いろいろ
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別邸で祓い屋の会合をするということが書かれた式紙が飛んできた。何時までに来なさいという余計な一言を添えて。最近祓い屋が襲われるという事件が多発しているのになんと無慈悲な。危ないしめんどくさいし会いたくないしという三拍子が揃ったので連絡を聞かなかったことにしてそのまま漫画を読んでいると「来ない場合はあなたのコレクションを本邸へ運びいれます」という一文が付け加えられた。これどうなってるの。てかこれ行かないとダメなやつだ。
げんなりしながら別邸へとやってきた。山の中に建てるの本当に止めて。車で行けるところにしようよ。疲労感を漂わせながら別邸に入るとまじかよおまえ……という視線を一身に受けた。多分このシャツとジーパンのシンプルスタイルのせいだと思われる。着物で山登りって正気の沙汰じゃないと思うんです。
ドン引きしましたって顔を隠すことなく的場様はこっちだと案内される。いつも感情を消してお仕事してるくせにこんなときだけ素直になるのはどういうことなんだ。そんなこんなで的場さんがいるらしい部屋まで到着した。的場さんにいつも付いている従者さんにペコリと頭を下げて中を覗く。
「…………失礼しました」
「こらこら、人の顔を見て立ち去るのはやめなさい」
「的場さんの顔じゃなくてこの部屋のカオスっぷりに立ち去ろうとしただけです」
中には倒れている女性とその女性の傍らに心配げな顔で付いている少年。その少年の横には猫だと思われる生き物。いや、狸かもしれない。そしてそれらを何時もの薄気味悪い笑みで見つめる的場さんによって構成されていた。状況説明されても多分理解できないから帰らせてほしい。
「貴女を呼んだ意味がなくなります。来なさい」
静かに圧をかけてくる的場さん。この人私がほんと無理です……って顔してても華麗に無視するから嫌だ。とりあえず婦女暴行、未成年誘拐、拉致監禁のトリプルパンチはすぐに塀から出られませんよと助言したら「一から説明してあげますから来なさい」と笑みを深くした。こわい……もみ消すつもりだ……
「こちらは夏目貴志くん。今回の件で協力を仰ぎました」
「今回の件……? どれです? 的場さんが騙した金持ち連中の件ですか? それともどこぞの祓い屋たち集めてわっしょいわっしょいしてる件ですか?」
「夏目くん、話を一向に聞くつもりのないこの女性は最近的場一門に加入した名字名前さんです。ああ、それと私の婚約者です」
「名字名前です。家が廃業寸前だったところを的場一門に拾われて気付いたら婚約者になってました。この世に救いはないんだなって思いました」
バチバチしながら自己紹介をすると夏目くんはなんて反応したらいいんだ……と明らかに困った顔をしていた。大人げなくてごめんなさい。
そして夏目くんがこの場にいる理由をざっと説明してもらった。が、あんまりちゃんと聞いてなかったのでよく分からない。的場さんが圧をかけて夏目くんを連れてきたってことは分かった。本当に誘拐だった。権力でねじ伏せていくスタイルそろそろ止めたほうがいいと思う。
「貴女には仮面を封じてもらいます。封印術は名字の得意分野ですからね」
「封印してどうするんです? 飾るの? 悪趣味ですよ?」
「では夏目くん、この方をよろしくお願いしますね」
高校生にお願いされた。つらい。
***
結局仮面は的場さんが弓矢で退治した。何で私を呼んだの的場さん。
「人間からも妖からも狙われるなんて人気者ですね的場さん」
「それなりに忙しいので勘弁してほしいところですね」
「さっさとあげちゃえばいいのに」
そうぼやくと周りの空気が固まったのが分かった。的場さんの従者の人がザッと詰め寄ろうとしたのが見えたが、的場さんが手でそれを制した。顔を的場さんに向けるといつも通りの型にはまった、仮面のような笑みを浮かべていた。
昔はもっと分かりやすい笑顔を作っていたのに。目を覆う包帯のせいだろうか。彼の気持ちがここ数年読めたことがない。
そう思いながら彼の顔を見つめているとニコリ、と音がつきそうな笑顔に変えて「結納の日取りを決めなくてはいけませんね」と言った。一気に現実ぶつけてきたこの人。
「結納までしたら本当に後戻りできなくなるよ……慰謝料払う余裕ないよ私の家……」
「貴女がバックレなければ良い話です」
ここでバックレないとブラック企業に死ぬまで辞められなくなるんですけど。やだなぁ……的場家って老後も安心して過ごせなそう……と自分の未来に戦々恐々としていると的場さんが私の左手首を掴んだ。
「あげませんよ。これがある限り、守ってあげられますから。貴女も、貴女の家も」
そう言って覆われた眼帯に私の手を這わせて的場さんは薄く笑った。
20180104
げんなりしながら別邸へとやってきた。山の中に建てるの本当に止めて。車で行けるところにしようよ。疲労感を漂わせながら別邸に入るとまじかよおまえ……という視線を一身に受けた。多分このシャツとジーパンのシンプルスタイルのせいだと思われる。着物で山登りって正気の沙汰じゃないと思うんです。
ドン引きしましたって顔を隠すことなく的場様はこっちだと案内される。いつも感情を消してお仕事してるくせにこんなときだけ素直になるのはどういうことなんだ。そんなこんなで的場さんがいるらしい部屋まで到着した。的場さんにいつも付いている従者さんにペコリと頭を下げて中を覗く。
「…………失礼しました」
「こらこら、人の顔を見て立ち去るのはやめなさい」
「的場さんの顔じゃなくてこの部屋のカオスっぷりに立ち去ろうとしただけです」
中には倒れている女性とその女性の傍らに心配げな顔で付いている少年。その少年の横には猫だと思われる生き物。いや、狸かもしれない。そしてそれらを何時もの薄気味悪い笑みで見つめる的場さんによって構成されていた。状況説明されても多分理解できないから帰らせてほしい。
「貴女を呼んだ意味がなくなります。来なさい」
静かに圧をかけてくる的場さん。この人私がほんと無理です……って顔してても華麗に無視するから嫌だ。とりあえず婦女暴行、未成年誘拐、拉致監禁のトリプルパンチはすぐに塀から出られませんよと助言したら「一から説明してあげますから来なさい」と笑みを深くした。こわい……もみ消すつもりだ……
「こちらは夏目貴志くん。今回の件で協力を仰ぎました」
「今回の件……? どれです? 的場さんが騙した金持ち連中の件ですか? それともどこぞの祓い屋たち集めてわっしょいわっしょいしてる件ですか?」
「夏目くん、話を一向に聞くつもりのないこの女性は最近的場一門に加入した名字名前さんです。ああ、それと私の婚約者です」
「名字名前です。家が廃業寸前だったところを的場一門に拾われて気付いたら婚約者になってました。この世に救いはないんだなって思いました」
バチバチしながら自己紹介をすると夏目くんはなんて反応したらいいんだ……と明らかに困った顔をしていた。大人げなくてごめんなさい。
そして夏目くんがこの場にいる理由をざっと説明してもらった。が、あんまりちゃんと聞いてなかったのでよく分からない。的場さんが圧をかけて夏目くんを連れてきたってことは分かった。本当に誘拐だった。権力でねじ伏せていくスタイルそろそろ止めたほうがいいと思う。
「貴女には仮面を封じてもらいます。封印術は名字の得意分野ですからね」
「封印してどうするんです? 飾るの? 悪趣味ですよ?」
「では夏目くん、この方をよろしくお願いしますね」
高校生にお願いされた。つらい。
***
結局仮面は的場さんが弓矢で退治した。何で私を呼んだの的場さん。
「人間からも妖からも狙われるなんて人気者ですね的場さん」
「それなりに忙しいので勘弁してほしいところですね」
「さっさとあげちゃえばいいのに」
そうぼやくと周りの空気が固まったのが分かった。的場さんの従者の人がザッと詰め寄ろうとしたのが見えたが、的場さんが手でそれを制した。顔を的場さんに向けるといつも通りの型にはまった、仮面のような笑みを浮かべていた。
昔はもっと分かりやすい笑顔を作っていたのに。目を覆う包帯のせいだろうか。彼の気持ちがここ数年読めたことがない。
そう思いながら彼の顔を見つめているとニコリ、と音がつきそうな笑顔に変えて「結納の日取りを決めなくてはいけませんね」と言った。一気に現実ぶつけてきたこの人。
「結納までしたら本当に後戻りできなくなるよ……慰謝料払う余裕ないよ私の家……」
「貴女がバックレなければ良い話です」
ここでバックレないとブラック企業に死ぬまで辞められなくなるんですけど。やだなぁ……的場家って老後も安心して過ごせなそう……と自分の未来に戦々恐々としていると的場さんが私の左手首を掴んだ。
「あげませんよ。これがある限り、守ってあげられますから。貴女も、貴女の家も」
そう言って覆われた眼帯に私の手を這わせて的場さんは薄く笑った。
20180104
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