少年漫画系
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・技の個人的解釈あり
・ちょいグロ、死ネタ
パンダと(真希の)恋バナをしていたら本人がやってきてしばかれた。そういう反応するから私達が喜んじゃうのよ。多分これを言ったらもっとしばかれるのでお口にチャックした。肉体派のパンダはともかく私は貧弱術師だから真希を怒らせたら下手したら死ぬ。
「でも真希ってば憂太の前じゃ雰囲気が柔らかくなるよね」
「しゃけ」
「ね。まぁ憂太優しいから理由は分かるけどさーなんかさーニヤニヤしちゃうよねー」
「おかか」
「ダメだよって言われてもニヤニヤしちゃうんだもん」
こりずに棘を部屋に呼んで恋バナ中。血なまぐさい日々を送っているからこういう甘酸っぱい話は大好物なのだ。棘はあんまり乗り気じゃなくてごめんなさいだけど。悟辺りもこういう話は乗ってくれそうだけど…悟はなんかね、テンションがよく分からないからね。私もわいわいするの好きだけど悟はね、スキップしながらバズーカ撃ちまくるようなちょっとイカれたテンションの持ち主だからね、遠慮したい。何より棘とおしゃべりするのがすきだからというのが一番にある。おにぎりの具でしか返ってこないけど棘と一緒にいる時間はすごく楽しい。
「ツナツナ」
「私?私は…うーん、よくわかんない。みんなすき」
「……」
「うんみんなすき。二年のみんなは特にすき」
部屋に飾ってある一年生のときに撮ったみんなの写真に視線を向けていたのでそう答えると、棘は嬉しそうににっこりと目を細めた。棘のこういう表情は胸があったかくなるからすきだな。そう言おうとして、何故か言葉に詰まった。
「うーん?」
「?」
「あっ大丈夫大丈夫」
どうした?と顔で言っていたので慌てて手をふった。本当に?と疑っているような目を向けられて「本当に!」と強く言うと少しして「…ツナ」と返ってきた。このツナは全く納得してないツナだ。
最近こういうのが増えている。何故か棘にだけ言いたいことが言えなくなってしまう。喧嘩したとかではない。二年生の中でも棘と憂太は温厚だからそういうのは一切なくて、パンダは性癖の違いでたまに喧嘩する。真希はよく怒らせる。でもみんな仲良しだ。……ますます謎だ。なんでだろう。すきなのに。
そう心で呟くときしり、と胸が痛んだ。
「?」
「??」
よく分からない症状に何となく胸を押さえると、棘も疑問符をだして胸を押さえ始めた。その様子がなんだかおかしくて思わず笑いの声が出た。最初は急に笑い始めた私に訝しげな顔をしていた棘だったけど「だめだ何だか楽しくなってきたひぃぃ」と私がお腹を抱え始めた頃には顔を破顔させて、でも声が漏れないよう笑っていた。
呼吸が上手く出来なかった。胸から下がとんでもなく熱くて痛いのに、悲鳴ひとつ出てこない。普段は予防注射でさえ騒ぎ立てるのに。こんな私はレアだね、と目の前の棘に言おうとして、ごぷりと口から生暖かいものが出た。その際に胸が一瞬だけ張ってしまって、削れた横腹からも勢いよく何かが出た。
「名前ッ!!」
棘に名前を呼ばれるのは少なかった。
呼ばれる度にいつもドキッとしていたからかその時々のことは全部覚えていた。
棘は強いから自分の言葉を自制することが出来る。棘は優しいからいつも周りの人を気づかっている。自分の言葉で誰かを傷つけないように、毎日を生きている。
……もう一緒にいられないのかぁ
貧弱術師なりに頑張って修業した。棘とは一年遅れだけど、二級まで上がって単独で任務に行けるようになった。今日の任務は棘と一緒で「相性ばっちりな私達なら楽勝だよ」と任務前に軽口を叩いていた。もちろん気なんて抜いていなかった。悪かったのは報告されていた呪霊が私達の手に負えないくらいに育っていたこと。きっとそれだけで、棘がこんな顔をすることはないのだ。一人残っただけでも奇跡なんだから。だから泣かないで。
「名前、名前」
掠れきった声で名前が呼ばれる。呪言を酷使したせいで棘の口からも血が出ていた。いつもだったら喋っちゃだめと言うのだけど、今日くらいはこのまま棘に名を呼ばれていたい。
そう思っていると棘がぎゅっと口を結んで、ゆっくり開いた。
「………………なお、」
最後まで言い切る前に残った右手で棘の口を押さえた。身体はもう動かないと思っていたのに。火事場の馬鹿力というやつかもしれない。
「だ…っぁ゛…め」
私の声も棘に負けず劣らず掠れていた。でもよかった。喉を潰されてなくて。目が見えて。右手が残っていて。
棘の呪言の力は凄絶だ。潰れろと言ったら塵も残らないし、爆ぜろといったら相手は爆散される。だけどその力は諸刃の剣で、強い言葉を放つと最悪の場合棘に返って来てしまう。呪いの力なんだから当たり前だ。だから棘は任務以外で使わないようにしているのだ。誰かを傷つけないように。自分を守るために。だから、駄目だ。
“治れ”なんて言ったら棘がどうなるか分からない。
パンダがいたら棘を殴って!と頼んでいたくらいだ。そのくらい馬鹿なことをしようとしていた。絶対に駄目だ。もう死ぬ人間にそんなことをしちゃ駄目だ。
「っんんん」
「ゅる゛さ、…っな゛い」
「!!」
助けたら許さない。
最期の力を振り絞るように右手と目に力を入れた。棘を睨んだのははじめてだ。棘とは喧嘩をしたことがなかったから。棘とはずっと仲良くしていたかったから。そこまで考えて、この間の胸の痛みを思い出した。今とはまた別の痛みでその痛みの理由すら分からなかった。言葉に詰まる理由も笑ってくれると温かい気持ちになるのも。──ああ、そっか。好きなのか。呆気なく感じるほど簡単な答えだった。
ぽんぽんと右手を優しく叩かれた。棘の目は先ほどのような薄暗い色じゃなかったので、スッと一気に力を抜くとそのまま手の甲で額を強打した。最期になにをやっているんだろう。何となく解せない気持ちになって場違いにふてくされたくなった。
「……」
でも今ので棘の顔が柔らかくなったので結果オーライである。というか少し笑っていた。泣き笑いというものだったけど悲しい顔をされるより全然よかった。
そう思った瞬間に一気に意識が遠くなるのだから難儀なものである。
「と……げ…」
「、名前」
「…………」
好き、と言おうとして口を閉ざした。言葉は呪いだ。棘にとったら生まれたときから受けているもので、生きている限り呪われ続けていくのだ。これ以上背負わせたらいけない。この言葉は残しちゃいけない。
でも口を開けたら言ってしまいそうだったので、強張った顔を必死に動かして笑顔を作った。不細工なんてレベルじゃなかっただろうけど、棘は目に涙をためてにっこり笑ってくれた。きっと今まで見た笑顔のなかで一番好きな顔になった。私のために作ってくれた、優しいかおだったからだ。
名前をあまり呼べなかったのは緊張してしまうから。想いがこもりそうになるから。名前以外にも他の言葉を紡ぎそうになるから。だから呼ばなかった。呼べなかった。でももういいだろう。
「名前、名前、名前」
まだ温かい身体を抱きしめる。ずっと願ってたことが叶ったのに何も感情が沸き上がらない。もう一つの願いを口にする。これが最期だからだ。
「名前、愛してる」
181105
・ちょいグロ、死ネタ
パンダと(真希の)恋バナをしていたら本人がやってきてしばかれた。そういう反応するから私達が喜んじゃうのよ。多分これを言ったらもっとしばかれるのでお口にチャックした。肉体派のパンダはともかく私は貧弱術師だから真希を怒らせたら下手したら死ぬ。
「でも真希ってば憂太の前じゃ雰囲気が柔らかくなるよね」
「しゃけ」
「ね。まぁ憂太優しいから理由は分かるけどさーなんかさーニヤニヤしちゃうよねー」
「おかか」
「ダメだよって言われてもニヤニヤしちゃうんだもん」
こりずに棘を部屋に呼んで恋バナ中。血なまぐさい日々を送っているからこういう甘酸っぱい話は大好物なのだ。棘はあんまり乗り気じゃなくてごめんなさいだけど。悟辺りもこういう話は乗ってくれそうだけど…悟はなんかね、テンションがよく分からないからね。私もわいわいするの好きだけど悟はね、スキップしながらバズーカ撃ちまくるようなちょっとイカれたテンションの持ち主だからね、遠慮したい。何より棘とおしゃべりするのがすきだからというのが一番にある。おにぎりの具でしか返ってこないけど棘と一緒にいる時間はすごく楽しい。
「ツナツナ」
「私?私は…うーん、よくわかんない。みんなすき」
「……」
「うんみんなすき。二年のみんなは特にすき」
部屋に飾ってある一年生のときに撮ったみんなの写真に視線を向けていたのでそう答えると、棘は嬉しそうににっこりと目を細めた。棘のこういう表情は胸があったかくなるからすきだな。そう言おうとして、何故か言葉に詰まった。
「うーん?」
「?」
「あっ大丈夫大丈夫」
どうした?と顔で言っていたので慌てて手をふった。本当に?と疑っているような目を向けられて「本当に!」と強く言うと少しして「…ツナ」と返ってきた。このツナは全く納得してないツナだ。
最近こういうのが増えている。何故か棘にだけ言いたいことが言えなくなってしまう。喧嘩したとかではない。二年生の中でも棘と憂太は温厚だからそういうのは一切なくて、パンダは性癖の違いでたまに喧嘩する。真希はよく怒らせる。でもみんな仲良しだ。……ますます謎だ。なんでだろう。すきなのに。
そう心で呟くときしり、と胸が痛んだ。
「?」
「??」
よく分からない症状に何となく胸を押さえると、棘も疑問符をだして胸を押さえ始めた。その様子がなんだかおかしくて思わず笑いの声が出た。最初は急に笑い始めた私に訝しげな顔をしていた棘だったけど「だめだ何だか楽しくなってきたひぃぃ」と私がお腹を抱え始めた頃には顔を破顔させて、でも声が漏れないよう笑っていた。
呼吸が上手く出来なかった。胸から下がとんでもなく熱くて痛いのに、悲鳴ひとつ出てこない。普段は予防注射でさえ騒ぎ立てるのに。こんな私はレアだね、と目の前の棘に言おうとして、ごぷりと口から生暖かいものが出た。その際に胸が一瞬だけ張ってしまって、削れた横腹からも勢いよく何かが出た。
「名前ッ!!」
棘に名前を呼ばれるのは少なかった。
呼ばれる度にいつもドキッとしていたからかその時々のことは全部覚えていた。
棘は強いから自分の言葉を自制することが出来る。棘は優しいからいつも周りの人を気づかっている。自分の言葉で誰かを傷つけないように、毎日を生きている。
……もう一緒にいられないのかぁ
貧弱術師なりに頑張って修業した。棘とは一年遅れだけど、二級まで上がって単独で任務に行けるようになった。今日の任務は棘と一緒で「相性ばっちりな私達なら楽勝だよ」と任務前に軽口を叩いていた。もちろん気なんて抜いていなかった。悪かったのは報告されていた呪霊が私達の手に負えないくらいに育っていたこと。きっとそれだけで、棘がこんな顔をすることはないのだ。一人残っただけでも奇跡なんだから。だから泣かないで。
「名前、名前」
掠れきった声で名前が呼ばれる。呪言を酷使したせいで棘の口からも血が出ていた。いつもだったら喋っちゃだめと言うのだけど、今日くらいはこのまま棘に名を呼ばれていたい。
そう思っていると棘がぎゅっと口を結んで、ゆっくり開いた。
「………………なお、」
最後まで言い切る前に残った右手で棘の口を押さえた。身体はもう動かないと思っていたのに。火事場の馬鹿力というやつかもしれない。
「だ…っぁ゛…め」
私の声も棘に負けず劣らず掠れていた。でもよかった。喉を潰されてなくて。目が見えて。右手が残っていて。
棘の呪言の力は凄絶だ。潰れろと言ったら塵も残らないし、爆ぜろといったら相手は爆散される。だけどその力は諸刃の剣で、強い言葉を放つと最悪の場合棘に返って来てしまう。呪いの力なんだから当たり前だ。だから棘は任務以外で使わないようにしているのだ。誰かを傷つけないように。自分を守るために。だから、駄目だ。
“治れ”なんて言ったら棘がどうなるか分からない。
パンダがいたら棘を殴って!と頼んでいたくらいだ。そのくらい馬鹿なことをしようとしていた。絶対に駄目だ。もう死ぬ人間にそんなことをしちゃ駄目だ。
「っんんん」
「ゅる゛さ、…っな゛い」
「!!」
助けたら許さない。
最期の力を振り絞るように右手と目に力を入れた。棘を睨んだのははじめてだ。棘とは喧嘩をしたことがなかったから。棘とはずっと仲良くしていたかったから。そこまで考えて、この間の胸の痛みを思い出した。今とはまた別の痛みでその痛みの理由すら分からなかった。言葉に詰まる理由も笑ってくれると温かい気持ちになるのも。──ああ、そっか。好きなのか。呆気なく感じるほど簡単な答えだった。
ぽんぽんと右手を優しく叩かれた。棘の目は先ほどのような薄暗い色じゃなかったので、スッと一気に力を抜くとそのまま手の甲で額を強打した。最期になにをやっているんだろう。何となく解せない気持ちになって場違いにふてくされたくなった。
「……」
でも今ので棘の顔が柔らかくなったので結果オーライである。というか少し笑っていた。泣き笑いというものだったけど悲しい顔をされるより全然よかった。
そう思った瞬間に一気に意識が遠くなるのだから難儀なものである。
「と……げ…」
「、名前」
「…………」
好き、と言おうとして口を閉ざした。言葉は呪いだ。棘にとったら生まれたときから受けているもので、生きている限り呪われ続けていくのだ。これ以上背負わせたらいけない。この言葉は残しちゃいけない。
でも口を開けたら言ってしまいそうだったので、強張った顔を必死に動かして笑顔を作った。不細工なんてレベルじゃなかっただろうけど、棘は目に涙をためてにっこり笑ってくれた。きっと今まで見た笑顔のなかで一番好きな顔になった。私のために作ってくれた、優しいかおだったからだ。
名前をあまり呼べなかったのは緊張してしまうから。想いがこもりそうになるから。名前以外にも他の言葉を紡ぎそうになるから。だから呼ばなかった。呼べなかった。でももういいだろう。
「名前、名前、名前」
まだ温かい身体を抱きしめる。ずっと願ってたことが叶ったのに何も感情が沸き上がらない。もう一つの願いを口にする。これが最期だからだ。
「名前、愛してる」
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