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「こ、こんにちは!烏丸名前と申します。こちらつまらないものですが…」
「ああ、ありがとう。俺は風間だ。すまない、俺も何か持ってくるべきだったな」
「いえっお気になさらず!」
なんだ見合いかアレとデカい声で呟いた諏訪さんの頭を押さえる。文句を言われたが「静かにして!」と言うと引いたような顔で頷かれた。そんな諏訪さんを置いてお洒落なカフェテリアで向かい合う二人の男女へ視線を向ける。男の方は堂々とした様子で珈琲を飲み、女の方は落ちつかない様子で視線をキョロキョロさせている。あ、お手拭き握り始めた。緊張からか少し震えている。可愛い。思わず顔が綻んだ。
「…………おまえ、気持ち悪いぞ」
ドン引きしたような諏訪さんの声。分かってるよ。分かってるけど…!
「本当に風間さんに紹介するなんて…!」
姉さんはあげませんと堂々と言った京介の顔が簡単に頭に浮かんだ。いつもなら頼りになる姿だといいたくなるが、今は怒りしかない。
先日、風間さんと顔を見合わせたとき脳裏に浮かんだこの光景。出会い頭に「は?」と口に出してしまったために風間さんから凄い目で睨まれたがそんなのどうでも良かった。この光景と共にとんでもない未来が見えてしまったからだ。
「風間くんもA級隊員なんだよね…?」
「ああ」
「京ちゃん、どうかな…?無理してないかな…」
「優秀なやつだ。簡単にやられることはない」
「そっか…ありがとう風間くん」
そう言って微笑むお姉さんと表情を柔らかくした風間さん。言うまでもなくいい雰囲気を醸し出していた。まだまだ先の事だし、不確定な未来だが出る杭は打たなくてはいけない。
「いやそこは応援してやれよ」
「いや無理でしょ」
なにが悲しくて好きな子の恋路を応援しなくちゃいけないんだ。本格的に芽が出る前に潰す。
「潰すな!」
騒ぐ諏訪さんに静かにとジェスチャーを向け、静かになったのを確認して視線を二人に戻す。二人の席からあまり離れてないため大声を出したら見つかってしまう。
真剣な表情を浮かべるおれに諏訪さんは頬杖をつきながら口を開いた。
「何でそんなに烏丸姉のこと気にしてんだよ」
女に執着するようなタイプじゃなかっただろ。そう呆れた顔で言う諏訪さん。……惚れちゃったんだから仕方ないでしょ。脳裏には相変わらず柔らかい表情で笑うお姉さんの姿。
二年くらい前、任務の失敗で落ち込んでいたおれに声をかけたのがお姉さんだった。
『あ、あの、大丈夫ですか…?』
買い物袋をママチャリに乗せ、寒さからか白い息を吐く彼女は夜中に川の堤防に腰掛ける男の事が気になったらしい。夜、その上女の子ひとりでなんて危なっかしいとしか言いようがないのだが、曰わく「自殺は少し考え直したほうが…!」と色々必死だった。自殺願望者だと思われたらしい。そのとんでもない勘違いに気が抜けて、思わず笑った。
見るからに人の良さそうな彼女に安心したのか気がつけば流れるように言葉を吐き出していた。ボーダー隊員であること、任務に失敗して助けられなかった人がいること、その家族に罵声を浴びせられたこと、何も出来なかったこと。初対面で言うような話じゃないのに彼女は静かにおれの話を聞いてくれた。そして全て話終わってから彼女はゆっくりと口を開いた。
『その方たちはまだ気持ちが追いつかないのでしょうね。だから優しいあなたに当たってしまったのだと思います』
そして表情を柔らかくしておれにこう言った。
『二年前のネイバー侵攻で私はあなた方に助けていただきました。そして今も街のみんなを、私の大切な家族を守ってもらっています』
いつもありがとうございますと優しく笑った彼女にどうしようもなく目の奥が熱くなったのを今も覚えている。二年経っても薄れることのないあのときの光景。名前を聞かずに別れたことを後悔した二年間。京介のバイト先で再会したときどれだけ嬉しかったか。そして全く覚えられてなかった上に重度のブラコンで不審者扱いされるなんて誰が予想したか。
「…前途多難だ……」
恐ろしいくらいお姉さんとの明るい未来が一向に見えない。それでも諦める気にはなれないし、諦めるつもりもない。あの笑顔を一人占めするまでは。そう心に誓い、目の前の光景をどうやってぶち壊すか頭を捻らせた。
(お、連絡先交換してるぜ)
(ああああああ…!)
「ああ、ありがとう。俺は風間だ。すまない、俺も何か持ってくるべきだったな」
「いえっお気になさらず!」
なんだ見合いかアレとデカい声で呟いた諏訪さんの頭を押さえる。文句を言われたが「静かにして!」と言うと引いたような顔で頷かれた。そんな諏訪さんを置いてお洒落なカフェテリアで向かい合う二人の男女へ視線を向ける。男の方は堂々とした様子で珈琲を飲み、女の方は落ちつかない様子で視線をキョロキョロさせている。あ、お手拭き握り始めた。緊張からか少し震えている。可愛い。思わず顔が綻んだ。
「…………おまえ、気持ち悪いぞ」
ドン引きしたような諏訪さんの声。分かってるよ。分かってるけど…!
「本当に風間さんに紹介するなんて…!」
姉さんはあげませんと堂々と言った京介の顔が簡単に頭に浮かんだ。いつもなら頼りになる姿だといいたくなるが、今は怒りしかない。
先日、風間さんと顔を見合わせたとき脳裏に浮かんだこの光景。出会い頭に「は?」と口に出してしまったために風間さんから凄い目で睨まれたがそんなのどうでも良かった。この光景と共にとんでもない未来が見えてしまったからだ。
「風間くんもA級隊員なんだよね…?」
「ああ」
「京ちゃん、どうかな…?無理してないかな…」
「優秀なやつだ。簡単にやられることはない」
「そっか…ありがとう風間くん」
そう言って微笑むお姉さんと表情を柔らかくした風間さん。言うまでもなくいい雰囲気を醸し出していた。まだまだ先の事だし、不確定な未来だが出る杭は打たなくてはいけない。
「いやそこは応援してやれよ」
「いや無理でしょ」
なにが悲しくて好きな子の恋路を応援しなくちゃいけないんだ。本格的に芽が出る前に潰す。
「潰すな!」
騒ぐ諏訪さんに静かにとジェスチャーを向け、静かになったのを確認して視線を二人に戻す。二人の席からあまり離れてないため大声を出したら見つかってしまう。
真剣な表情を浮かべるおれに諏訪さんは頬杖をつきながら口を開いた。
「何でそんなに烏丸姉のこと気にしてんだよ」
女に執着するようなタイプじゃなかっただろ。そう呆れた顔で言う諏訪さん。……惚れちゃったんだから仕方ないでしょ。脳裏には相変わらず柔らかい表情で笑うお姉さんの姿。
二年くらい前、任務の失敗で落ち込んでいたおれに声をかけたのがお姉さんだった。
『あ、あの、大丈夫ですか…?』
買い物袋をママチャリに乗せ、寒さからか白い息を吐く彼女は夜中に川の堤防に腰掛ける男の事が気になったらしい。夜、その上女の子ひとりでなんて危なっかしいとしか言いようがないのだが、曰わく「自殺は少し考え直したほうが…!」と色々必死だった。自殺願望者だと思われたらしい。そのとんでもない勘違いに気が抜けて、思わず笑った。
見るからに人の良さそうな彼女に安心したのか気がつけば流れるように言葉を吐き出していた。ボーダー隊員であること、任務に失敗して助けられなかった人がいること、その家族に罵声を浴びせられたこと、何も出来なかったこと。初対面で言うような話じゃないのに彼女は静かにおれの話を聞いてくれた。そして全て話終わってから彼女はゆっくりと口を開いた。
『その方たちはまだ気持ちが追いつかないのでしょうね。だから優しいあなたに当たってしまったのだと思います』
そして表情を柔らかくしておれにこう言った。
『二年前のネイバー侵攻で私はあなた方に助けていただきました。そして今も街のみんなを、私の大切な家族を守ってもらっています』
いつもありがとうございますと優しく笑った彼女にどうしようもなく目の奥が熱くなったのを今も覚えている。二年経っても薄れることのないあのときの光景。名前を聞かずに別れたことを後悔した二年間。京介のバイト先で再会したときどれだけ嬉しかったか。そして全く覚えられてなかった上に重度のブラコンで不審者扱いされるなんて誰が予想したか。
「…前途多難だ……」
恐ろしいくらいお姉さんとの明るい未来が一向に見えない。それでも諦める気にはなれないし、諦めるつもりもない。あの笑顔を一人占めするまでは。そう心に誓い、目の前の光景をどうやってぶち壊すか頭を捻らせた。
(お、連絡先交換してるぜ)
(ああああああ…!)