いろいろ
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・not審神者
・刀剣男士に適当な仮名がある
おじいちゃんが入院した。骨を折ってしまったのだ。ずるん、ぼき。当時の効果音をつけるとこんなかんじだった。おじいちゃん大好きっ子な私は号泣しながらお手伝いさん達の名前を連呼した。1日×7人と毎日顔触れが違うので全員の名前を叫んだ。今日は誰だっけと考える余裕もなかった。
「長谷さん大栗さん鹿州くん鳴子さん岩緒さん三月さん、あああああ小木さん!小木さん!小木さああん!!」
「どうなされたのです名前殿」
「おじいちゃんこけた!腰ばきって!腰がばきって!!」
「ぬしさまはそのまま安静に。直ぐに病院へ参りましょう。名前殿は深呼吸をひとつ」
「はああああ!」
「吐くのではなく吸ってください」
月曜日に来てくれるお手伝いさんの小木さんのおかげでおじいちゃんは無事に病院に行くことが出来た。当のおじいちゃんは「少しゃあ落ち着け」と小木さんくらい冷静で、実際に騒いでいたのは私だけだった。恥ずかしい。うるさいと言われて部屋から追い出されたし。待合室に戻って来た小木さんは未だに泣いている私の頭をよしよししてくれた。
「私の名前…小木恒丸、こぎつねまると読めるでしょう」
「ぐすんおじいちゃん……それで?」
「ふふ、我ながら洒落の効いた名前だと思いましてね」
「小木さんの駄洒落はいつもよく分かんない」
「おや」
何にかかった駄洒落なのか分からず素直にそう言ったら小木さんは眉を弓形に動かして薄く笑った。なんで笑ったのかな、嬉しいのかな。それもよく分かんなくて「う、うふふーん?」と微妙な反応をしたら「涙はやみましたね」と次はにっこりな顔に。もしや私を泣きやませる為によく分からない駄洒落を?策士である。
「入院手続きとやらはぬしさまがご自分でされました。残った手続き等は息子殿に頼むそうですので、私達は一度家に帰りましょう」
「えっ。で、でも怪我したばかりで落ち込んでるかも!」
「その様には見えませんでしたが」
「分かんないよ。おじいちゃんってそういうとこ見せたがらないし」
「ふむ、それは一理ありますね。ですが我々が近くにいても邪魔だとおっしゃられるかと」
「大丈夫。隣で猪木の物まねとかして励ますから」
「元気なわけあるかと怒られてしまいますよ」
「小木さん猪木分かるんだね」
何百年前のプロレスラーの言葉なのに。何となく小木さんが知っているのは違和感がある。何となくだけど。
「私は長生きをしていますから」
再びにっこりした小木さん。その見た目で何を言う。おじいちゃんのようなシルバーダンディーになってから言ってくれ。あれ?そう言えば小木さんっていくつ何だろう。小木さん…というか今いるお手伝いさん達は随分前から私の家のお手伝いさんをしてくれている。私が小学生のとき、約十年前から変わらずにずっと。……あれ?
ふと思い浮かんだ疑問を口にしようとする。
「…………?私今なにを言おうとしたっけ?」
「はて、何でしょうね」
「ここまで出かけたのに…もやもやするー!」
「ふふふ」
上品に笑う小木さんの横でうーうー騒ぐ私。温度差がひどい。そして今さらながら病院で騒ぎすぎだった。ごめんなさい。よく怒られなかったなぁと思ったけど今日は祝日だからそもそも病院は休みで人気がない。ん?でもお見舞いの人も見かけないなあ。この病院はおじいちゃんが週3で通っているから私も足を運ぶことが多い。それなのに他の入院患者さんやお見舞いの人と出会ったことがなかった。…………この病院の経営大丈夫なのかな。おじいちゃんにそれとなく言っておこう。この病院儲かってないよって。
「そう言えば朝ご飯まだだった…安心したらお腹が…」
「朝餉の準備中でしたので帰ったらすぐに作りましょう」
「今日のお味噌汁はなーに?」
「油揚げですよ」
「うん知ってた」
小木さんがお手伝いさんの日は絶対にお揚げのお味噌汁だ。美味しいけど小木さんはお揚げが好きすぎないかなぁ。鳴子さんも好きらしいけどこんなに露骨じゃない。普段の小木さんはおっとりまったりゆるりとしているけどこういうとこあるよね。何というか押しが強いというか。
「さて。帰りましょう名前殿」
柔らかい動作で差し出された手と小木さんの顔を交互に見てみたけど、小木さんは何も言わずただ微笑むだけ。こういうとこだよ小木さん。そう思いつつ手を出して重ねる。いつも笑っているの小木さんだけどこうすると更に笑顔になってくれるので逆らえないのだ。
他のお手伝いさん達も私がまだ小さい時からこうなのだ。あの俺に関わるなオーラを全面に出している大栗さんでも恥もためらいもなく手を差し出してくる。これが当たり前と言わんばかりに。
下校時にはお迎えに来てくれてこうやって手を繋いで帰るのが常になっている。中学生辺りから恥ずかしくなったので学校から離れてから手を繋ぐようになったけど。
何でいつも手を繋ぐの?の昔聞いたことがある。周りの友達は歳を重ねるにつれて親でも手を繋ぐことがなくなっていたのに、私は親でもないお手伝いさん達と変わらずに手を繋いで歩いている。嫌ではないのに恥ずかしくてそう訊ねると、そのときのお手伝いさんだった三月さんはこういった。
『つれて行かれるのは腹が立つからな』
穏やかで優しい三月さんがみえないなにかに牽制するかのように目を鋭くさせたのが怖かった。そのことをすぐに察した三月さんは「すまんな。主も俺たちもおぬしが大事なのだ」と眉を下げて困ったような顔になったのでこれは深く聞いちゃいけないんだと子どもながらに思って、それからは訊ねるのを止めた。
繋がった右手に視線を向ける。私には右手首から少し上に真っ直ぐに刻まれた傷痕がある。見たこともないのに刀傷みたいだな、といつも思う。この怪我をしたときのことはよく覚えていない。気がつけば病院にいて、国の役人として多忙なお父さんとお母さんが泣いていて、外国で働いていて殆ど会えなかったおじいちゃんが難しい顔をして立っていた。でもそれからの事はよく覚えている。おじいちゃんが外国から帰ってきて、それまでいたお手伝いさんが突然辞めて、今いるお手伝いさん達がやってきた。たまに仕事でいなくなるけどおじいちゃんは基本的に家にいてくれて、優しいお手伝いさん達がいてくれて、お父さん達も朝昼晩のどこかは絶対に家で食べてくれるようになった。良いことずくしである。だから私にとってこの傷は幸せを呼んでくれた象徴みたいなものだけど、この傷を目にするとお父さんとお母さんが親の仇のような顔になってしまうので基本的に隠している。夏は地獄です。
そんな昔のことを思い出しながら見慣れた道を歩く。途中で見かけたカーブミラーには手を繋いだ私と小木さんがいた。
「……ん!?」
「どうされました?」
「あれ?見間違い?あれっ?」
「名前殿?どうされたのですか?」
「小木さんちょっとしゃがんで頭みせて」
「無視ですか…」
ちょっとショックな顔をしながらも腰をかがめてくれたので両手を伸ばして頭に触れる。ふんわりした手触りの髪に内心嫉妬しつつ、髪の毛を分ける。…………やっぱり黒だ。鏡の中の小木さんは長い白髪で頭に耳みたいなものがあった。髪にインパクトを持って行かれたせいであんまり覚えてないけど服装も違った気がする。うーん謎現象。
「……ふふふっ。こそばゆいですね」
「あっごめんね、無遠慮に」
「いいえ。ぬしさまに毛並みを整えていただくときと同じ喜びを感じておりますよ」
「うーん、何いってるか分からないけどよかった」
おじいちゃん何やってるの。あまり深く考えちゃ駄目な気がしたのでそのままゆったりと撫でてみた。すると小木さんは動物のようなうっとりとした顔になった。喉とか馴らしそうな勢いだ。大きい男の人なのに違和感がないのが不思議だったけど、小木さんが嬉しそうだからいいかなと思った。
・刀剣男士に適当な仮名がある
おじいちゃんが入院した。骨を折ってしまったのだ。ずるん、ぼき。当時の効果音をつけるとこんなかんじだった。おじいちゃん大好きっ子な私は号泣しながらお手伝いさん達の名前を連呼した。1日×7人と毎日顔触れが違うので全員の名前を叫んだ。今日は誰だっけと考える余裕もなかった。
「長谷さん大栗さん鹿州くん鳴子さん岩緒さん三月さん、あああああ小木さん!小木さん!小木さああん!!」
「どうなされたのです名前殿」
「おじいちゃんこけた!腰ばきって!腰がばきって!!」
「ぬしさまはそのまま安静に。直ぐに病院へ参りましょう。名前殿は深呼吸をひとつ」
「はああああ!」
「吐くのではなく吸ってください」
月曜日に来てくれるお手伝いさんの小木さんのおかげでおじいちゃんは無事に病院に行くことが出来た。当のおじいちゃんは「少しゃあ落ち着け」と小木さんくらい冷静で、実際に騒いでいたのは私だけだった。恥ずかしい。うるさいと言われて部屋から追い出されたし。待合室に戻って来た小木さんは未だに泣いている私の頭をよしよししてくれた。
「私の名前…小木恒丸、こぎつねまると読めるでしょう」
「ぐすんおじいちゃん……それで?」
「ふふ、我ながら洒落の効いた名前だと思いましてね」
「小木さんの駄洒落はいつもよく分かんない」
「おや」
何にかかった駄洒落なのか分からず素直にそう言ったら小木さんは眉を弓形に動かして薄く笑った。なんで笑ったのかな、嬉しいのかな。それもよく分かんなくて「う、うふふーん?」と微妙な反応をしたら「涙はやみましたね」と次はにっこりな顔に。もしや私を泣きやませる為によく分からない駄洒落を?策士である。
「入院手続きとやらはぬしさまがご自分でされました。残った手続き等は息子殿に頼むそうですので、私達は一度家に帰りましょう」
「えっ。で、でも怪我したばかりで落ち込んでるかも!」
「その様には見えませんでしたが」
「分かんないよ。おじいちゃんってそういうとこ見せたがらないし」
「ふむ、それは一理ありますね。ですが我々が近くにいても邪魔だとおっしゃられるかと」
「大丈夫。隣で猪木の物まねとかして励ますから」
「元気なわけあるかと怒られてしまいますよ」
「小木さん猪木分かるんだね」
何百年前のプロレスラーの言葉なのに。何となく小木さんが知っているのは違和感がある。何となくだけど。
「私は長生きをしていますから」
再びにっこりした小木さん。その見た目で何を言う。おじいちゃんのようなシルバーダンディーになってから言ってくれ。あれ?そう言えば小木さんっていくつ何だろう。小木さん…というか今いるお手伝いさん達は随分前から私の家のお手伝いさんをしてくれている。私が小学生のとき、約十年前から変わらずにずっと。……あれ?
ふと思い浮かんだ疑問を口にしようとする。
「…………?私今なにを言おうとしたっけ?」
「はて、何でしょうね」
「ここまで出かけたのに…もやもやするー!」
「ふふふ」
上品に笑う小木さんの横でうーうー騒ぐ私。温度差がひどい。そして今さらながら病院で騒ぎすぎだった。ごめんなさい。よく怒られなかったなぁと思ったけど今日は祝日だからそもそも病院は休みで人気がない。ん?でもお見舞いの人も見かけないなあ。この病院はおじいちゃんが週3で通っているから私も足を運ぶことが多い。それなのに他の入院患者さんやお見舞いの人と出会ったことがなかった。…………この病院の経営大丈夫なのかな。おじいちゃんにそれとなく言っておこう。この病院儲かってないよって。
「そう言えば朝ご飯まだだった…安心したらお腹が…」
「朝餉の準備中でしたので帰ったらすぐに作りましょう」
「今日のお味噌汁はなーに?」
「油揚げですよ」
「うん知ってた」
小木さんがお手伝いさんの日は絶対にお揚げのお味噌汁だ。美味しいけど小木さんはお揚げが好きすぎないかなぁ。鳴子さんも好きらしいけどこんなに露骨じゃない。普段の小木さんはおっとりまったりゆるりとしているけどこういうとこあるよね。何というか押しが強いというか。
「さて。帰りましょう名前殿」
柔らかい動作で差し出された手と小木さんの顔を交互に見てみたけど、小木さんは何も言わずただ微笑むだけ。こういうとこだよ小木さん。そう思いつつ手を出して重ねる。いつも笑っているの小木さんだけどこうすると更に笑顔になってくれるので逆らえないのだ。
他のお手伝いさん達も私がまだ小さい時からこうなのだ。あの俺に関わるなオーラを全面に出している大栗さんでも恥もためらいもなく手を差し出してくる。これが当たり前と言わんばかりに。
下校時にはお迎えに来てくれてこうやって手を繋いで帰るのが常になっている。中学生辺りから恥ずかしくなったので学校から離れてから手を繋ぐようになったけど。
何でいつも手を繋ぐの?の昔聞いたことがある。周りの友達は歳を重ねるにつれて親でも手を繋ぐことがなくなっていたのに、私は親でもないお手伝いさん達と変わらずに手を繋いで歩いている。嫌ではないのに恥ずかしくてそう訊ねると、そのときのお手伝いさんだった三月さんはこういった。
『つれて行かれるのは腹が立つからな』
穏やかで優しい三月さんがみえないなにかに牽制するかのように目を鋭くさせたのが怖かった。そのことをすぐに察した三月さんは「すまんな。主も俺たちもおぬしが大事なのだ」と眉を下げて困ったような顔になったのでこれは深く聞いちゃいけないんだと子どもながらに思って、それからは訊ねるのを止めた。
繋がった右手に視線を向ける。私には右手首から少し上に真っ直ぐに刻まれた傷痕がある。見たこともないのに刀傷みたいだな、といつも思う。この怪我をしたときのことはよく覚えていない。気がつけば病院にいて、国の役人として多忙なお父さんとお母さんが泣いていて、外国で働いていて殆ど会えなかったおじいちゃんが難しい顔をして立っていた。でもそれからの事はよく覚えている。おじいちゃんが外国から帰ってきて、それまでいたお手伝いさんが突然辞めて、今いるお手伝いさん達がやってきた。たまに仕事でいなくなるけどおじいちゃんは基本的に家にいてくれて、優しいお手伝いさん達がいてくれて、お父さん達も朝昼晩のどこかは絶対に家で食べてくれるようになった。良いことずくしである。だから私にとってこの傷は幸せを呼んでくれた象徴みたいなものだけど、この傷を目にするとお父さんとお母さんが親の仇のような顔になってしまうので基本的に隠している。夏は地獄です。
そんな昔のことを思い出しながら見慣れた道を歩く。途中で見かけたカーブミラーには手を繋いだ私と小木さんがいた。
「……ん!?」
「どうされました?」
「あれ?見間違い?あれっ?」
「名前殿?どうされたのですか?」
「小木さんちょっとしゃがんで頭みせて」
「無視ですか…」
ちょっとショックな顔をしながらも腰をかがめてくれたので両手を伸ばして頭に触れる。ふんわりした手触りの髪に内心嫉妬しつつ、髪の毛を分ける。…………やっぱり黒だ。鏡の中の小木さんは長い白髪で頭に耳みたいなものがあった。髪にインパクトを持って行かれたせいであんまり覚えてないけど服装も違った気がする。うーん謎現象。
「……ふふふっ。こそばゆいですね」
「あっごめんね、無遠慮に」
「いいえ。ぬしさまに毛並みを整えていただくときと同じ喜びを感じておりますよ」
「うーん、何いってるか分からないけどよかった」
おじいちゃん何やってるの。あまり深く考えちゃ駄目な気がしたのでそのままゆったりと撫でてみた。すると小木さんは動物のようなうっとりとした顔になった。喉とか馴らしそうな勢いだ。大きい男の人なのに違和感がないのが不思議だったけど、小木さんが嬉しそうだからいいかなと思った。