれたのだ。これは買わないとダメでしょう! となった私と銀くん(他はどっちでもええやろ感すごかった)は二年生から少しずつお金を徴収した。その際に選ぶのはおまえらに任せるわとやる気なさそうに頼まれて。なんで。お土産選ぶの楽しいでしょ。お世話になってる監督コーチに先輩方、可愛い後輩達へあげるものなんだから。と、私は主張したけど同意してくれたのは銀くんだけだった。温度差がひどい。
「監督とコーチはお酒のおつまみのが喜ぶかな?」
「せやなぁ。でも家族で食うかもしれんし」
「じゃあご飯に合うのもいいかもね」
店員さんにおすすめを聞いて監督とコーチには貝の瓶詰めセットにした。お酒にもご飯にも合うらしい。部員にはブラックサンダーの抹茶味と色んな味の小分けの生八つ橋にした。定番でいいのだ。どうせすぐにみんな食べてなくなるし。京都っぽいし。そう思いつつ結構な量になった。
「名字、俺半分だけ持って帰るのでええんか? まだ持てるで?」
「大きいキャリー持ってきたから大丈夫! でもありがとう銀くん」
「……俺も持てるけど?」
「侑もありがと。でも大丈夫だよ」
なんせ海外用に買ったキャリー持ってきたのだ。家族と自分のお土産もまだまだ入る。
「侑はお家のお土産何にするの? 私もおばちゃん達に買うから被らないのがいいなって思ってるんだけど」
「別にうちのはいらん」
「でも侑、中学生のときうちの家族の分のお土産買ってきてくれたよ?」
「それは世話になっとるし……ナマエの家族やし」
最後の言葉は小さかったけどばっちり聞こえた。私の家族だから。その言葉の理由を考えると顔がぶわっと熱くなる気がした。だってそこにある理由は幼なじみだからじゃない。私はもう侑の気持ちを知っている。
嬉しいな。
単純にそう思った。だって私だけじゃなくて大切な家族のことも考えてくれたってことだから。胸に温かいものがふわりと浮かぶのが分かった。
侑をみる。銀くんとお土産をみて何か話している。一般的にみて高い身長。整った顔。目立つ金髪……はモテるかは分からないけど実際に侑はモテている。他校生からすごく人気なのだ。……あれ? 稲荷崎では? と首を傾げていると治ちゃんと角名くんがやってきて「どないしたんナマエ。変な顔しとるけど」と話しかけてきた。
二人に耳貸してと手でアピールする。治ちゃんと角名くんは背を屈ませてくれた。
「侑って稲荷崎ではモテないの?」
「…………」
「…………」
「えっなにその沈黙」
「なんで気になったの?」
「……なんとなく?」
角名くんの質問にそう答えると二人は意味ありげに顔を見合わせた。私が「なんなの」と少し拗ねた声を出すと治ちゃんが「まあまだ分からんしな」と頭を撫でてきた。なんなの。
「モテるっちゃモテるけどモテんと言えばモテん。タメからは全然やな」
「本性も名字への初恋こじらせも全部見られてるからね」
「初恋こじらせ……」
「後輩くらいちゃうん。告るのは」
「先輩は?」
「あいつ自分に好意もった女の先輩には冷ややかやからこっちも全然やな。たまに猛者がおるけど」
「? なんで女の先輩限定?」
治ちゃんにそう聞くと少し迷ったような顔をした。言いにくそうなそんな顔。
「言いにくい話ならいいよ?」
「んーまあ時効か。中学生んときの話やし。ナマエ、中学生んとき年上の同性からのあたりがえらい強なかった?」
「うーん? そうだっけ?」
「ナマエが知らんとこでおまえを倉庫に閉じ込めたろうとした奴らがおんねん」
「!? そんなに嫌われてたの!? こわっ!」
気づかなかったと言えば「そこに至るまでで普通気づかない?」と角名くんにツッコまれた。き、気づかなかった……。
「まあおまえ呑気やし、あたり強い女でもそういう性格くらいにしか思ってなかったから相手も気ぃ抜けて途中で止めてた奴らもおんねんけど、そこで止まれん奴らもおって。それがツムのファンやってん」
「ほうほう」
「で、ナマエの呼び出しの紙たまたま見つけて念の為俺らで別々にいったら俺が倉庫に閉じこめられてん」
「!?」
「閉じこめられたなあて思とったら、ツムが外でブチ切れて全員泣かして訳聞いたらツムと仲良いおまえが妬ましかったからやった言うからもう余計に暴言吐きまくって死ぬほど泣かせとったわ。その間俺、倉庫で放置やで?」
「お、おつかれさまです……?」
「うん。で、それからは微妙に女嫌いになって」
「侑が?」
「うん。まあ全部が全部敵やないって分かってからは緩和したけどそれでも年上女は地雷やねん」
「まあ好きな子にそんなことされたら地雷になるのは分かる」
「されてませんが」
「な。されたの俺や。でもツムは許さんかってん。ナマエがそこにおらんくても。多分一生許さんと思うわ」
「…………」
未遂で終わって……ないけど。私の代わりに治ちゃんが閉じ込められてるけど。でももし私が閉じ込められてたら侑はどれだけ怒ったのだろう。そう考えると背筋が震えた。
「せやからおまえ気ぃつけろや。高校でそんなアホなことする奴は早々おらんし、俺もツムもアランくんとかもおる。ツムの気持ちも全員知っとる。でも一度起きかけたことがまた起こらん保証はないねん」
「……うん、気をつける。絶対に気をつける」
「いや、そこまで気張らんでもええけど」
「だってもし侑が怒って何かしたら侑が悪くなっちゃう。侑、バレー出来なくなっちゃう」
「…………」
「そんなの絶対ダメだよ。侑、あんなにバレー好きなのに」
「……罪悪感持たんでええって言ったばかりやけど、ナマエ二つだけ教えてくれん?」
「なに?」
「もし俺がナマエのこと好きって言ったらどうする?」
「どう、って治ちゃんは私のこと妹みたいに思ってるでしょ?」
「まあそうなんやけど。でも即答できたな。じゃあツムに好きって言われたらどうする?」
侑に好きって言われたら。
途端に頭が真っ白になって言葉が紡げなくなった。なんで? 侑の気持ちは知っているのに。私は侑と同じ気持ちはないって知ってるのに。どうして。
何も答えない私に治ちゃんはポンポン頭を叩いた。治ちゃんも何も言わなかった。自分で考えろと表情で伝えてきていたから。
「すまん! 名字、遅れたわ」
「ううん大丈夫だよ。お土産みてたの楽しいし」
「カップルみたいなやりとりすんな」
「八つ当たりやめろや! 侑!」
なんで侑がいるの。そう思ったけどこっちも治ちゃんと角名くんいるから似たような理由だろう。暇だったとか。
ホテルのお土産屋さん。そこで部活のみんなのお土産を買おうと銀くんと決めていた。北さんは「買ってこんでええからな」って言ってくれたけどそんな北さん達の代は買ってきてくれたのだ。これは買わないとダメでしょう! となった私と銀くん(他はどっちでもええやろ感すごかった)は二年生から少しずつお金を徴収した。その際に選ぶのはおまえらに任せるわとやる気なさそうに頼まれて。なんで。お土産選ぶの楽しいでしょ。お世話になってる監督コーチに先輩方、可愛い後輩達へあげるものなんだから。と、私は主張したけど同意してくれたのは銀くんだけだった。温度差がひどい。
「監督とコーチはお酒のおつまみのが喜ぶかな?」
「せやなぁ。でも家族で食うかもしれんし」
「じゃあご飯に合うのもいいかもね」
店員さんにおすすめを聞いて監督とコーチには貝の瓶詰めセットにした。お酒にもご飯にも合うらしい。部員にはブラックサンダーの抹茶味と色んな味の小分けの生八つ橋にした。定番でいいのだ。どうせすぐにみんな食べてなくなるし。京都っぽいし。そう思いつつ結構な量になった。
「名字、俺半分だけ持って帰るのでええんか? まだ持てるで?」
「大きいキャリー持ってきたから大丈夫! でもありがとう銀くん」
「……俺も持てるけど?」
「侑もありがと。でも大丈夫だよ」
なんせ海外用に買ったキャリー持ってきたのだ。家族と自分のお土産もまだまだ入る。
「侑はお家のお土産何にするの? 私もおばちゃん達に買うから被らないのがいいなって思ってるんだけど」
「別にうちのはいらん」
「でも侑、中学生のときうちの家族の分のお土産買ってきてくれたよ?」
「それは世話になっとるし……ナマエの家族やし」
最後の言葉は小さかったけどばっちり聞こえた。私の家族だから。その言葉の理由を考えると顔がぶわっと熱くなる気がした。だってそこにある理由は幼なじみだからじゃない。私はもう侑の気持ちを知っている。
嬉しいな。
単純にそう思った。だって私だけじゃなくて大切な家族のことも考えてくれたってことだから。胸に温かいものがふわりと浮かぶのが分かった。
侑をみる。銀くんとお土産をみて何か話している。一般的にみて高い身長。整った顔。目立つ金髪……はモテるかは分からないけど実際に侑はモテている。他校生からすごく人気なのだ。……あれ? 稲荷崎では? と首を傾げていると治ちゃんと角名くんがやってきて「どないしたんナマエ。変な顔しとるけど」と話しかけてきた。
二人に耳貸してと手でアピールする。治ちゃんと角名くんは背を屈ませてくれた。
「侑って稲荷崎ではモテないの?」
「…………」
「…………」
「えっなにその沈黙」
「なんで気になったの?」
「……なんとなく?」
角名くんの質問にそう答えると二人は意味ありげに顔を見合わせた。私が「なんなの」と少し拗ねた声を出すと治ちゃんが「まあまだ分からんしな」と頭を撫でてきた。なんなの。
「モテるっちゃモテるけどモテんと言えばモテん。タメからは全然やな」
「本性も名字への初恋こじらせも全部見られてるからね」
「初恋こじらせ……」
「後輩くらいちゃうん。告るのは」
「先輩は?」
「あいつ自分に好意もった女の先輩には冷ややかやからこっちも全然やな。たまに猛者がおるけど」
「? なんで女の先輩限定?」
治ちゃんにそう聞くと少し迷ったような顔をした。言いにくそうなそんな顔。
「言いにくい話ならいいよ?」
「んーまあ時効か。中学生んときの話やし。ナマエ、中学生んとき年上の同性からのあたりがえらい強なかった?」
「うーん? そうだっけ?」
「ナマエが知らんとこでおまえを倉庫に閉じ込めたろうとした奴らがおんねん」
「!? そんなに嫌われてたの!? こわっ!」
気づかなかったと言えば「そこに至るまでで普通気づかない?」と角名くんにツッコまれた。き、気づかなかった……。
「まあおまえ呑気やし、あたり強い女でもそういう性格くらいにしか思ってなかったから相手も気ぃ抜けて途中で止めてた奴らもおんねんけど、そこで止まれん奴らもおって。それがツムのファンやってん」
「ほうほう」
「で、ナマエの呼び出しの紙たまたま見つけて念の為俺らで別々にいったら俺が倉庫に閉じこめられてん」
「!?」
「閉じこめられたなあて思とったら、ツムが外でブチ切れて全員泣かして訳聞いたらツムと仲良いおまえが妬ましかったからやった言うからもう余計に暴言吐きまくって死ぬほど泣かせとったわ。その間俺、倉庫で放置やで?」
「お、おつかれさまです……?」
「うん。で、それからは微妙に女嫌いになって」
「侑が?」
「うん。まあ全部が全部敵やないって分かってからは緩和したけどそれでも年上女は地雷やねん」
「まあ好きな子にそんなことされたら地雷になるのは分かる」
「されてませんが」
「な。されたの俺や。でもツムは許さんかってん。ナマエがそこにおらんくても。多分一生許さんと思うわ」
「…………」
未遂で終わって……ないけど。私の代わりに治ちゃんが閉じ込められてるけど。でももし私が閉じ込められてたら侑はどれだけ怒ったのだろう。そう考えると背筋が震えた。
「せやからおまえ気ぃつけろや。高校でそんなアホなことする奴は早々おらんし、俺もツムもアランくんとかもおる。ツムの気持ちも全員知っとる。でも一度起きかけたことがまた起こらん保証はないねん」
「……うん、気をつける。絶対に気をつける」
「いや、そこまで気張らんでもええけど」
「だってもし侑が怒って何かしたら侑が悪くなっちゃう。侑、バレー出来なくなっちゃう」
「…………」
「そんなの絶対ダメだよ。侑、あんなにバレー好きなのに」
「……罪悪感持たんでええって言ったばかりやけど、ナマエ二つだけ教えてくれん?」
「なに?」
「もし俺がナマエのこと好きって言ったらどうする?」
「どう、って治ちゃんは私のこと妹みたいに思ってるでしょ?」
「まあそうなんやけど。でも即答できたな。じゃあツムに好きって言われたらどうする?」
侑に好きって言われたら。
途端に頭が真っ白になって言葉が紡げなくなった。なんで? 侑の気持ちは知っているのに。私は侑と同じ気持ちはないって知ってるのに。どうして。
何も答えない私に治ちゃんはポンポン頭を叩いた。治ちゃんも何も言わなかった。自分で考えろと表情で伝えてきていたから。