いろいろ
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・燭台切さんが白金台生まれで貞ちゃんが初期実装組だったらなif話でハロウィン
・奥手な燭台切さん
初鍛刀の貞ちゃんがよく口にする名前が伽羅に鶴さんにみっちゃん。伊達家に伝来した刀達は仲良しなんだなぁとその呼び方にほっこりした。「早く喚べるようにがんばるね」と私がいうと「俺が連れてくるから主は大船に乗った気持ちで待っててくれよな!」と琥珀色でまん丸とした綺麗な目を勇ましい色に変えていて、こんなに小柄でも彼は刀剣男士なんだと実感した。
その後、貞ちゃんは宣言通りに大倶利伽羅、鶴丸を連れてきてくれた。鍛刀運はなかった。
「伽羅はクールで優しくて格好いいんだぜ」という言葉の通り、彼はかっこよかった。頭に一匹狼、と付きそうな美男子で、口数も少なかったけど「馴れ合いは貞宗や光忠とやって、」「光忠いないのに?」「まだみっちゃんいないぜ伽羅」と私達が迫ると、しばらく間を開けて息を吐き「……何の用だ」と構ってくれる。言葉は少ないし使う言葉も素っ気ないものだけど、声色は穏やかで貞ちゃんの言うとおり優しい刀だった。
「鶴さんは賑やかな性格だな。でもいざってときは頼りになって格好いいんだぜ」賑やかな性格という言葉に疑問符を浮かべていたけどその意味がよく分かった。驚きが、驚きを、驚きに。何なのその三段活用。そう言いたくなるくらいに彼は“驚き”に拘った。子どものような悪戯でびっくりさせることもあれば、四季の移り変わりに「これはいい驚きだなぁ」と私にとっては当たり前のことでも眩しそうに目を細め、驚きを甘美することもある。「俺に任せておけばいいさ」と普段の飄々とした姿で戦場に向かい誉れを取ってくる。その姿は確かに格好良くて頼りになった。でも白い着物を汚すのは勘弁してほしい。
そしてみっちゃん。
彼はなかなかやって来なかった。私の鍛刀運のせいではなく、実装されるのがとても遅かったのだ。そのせいかと言うかそのおかげかと言うべきか、貞ちゃんから彼のことを聞く機会がとても多かった。
みっちゃんは格好いいんだぜ
まさしく伊達男ってやつだな
きっとみっちゃんは料理をしたがるだろうから、そのときはさせてやってくれ
身なりは整えないとな!だらしない格好だとみっちゃんに笑われちまうぜ
みっちゃんは料理好きで貞ちゃんと同じように身なりに気を配っている伊達男。言うまでもなく格好いい。それが貞ちゃんから聞いていたみっちゃんのイメージだった。そのイメージは結果として寸分狂いなく間違っていなかったのだけど、その時の私はなんて言うかこう…侮っていたのだ。だって刀剣男士はみんな格好いい。見た目も心も。中には少し曲がっているものもいるけれど、自分の生まれや生き方、そして刀としての誇り。その事を語る彼らはとても真っ直ぐで、綺麗だ。心身ともに格好いい刀達に囲まれていて、言ってしまえば「あーはいはいまたイケメンでしょ」みたいな心持ちになっていたのだ。
「僕は燭台切光忠。青銅の燭台だって切れるんだよ。……うーん、やっぱり格好つかないな。……えっ主?どうしたの?」
「腰が抜けた」
イケメン度がはちきれていた。
右目にかかる黒髪に色気たっぷりの蜜色の瞳。唇は薄く緩やかに弧を描いている。服は何故か燕尾服を着ていたのだが、身体つきがしっかりしている彼には嫌みなほど似合っていた。これがみっちゃん……?と間抜けに口をぽかんと開けていると、そこにきたのは首筋を撫でるような甘い声。そして“僕”という一人称。
「ギャップ萌がすぎた…」
「俺もギャップが有りすぎると言われたんだがなあ」
「君の場合はその後の雪景色擬態事件が全てを吹き飛ばしたよね」
「はっはっは!あんまりにも白かったからなあ。どれだけ紛れることが出来るか気になったんだ」
「ギャー!なんて声初めて出たよ」
しかも二度も。一度目は雪一面の庭に鶴丸がひっそりと立っていたとき。二度目は無理やり部屋に入れた鶴丸の頭が異常な熱を発していたとき。刀剣男士も風邪を引くなんてあの時はじめて知った。鶴丸は顕現初日にハッスルし過ぎだ。
「にしてもきみは俺達の容姿に頓着している様子はなかったのに、光坊に関して言えばえらく面白い反応をする」
「前情報がねぇ…」
「前情報?」
ぱり、とエビセンベイを食べる鶴丸につられて木の籠に入ったせんべいの包みに手を伸ばす。
「料理好きで綺麗好きであだ名はみっちゃん。勝手に可愛い系のイケメンを想像してたの」
あとはイケメンには慣れたと勘違いしていた故の悲劇だった。おじいちゃん系イケメンに武人系イケメン。王子様系イケメンに薄幸系イケメン。あらゆるイケメンが存在する本丸。そのせいで油断していた。
「俺様っぽい見た目で一人称僕って…ああ……」
「主のツボはよく分からんなぁ」
「鶴丸の喜びのツボが私に分からないのと一緒だよ」
「ああなるほど」
要領を得た、と言わんばかりに鶴丸はうんうん頷いていた。夏にした花火で一番反応の良かったものが蛇花火だった鶴丸だからかこの例えはわかりやすかったらしい。鶴丸の感性がよく分からない。そんなことを思っていると鶴丸は背中を向けていた障子に顔をやった。
「おっ光坊か。そういえば八つ時だな」
「よく分かったね。主入るよ」
「あ、うんどうぞ」
話題の人物がちょうど現れて胸が鳴った。
「お煎餅食べていたんだ。だったら緑茶を淹れてくれば良かったかな。これには合わなくなっちゃうけど」
そういってローテーブルの上におぼんを置く光忠。そこにはコーヒーポットと鮮やかなオレンジ色の、
「かぼちゃケーキ!」
「今日はえーっと、はろううぃん?なんだろう?」
「なんだはろううぃんとは」
「南瓜のお菓子を食べる日だそうだよ」
「冬至のようなものか?随分と気が早い」
前に適当に話をしたのが誤解を招いているらしい。いやだって本丸でハロウィンなんてちょっとあれだし。仮装とかしたいけどみんな既に仮装してるようなものだしなぁ。悪霊を追い払うって意味にしたってこの本丸はそういうの無縁だし。みんなで斬ってくれるから。
そんな理由もあって現世に戻っていたときに貰ったハロウィンのチラシを見た光忠に「これはなんだい?」「カボチャのお菓子を食べてみんなでわいわいするの」と適当に答えたのだ。
「遠征に行っている子もいるからみんなでわいわいとはいかないけど、気分だけでもと思って作ってみたんだ。見た目も賑やかで作るのが楽しそうだったしね」
「チョコのタルト生地のカボチャのムースケーキにジャック・オー・ランタンとコウモリクッキー…」
「こりゃまた派手だな」
ハロウィンを知らないのにこんなに本格的なハロウィンケーキを作ってくれるなんて…
「ありがとう光忠。本当に嬉しい」
「どういたしまして」
くすぐったそうに笑う光忠に顔を逸らしてうめき声を上げたくなる。見た目派手なのに可愛く笑わないでほしい。ときめく。
「んぐ、んんん、」
「主?大丈夫?」
「大丈夫です」
「きみすごい顔だぞ」
「気のせいです」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫です」
****
「料理好きで綺麗好きであだ名はみっちゃん。勝手に可愛い系のイケメンを想像してたの」
審神者の言葉に偽物の心臓が音を立てた。乱藤四郎や堀川国広のような見た目だったら良かったのだろうか。
「俺様っぽい見た目で一人称僕って…ああ……」
……どっちなんだろうか。声色はすごく幸せそうに聞こえる。しかし俺様とはあまりいい意味はない気がする。ああでも、一人称が俺様になるあの青い猫のロボットアニメのガキ大将はいい人間なのだ。基本的に映画だけだが。
刀剣男士の風貌は名の由来や元の主に影響されるらしい。燭台切で言えば伊達政宗公だ。「れっつぱーりぃって言ってみて」現世では政宗公のイメージが多種多様らしくたまに審神者から無茶ぶりを受ける。困りながらも言ってみると「この出会いに感謝」と拝まれた。時折審神者がよく分からなくなる。だが喜んでいる姿は素直に嬉しい。一人の家臣としても、それ以外の理由でも。だから審神者がうらやましげな眼差しでハロウィンのチラシを見ていたのが気になったのだ。
審神者は刀剣達に色んなものを与えている。酒、肴のつまみだったり園芸品だったり漫画だったりと様々だ。特に見目の若い刀は漫画を好んでいる。その中でも乱藤四郎は少女漫画というものを好んでいた。
「ハロウィン?この漫画にのっていたよ!」
ハロウィンのことを質問するとそういって表紙が可愛らしいものを渡された。そこでみたものは、
「とりっくおあとりーと…?」
お菓子をくれないと悪戯するぞ、という意味らしい。なんて悪質な物乞いだろうか。率直な感想はそれだった。物をねだっている側が悪戯するなんてどんな理論だ。しかも本の中の男はお菓子を出せなかった女に対して無理やりキスをしていた。どういうことだ。急展開だった。一ページ戻してみても流れが掴めない。…どういうことだ。現世ではこのようなものが流行っているのだろうか。何てふしだらな。
…主もこんなはろううぃんをしたことがあるのかな。
本でみた内容は頭の隅に置いて、レシピ本を手に取った。ハロウィンケーキと書かれたページは特に色鮮やかで、創作意欲が掻き立てられた。作っている最中も楽しかった。ケーキを見せたときの審神者の顔はしばらく頭から消えることはないだろう。喜んでくれて本当に嬉しかったのだ。
「美味しい…幸せ…」
「喜んでもらえてよかったよ」
審神者の分の皿とフォークしかなかったので鶴丸は台所へ走っていって今はいない。
「ハロウィンはカボチャを使ったお菓子がいっぱい出るから好きなんだよねぇ」
「そうなんだ」
それ以外では、と聞こうとしてやめた。あの漫画の内容が頭に浮かぶ。
「…トリ」
「とり?」
「……トリ、」
「鳥?」
「…………」
「鳥がなあに?」
「…夕飯は唐揚げにしようかなって」
「やったぁ手伝うね」
言えるはずがない。あの本の男は何を考えているんだ。好きな相手に無理やりなんて許されるわけがない。嫌われるかもと考えたりしないのか。何故外国の行事を日本でやっているのだ。どんどんハロウィンへの不信感が募っていく。ハロウィンなどくそ食らえだ。燭台切は柄にもなく舌を打ちたい気分になった。
そもそもトリックオアトリートもハロウィンも燭台切の想像するような甘くてドキッとするようなものではない。そしてそんな甘くてドキッとするような行事が2か月後に迫っていることを彼はまだ知らない。
181031
・奥手な燭台切さん
初鍛刀の貞ちゃんがよく口にする名前が伽羅に鶴さんにみっちゃん。伊達家に伝来した刀達は仲良しなんだなぁとその呼び方にほっこりした。「早く喚べるようにがんばるね」と私がいうと「俺が連れてくるから主は大船に乗った気持ちで待っててくれよな!」と琥珀色でまん丸とした綺麗な目を勇ましい色に変えていて、こんなに小柄でも彼は刀剣男士なんだと実感した。
その後、貞ちゃんは宣言通りに大倶利伽羅、鶴丸を連れてきてくれた。鍛刀運はなかった。
「伽羅はクールで優しくて格好いいんだぜ」という言葉の通り、彼はかっこよかった。頭に一匹狼、と付きそうな美男子で、口数も少なかったけど「馴れ合いは貞宗や光忠とやって、」「光忠いないのに?」「まだみっちゃんいないぜ伽羅」と私達が迫ると、しばらく間を開けて息を吐き「……何の用だ」と構ってくれる。言葉は少ないし使う言葉も素っ気ないものだけど、声色は穏やかで貞ちゃんの言うとおり優しい刀だった。
「鶴さんは賑やかな性格だな。でもいざってときは頼りになって格好いいんだぜ」賑やかな性格という言葉に疑問符を浮かべていたけどその意味がよく分かった。驚きが、驚きを、驚きに。何なのその三段活用。そう言いたくなるくらいに彼は“驚き”に拘った。子どものような悪戯でびっくりさせることもあれば、四季の移り変わりに「これはいい驚きだなぁ」と私にとっては当たり前のことでも眩しそうに目を細め、驚きを甘美することもある。「俺に任せておけばいいさ」と普段の飄々とした姿で戦場に向かい誉れを取ってくる。その姿は確かに格好良くて頼りになった。でも白い着物を汚すのは勘弁してほしい。
そしてみっちゃん。
彼はなかなかやって来なかった。私の鍛刀運のせいではなく、実装されるのがとても遅かったのだ。そのせいかと言うかそのおかげかと言うべきか、貞ちゃんから彼のことを聞く機会がとても多かった。
みっちゃんは格好いいんだぜ
まさしく伊達男ってやつだな
きっとみっちゃんは料理をしたがるだろうから、そのときはさせてやってくれ
身なりは整えないとな!だらしない格好だとみっちゃんに笑われちまうぜ
みっちゃんは料理好きで貞ちゃんと同じように身なりに気を配っている伊達男。言うまでもなく格好いい。それが貞ちゃんから聞いていたみっちゃんのイメージだった。そのイメージは結果として寸分狂いなく間違っていなかったのだけど、その時の私はなんて言うかこう…侮っていたのだ。だって刀剣男士はみんな格好いい。見た目も心も。中には少し曲がっているものもいるけれど、自分の生まれや生き方、そして刀としての誇り。その事を語る彼らはとても真っ直ぐで、綺麗だ。心身ともに格好いい刀達に囲まれていて、言ってしまえば「あーはいはいまたイケメンでしょ」みたいな心持ちになっていたのだ。
「僕は燭台切光忠。青銅の燭台だって切れるんだよ。……うーん、やっぱり格好つかないな。……えっ主?どうしたの?」
「腰が抜けた」
イケメン度がはちきれていた。
右目にかかる黒髪に色気たっぷりの蜜色の瞳。唇は薄く緩やかに弧を描いている。服は何故か燕尾服を着ていたのだが、身体つきがしっかりしている彼には嫌みなほど似合っていた。これがみっちゃん……?と間抜けに口をぽかんと開けていると、そこにきたのは首筋を撫でるような甘い声。そして“僕”という一人称。
「ギャップ萌がすぎた…」
「俺もギャップが有りすぎると言われたんだがなあ」
「君の場合はその後の雪景色擬態事件が全てを吹き飛ばしたよね」
「はっはっは!あんまりにも白かったからなあ。どれだけ紛れることが出来るか気になったんだ」
「ギャー!なんて声初めて出たよ」
しかも二度も。一度目は雪一面の庭に鶴丸がひっそりと立っていたとき。二度目は無理やり部屋に入れた鶴丸の頭が異常な熱を発していたとき。刀剣男士も風邪を引くなんてあの時はじめて知った。鶴丸は顕現初日にハッスルし過ぎだ。
「にしてもきみは俺達の容姿に頓着している様子はなかったのに、光坊に関して言えばえらく面白い反応をする」
「前情報がねぇ…」
「前情報?」
ぱり、とエビセンベイを食べる鶴丸につられて木の籠に入ったせんべいの包みに手を伸ばす。
「料理好きで綺麗好きであだ名はみっちゃん。勝手に可愛い系のイケメンを想像してたの」
あとはイケメンには慣れたと勘違いしていた故の悲劇だった。おじいちゃん系イケメンに武人系イケメン。王子様系イケメンに薄幸系イケメン。あらゆるイケメンが存在する本丸。そのせいで油断していた。
「俺様っぽい見た目で一人称僕って…ああ……」
「主のツボはよく分からんなぁ」
「鶴丸の喜びのツボが私に分からないのと一緒だよ」
「ああなるほど」
要領を得た、と言わんばかりに鶴丸はうんうん頷いていた。夏にした花火で一番反応の良かったものが蛇花火だった鶴丸だからかこの例えはわかりやすかったらしい。鶴丸の感性がよく分からない。そんなことを思っていると鶴丸は背中を向けていた障子に顔をやった。
「おっ光坊か。そういえば八つ時だな」
「よく分かったね。主入るよ」
「あ、うんどうぞ」
話題の人物がちょうど現れて胸が鳴った。
「お煎餅食べていたんだ。だったら緑茶を淹れてくれば良かったかな。これには合わなくなっちゃうけど」
そういってローテーブルの上におぼんを置く光忠。そこにはコーヒーポットと鮮やかなオレンジ色の、
「かぼちゃケーキ!」
「今日はえーっと、はろううぃん?なんだろう?」
「なんだはろううぃんとは」
「南瓜のお菓子を食べる日だそうだよ」
「冬至のようなものか?随分と気が早い」
前に適当に話をしたのが誤解を招いているらしい。いやだって本丸でハロウィンなんてちょっとあれだし。仮装とかしたいけどみんな既に仮装してるようなものだしなぁ。悪霊を追い払うって意味にしたってこの本丸はそういうの無縁だし。みんなで斬ってくれるから。
そんな理由もあって現世に戻っていたときに貰ったハロウィンのチラシを見た光忠に「これはなんだい?」「カボチャのお菓子を食べてみんなでわいわいするの」と適当に答えたのだ。
「遠征に行っている子もいるからみんなでわいわいとはいかないけど、気分だけでもと思って作ってみたんだ。見た目も賑やかで作るのが楽しそうだったしね」
「チョコのタルト生地のカボチャのムースケーキにジャック・オー・ランタンとコウモリクッキー…」
「こりゃまた派手だな」
ハロウィンを知らないのにこんなに本格的なハロウィンケーキを作ってくれるなんて…
「ありがとう光忠。本当に嬉しい」
「どういたしまして」
くすぐったそうに笑う光忠に顔を逸らしてうめき声を上げたくなる。見た目派手なのに可愛く笑わないでほしい。ときめく。
「んぐ、んんん、」
「主?大丈夫?」
「大丈夫です」
「きみすごい顔だぞ」
「気のせいです」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫です」
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「料理好きで綺麗好きであだ名はみっちゃん。勝手に可愛い系のイケメンを想像してたの」
審神者の言葉に偽物の心臓が音を立てた。乱藤四郎や堀川国広のような見た目だったら良かったのだろうか。
「俺様っぽい見た目で一人称僕って…ああ……」
……どっちなんだろうか。声色はすごく幸せそうに聞こえる。しかし俺様とはあまりいい意味はない気がする。ああでも、一人称が俺様になるあの青い猫のロボットアニメのガキ大将はいい人間なのだ。基本的に映画だけだが。
刀剣男士の風貌は名の由来や元の主に影響されるらしい。燭台切で言えば伊達政宗公だ。「れっつぱーりぃって言ってみて」現世では政宗公のイメージが多種多様らしくたまに審神者から無茶ぶりを受ける。困りながらも言ってみると「この出会いに感謝」と拝まれた。時折審神者がよく分からなくなる。だが喜んでいる姿は素直に嬉しい。一人の家臣としても、それ以外の理由でも。だから審神者がうらやましげな眼差しでハロウィンのチラシを見ていたのが気になったのだ。
審神者は刀剣達に色んなものを与えている。酒、肴のつまみだったり園芸品だったり漫画だったりと様々だ。特に見目の若い刀は漫画を好んでいる。その中でも乱藤四郎は少女漫画というものを好んでいた。
「ハロウィン?この漫画にのっていたよ!」
ハロウィンのことを質問するとそういって表紙が可愛らしいものを渡された。そこでみたものは、
「とりっくおあとりーと…?」
お菓子をくれないと悪戯するぞ、という意味らしい。なんて悪質な物乞いだろうか。率直な感想はそれだった。物をねだっている側が悪戯するなんてどんな理論だ。しかも本の中の男はお菓子を出せなかった女に対して無理やりキスをしていた。どういうことだ。急展開だった。一ページ戻してみても流れが掴めない。…どういうことだ。現世ではこのようなものが流行っているのだろうか。何てふしだらな。
…主もこんなはろううぃんをしたことがあるのかな。
本でみた内容は頭の隅に置いて、レシピ本を手に取った。ハロウィンケーキと書かれたページは特に色鮮やかで、創作意欲が掻き立てられた。作っている最中も楽しかった。ケーキを見せたときの審神者の顔はしばらく頭から消えることはないだろう。喜んでくれて本当に嬉しかったのだ。
「美味しい…幸せ…」
「喜んでもらえてよかったよ」
審神者の分の皿とフォークしかなかったので鶴丸は台所へ走っていって今はいない。
「ハロウィンはカボチャを使ったお菓子がいっぱい出るから好きなんだよねぇ」
「そうなんだ」
それ以外では、と聞こうとしてやめた。あの漫画の内容が頭に浮かぶ。
「…トリ」
「とり?」
「……トリ、」
「鳥?」
「…………」
「鳥がなあに?」
「…夕飯は唐揚げにしようかなって」
「やったぁ手伝うね」
言えるはずがない。あの本の男は何を考えているんだ。好きな相手に無理やりなんて許されるわけがない。嫌われるかもと考えたりしないのか。何故外国の行事を日本でやっているのだ。どんどんハロウィンへの不信感が募っていく。ハロウィンなどくそ食らえだ。燭台切は柄にもなく舌を打ちたい気分になった。
そもそもトリックオアトリートもハロウィンも燭台切の想像するような甘くてドキッとするようなものではない。そしてそんな甘くてドキッとするような行事が2か月後に迫っていることを彼はまだ知らない。
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