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─バンッ!
ラウンジに響く鈍い音。その発信源にいたのはテーブルに右手を置き、仁王立ちする名前。そしてテーブルを挟んで座るのは太刀川、二宮、来馬、堤の四人。一人は顔をうんうんと首を振り、一人は眉間にシワ、後の二人はオロオロと視線を泳がせた。「テーブルを叩くな」と苦言を漏らす二宮の台詞から先ほど響いた音は名前がテーブルを叩いた音らしい。そしてその当の本人は、
「………あの女狐、」
──殺す
怒っていた。いや、怒り狂っているというのが正しい。目尻まで綺麗にひかれたアイラインを険しく吊り立たせ、額には数本の青筋、唇はプルプルと震わせ息遣いは荒々しい。誰がどう見ても怒り狂っている。堤が「中学生と高校生がここにいなくて良かった……」と弱々しく呟くほど、怒っていた。
事の発端は数時間前。
授業が終わり、ばったり出くわした名前、風間、太刀川の三人でボーダー基地まで向かっていた時だった。
「あ、風間くん! 来週の合コン楽しみにしてるね!」
これが空気が固まるというやつか、場違いな感想を持ったのは太刀川だった。
三人の下に現れた一人の女は名前と太刀川に目もくれず風間に寄り添った。そして上記の言葉を口にした。言葉を掛けられた風間本人と餅もちモチパンという謎のパンを持った太刀川はほぼ同時にある人物へ視線を向けた。
「………合コン?」
学校用のキレイな笑みを作り、上品に小首を傾げた名前の背後には赤鬼の姿があった。
「ええ、今度3対3で。私の目当ては風間くんだけどねー」
そして名前の後ろの赤鬼が見えていないのかそれとも見えているのにスルーしているのか、はっきりとした口調でそう返す。前半は名前へ、後半は風間へ。心なしか風間へは甘く誘惑するような声色だ。そしてその瞬間、名前の背後の鬼は目を血走らせ始めた。
「風間目当て、ねえ」
ゆったりとした穏やかな口調で、天気でも語るような声色で、名前は女神のごとく微笑む。
「そうよ? だって風間くん格好いいもん」
「ふふふ、そんな分かりきった事どや顔で言われても困るわぁ何年も前から知っているもの」
「何年も前から知っているのにお友達止まりなのねー」
「大学卒業したらぱったり切れるお友達よりマシじゃないかしら」
「大学だけで終わる予定はないからお気になさらず」
名前の背後の鬼は髪を振り乱し、目を吊り上げ、恐ろしい形相を浮かべ、手に持っている金棒を地面に叩き、雷を降らせた。
名前本人が鬼と化す前に止めた方がいいのでは、とパンを頬張りながら風間を見る太刀川。太刀川本人がのんびりとしているのは女の腹黒さというか強かさというのに慣れているからで。あーバチバチやってんな、くらいの気持ちだ。その上風間が本気で合コンに行くとは思っていないからだ。だって名前さんいるし。何だかんだ言ってこの二人、なあ? といった感じだ。──しかし、
「じゃあ後でまた連絡するね、風間くん」
「ああ」
「!? げほっ」
まさか風間からこんな返事が返ってくるとは思わず、口に含んだパンを吐き出しかけた太刀川。風間の返事に勝ち誇ったように笑みを浮かべる女。そして名前はというと、
「…………」
眉を情けなく下げ、捨てられた子犬のような顔をしていた。
****
「楽には死なさないあの女……」
「落ち込んでたんじゃねーの?」
「落ち込んでる隙に風間をとられたらどうするの。そんな暇ない」
バシン! と再びテーブルを叩き「合法的に人を抹殺する方法を募集。上手くいったらご飯でも何でも奢ってあげる」と目を血走らせる名前。「平和的に! 平和的に解決しましょう!」「殺しはさすがにマズいです!」と必死に止める来馬と堤の姿は全く視界に入っていない。そしてずっと落ち込んでいれば良かったものの……と内心舌打ちする二宮。一つ下、しかも高校も同じだった二宮は高確率で名前の被害に合っていた。「二宮くんの可愛げのなさは犯罪級だわ……もうまず見た目から駄目。大きさも駄目。態度も駄目。全部駄目」「それは本望だな」と名前のストライクゾーンから全部外れまくっているらしい二宮。彼女は好みの相手(ロリショタ、童顔、風間)は丁重に扱うがそうではない人間には扱いがとにかく適当だった。「あらら、振られちゃったの。そうねぇ人生もう一回やり直してみたらどうかな」「それ死ねって言ってる?」失恋した太刀川に対して放った言葉がこれだ。名前の言葉に思わず涙が引っ込んだと太刀川は語った。彼女は見た目が好みじゃないという理由で特に太刀川と二宮に厳しい。
「とりあえず二宮くん、あの女誘惑してきてくれる? おびき寄せた所で叩くわ」
「人を花のように言うな」
「花じゃない餌よ」
「余計に不愉快だ」
ラウンジに来たばかりに……と数十分前の自分を呪う二宮。そして殺る気満々の名前に「諏訪さんたちを呼んだほうがいいんじゃ……」と震える来馬。来馬の言葉に太刀川の脳裏に浮かんだのは名前の同級生である諏訪、木崎、寺島の三人だった。「勝手にしてろ」「あいつは止めても聞かない」「一通り暴れたら気が済むと思うよ」……ああダメだ。全員付き合いが長い(濃い)せいで目の前で犯行が行われない限り放置主義なのだこの同級生たちは。唯一名前を止める(そして今回の殺意の発端)のは風間だ。救いも何もない。
「ふふっ合コンなんか行けない身体にしてやるわ……」
ああ、阿修羅が天使のように微笑んでいる……と来馬と堤の意識が飛びかけたときだった。
「何をするつもりだおまえは」
「いたっ」
呆れた顔で名前の後頭部にチョップを入れたのは風間だった。風間さん……!! と来馬と堤の瞳に生気が戻った。そして名前はそんな風間に対して珍しく膨れっ面で言葉を返す。
「何って……女を一人、この世から消す方法を二宮くんと考えてるの」
「犯罪はやめろ」
「俺を巻き込むな」
当然でしょ? と言わんばかりの名前に風間と二宮は同時に突っ込んだ。
「合コンなんてふしだらなものに風間を行かせるわけにはいかない。メンバーが風間以外いなくなったら結果的に中止になってみんなハッピーエンド」
「犠牲者出てるぞ名前さん。風間さんと名前さん以外バットエンドだぞ」
「それが彼女たちの運命だからいいの」
さり気なくターゲットを増やしている名前に風間は深い息を吐いて口を開いた。
「誰が行くと言った」
「……………え?」
「連絡はするとは言ったが行くとは言っていない。あれは断りの連絡だ」
「…………ほんと?」
「ああ」
「絶対行かない?」
「ああ」
「一生行かない?」
「ああ」
一生行かせないつもりか……と二宮はドン引きしたが風間は特に気にした様子はなかった。そんな風間に感極まった様子で奇声を上げて抱きついた名前。風間がぐっ……とうなり声を上げているがお構いなしだ。
「好き。大好き風間。一番好き」
「………知っている」
「~~~~っ!!」
「んづッ!?」
「いいなーFカップ乳サンド」
「太刀川おまえ……風間さんに殺されるぞ……」
ラウンジに響く鈍い音。その発信源にいたのはテーブルに右手を置き、仁王立ちする名前。そしてテーブルを挟んで座るのは太刀川、二宮、来馬、堤の四人。一人は顔をうんうんと首を振り、一人は眉間にシワ、後の二人はオロオロと視線を泳がせた。「テーブルを叩くな」と苦言を漏らす二宮の台詞から先ほど響いた音は名前がテーブルを叩いた音らしい。そしてその当の本人は、
「………あの女狐、」
──殺す
怒っていた。いや、怒り狂っているというのが正しい。目尻まで綺麗にひかれたアイラインを険しく吊り立たせ、額には数本の青筋、唇はプルプルと震わせ息遣いは荒々しい。誰がどう見ても怒り狂っている。堤が「中学生と高校生がここにいなくて良かった……」と弱々しく呟くほど、怒っていた。
事の発端は数時間前。
授業が終わり、ばったり出くわした名前、風間、太刀川の三人でボーダー基地まで向かっていた時だった。
「あ、風間くん! 来週の合コン楽しみにしてるね!」
これが空気が固まるというやつか、場違いな感想を持ったのは太刀川だった。
三人の下に現れた一人の女は名前と太刀川に目もくれず風間に寄り添った。そして上記の言葉を口にした。言葉を掛けられた風間本人と餅もちモチパンという謎のパンを持った太刀川はほぼ同時にある人物へ視線を向けた。
「………合コン?」
学校用のキレイな笑みを作り、上品に小首を傾げた名前の背後には赤鬼の姿があった。
「ええ、今度3対3で。私の目当ては風間くんだけどねー」
そして名前の後ろの赤鬼が見えていないのかそれとも見えているのにスルーしているのか、はっきりとした口調でそう返す。前半は名前へ、後半は風間へ。心なしか風間へは甘く誘惑するような声色だ。そしてその瞬間、名前の背後の鬼は目を血走らせ始めた。
「風間目当て、ねえ」
ゆったりとした穏やかな口調で、天気でも語るような声色で、名前は女神のごとく微笑む。
「そうよ? だって風間くん格好いいもん」
「ふふふ、そんな分かりきった事どや顔で言われても困るわぁ何年も前から知っているもの」
「何年も前から知っているのにお友達止まりなのねー」
「大学卒業したらぱったり切れるお友達よりマシじゃないかしら」
「大学だけで終わる予定はないからお気になさらず」
名前の背後の鬼は髪を振り乱し、目を吊り上げ、恐ろしい形相を浮かべ、手に持っている金棒を地面に叩き、雷を降らせた。
名前本人が鬼と化す前に止めた方がいいのでは、とパンを頬張りながら風間を見る太刀川。太刀川本人がのんびりとしているのは女の腹黒さというか強かさというのに慣れているからで。あーバチバチやってんな、くらいの気持ちだ。その上風間が本気で合コンに行くとは思っていないからだ。だって名前さんいるし。何だかんだ言ってこの二人、なあ? といった感じだ。──しかし、
「じゃあ後でまた連絡するね、風間くん」
「ああ」
「!? げほっ」
まさか風間からこんな返事が返ってくるとは思わず、口に含んだパンを吐き出しかけた太刀川。風間の返事に勝ち誇ったように笑みを浮かべる女。そして名前はというと、
「…………」
眉を情けなく下げ、捨てられた子犬のような顔をしていた。
****
「楽には死なさないあの女……」
「落ち込んでたんじゃねーの?」
「落ち込んでる隙に風間をとられたらどうするの。そんな暇ない」
バシン! と再びテーブルを叩き「合法的に人を抹殺する方法を募集。上手くいったらご飯でも何でも奢ってあげる」と目を血走らせる名前。「平和的に! 平和的に解決しましょう!」「殺しはさすがにマズいです!」と必死に止める来馬と堤の姿は全く視界に入っていない。そしてずっと落ち込んでいれば良かったものの……と内心舌打ちする二宮。一つ下、しかも高校も同じだった二宮は高確率で名前の被害に合っていた。「二宮くんの可愛げのなさは犯罪級だわ……もうまず見た目から駄目。大きさも駄目。態度も駄目。全部駄目」「それは本望だな」と名前のストライクゾーンから全部外れまくっているらしい二宮。彼女は好みの相手(ロリショタ、童顔、風間)は丁重に扱うがそうではない人間には扱いがとにかく適当だった。「あらら、振られちゃったの。そうねぇ人生もう一回やり直してみたらどうかな」「それ死ねって言ってる?」失恋した太刀川に対して放った言葉がこれだ。名前の言葉に思わず涙が引っ込んだと太刀川は語った。彼女は見た目が好みじゃないという理由で特に太刀川と二宮に厳しい。
「とりあえず二宮くん、あの女誘惑してきてくれる? おびき寄せた所で叩くわ」
「人を花のように言うな」
「花じゃない餌よ」
「余計に不愉快だ」
ラウンジに来たばかりに……と数十分前の自分を呪う二宮。そして殺る気満々の名前に「諏訪さんたちを呼んだほうがいいんじゃ……」と震える来馬。来馬の言葉に太刀川の脳裏に浮かんだのは名前の同級生である諏訪、木崎、寺島の三人だった。「勝手にしてろ」「あいつは止めても聞かない」「一通り暴れたら気が済むと思うよ」……ああダメだ。全員付き合いが長い(濃い)せいで目の前で犯行が行われない限り放置主義なのだこの同級生たちは。唯一名前を止める(そして今回の殺意の発端)のは風間だ。救いも何もない。
「ふふっ合コンなんか行けない身体にしてやるわ……」
ああ、阿修羅が天使のように微笑んでいる……と来馬と堤の意識が飛びかけたときだった。
「何をするつもりだおまえは」
「いたっ」
呆れた顔で名前の後頭部にチョップを入れたのは風間だった。風間さん……!! と来馬と堤の瞳に生気が戻った。そして名前はそんな風間に対して珍しく膨れっ面で言葉を返す。
「何って……女を一人、この世から消す方法を二宮くんと考えてるの」
「犯罪はやめろ」
「俺を巻き込むな」
当然でしょ? と言わんばかりの名前に風間と二宮は同時に突っ込んだ。
「合コンなんてふしだらなものに風間を行かせるわけにはいかない。メンバーが風間以外いなくなったら結果的に中止になってみんなハッピーエンド」
「犠牲者出てるぞ名前さん。風間さんと名前さん以外バットエンドだぞ」
「それが彼女たちの運命だからいいの」
さり気なくターゲットを増やしている名前に風間は深い息を吐いて口を開いた。
「誰が行くと言った」
「……………え?」
「連絡はするとは言ったが行くとは言っていない。あれは断りの連絡だ」
「…………ほんと?」
「ああ」
「絶対行かない?」
「ああ」
「一生行かない?」
「ああ」
一生行かせないつもりか……と二宮はドン引きしたが風間は特に気にした様子はなかった。そんな風間に感極まった様子で奇声を上げて抱きついた名前。風間がぐっ……とうなり声を上げているがお構いなしだ。
「好き。大好き風間。一番好き」
「………知っている」
「~~~~っ!!」
「んづッ!?」
「いいなーFカップ乳サンド」
「太刀川おまえ……風間さんに殺されるぞ……」