少年漫画系
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玲王くんにわたす本命チョコ。失敗しない美味しいレシピで検索した生チョコ。本当に簡単で手抜きと思われないかな……!? と一周まわって心配になった。でも普段お菓子づくりなんてやらない私ならこのレベルを挑戦するのが無難だ。家族も美味しいよっていってくれたし、可愛い包装した。勇気も込めた。よし……! と気合いを入れて玲王くんのクラスへ向かった。
「きゃー玲王! このチョコもらって!」
「玲王ぉありきたりで悪いんだけどゴディバのチョコあげるー」
「私はデメルのチョコにしたの! もらって!」
阿鼻叫喚。その言葉しか思い浮かばなかった。そこには長蛇の列があった。みんな綺麗なショップバックを持った綺麗な女の子たち。知ってるブランドも知らないブランドもあった。でもきっとどれも高級と名のつくチョコレート。途端に自分の持っている手作り感満載のチョコレートが恥ずかしくなった。自分との差をそのまま見せつけられたみたいで。みたいじゃないか。そう自嘲する。
とぼとぼとUターンして自分のクラスに戻る。無理やり上げたテンションはだだ下がりだ。多分今の私に関わったら運勢落ちちゃう。そんな勢いで気持ちが落ち込んでいる。
「なにキノコでも生やすの。すごいじめじめしてるけど」
「凪くん」
話しかけられたのは万年寝太郎とか喋ったら呪われるとか幸せになれるとか色々言われてる白宝ではちょっと異色のクラスメイト。ちなみに喋っても呪われたりしたことない。当たり前だけど。本人の性格的にも呪うのめんどくさいとか言いそうだし。
そんな寝太郎くんこと凪くんと話すようになったのは同じスマホゲームをやっていたということ。というかフレンド同士だったのだ。席が隣同士でどうタイミングでログインするという奇跡的な遭遇だった。
「きのこ生えてる……?」
「うん。毒キノコみたいなかんじ」
「毒キノコ」
食べれもしない。いや、それくらい私がじめじめしてるってことなんだろうけど。
「それ、なんで持って帰ってきてるの?」
「直球で聞くね……」
「レシピどれにしようって俺めちゃくちゃつき合わされたから」
「その節はお世話になりました」
「別にいいけど。で、なんで? あのお金持ちの人にあげるんじゃなかったの?」
淡々とした問いになんとなく気持ちが落ち着いてきた。幸せになれるかは分からないけどアロマセラピーみたいな効果が凪くんにはあるのかもしれない。だからすんなりと理由を話すことができた。
「恥ずかしくなっちゃって」
「? ずっと照れ照れしてたけど」
「照れ照れ……なんというかほぼ接点もないのにチョコレート渡すこととか、……手作りは失礼だったんじゃないかとか、一般生徒Bには荷が勝ちすぎたかなって」
「ぶちまけたノート拾ってくれたんでしょ。接点あるじゃん」
「それから会話という会話してないし」
というか改めて思うと私単純すぎるな。周りがクスクス笑うなか、ひとり膝をついて拾ってくれたのが玲王くんだった。たったそれだけ。それだけの仲だ。でも嬉しかったんだ。……嬉しいだけじゃダメだったんだ。
「とまあ、チョコレート渡すのは諦めたってことで勘弁してください」
「名前がいいならいいんじゃない」
あっさりとした言葉と口調に救われる。凪くんはフラットだ。怒鳴ったり怒ったりしたことを見たことがない。まあテンション上がってるところも見たこと無いのだけど。でも今はそれがいい。心が乱されているときにこうして接してくれる人がいて幸せだなと思った。
「じゃあそれ俺にちょうだい」
「へ?」
「お金持ちの人にはあげないんでしょ?」
「あげないけど……」
「じゃあちょうだい?」
首を傾げる姿はなぜかすんなり目に入っている。こう見えて190あるはずなのに凪くん。
「あげるのは別にいいけど横流し感がすごくない……?」
「名前が作ったなら別にいい」
勝手に比較して勝手に落ち込んだ高級チョコレートVS手作りチョコレート(庶民の味)が凪くんの言葉で救われた気がした。
「うん。そういってもらえるなら凪くんにあげる。もらってくれますか?」
「うん」
伸ばされた手の上にちょこんと乗せる。凪くんは手もおっきかった。新発見。
早速包装を丁寧な手つきで解いていく凪くん。雑にされるとか思ってないけどなんだか意外だった。
「コロンとしてる」
「生チョコだからね」
「生チョコ」
一粒パクリと食べた凪くんはしばらく静かに食べていた。そんなに咀嚼するものでもないけど……? と不思議に思っていたら「美味しいよ」と声がかかる。
「ありがとう。ふふ、失敗しない! 美味しい! をいっぱい検索したもん」
「レシピも優秀だし作った名前も頑張ったよ」
「……ありがとう」
今日は凪くんに救われてばかりだな。玲王くんには渡せなかったけど凪くんに食べてもらってよかった。パクリともう一粒食べる凪くんをみてそう思った。
「名前、提案なんだけどさ」
「うん」
「これ本命チョコってことにしとかない?」
「えっ」
「それだったら今日のしょぼしょぼ名前がなかったことになるでしょ」
「しょぼしょぼ名前」
「うん。名探偵ピカチュウかと思った」
「しおくちゃピカチュウじゃん」
「うん。あんな感じの顔してた」
そんな顔で廊下を歩いてきたという事実に震えた。誰にも見られてないことを祈ろう。いや、今はチョコレートの話だ。
「えーっと、理屈がわかりません」
「ええ。なんで」
「だってそれ元々玲王くんに渡すやつだったから本命チョコとは別じゃない?」
「だから俺を本命にしてほしいんだけど」
ぱちりぱちり。瞬きを二回ほどする。その間に凪くんはもう一粒チョコレートを食べていた。
「あんまり咀嚼しなくていいからこのチョコいいね」
「どんな感想」
「来年もこれがいい」
「来年もって」
「本命チョコの要望」
「な、なんだか凪くんが私を好きって言ってるみたいに聞こえるんだけど……?」
「うん」
真っ直ぐに頷いた凪くんに胸がドキッとした。まって。まって。聞いてないこんなの。
「そんな素振りなかった、よね?」
「お金持ちの人に夢中だったから言わなかっただけ。あの人が名前のこと見ないならもう俺がもらってもいいでしょ」
「どんな理屈っ」
「名前が好きってこと」
カーッと顔が熱くなるのが分かる。フラットな凪くんが分かりやすく熱をぶつけてくる。頭がパンクしそうだ。
「今度ノートぶちまけたら俺が一緒に拾ってあげるし出来るだけ優しくする。ゲームも一緒にやろ」
「げ、ゲームは今もやってる……」
「ほんとだ。アピールポイントすくな」
「自分で言っちゃうんだ……」
「あ、一番のアピールポイント思い浮かんだ」
「な、なんでしょう」
「俺が一番名前のこと好き。これ点数高くない?」
自分で言っちゃ台無しだよ。そう思うのに目元をゆったりと緩ませる初めてみる凪くんの表情に目を奪われて言葉が出ない。
「名前、これからよろしくね」
イエスともノーとも言ってないのに凪くんの中では話が進んでいるらしい。それなのにちょっと待ってもノーとも言えない私の頭には、もう玲王くんのことはなかった。
「きゃー玲王! このチョコもらって!」
「玲王ぉありきたりで悪いんだけどゴディバのチョコあげるー」
「私はデメルのチョコにしたの! もらって!」
阿鼻叫喚。その言葉しか思い浮かばなかった。そこには長蛇の列があった。みんな綺麗なショップバックを持った綺麗な女の子たち。知ってるブランドも知らないブランドもあった。でもきっとどれも高級と名のつくチョコレート。途端に自分の持っている手作り感満載のチョコレートが恥ずかしくなった。自分との差をそのまま見せつけられたみたいで。みたいじゃないか。そう自嘲する。
とぼとぼとUターンして自分のクラスに戻る。無理やり上げたテンションはだだ下がりだ。多分今の私に関わったら運勢落ちちゃう。そんな勢いで気持ちが落ち込んでいる。
「なにキノコでも生やすの。すごいじめじめしてるけど」
「凪くん」
話しかけられたのは万年寝太郎とか喋ったら呪われるとか幸せになれるとか色々言われてる白宝ではちょっと異色のクラスメイト。ちなみに喋っても呪われたりしたことない。当たり前だけど。本人の性格的にも呪うのめんどくさいとか言いそうだし。
そんな寝太郎くんこと凪くんと話すようになったのは同じスマホゲームをやっていたということ。というかフレンド同士だったのだ。席が隣同士でどうタイミングでログインするという奇跡的な遭遇だった。
「きのこ生えてる……?」
「うん。毒キノコみたいなかんじ」
「毒キノコ」
食べれもしない。いや、それくらい私がじめじめしてるってことなんだろうけど。
「それ、なんで持って帰ってきてるの?」
「直球で聞くね……」
「レシピどれにしようって俺めちゃくちゃつき合わされたから」
「その節はお世話になりました」
「別にいいけど。で、なんで? あのお金持ちの人にあげるんじゃなかったの?」
淡々とした問いになんとなく気持ちが落ち着いてきた。幸せになれるかは分からないけどアロマセラピーみたいな効果が凪くんにはあるのかもしれない。だからすんなりと理由を話すことができた。
「恥ずかしくなっちゃって」
「? ずっと照れ照れしてたけど」
「照れ照れ……なんというかほぼ接点もないのにチョコレート渡すこととか、……手作りは失礼だったんじゃないかとか、一般生徒Bには荷が勝ちすぎたかなって」
「ぶちまけたノート拾ってくれたんでしょ。接点あるじゃん」
「それから会話という会話してないし」
というか改めて思うと私単純すぎるな。周りがクスクス笑うなか、ひとり膝をついて拾ってくれたのが玲王くんだった。たったそれだけ。それだけの仲だ。でも嬉しかったんだ。……嬉しいだけじゃダメだったんだ。
「とまあ、チョコレート渡すのは諦めたってことで勘弁してください」
「名前がいいならいいんじゃない」
あっさりとした言葉と口調に救われる。凪くんはフラットだ。怒鳴ったり怒ったりしたことを見たことがない。まあテンション上がってるところも見たこと無いのだけど。でも今はそれがいい。心が乱されているときにこうして接してくれる人がいて幸せだなと思った。
「じゃあそれ俺にちょうだい」
「へ?」
「お金持ちの人にはあげないんでしょ?」
「あげないけど……」
「じゃあちょうだい?」
首を傾げる姿はなぜかすんなり目に入っている。こう見えて190あるはずなのに凪くん。
「あげるのは別にいいけど横流し感がすごくない……?」
「名前が作ったなら別にいい」
勝手に比較して勝手に落ち込んだ高級チョコレートVS手作りチョコレート(庶民の味)が凪くんの言葉で救われた気がした。
「うん。そういってもらえるなら凪くんにあげる。もらってくれますか?」
「うん」
伸ばされた手の上にちょこんと乗せる。凪くんは手もおっきかった。新発見。
早速包装を丁寧な手つきで解いていく凪くん。雑にされるとか思ってないけどなんだか意外だった。
「コロンとしてる」
「生チョコだからね」
「生チョコ」
一粒パクリと食べた凪くんはしばらく静かに食べていた。そんなに咀嚼するものでもないけど……? と不思議に思っていたら「美味しいよ」と声がかかる。
「ありがとう。ふふ、失敗しない! 美味しい! をいっぱい検索したもん」
「レシピも優秀だし作った名前も頑張ったよ」
「……ありがとう」
今日は凪くんに救われてばかりだな。玲王くんには渡せなかったけど凪くんに食べてもらってよかった。パクリともう一粒食べる凪くんをみてそう思った。
「名前、提案なんだけどさ」
「うん」
「これ本命チョコってことにしとかない?」
「えっ」
「それだったら今日のしょぼしょぼ名前がなかったことになるでしょ」
「しょぼしょぼ名前」
「うん。名探偵ピカチュウかと思った」
「しおくちゃピカチュウじゃん」
「うん。あんな感じの顔してた」
そんな顔で廊下を歩いてきたという事実に震えた。誰にも見られてないことを祈ろう。いや、今はチョコレートの話だ。
「えーっと、理屈がわかりません」
「ええ。なんで」
「だってそれ元々玲王くんに渡すやつだったから本命チョコとは別じゃない?」
「だから俺を本命にしてほしいんだけど」
ぱちりぱちり。瞬きを二回ほどする。その間に凪くんはもう一粒チョコレートを食べていた。
「あんまり咀嚼しなくていいからこのチョコいいね」
「どんな感想」
「来年もこれがいい」
「来年もって」
「本命チョコの要望」
「な、なんだか凪くんが私を好きって言ってるみたいに聞こえるんだけど……?」
「うん」
真っ直ぐに頷いた凪くんに胸がドキッとした。まって。まって。聞いてないこんなの。
「そんな素振りなかった、よね?」
「お金持ちの人に夢中だったから言わなかっただけ。あの人が名前のこと見ないならもう俺がもらってもいいでしょ」
「どんな理屈っ」
「名前が好きってこと」
カーッと顔が熱くなるのが分かる。フラットな凪くんが分かりやすく熱をぶつけてくる。頭がパンクしそうだ。
「今度ノートぶちまけたら俺が一緒に拾ってあげるし出来るだけ優しくする。ゲームも一緒にやろ」
「げ、ゲームは今もやってる……」
「ほんとだ。アピールポイントすくな」
「自分で言っちゃうんだ……」
「あ、一番のアピールポイント思い浮かんだ」
「な、なんでしょう」
「俺が一番名前のこと好き。これ点数高くない?」
自分で言っちゃ台無しだよ。そう思うのに目元をゆったりと緩ませる初めてみる凪くんの表情に目を奪われて言葉が出ない。
「名前、これからよろしくね」
イエスともノーとも言ってないのに凪くんの中では話が進んでいるらしい。それなのにちょっと待ってもノーとも言えない私の頭には、もう玲王くんのことはなかった。