少年漫画系
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たぶん私しか気が付いてなかったと思う。最初はあれ? 珍しいなと思ったくらいだった。でも時間が経つにつれておかしいぞ……? と思うようになり、最終的に何でみんな気づかないの! となってしまった。そこには非日常があったというのに。
「凪くん、今日一度も寝なかったね……!」
「んあ」
本人の元に言いにいく。先生泣かせの凪くんが起きていた。一大ニュースだ。誰も気づいてないけど。私だけが盛り上がっている。本人もいつも通りのんびりした雰囲気だ。
「あー」
「勉強に目覚めたの?」
「授業はきいてない」
「えっ、じゃあ何してたの」
「んー……名前今日ヒマ?」
「暇だけど言葉に脈絡がないよ」
「繋がってるから大丈夫。じゃあいこ」
「どこに?」
「楽しいとこ。……だったらいいな」
「不穏なんだけど!?」
「怖いとこじゃないよ」
持ってた学校カバンをひょいととられる。そのまま肩にかけて凪くんはのんびりと歩き出した。一瞬固まったけどついて行く。歩幅が違うから凪くんがのんびり歩いてもこっちは小走りになってしまう。というか何で私のカバンとっちゃったの?
「あ、ごめん」
「ううん。カバン自分で持つよ?」
「カバンは今日は返さない」
「今日は返さない!?」
「うん。謝ったのは走らせちゃったから。ごめんね?」
そう言って凪くんは私の手をぎゅっと握った。温かい。
「これなら安心」
目元をゆったりと緩ませる凪くんに心臓が跳ねた。……この凪くん、心臓に悪いんだよね。ここ1ヶ月ほど。凪くんは私に対してよくその表情をするようになった。
『名前、これからよろしくね』
その言葉から凪くんは変わった。クラス提出のノートを運んで入ると半分以上かっさらって運んでくれたり、休み時間一緒にゲームをしている最中、ふと視線を感じればあの瞳で私を見ていたり、のんびり日向ぼっこしていたと思えば私の手を掴んで握ったままお昼寝したり。緩やかに変わっていった。ゆったりと歩いていくスピードで、それでも確実に変わっている。私の心境と一緒に。
繋がられた手をみる。伝わってくる熱に鼓動が高鳴っていくのが分かる。柔らかく握られているそれを少しだけ握りかえしたら、同じ強さで返ってきた。
「もっと強くてもいいよ」
「こ、このくらいで大丈夫、です」
「そう?」
今度は歩幅を合わせて歩いてくれている。身長差すごいから大変だと思う。それなのに嬉しさが勝ってしまっている私はもう凪くんの術中にはまってしまっている。この1ヶ月。玲王くんのことを考える暇なんてなかった。ゆったりと私の中で浸食してくる存在がいたから。そしてそれが決してイヤじゃないと感じる自分がいた。
「凪くん」
「うん?」
呼びかけたら背中をかがめて視線を合わせてくれる凪くん。私に合わせてゆっくりと歩いてくれる凪くん。たったそれだけで嬉しくなる理由。もうそんなの一つしかない。
「す、」
「す?」
「…………すごくいい天気だったよね、今日」
「曇ったり晴れたりしてなかった?」
不思議そうにする凪くんをおいて内心ばかー! と自分を叱責する。ちゃんと言わなきゃダメでしょ。私に伝わるように愛情を示してくれているんだから。めんどくさいが口癖の彼が。
それでも一度戸惑ったら口には出せず、当たり障りのない話題で二人で歩き続けた。
***
「目的地、ここ?」
「うん」
ついたのは外観が可愛い有名パティスリーだった。凪くんとパティスリーを交互に見比べる。違和感あるようなないような……。戸惑っているうちに手をひかれて中へ入っていった。
店のなかは賑わっていた。それはそうだ。ここ有名店だもん。順番に列に並ぶ。メニュー表を渡されて頭を悩ませる。でもやっぱり、
「名前はショートケーキかイチゴタルトでしょ」
「なんでわかったの?」
「いっつもイチゴのお菓子食べてるから」
「……凪くんはムースケーキだと思う」
「どうして?」
「咀嚼が楽だから」
「なんでもよかったけど名前がいうならそれにしようかな」
自分で言っておいて焦ってしまう。こんなに若いときから柔らかいものばかり食べてたら年をとったときどうなるか。何目線? と言われそうな心配をあわあわしていたら、順番が回ってきた。
「ショートケーキとイチゴタルトひとつずつ。店内で」
あれ? ムースケーキじゃないの? と首を傾げていたら「半分こね」と優しく言われた。私の好きなものを半分こ。そんなのときめかないわけがない。胸がぎゅーっとなっていたら凪くんがさっさとお会計をして空いてる席にいってしまった。
「えっ凪くんお金!」
「今日は俺のおごり。おごりというか、お返し?」
「お返し? 私なにかしたっけ?」
そう訊ねると凪くんは空中を指をさした。そこにはWhite Dayの垂れ幕が。……今日ホワイトデーか! すっかり忘れていた。だから賑わっていたのか。よくみると男女のお客さんが多いかもしれない。
「えっ、えっ、ありがとう!」
「どういたしまして。座ったら?」
「あ、はい」
どうしよう。嬉しい。凪くんがお返しを考えてくれてただけでも嬉しいのに可愛いパティスリーに連れてきてくれた。……縁とかなさそうなのに。調べてくれたのかな。今日のために。ああ、だから私のカバン持っていっちゃったんだ。凪くんがしてくれた私のための行動が一気に積み重なって心臓が破裂しそうだ。う、嬉しすぎる。
「適当に切るよ」
「うん。おまかせします」
「ほんとはあーんしたかったけど」
「!??」
「名前が照れて進まなそうだっだからまた今度ね」
今度があるんですか。想像だけで顔が熱くなる私には聞けなかった。
「うう、おいしいこのケーキ」
「うん、おいしいね」
「視線がケーキにいってない……」
「ケーキは名前のついでだから。名前見てるほうが有意義」
「食べにくくなっちゃうよ……」
「名前かわいい」
言葉のキャッチボールになってない。ぽろりとケーキを落とさないよう注意するミッションが加わった。もっとリラックスした状態で味わいたかったなぁ! ……好きな人と放課後にケーキ屋さんにいる時点で無理か。……これデート、だよね? だめだ。余計に緊張してきた。
「名前、これあげる」
「へ?」
いつの間にリュックから取り出したのか可愛い紙袋を手に持っている凪くん。それは私に向けられていた。おそるおそる受け取る。紙袋にはHAPPY WHITE DAYのシールがちょこんと貼られていた。
「えっケーキがお返しじゃないの!?」
「ケーキはお返しと口実。口実の方が割合多い」
「割合?」
「うん。デートしたかったから」
ストレートに言われてぶわわと顔が赤くなるのがわかった。やっぱりデートだったんだ。実感がわくとそわそわしてしまう。
「開けないの?」
「あ、開ける開ける!」
ゆっくり破かないように封を剥がして中を覗く。そこにあったのは……
「可愛い! きれい!」
透明なくまの入れ物に入った色とりどりの飴だった。
「可愛い~可愛い~」
「…………」
「ありがとう! 凪くん」
「ん」
「なんでそっぽむくの」
「恥ずかしいから」
「凪くんが恥ずかしいって思うことあるの!?」
「あるよ。俺をなんだとおもってるの」
普段の行動みてたらそうは思わないよ。そう言おうとしたけどむむむ、と言ったかんじに口を結ぶ凪くんに言葉が出なかった。す、拗ねてる……かわいい。
「俺、ホワイトデーなんてお返ししたの初めてだから」
「えっ」
「名前が初めて。だから色々調べた。飴にしたのもそれが理由」
「飴にした理由?」
「え、名前知らないの?」
「理由なんてあるの?」
「あなたが好きです」
「!」
「って書いてあった。あと仲が長く続くように? みたいなかんじ」
「…………」
「名前?」
「ホワイトデーのお返しのお返しとかないのかな?」
「え?」
私の言葉に凪くんが目を瞬いている。唐突な言葉だって分かってる。でもそう想わずにはいられなかった。
「あったら私も飴を渡すのに」
もともと私が渡したチョコは玲王くんへの物だった。そう考えると私が凪くんに真正面から渡したものはない。私はもらってばかりなのに。
「名前」
「…………」
「俺、チョコレート嬉しかったよ」
「でもあれは」
「あれは俺のチョコ。俺への本命チョコ。そう決まってて、あのときのしょぼしょぼ名前はもういないの」
長い手が私の頬へやってくる。柔らかく触れてくるそれに心が誘発される。
「凪くん、すき」
「うん。俺も好き」
「来年は何のチョコがいい?」
「生チョコ。咀嚼が楽だった」
「たまには固いもの食べないとおじいちゃんになったとき困っちゃうよ」
「えー……まあ名前が作るものならなんでもいいよ」
チョコレシピに固いものってあったかな? と思いつつ来年の幸せなバレンタインとこれからに思いを馳せた。
「凪くん、今日一度も寝なかったね……!」
「んあ」
本人の元に言いにいく。先生泣かせの凪くんが起きていた。一大ニュースだ。誰も気づいてないけど。私だけが盛り上がっている。本人もいつも通りのんびりした雰囲気だ。
「あー」
「勉強に目覚めたの?」
「授業はきいてない」
「えっ、じゃあ何してたの」
「んー……名前今日ヒマ?」
「暇だけど言葉に脈絡がないよ」
「繋がってるから大丈夫。じゃあいこ」
「どこに?」
「楽しいとこ。……だったらいいな」
「不穏なんだけど!?」
「怖いとこじゃないよ」
持ってた学校カバンをひょいととられる。そのまま肩にかけて凪くんはのんびりと歩き出した。一瞬固まったけどついて行く。歩幅が違うから凪くんがのんびり歩いてもこっちは小走りになってしまう。というか何で私のカバンとっちゃったの?
「あ、ごめん」
「ううん。カバン自分で持つよ?」
「カバンは今日は返さない」
「今日は返さない!?」
「うん。謝ったのは走らせちゃったから。ごめんね?」
そう言って凪くんは私の手をぎゅっと握った。温かい。
「これなら安心」
目元をゆったりと緩ませる凪くんに心臓が跳ねた。……この凪くん、心臓に悪いんだよね。ここ1ヶ月ほど。凪くんは私に対してよくその表情をするようになった。
『名前、これからよろしくね』
その言葉から凪くんは変わった。クラス提出のノートを運んで入ると半分以上かっさらって運んでくれたり、休み時間一緒にゲームをしている最中、ふと視線を感じればあの瞳で私を見ていたり、のんびり日向ぼっこしていたと思えば私の手を掴んで握ったままお昼寝したり。緩やかに変わっていった。ゆったりと歩いていくスピードで、それでも確実に変わっている。私の心境と一緒に。
繋がられた手をみる。伝わってくる熱に鼓動が高鳴っていくのが分かる。柔らかく握られているそれを少しだけ握りかえしたら、同じ強さで返ってきた。
「もっと強くてもいいよ」
「こ、このくらいで大丈夫、です」
「そう?」
今度は歩幅を合わせて歩いてくれている。身長差すごいから大変だと思う。それなのに嬉しさが勝ってしまっている私はもう凪くんの術中にはまってしまっている。この1ヶ月。玲王くんのことを考える暇なんてなかった。ゆったりと私の中で浸食してくる存在がいたから。そしてそれが決してイヤじゃないと感じる自分がいた。
「凪くん」
「うん?」
呼びかけたら背中をかがめて視線を合わせてくれる凪くん。私に合わせてゆっくりと歩いてくれる凪くん。たったそれだけで嬉しくなる理由。もうそんなの一つしかない。
「す、」
「す?」
「…………すごくいい天気だったよね、今日」
「曇ったり晴れたりしてなかった?」
不思議そうにする凪くんをおいて内心ばかー! と自分を叱責する。ちゃんと言わなきゃダメでしょ。私に伝わるように愛情を示してくれているんだから。めんどくさいが口癖の彼が。
それでも一度戸惑ったら口には出せず、当たり障りのない話題で二人で歩き続けた。
***
「目的地、ここ?」
「うん」
ついたのは外観が可愛い有名パティスリーだった。凪くんとパティスリーを交互に見比べる。違和感あるようなないような……。戸惑っているうちに手をひかれて中へ入っていった。
店のなかは賑わっていた。それはそうだ。ここ有名店だもん。順番に列に並ぶ。メニュー表を渡されて頭を悩ませる。でもやっぱり、
「名前はショートケーキかイチゴタルトでしょ」
「なんでわかったの?」
「いっつもイチゴのお菓子食べてるから」
「……凪くんはムースケーキだと思う」
「どうして?」
「咀嚼が楽だから」
「なんでもよかったけど名前がいうならそれにしようかな」
自分で言っておいて焦ってしまう。こんなに若いときから柔らかいものばかり食べてたら年をとったときどうなるか。何目線? と言われそうな心配をあわあわしていたら、順番が回ってきた。
「ショートケーキとイチゴタルトひとつずつ。店内で」
あれ? ムースケーキじゃないの? と首を傾げていたら「半分こね」と優しく言われた。私の好きなものを半分こ。そんなのときめかないわけがない。胸がぎゅーっとなっていたら凪くんがさっさとお会計をして空いてる席にいってしまった。
「えっ凪くんお金!」
「今日は俺のおごり。おごりというか、お返し?」
「お返し? 私なにかしたっけ?」
そう訊ねると凪くんは空中を指をさした。そこにはWhite Dayの垂れ幕が。……今日ホワイトデーか! すっかり忘れていた。だから賑わっていたのか。よくみると男女のお客さんが多いかもしれない。
「えっ、えっ、ありがとう!」
「どういたしまして。座ったら?」
「あ、はい」
どうしよう。嬉しい。凪くんがお返しを考えてくれてただけでも嬉しいのに可愛いパティスリーに連れてきてくれた。……縁とかなさそうなのに。調べてくれたのかな。今日のために。ああ、だから私のカバン持っていっちゃったんだ。凪くんがしてくれた私のための行動が一気に積み重なって心臓が破裂しそうだ。う、嬉しすぎる。
「適当に切るよ」
「うん。おまかせします」
「ほんとはあーんしたかったけど」
「!??」
「名前が照れて進まなそうだっだからまた今度ね」
今度があるんですか。想像だけで顔が熱くなる私には聞けなかった。
「うう、おいしいこのケーキ」
「うん、おいしいね」
「視線がケーキにいってない……」
「ケーキは名前のついでだから。名前見てるほうが有意義」
「食べにくくなっちゃうよ……」
「名前かわいい」
言葉のキャッチボールになってない。ぽろりとケーキを落とさないよう注意するミッションが加わった。もっとリラックスした状態で味わいたかったなぁ! ……好きな人と放課後にケーキ屋さんにいる時点で無理か。……これデート、だよね? だめだ。余計に緊張してきた。
「名前、これあげる」
「へ?」
いつの間にリュックから取り出したのか可愛い紙袋を手に持っている凪くん。それは私に向けられていた。おそるおそる受け取る。紙袋にはHAPPY WHITE DAYのシールがちょこんと貼られていた。
「えっケーキがお返しじゃないの!?」
「ケーキはお返しと口実。口実の方が割合多い」
「割合?」
「うん。デートしたかったから」
ストレートに言われてぶわわと顔が赤くなるのがわかった。やっぱりデートだったんだ。実感がわくとそわそわしてしまう。
「開けないの?」
「あ、開ける開ける!」
ゆっくり破かないように封を剥がして中を覗く。そこにあったのは……
「可愛い! きれい!」
透明なくまの入れ物に入った色とりどりの飴だった。
「可愛い~可愛い~」
「…………」
「ありがとう! 凪くん」
「ん」
「なんでそっぽむくの」
「恥ずかしいから」
「凪くんが恥ずかしいって思うことあるの!?」
「あるよ。俺をなんだとおもってるの」
普段の行動みてたらそうは思わないよ。そう言おうとしたけどむむむ、と言ったかんじに口を結ぶ凪くんに言葉が出なかった。す、拗ねてる……かわいい。
「俺、ホワイトデーなんてお返ししたの初めてだから」
「えっ」
「名前が初めて。だから色々調べた。飴にしたのもそれが理由」
「飴にした理由?」
「え、名前知らないの?」
「理由なんてあるの?」
「あなたが好きです」
「!」
「って書いてあった。あと仲が長く続くように? みたいなかんじ」
「…………」
「名前?」
「ホワイトデーのお返しのお返しとかないのかな?」
「え?」
私の言葉に凪くんが目を瞬いている。唐突な言葉だって分かってる。でもそう想わずにはいられなかった。
「あったら私も飴を渡すのに」
もともと私が渡したチョコは玲王くんへの物だった。そう考えると私が凪くんに真正面から渡したものはない。私はもらってばかりなのに。
「名前」
「…………」
「俺、チョコレート嬉しかったよ」
「でもあれは」
「あれは俺のチョコ。俺への本命チョコ。そう決まってて、あのときのしょぼしょぼ名前はもういないの」
長い手が私の頬へやってくる。柔らかく触れてくるそれに心が誘発される。
「凪くん、すき」
「うん。俺も好き」
「来年は何のチョコがいい?」
「生チョコ。咀嚼が楽だった」
「たまには固いもの食べないとおじいちゃんになったとき困っちゃうよ」
「えー……まあ名前が作るものならなんでもいいよ」
チョコレシピに固いものってあったかな? と思いつつ来年の幸せなバレンタインとこれからに思いを馳せた。