少年漫画系
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おれはきみの友人であることに誇りを持っている。歩く道は違うが、きみの雄英での活躍を期待している」
名字から受け取った中学の卒業式の言葉。これを聞いたとき、轟は口にはしなかったがじーんとしたのだ。彼は嘘をつかない。身にしみて分かっていたからこそ、心に響いた。
そのせいか、そのせい“で”と言うべきか。轟は忘れていた。名字の真面目な性格と、そこから来る斜め上に真っ直ぐ突き抜ける思考回路に。半生を共に過ごしているというのに、すっかりと忘れていたのだ。
そのことを震えながら思い出したのは入学式の朝だった。
「おはよう。遅刻しては元も子もないから早めに来てしまったが、起きて来て何よりだ」
轟家の朝の食卓に雄英の制服で座する名字。眠気半分だった轟の目はそれで一発で冴えた。
「冬美さん、このお漬け物美味しいですね」
「本当? 初めて漬けてみたんだけどヨウ君の口にあって良かった」
「白飯が進みます」
「何でいるんだ!!」
朝に弱い轟が大きな声を出すのは珍しかった。そして元々が大声を出すタイプではない。そのせいか、名字の関心は轟の質問に向かなかった。
「きみが朝から元気なのは珍しいな。入学式だからと緊張するタイプには見えなかったが、昨日はきちんと眠れたのか?」
「寝た。何故ここにいる」
律儀に質問を返す轟に「それは良かった」とマイペースな感想を付けて名字は語り出した。
「入試と制服採寸の時に行ったとはいえ、まだまだ慣れない通学路だろう? きみは朝はぼんやりしている時も多いから一緒に行こうと迎えに来たんだ」
理由は分かった。轟を気づかってのことだというのも十分に分かった。だがどうしても見過ごせない点がある。
「おまえ雄英だったのか!!」
動揺、困惑、怒り。轟の感情は主にこの三つで形成されていた。だがそんな轟に対して驚愕の色を示したのは名字ではなく、名字の隣に座って食事をしていた兄と轟のご飯をよそっていた姉だった。
「はっ!? 焦凍知らなかったん!?」
「焦凍知らなかったの!?」
二人は朝に似つかわしくない声を出した。少年らしい反応を中々見せない弟の一番の友人。風変わりな面はあるが、真面目で性根の良い彼に対しては弟も心を許しているようにみえる。そんな大切な友人の進路を知らなかったなど驚くしかない。そして二人の反応で名字の進路先は周知されていたことに気づく轟。
「おまっ、お前、歩く道は違うって」
「おれはサポート科だからな」
三人の動揺をよそに名字はさらりと答えた。しかし名字自身にとっても些かイレギュラーな事らしく、わずかに眉が寄っていた。
「合格者をデカデカと載せた紙が職員室の前に貼ってあったはずだが」
「見てねえ」
「なるほど。だが別の高校に進むならおれももっと違う反応をするぞ」
「あれで分かるわけないだろ」
「そうか。すまない」
真正面から謝られたが素直に飲み込めない。きちんと確認しなかった自分も悪い。悪いが思い出してほしい。名字の卒業式の言葉を。あれが同じ学校に進む人間の言葉か。名字が一切嘘をついていないことが尚のこと悪い。真摯な言葉にしか聞こえなかったからだ。いや、本人はそのつもりだったのだろうが、真実を知ると大分違う印象に変わってしまう。というかあの時の感動返せ。全てはそれに尽きる。
「~~~、ッ! ……!!」
「轟が混乱している……」
初めて見る轟(混乱状態)に普段ハキハキと話す男が戸惑ったような声を出した。その隣で轟の兄、夏雄は「こいつら大丈夫かな……」とぼそりと呟いた。
その後、轟はクラスの事情で入学式に参加しなかったのだが、そんな事情など知る由もない名字は一クラス丸々空いた席を見て「朝の出来事でクラスメイトに八つ当たりなんてしないよな。……しないよな?」とほんの少し轟を疑ってかかった。
名字から受け取った中学の卒業式の言葉。これを聞いたとき、轟は口にはしなかったがじーんとしたのだ。彼は嘘をつかない。身にしみて分かっていたからこそ、心に響いた。
そのせいか、そのせい“で”と言うべきか。轟は忘れていた。名字の真面目な性格と、そこから来る斜め上に真っ直ぐ突き抜ける思考回路に。半生を共に過ごしているというのに、すっかりと忘れていたのだ。
そのことを震えながら思い出したのは入学式の朝だった。
「おはよう。遅刻しては元も子もないから早めに来てしまったが、起きて来て何よりだ」
轟家の朝の食卓に雄英の制服で座する名字。眠気半分だった轟の目はそれで一発で冴えた。
「冬美さん、このお漬け物美味しいですね」
「本当? 初めて漬けてみたんだけどヨウ君の口にあって良かった」
「白飯が進みます」
「何でいるんだ!!」
朝に弱い轟が大きな声を出すのは珍しかった。そして元々が大声を出すタイプではない。そのせいか、名字の関心は轟の質問に向かなかった。
「きみが朝から元気なのは珍しいな。入学式だからと緊張するタイプには見えなかったが、昨日はきちんと眠れたのか?」
「寝た。何故ここにいる」
律儀に質問を返す轟に「それは良かった」とマイペースな感想を付けて名字は語り出した。
「入試と制服採寸の時に行ったとはいえ、まだまだ慣れない通学路だろう? きみは朝はぼんやりしている時も多いから一緒に行こうと迎えに来たんだ」
理由は分かった。轟を気づかってのことだというのも十分に分かった。だがどうしても見過ごせない点がある。
「おまえ雄英だったのか!!」
動揺、困惑、怒り。轟の感情は主にこの三つで形成されていた。だがそんな轟に対して驚愕の色を示したのは名字ではなく、名字の隣に座って食事をしていた兄と轟のご飯をよそっていた姉だった。
「はっ!? 焦凍知らなかったん!?」
「焦凍知らなかったの!?」
二人は朝に似つかわしくない声を出した。少年らしい反応を中々見せない弟の一番の友人。風変わりな面はあるが、真面目で性根の良い彼に対しては弟も心を許しているようにみえる。そんな大切な友人の進路を知らなかったなど驚くしかない。そして二人の反応で名字の進路先は周知されていたことに気づく轟。
「おまっ、お前、歩く道は違うって」
「おれはサポート科だからな」
三人の動揺をよそに名字はさらりと答えた。しかし名字自身にとっても些かイレギュラーな事らしく、わずかに眉が寄っていた。
「合格者をデカデカと載せた紙が職員室の前に貼ってあったはずだが」
「見てねえ」
「なるほど。だが別の高校に進むならおれももっと違う反応をするぞ」
「あれで分かるわけないだろ」
「そうか。すまない」
真正面から謝られたが素直に飲み込めない。きちんと確認しなかった自分も悪い。悪いが思い出してほしい。名字の卒業式の言葉を。あれが同じ学校に進む人間の言葉か。名字が一切嘘をついていないことが尚のこと悪い。真摯な言葉にしか聞こえなかったからだ。いや、本人はそのつもりだったのだろうが、真実を知ると大分違う印象に変わってしまう。というかあの時の感動返せ。全てはそれに尽きる。
「~~~、ッ! ……!!」
「轟が混乱している……」
初めて見る轟(混乱状態)に普段ハキハキと話す男が戸惑ったような声を出した。その隣で轟の兄、夏雄は「こいつら大丈夫かな……」とぼそりと呟いた。
その後、轟はクラスの事情で入学式に参加しなかったのだが、そんな事情など知る由もない名字は一クラス丸々空いた席を見て「朝の出来事でクラスメイトに八つ当たりなんてしないよな。……しないよな?」とほんの少し轟を疑ってかかった。