少年漫画系
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
中学二年の冬に告白された。
それからずっと関係が続いている。
「北くん……これ許可なく触ったらセクハラかなぁ……」
にも関わらず、いまいち掴めない所がある。腹を出してゴロゴロと鳴いている猫を触っていいかどうか真剣に悩む名前に「許可とったらええやろ」と感慨もなく返すとその手があったか! と言わんばかりに顔が輝いた。
「触っていいですか!」
その途端「にゃあん」というまさに猫撫で声が返ってきた。出会って数秒で足元に走ってきて足にすりすりした後、そのままゴロンと腹を出した猫はどうみても「さわって撫でて」と全身でアピールをしていた。あまり動物に関わったことのない北でも分かったというのに変なところで律儀というか察しが悪いというか。
「お手本のような猫背だねえ」
「猫やからな」
そう返すとワンテンポ遅れて「…………猫だった」とポツリとした声が耳まで届いた。何だと思っていたんだ。
「…………っふ、」
しかしそのどこか気まずそうな声が北のツボに当たった。そのまま声を出して笑うと「北くんが笑った! でも複雑!」と名前が嘆くように言った。
「猫撫でて「猫だった」ってなんやと思てんねん」
「可愛さの前には種族名なんか関係ないもん」
「関係あるやろ。ふ、ふはは、」
「北くんの笑顔は大好きだけどその原因を考えると喜ぶのが何だかあれです」
不満顔の名前に余計に笑みが零れる。可愛ええなあ。率直にそう思った。
機械のようだとよく言われる。別に呼び方くらいどうでもいい。勝手に言わしといたらええ。北自身もそう思ってるし、彼女である名前も特に気にしている様子はない。「え……? ペッパーくんとはほど遠いのでは……? あっ、ガンダムの方? 北くんバレー部では機動戦士的な感じなの?」と心から不思議そうな顔と質問を返されたくらいだ。機械と言われて想像したのがそれか。そのときも今のように笑った記憶がある。名前といるとよく笑う。これは祖母の言葉だ。
性格も考えも真逆のせいか、付き合っていると知られると凝視されることが常だ。侑と治なんて五度見以上していた。他のバレー部員もそんな感じだったせいで「お前ら見すぎや!」とアランの制止が入った。だがそんなアランも一年の頃に似たようなことをした。北の性格のせいか、ふわふわした笑い方と考え方を持つ名前のせいか。周りの反応を見るに恐らく両方だ。端から見るとチグハグで可笑しく奇妙な関係に見えるらしい。名前以外の人間と付き合った事がないので北にはいまいちピンと来ないが。
「…………」
「うん? どうしたの?」
ふと、あることを思い出した。
『なんで名字の彼氏が北やねん。あんな、機械みたいなやつと一緒におっても疲れるだけやろ』
忘れ物を取りに行った放課後の教室で聞こえた言葉。数秒間をあけたがそのまま教室に入る。数人のクラスメートと恐らく先程の台詞を吐いた男と目が合う。だが何か言ってくる様子もなかったので自分の席までいって机を漁り、目的の物を持って出ようとすると「オレなんか眼中にないって言いたいんか!」と背中に激昂の言葉が投げつけられた。
「……」
北を構築するのは毎日の行動だ。反復、継続、丁寧。それらをちゃんとやる。それが一番心地がいい。
「お前、俺と一緒におって疲れるか」
しかし、名前にとってはどうか。名前にはこれで良かったのか。本当にちゃんとやれていたのか。言われるまで思いもしなかったことに気づいて、激昂する男に何も返せなかった。
名前は北の問いに驚いたように目を見開いた。だが付き合いの長さからか、いつもの調子じゃないことに気づいたらしい。猫を撫でる手を止めてすっと立ち上がった。そして真剣な顔を作り、口を開く。
「私の今日の朝ご飯、焼き鮭だったの」
「…………………話聞いてへんのやったなら正直に言い」
率直に思ったことを口にすると「違うもん! 聞いてたよ!」とぷりぷりしながら吠える名前に「何で朝飯の話になんねん」訊ねると何故かふんと偉そうに胸を張った。些かアホっぽい動作に見えた。
「北くん分かってないね」
「何がや」
「私ね、すっごく単純なんだよ」
「そんなこと知っとる」
「ええ!? い、いやもっと単純なんだよ!」
自慢にならないことを堂々と主張する名前は絶対に分かってないね! と再び声高に宣言する。
「朝ご飯食べながら北くんはお魚綺麗に食べるよなぁとか、掃除の時間のときには北くん今日もお掃除魔神なのかなぁとか、いただきますとごちそうさまを言うときの北くん好きだなぁとか」
「私すぐに北くんのこと考えちゃうんだよ。頭の中は北くんでいっぱいになって、頭熱くなるときもあるけど、でも疲れたことなんかないよ。北くんとなら何でも楽しくて幸せになっちゃうの」
ね、単純でしょ。と述べた言葉の通り楽しげに言う名前に肩の力が抜けるのが分かった。試合でも緊張しない癖に長年付き合っている彼女に緊張するなんて少し可笑しく思う。
「ああ、単純やな」
「私名探偵だから分かっちゃうんだけど、今の単純やな、はかわいいって意味ですね」
「あっとるで」
「!? 本当に!? やったー!」
「名探偵ちゃうんか」
くだらない話が楽しくて。
北は吹き出すように笑った。
230618
それからずっと関係が続いている。
「北くん……これ許可なく触ったらセクハラかなぁ……」
にも関わらず、いまいち掴めない所がある。腹を出してゴロゴロと鳴いている猫を触っていいかどうか真剣に悩む名前に「許可とったらええやろ」と感慨もなく返すとその手があったか! と言わんばかりに顔が輝いた。
「触っていいですか!」
その途端「にゃあん」というまさに猫撫で声が返ってきた。出会って数秒で足元に走ってきて足にすりすりした後、そのままゴロンと腹を出した猫はどうみても「さわって撫でて」と全身でアピールをしていた。あまり動物に関わったことのない北でも分かったというのに変なところで律儀というか察しが悪いというか。
「お手本のような猫背だねえ」
「猫やからな」
そう返すとワンテンポ遅れて「…………猫だった」とポツリとした声が耳まで届いた。何だと思っていたんだ。
「…………っふ、」
しかしそのどこか気まずそうな声が北のツボに当たった。そのまま声を出して笑うと「北くんが笑った! でも複雑!」と名前が嘆くように言った。
「猫撫でて「猫だった」ってなんやと思てんねん」
「可愛さの前には種族名なんか関係ないもん」
「関係あるやろ。ふ、ふはは、」
「北くんの笑顔は大好きだけどその原因を考えると喜ぶのが何だかあれです」
不満顔の名前に余計に笑みが零れる。可愛ええなあ。率直にそう思った。
機械のようだとよく言われる。別に呼び方くらいどうでもいい。勝手に言わしといたらええ。北自身もそう思ってるし、彼女である名前も特に気にしている様子はない。「え……? ペッパーくんとはほど遠いのでは……? あっ、ガンダムの方? 北くんバレー部では機動戦士的な感じなの?」と心から不思議そうな顔と質問を返されたくらいだ。機械と言われて想像したのがそれか。そのときも今のように笑った記憶がある。名前といるとよく笑う。これは祖母の言葉だ。
性格も考えも真逆のせいか、付き合っていると知られると凝視されることが常だ。侑と治なんて五度見以上していた。他のバレー部員もそんな感じだったせいで「お前ら見すぎや!」とアランの制止が入った。だがそんなアランも一年の頃に似たようなことをした。北の性格のせいか、ふわふわした笑い方と考え方を持つ名前のせいか。周りの反応を見るに恐らく両方だ。端から見るとチグハグで可笑しく奇妙な関係に見えるらしい。名前以外の人間と付き合った事がないので北にはいまいちピンと来ないが。
「…………」
「うん? どうしたの?」
ふと、あることを思い出した。
『なんで名字の彼氏が北やねん。あんな、機械みたいなやつと一緒におっても疲れるだけやろ』
忘れ物を取りに行った放課後の教室で聞こえた言葉。数秒間をあけたがそのまま教室に入る。数人のクラスメートと恐らく先程の台詞を吐いた男と目が合う。だが何か言ってくる様子もなかったので自分の席までいって机を漁り、目的の物を持って出ようとすると「オレなんか眼中にないって言いたいんか!」と背中に激昂の言葉が投げつけられた。
「……」
北を構築するのは毎日の行動だ。反復、継続、丁寧。それらをちゃんとやる。それが一番心地がいい。
「お前、俺と一緒におって疲れるか」
しかし、名前にとってはどうか。名前にはこれで良かったのか。本当にちゃんとやれていたのか。言われるまで思いもしなかったことに気づいて、激昂する男に何も返せなかった。
名前は北の問いに驚いたように目を見開いた。だが付き合いの長さからか、いつもの調子じゃないことに気づいたらしい。猫を撫でる手を止めてすっと立ち上がった。そして真剣な顔を作り、口を開く。
「私の今日の朝ご飯、焼き鮭だったの」
「…………………話聞いてへんのやったなら正直に言い」
率直に思ったことを口にすると「違うもん! 聞いてたよ!」とぷりぷりしながら吠える名前に「何で朝飯の話になんねん」訊ねると何故かふんと偉そうに胸を張った。些かアホっぽい動作に見えた。
「北くん分かってないね」
「何がや」
「私ね、すっごく単純なんだよ」
「そんなこと知っとる」
「ええ!? い、いやもっと単純なんだよ!」
自慢にならないことを堂々と主張する名前は絶対に分かってないね! と再び声高に宣言する。
「朝ご飯食べながら北くんはお魚綺麗に食べるよなぁとか、掃除の時間のときには北くん今日もお掃除魔神なのかなぁとか、いただきますとごちそうさまを言うときの北くん好きだなぁとか」
「私すぐに北くんのこと考えちゃうんだよ。頭の中は北くんでいっぱいになって、頭熱くなるときもあるけど、でも疲れたことなんかないよ。北くんとなら何でも楽しくて幸せになっちゃうの」
ね、単純でしょ。と述べた言葉の通り楽しげに言う名前に肩の力が抜けるのが分かった。試合でも緊張しない癖に長年付き合っている彼女に緊張するなんて少し可笑しく思う。
「ああ、単純やな」
「私名探偵だから分かっちゃうんだけど、今の単純やな、はかわいいって意味ですね」
「あっとるで」
「!? 本当に!? やったー!」
「名探偵ちゃうんか」
くだらない話が楽しくて。
北は吹き出すように笑った。
230618