少年漫画系
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「ほ、ほかの女に裸を見せるなんて……」
「…………」
「紅丸の浮気者!」
上がり框に腰を掛けていた紅丸の前に立ってあるものを見開いて見せてくる名前。目にはうっすらと涙が浮かんでいた。そのことに眉を寄せ、詰所入口外でざわめいている野次馬共には名前の肩越しに睨みを効かせた。「浮気はいけないよ紅ちゃん」「男の甲斐性ってやつだろうよ」「そうそう男ってのはそういう生き物なんだよ名前ちゃん」「もしや浮気してんじゃないだろうね! あんた!」「お、おれはちげーよ!」うるせェ。紅丸はさらに眉を寄せる。今にも外で喧嘩が始まりそうだった。喧嘩ならよそでやれと毒づきながら口を開く。
「おまえそれどこから持ってきた」
「詰所の休憩所に飾ってたでしょ」
飾った奴は覚えておけ。
「堂々と、しかもまだ春なのに……!」
「俺が飾ったもんじゃねェよ」
「こんな無防備な姿晒してる時点で同罪なの!」
「風呂場なんだから仕方ねェだろ」
「気を抜くなっていつも言ってるくせに! 私も紅丸と一緒にお風呂入りたい! おいちゃんズルい!」
「主張かわってんぞ」
名前の背後、暖簾越しから「大胆ねぇ名前ちゃん」とのほほんとした声が届く。人前でとんでもないことを言っているが、当の本人はあまり深く考えていないらしく「私も一緒に入ったことないのに……」と悔しそうな顔をしている。家屋の倒壊が多いために風呂は銭湯ばかりのこの浅草で無茶なことを言う女である。
「別のページ見てねェのか」
「えっ、みみみてないよ」
「嘘つけ。おまえも他の男の裸みてんじゃねェか」
この一連のやりとりがあまりにも馬鹿らしくて適当に言葉を吐くと「わ、わたしも浮気者だ……!」とショックを受けたような顔になった。そんなこと言ってねェ。
「ごめんね紅丸……わたし紅丸責められる立場じゃなかった…………ついでに言うと他のページみて少しドキドキした」
「その余計な告白いらねェ」
先ほどはどうでも良かったが他の男の裸で心臓を高鳴らせる名前は面白くないと感じた。同時に本当にくだらない事で言い合っているこの状況に苛つきを覚える。なんだこの無駄なやりとりは。そう思った紅丸はやや乱暴な動作で名前の手元の冊子を奪う。
「いつまで広げてるつもりだ。てめェのケツなんかみても楽しくねェんだよ」
「あっぐちゃってしないで! 紅丸のページだけ部屋に飾るんだから!」
「こんな阿呆丸出しの七曜表なんか飾るな。つーかおまえ怒ってたんじゃねェのか」
「こんなの撮らせた紅丸と紅丸のページをみた女達には怒ってるけどそれでもわたしは飾るの」
「どこをどうみても盗撮だろうが! やめろ!」
紅丸にとっても不本意なヌードカレンダー。皇国は馬鹿の集まりだと確信したそれを名前に見せるつもりはなかった。面倒くさいことになるのは確実だったからだ。まあ浮気扱いされるとは思っていなかったが。そして原因の分かった野次馬こと町民たちは外で大爆笑している。
「そらあ紅丸ちゃんが悪いな」
「浮気だ浮気。名前ちゃんは怒っていいぞ」
他人事だからと好き勝手に言っている。ああくそ、しばらく酒の肴にされるな。そう確信しつつ最初の怒りを思い出したのか微妙に膨れてる名前に視線をやる。
「俺に非はねェ。怒るなら紺炉に怒れ」
「…………実はノリノリだったりしない?」
「するか」
「むぅ。じゃあみたらし団子で手を打とう」
「何で上からなんだてめェは」
名前の頭を軽く叩く。いつからの付き合いだと思ってんだこの馬鹿は。紅丸は心で毒づいて重い腰を上げた。
文句を言いつつも名前の希望をきこうとする紅丸に外から野次が飛ぶ。
「はははっ! 夫婦喧嘩は犬も食わないってやつだなぁ」
「それを言うなら痴話喧嘩だ。まだ夫婦じゃねェよ」
軽くそう返したらなぜか余計に湧く町民達。その反応に疑問符が出たが気にせず外へ出ようと足を進める。しかし後ろからついて来る気配が全くなかったので顔だけ振り返った。
「………………」
「早くこい名前」
しかし名前の反応はない。だがやけに顔が赤い。「おいてくぞ」と言ったらやっと動き出した。
「スケコマシだ」
「誰がだ」
「紅丸」
「はっ倒すぞ。好きで裸見せたんじゃねェって言ってんだろ」
「そうじゃない……そうじゃないけどそれでいいや……」
意味が分からなかったが両手で頬を押さえる名前はどこか幸せそうだったのでそのまま茶屋に足を進めた。
「ふふーん」
「……」
「んふふふ」
「……」
「ふーんふーん」
「うるせェ」
そう言っても奇妙な鼻歌は止まずに終始ご機嫌な名前だった。その理由に紅丸が気づくのはしばらく後である。
190111
「…………」
「紅丸の浮気者!」
上がり框に腰を掛けていた紅丸の前に立ってあるものを見開いて見せてくる名前。目にはうっすらと涙が浮かんでいた。そのことに眉を寄せ、詰所入口外でざわめいている野次馬共には名前の肩越しに睨みを効かせた。「浮気はいけないよ紅ちゃん」「男の甲斐性ってやつだろうよ」「そうそう男ってのはそういう生き物なんだよ名前ちゃん」「もしや浮気してんじゃないだろうね! あんた!」「お、おれはちげーよ!」うるせェ。紅丸はさらに眉を寄せる。今にも外で喧嘩が始まりそうだった。喧嘩ならよそでやれと毒づきながら口を開く。
「おまえそれどこから持ってきた」
「詰所の休憩所に飾ってたでしょ」
飾った奴は覚えておけ。
「堂々と、しかもまだ春なのに……!」
「俺が飾ったもんじゃねェよ」
「こんな無防備な姿晒してる時点で同罪なの!」
「風呂場なんだから仕方ねェだろ」
「気を抜くなっていつも言ってるくせに! 私も紅丸と一緒にお風呂入りたい! おいちゃんズルい!」
「主張かわってんぞ」
名前の背後、暖簾越しから「大胆ねぇ名前ちゃん」とのほほんとした声が届く。人前でとんでもないことを言っているが、当の本人はあまり深く考えていないらしく「私も一緒に入ったことないのに……」と悔しそうな顔をしている。家屋の倒壊が多いために風呂は銭湯ばかりのこの浅草で無茶なことを言う女である。
「別のページ見てねェのか」
「えっ、みみみてないよ」
「嘘つけ。おまえも他の男の裸みてんじゃねェか」
この一連のやりとりがあまりにも馬鹿らしくて適当に言葉を吐くと「わ、わたしも浮気者だ……!」とショックを受けたような顔になった。そんなこと言ってねェ。
「ごめんね紅丸……わたし紅丸責められる立場じゃなかった…………ついでに言うと他のページみて少しドキドキした」
「その余計な告白いらねェ」
先ほどはどうでも良かったが他の男の裸で心臓を高鳴らせる名前は面白くないと感じた。同時に本当にくだらない事で言い合っているこの状況に苛つきを覚える。なんだこの無駄なやりとりは。そう思った紅丸はやや乱暴な動作で名前の手元の冊子を奪う。
「いつまで広げてるつもりだ。てめェのケツなんかみても楽しくねェんだよ」
「あっぐちゃってしないで! 紅丸のページだけ部屋に飾るんだから!」
「こんな阿呆丸出しの七曜表なんか飾るな。つーかおまえ怒ってたんじゃねェのか」
「こんなの撮らせた紅丸と紅丸のページをみた女達には怒ってるけどそれでもわたしは飾るの」
「どこをどうみても盗撮だろうが! やめろ!」
紅丸にとっても不本意なヌードカレンダー。皇国は馬鹿の集まりだと確信したそれを名前に見せるつもりはなかった。面倒くさいことになるのは確実だったからだ。まあ浮気扱いされるとは思っていなかったが。そして原因の分かった野次馬こと町民たちは外で大爆笑している。
「そらあ紅丸ちゃんが悪いな」
「浮気だ浮気。名前ちゃんは怒っていいぞ」
他人事だからと好き勝手に言っている。ああくそ、しばらく酒の肴にされるな。そう確信しつつ最初の怒りを思い出したのか微妙に膨れてる名前に視線をやる。
「俺に非はねェ。怒るなら紺炉に怒れ」
「…………実はノリノリだったりしない?」
「するか」
「むぅ。じゃあみたらし団子で手を打とう」
「何で上からなんだてめェは」
名前の頭を軽く叩く。いつからの付き合いだと思ってんだこの馬鹿は。紅丸は心で毒づいて重い腰を上げた。
文句を言いつつも名前の希望をきこうとする紅丸に外から野次が飛ぶ。
「はははっ! 夫婦喧嘩は犬も食わないってやつだなぁ」
「それを言うなら痴話喧嘩だ。まだ夫婦じゃねェよ」
軽くそう返したらなぜか余計に湧く町民達。その反応に疑問符が出たが気にせず外へ出ようと足を進める。しかし後ろからついて来る気配が全くなかったので顔だけ振り返った。
「………………」
「早くこい名前」
しかし名前の反応はない。だがやけに顔が赤い。「おいてくぞ」と言ったらやっと動き出した。
「スケコマシだ」
「誰がだ」
「紅丸」
「はっ倒すぞ。好きで裸見せたんじゃねェって言ってんだろ」
「そうじゃない……そうじゃないけどそれでいいや……」
意味が分からなかったが両手で頬を押さえる名前はどこか幸せそうだったのでそのまま茶屋に足を進めた。
「ふふーん」
「……」
「んふふふ」
「……」
「ふーんふーん」
「うるせェ」
そう言っても奇妙な鼻歌は止まずに終始ご機嫌な名前だった。その理由に紅丸が気づくのはしばらく後である。
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