君煩い
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「なんで治だけちゃん付けなの」
「中学上がる前くらいに侑がちゃん付けなんてだっさいわって言ってきて、治ちゃんは今のままでええよって言ってくれたからだよ」
「侑そういうこと言いそう」
「ムカッときたからしばらく侑のこと宮さんって呼んでたもん」
「ふっ宮さんはおもろかったわ」
治は思い出したように笑い、角名は焦っただろうな侑……とうまくいかない侑を脳裏に浮かべた。侑の片思いはナマエ以外の人間には筒抜けだった。
小学一年で兵庫に引っ越してきたナマエと宮兄弟は幼なじみだった。父親同士が大学時代の友人で隣に引っ越して早々顔合わせしたのだ。
『おんなじ顔! すごい! お名前教えて?』
『おれ、治。双子やねん』
『…………』
『? 侑? どないしたん?』
無口とは縁がないくせにナマエの顔をみて固まった侑に首を傾げる治。ナマエは侑の性格など知らないのでニコニコして侑と治の手を握った。
『わたしナマエ。東京から来たの。よろしくね。治ちゃん、侑ちゃん』
『うん』
『…………』
侑はコクンと頷いただけだった。ナマエがバイバイと手を振って家に帰ったあと治は「なんで喋らなかったん?」と聞いた。侑は隅っこで体育座りしていた。
『……あの子』
『ナマエ?』
『顔が光っとった』
『? べつに光っとらん』
『光っとったわ!』
何を言っているのだろうと治は思ったが後々あれは一目惚れしたのだと察した。他の同級生の女子には素っ気ないくせにナマエにだけはちょっかいをかけ始めたのだ。
『もーっ侑ちゃん髪ゴムかえして!』
『こんなの付けんでもええやろ』
『お花で可愛いからおきに入りなの! お母さんに可愛く結んでもらったのにっ!』
『付けんでもええ!』
訳すると髪をアレンジしたナマエを他の男に見せたくなかったのだ。治は片割れの分かりやすさに目を遠くした。めっちゃ好きやん。そう思った。そして高校二年になった今でも似たようなことをしている片割れにアホやろあいつと思っている。
「ナマエ、国語の教科書かせや」
「侑は落書きするからかさない」
ぷいってするナマエに侑はずんずん近づいてほっぺたを片手で掴んだ。
「なにすんのー」
「ええからかせや」
「私の教科書なのに私の苗字消して宮って書いたの許してないからね! このジャイアン!」
「ああ!? デカい声で言うな!」
「ジャイアンの方が声大きい!」
「ジャイアンやめろ!」
ギャーギャー喧嘩を始めた二人に治と角名以外の二年一組のクラスメート達は微笑ましげな顔になった。ナマエの苗字を消して宮と書いた。その理由に「ほんまアホやな」片割れはそう語り、「ほんと分かりやすい侑」角名は喧嘩している二人にスマホを向けた。
「もー! 治ちゃんからかりたらいいでしょ!」
「おまえのは俺のやろうが!」
「本格的にジャイアンになってきたなこの男っ! もう17歳になるんだよ!? 改めて!」
「ええからかせや!」
「いや! 北さんに言うよ!」
「すぐに北さんにチクリおってセコいねん!」
「北さんはちゃんと怒ってくれるもん! アランくんはツッコミ疲れで途中で諦めちゃうけど!」
「アランくんも頑張っとるやろうが!」
「アランくん頑張ってるけど負けるんだもん!」
話が尾白の話にすり替わっている。結局ナマエの教科書を無理やり取って逃げていった侑に対して「次に私の教科書の苗字を宮にしたら許さないからね!」と廊下で大声で侑の所業をナマエが叫んでケンカは収束した。恐らくナマエの勝ちである。今頃侑はクラスメート達に死ぬほどからかわれているだろう。
「ナマエ、北さんに言うん?」
「こないだ苗字を宮にされたって言ったらちゃんと許可とれやって怒ってくれた。許可の問題じゃないと思ったけど侑がぐぬぬってなってたからいいかってなった」
「北さん呆れてなかった?」
「うーん? そういえばそうだった気もする」
侑の所業は北まで知られているらしい。治はパンをかじってもぐもぐ食べた後、ふと呟いた。
「宮ナマエ」
「うん?」
「あんま違和感あらへんな」
「誰それってならない?」
「うちの学校やったらちゃんとおまえの所に教科書返ってくるで」
「えっすごくないそれ……?」
エスパーだ……と変に感動しているナマエに相変わらず鈍いなぁと角名は思った。クラスを通り越して学年、学年通り越して学校全体が侑の気持ちを知っているのに当の本人がこれである。まあ侑の好きな子にちょっかいをかけるクソガキ感を子供のときから受けている弊害である。ナマエは友達に呼ばれてとたとた歩いていった。
「名字から恋愛話聞いたことないけどどうなの?」
「ツムが目ぇ光らせとるから告る相手はおらんわな」
「だから鈍いんじゃないの? 侑、自分で自分の首締めてない?」
「でも初恋は知っとるで」
「へえ。発狂してそう」
「顔も知らん鉄くんにヤキモチ妬きまくり。ナマエが鉄くんの話したら無理やり話かえよる」
「鉄くんってどこの鉄くん」
「ナマエが東京にいたときの近所に住んでた一個上の優しい男の子の鉄くん」
「思い出が美化されるパターンじゃん」
「しかも今も連絡とっとるらしいわ」
「うわー侑勝ち目ないんじゃないの?」
「んーどうやろうなあ」
パンの最後の一口を食べる。治の幼なじみでもあるナマエ。基本的に素直で真っ直ぐで治達のバレーが大好きなナマエ。治とは波長が合うらしく侑のようにケンカなどしたことはない。可愛いと思ってるし幸せに笑っていてほしいと思っている。その相手が自分の片割れじゃなくてもいい。でも片割れだったらそれはそれでいい。そんなふんわりした考えを治は持っている。
「まあナマエを幸せに出来る相手なら誰でもええわ」
治にとってナマエは可愛い妹のようなものだから。角名に「片割れからも応援されてないのかわいそ」と言われたが侑の自業自得なのでそこは自分でなんとかしろと心でぼやいた。
「中学上がる前くらいに侑がちゃん付けなんてだっさいわって言ってきて、治ちゃんは今のままでええよって言ってくれたからだよ」
「侑そういうこと言いそう」
「ムカッときたからしばらく侑のこと宮さんって呼んでたもん」
「ふっ宮さんはおもろかったわ」
治は思い出したように笑い、角名は焦っただろうな侑……とうまくいかない侑を脳裏に浮かべた。侑の片思いはナマエ以外の人間には筒抜けだった。
小学一年で兵庫に引っ越してきたナマエと宮兄弟は幼なじみだった。父親同士が大学時代の友人で隣に引っ越して早々顔合わせしたのだ。
『おんなじ顔! すごい! お名前教えて?』
『おれ、治。双子やねん』
『…………』
『? 侑? どないしたん?』
無口とは縁がないくせにナマエの顔をみて固まった侑に首を傾げる治。ナマエは侑の性格など知らないのでニコニコして侑と治の手を握った。
『わたしナマエ。東京から来たの。よろしくね。治ちゃん、侑ちゃん』
『うん』
『…………』
侑はコクンと頷いただけだった。ナマエがバイバイと手を振って家に帰ったあと治は「なんで喋らなかったん?」と聞いた。侑は隅っこで体育座りしていた。
『……あの子』
『ナマエ?』
『顔が光っとった』
『? べつに光っとらん』
『光っとったわ!』
何を言っているのだろうと治は思ったが後々あれは一目惚れしたのだと察した。他の同級生の女子には素っ気ないくせにナマエにだけはちょっかいをかけ始めたのだ。
『もーっ侑ちゃん髪ゴムかえして!』
『こんなの付けんでもええやろ』
『お花で可愛いからおきに入りなの! お母さんに可愛く結んでもらったのにっ!』
『付けんでもええ!』
訳すると髪をアレンジしたナマエを他の男に見せたくなかったのだ。治は片割れの分かりやすさに目を遠くした。めっちゃ好きやん。そう思った。そして高校二年になった今でも似たようなことをしている片割れにアホやろあいつと思っている。
「ナマエ、国語の教科書かせや」
「侑は落書きするからかさない」
ぷいってするナマエに侑はずんずん近づいてほっぺたを片手で掴んだ。
「なにすんのー」
「ええからかせや」
「私の教科書なのに私の苗字消して宮って書いたの許してないからね! このジャイアン!」
「ああ!? デカい声で言うな!」
「ジャイアンの方が声大きい!」
「ジャイアンやめろ!」
ギャーギャー喧嘩を始めた二人に治と角名以外の二年一組のクラスメート達は微笑ましげな顔になった。ナマエの苗字を消して宮と書いた。その理由に「ほんまアホやな」片割れはそう語り、「ほんと分かりやすい侑」角名は喧嘩している二人にスマホを向けた。
「もー! 治ちゃんからかりたらいいでしょ!」
「おまえのは俺のやろうが!」
「本格的にジャイアンになってきたなこの男っ! もう17歳になるんだよ!? 改めて!」
「ええからかせや!」
「いや! 北さんに言うよ!」
「すぐに北さんにチクリおってセコいねん!」
「北さんはちゃんと怒ってくれるもん! アランくんはツッコミ疲れで途中で諦めちゃうけど!」
「アランくんも頑張っとるやろうが!」
「アランくん頑張ってるけど負けるんだもん!」
話が尾白の話にすり替わっている。結局ナマエの教科書を無理やり取って逃げていった侑に対して「次に私の教科書の苗字を宮にしたら許さないからね!」と廊下で大声で侑の所業をナマエが叫んでケンカは収束した。恐らくナマエの勝ちである。今頃侑はクラスメート達に死ぬほどからかわれているだろう。
「ナマエ、北さんに言うん?」
「こないだ苗字を宮にされたって言ったらちゃんと許可とれやって怒ってくれた。許可の問題じゃないと思ったけど侑がぐぬぬってなってたからいいかってなった」
「北さん呆れてなかった?」
「うーん? そういえばそうだった気もする」
侑の所業は北まで知られているらしい。治はパンをかじってもぐもぐ食べた後、ふと呟いた。
「宮ナマエ」
「うん?」
「あんま違和感あらへんな」
「誰それってならない?」
「うちの学校やったらちゃんとおまえの所に教科書返ってくるで」
「えっすごくないそれ……?」
エスパーだ……と変に感動しているナマエに相変わらず鈍いなぁと角名は思った。クラスを通り越して学年、学年通り越して学校全体が侑の気持ちを知っているのに当の本人がこれである。まあ侑の好きな子にちょっかいをかけるクソガキ感を子供のときから受けている弊害である。ナマエは友達に呼ばれてとたとた歩いていった。
「名字から恋愛話聞いたことないけどどうなの?」
「ツムが目ぇ光らせとるから告る相手はおらんわな」
「だから鈍いんじゃないの? 侑、自分で自分の首締めてない?」
「でも初恋は知っとるで」
「へえ。発狂してそう」
「顔も知らん鉄くんにヤキモチ妬きまくり。ナマエが鉄くんの話したら無理やり話かえよる」
「鉄くんってどこの鉄くん」
「ナマエが東京にいたときの近所に住んでた一個上の優しい男の子の鉄くん」
「思い出が美化されるパターンじゃん」
「しかも今も連絡とっとるらしいわ」
「うわー侑勝ち目ないんじゃないの?」
「んーどうやろうなあ」
パンの最後の一口を食べる。治の幼なじみでもあるナマエ。基本的に素直で真っ直ぐで治達のバレーが大好きなナマエ。治とは波長が合うらしく侑のようにケンカなどしたことはない。可愛いと思ってるし幸せに笑っていてほしいと思っている。その相手が自分の片割れじゃなくてもいい。でも片割れだったらそれはそれでいい。そんなふんわりした考えを治は持っている。
「まあナマエを幸せに出来る相手なら誰でもええわ」
治にとってナマエは可愛い妹のようなものだから。角名に「片割れからも応援されてないのかわいそ」と言われたが侑の自業自得なのでそこは自分でなんとかしろと心でぼやいた。