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「二宮くん! おねがいだからぁ!」
「断る」
「一緒にリア充になろう! 行事の度にボーダー基地で過ごす日々におさらばしよう!」
「一人でいけ」
「二宮くーん!!!」
二宮の腰にくっつき虫のごとく張り付き、その状態で歩き続ける二宮にも屈さない名前。そしてことこどく名前の主張を拒否する二宮。人目のつくラウンジでやるものだから多くの視線を集めている二人。すれ違った人々はみな二度見している。「お疲れさまです二宮さん……と名字さん!?」といったかんじだ。二宮匡貴と名字名前は中学からの同級生で大学まで同じ、しかもどちらもボーダー隊員という所謂腐れ縁だった。
「なんでよ……二宮くんもお友だちつくれるよ? 友達ほしいでしょ? 私くらいしかいないのに……」
「おまえはただの同僚だ」
「え、友達と思ってたの私だけ……もうやだリア充になるしかない。だから二宮くんも一緒にいこう」
「断る」
「そんな拒否しなくていいじゃん! 酒池肉林の乱交パーティーに行こうって言ってんじゃないんだから!」
名前の言葉でラウンジにいた複数人が撃沈した。詳しく言うと飲み物を吐き出す者、段差を踏み外した者、テーブルで頭をぶつけた者と様々な被害が出た。だが名前も二宮も全く気にしていなかった。
名前がここまで被害を出しても二宮に迫る理由。彼女はふと思ったらしい。「このままでいいのか」と。
成人している隊員は未成年の隊員よりも多く任務を入れられる傾向にある。特に夜間任務。それ自体に文句はない。自分が望んでボーダーに入隊したのだから。しかし気づいてしまったのだ。「女としてこれでいいのか」と。普段から訓練だ任務だとボーダー一色の生活をしていた名前。そして花の大学生活を送る昔からの友人たち。彼女たちはこう言った。「名前って本当に中学から変わんないよね。まだ二宮くんにじゃれてるの?」名前は絶望した。華やかになった友人たちと自分との差に。恋人とのうふふあはーんなやり取りを嬉しそうに話す友人たちに。
「二宮くん連れてきたら合コン入れてくれるって言われたの! 彼氏ほしいの! 一緒にクリスマスしたいの! 初詣一緒に行きたいの! チョコもあげたいの!」
だから二宮くんおねがいぃいいい!! と半泣きになりながら切実に頼む名前。背中が濡れる感覚がした二宮は名前の頭を掴んで叩き落とした。一切の容赦がない二宮の行動に「二宮くんのおに……あくま……」と力無く地に伏せていった名前。しかし手は二宮の靴にへばり付いている。諦めてないらしい。長年の付き合いから殴ろうが蹴り倒そうが絶対に諦めないことを知っていた二宮は息を一つ漏らし、ラウンジの床に引っ付いてすすり泣く名前を回収した。今まで無視していた視線がそろそろ痛かった。
「ともっともだちの頼みくらい聞いてくれてもいいのに……! 中学の佐々岡せんせいも友だちは一生の宝っていってたのにっ! あ、二宮くん……友だちじゃなかった……この八年間は何だったの……ぐず、二宮くんこの間奢ったかき氷かえして……」
「…………」
面倒くさい。しかしここで放置したらもっと面倒くさい事になる。腐れ縁とは難儀なものである。そして真冬にも関わらずかき氷を買って「あ……頭いたい……かき氷だめだ……脳みそにダイレクトアタックしてくる……二宮くんあげる」と半ば無理やり押し付けられたのが奢られたことになっていた。こんな馬鹿と八年も一緒にいるのか……と少しの恐怖を感じながら二宮はラウンジのソファーに名前を置いた。
「彼女なんかいらない。そもそも体の良い理由で今まで断ってきたのに合コンなんか行けるか」
「え、二宮くん別に合コンのお誘いあったの……? ……まあ二宮くん性格悪いけど顔はイケメンさんだもんね。世も末だ」
「さっきの自分の行動をすぐに思い出せ」
へばり付いてみっともなく誘ってきたのをもう忘れたらしい。都合のいい脳みそを持っているのは知っているが付き合いの長い二宮でも流石にイラッとした。
「そもそも好きな男がほしいと中学からほざいていたが一回も出来たことないだろう。そんな状態で男と付き合えるのか。ろくに人を好きになったことのないおまえが」
「……確かに。まず好きな人見つけないと合コンはハードルが高いね。さすが教育実習の先生に結構長い間恋心を抱いてた二宮くんは言うことが違うね。ありがとう」
「脳みそを撃ち抜かれたいようだな」
ラウンジで初恋を暴露された二宮の額には無数の青筋が出ていた。「えっあの二宮さんが……」と心なしか周囲がざわめき出したことに全く気にする様子もなく「でもクリスマス一緒にしたいの」と言葉を続ける名前。なぜ俺はこいつとの付き合いを絶つことが出来ないのかと心でぼやきながら二宮は口を開いた。
「クリスマスなんか街中が馬鹿みたいに騒ぐ日だろ」
「一緒に過ごす人がいる人はそうだよね。私もそっち側に行きたいの! 騒ぎたいの!」
「毎年一緒にいるがあれ以上騒ぐつもりか」
「え……そんなに騒いでるっけ……」
「クリスマスも初詣もバレンタインも付き合わせておいて忘れるんじゃねえ」
「…………恋人行事を全部二宮くんと過ごしてることに絶望した」
「殺すぞ」
そう即座に返した二宮。上記の行事以外に付け加えるなら花見、夏祭り、海開き、花火大会といった行事の全てを一緒に過ごしている。恐らく中学時代から。そのことを思い出した二宮は静かに口元に手を置いた。今まで何人か恋人はできたが、全て名前と過ごしていた。特に悩むことなく。中には苦言を漏らす恋人もいたが「いちいち一緒にいるもんでもねえだろ」と返していた。よく考えるとその理屈はおかしい。特にクリスマスなんて家族以外に優先するとしたら恋人だ。友達ではない。……友達、ではない。
「………!?」
「どうしたの二宮くん。この世の全てに絶望したって顔してるよ」
あながち間違っていなかった。
二宮とっては同じ意味だ。いつからだ、いつから俺はこんな馬鹿のことをと中学時代まで記憶を遡る。二宮は必死だった。出来れば間違っていてほしいと願うくらいに必死だった。そして思い出した。初恋だった教育実習の教師のことを好きになったきっかけを。
『二宮っていっつも名字といるよな。好きなんじゃねーの?』
『はあ?! そんなわけあるかあんな馬鹿! 俺はあの先生みたいな大人が好きなんだよ!』
『二宮くん先生のこと好きなの!? 禁断の恋だ! ねーみんなー! 二宮くんがー!!』
『ふざけんな馬鹿!』
二宮は静かに頭を押さえた。そして中学一年の自分を呪った。照れ隠しで言った言葉を鵜呑みにした中学一年の自分を。周りがはやし立てるからその気になった単純だった中学一年の自分を。思い出したくなかった事実に絶望しかない二宮。つまり自分の本当の初恋は……
「あ! ねえねえ二宮くん! 二宮くんがいなくても合コン来てもいいって! やったね!」
「ふざけんな馬鹿」
「え……急に罵倒された……情緒不安定……?」
やっぱり合コン行きたい? 友達つくろ? と誘ってくる名前を殴りたくて仕方のない二宮は「ふざけんな馬鹿」と再び返した。
「断る」
「一緒にリア充になろう! 行事の度にボーダー基地で過ごす日々におさらばしよう!」
「一人でいけ」
「二宮くーん!!!」
二宮の腰にくっつき虫のごとく張り付き、その状態で歩き続ける二宮にも屈さない名前。そしてことこどく名前の主張を拒否する二宮。人目のつくラウンジでやるものだから多くの視線を集めている二人。すれ違った人々はみな二度見している。「お疲れさまです二宮さん……と名字さん!?」といったかんじだ。二宮匡貴と名字名前は中学からの同級生で大学まで同じ、しかもどちらもボーダー隊員という所謂腐れ縁だった。
「なんでよ……二宮くんもお友だちつくれるよ? 友達ほしいでしょ? 私くらいしかいないのに……」
「おまえはただの同僚だ」
「え、友達と思ってたの私だけ……もうやだリア充になるしかない。だから二宮くんも一緒にいこう」
「断る」
「そんな拒否しなくていいじゃん! 酒池肉林の乱交パーティーに行こうって言ってんじゃないんだから!」
名前の言葉でラウンジにいた複数人が撃沈した。詳しく言うと飲み物を吐き出す者、段差を踏み外した者、テーブルで頭をぶつけた者と様々な被害が出た。だが名前も二宮も全く気にしていなかった。
名前がここまで被害を出しても二宮に迫る理由。彼女はふと思ったらしい。「このままでいいのか」と。
成人している隊員は未成年の隊員よりも多く任務を入れられる傾向にある。特に夜間任務。それ自体に文句はない。自分が望んでボーダーに入隊したのだから。しかし気づいてしまったのだ。「女としてこれでいいのか」と。普段から訓練だ任務だとボーダー一色の生活をしていた名前。そして花の大学生活を送る昔からの友人たち。彼女たちはこう言った。「名前って本当に中学から変わんないよね。まだ二宮くんにじゃれてるの?」名前は絶望した。華やかになった友人たちと自分との差に。恋人とのうふふあはーんなやり取りを嬉しそうに話す友人たちに。
「二宮くん連れてきたら合コン入れてくれるって言われたの! 彼氏ほしいの! 一緒にクリスマスしたいの! 初詣一緒に行きたいの! チョコもあげたいの!」
だから二宮くんおねがいぃいいい!! と半泣きになりながら切実に頼む名前。背中が濡れる感覚がした二宮は名前の頭を掴んで叩き落とした。一切の容赦がない二宮の行動に「二宮くんのおに……あくま……」と力無く地に伏せていった名前。しかし手は二宮の靴にへばり付いている。諦めてないらしい。長年の付き合いから殴ろうが蹴り倒そうが絶対に諦めないことを知っていた二宮は息を一つ漏らし、ラウンジの床に引っ付いてすすり泣く名前を回収した。今まで無視していた視線がそろそろ痛かった。
「ともっともだちの頼みくらい聞いてくれてもいいのに……! 中学の佐々岡せんせいも友だちは一生の宝っていってたのにっ! あ、二宮くん……友だちじゃなかった……この八年間は何だったの……ぐず、二宮くんこの間奢ったかき氷かえして……」
「…………」
面倒くさい。しかしここで放置したらもっと面倒くさい事になる。腐れ縁とは難儀なものである。そして真冬にも関わらずかき氷を買って「あ……頭いたい……かき氷だめだ……脳みそにダイレクトアタックしてくる……二宮くんあげる」と半ば無理やり押し付けられたのが奢られたことになっていた。こんな馬鹿と八年も一緒にいるのか……と少しの恐怖を感じながら二宮はラウンジのソファーに名前を置いた。
「彼女なんかいらない。そもそも体の良い理由で今まで断ってきたのに合コンなんか行けるか」
「え、二宮くん別に合コンのお誘いあったの……? ……まあ二宮くん性格悪いけど顔はイケメンさんだもんね。世も末だ」
「さっきの自分の行動をすぐに思い出せ」
へばり付いてみっともなく誘ってきたのをもう忘れたらしい。都合のいい脳みそを持っているのは知っているが付き合いの長い二宮でも流石にイラッとした。
「そもそも好きな男がほしいと中学からほざいていたが一回も出来たことないだろう。そんな状態で男と付き合えるのか。ろくに人を好きになったことのないおまえが」
「……確かに。まず好きな人見つけないと合コンはハードルが高いね。さすが教育実習の先生に結構長い間恋心を抱いてた二宮くんは言うことが違うね。ありがとう」
「脳みそを撃ち抜かれたいようだな」
ラウンジで初恋を暴露された二宮の額には無数の青筋が出ていた。「えっあの二宮さんが……」と心なしか周囲がざわめき出したことに全く気にする様子もなく「でもクリスマス一緒にしたいの」と言葉を続ける名前。なぜ俺はこいつとの付き合いを絶つことが出来ないのかと心でぼやきながら二宮は口を開いた。
「クリスマスなんか街中が馬鹿みたいに騒ぐ日だろ」
「一緒に過ごす人がいる人はそうだよね。私もそっち側に行きたいの! 騒ぎたいの!」
「毎年一緒にいるがあれ以上騒ぐつもりか」
「え……そんなに騒いでるっけ……」
「クリスマスも初詣もバレンタインも付き合わせておいて忘れるんじゃねえ」
「…………恋人行事を全部二宮くんと過ごしてることに絶望した」
「殺すぞ」
そう即座に返した二宮。上記の行事以外に付け加えるなら花見、夏祭り、海開き、花火大会といった行事の全てを一緒に過ごしている。恐らく中学時代から。そのことを思い出した二宮は静かに口元に手を置いた。今まで何人か恋人はできたが、全て名前と過ごしていた。特に悩むことなく。中には苦言を漏らす恋人もいたが「いちいち一緒にいるもんでもねえだろ」と返していた。よく考えるとその理屈はおかしい。特にクリスマスなんて家族以外に優先するとしたら恋人だ。友達ではない。……友達、ではない。
「………!?」
「どうしたの二宮くん。この世の全てに絶望したって顔してるよ」
あながち間違っていなかった。
二宮とっては同じ意味だ。いつからだ、いつから俺はこんな馬鹿のことをと中学時代まで記憶を遡る。二宮は必死だった。出来れば間違っていてほしいと願うくらいに必死だった。そして思い出した。初恋だった教育実習の教師のことを好きになったきっかけを。
『二宮っていっつも名字といるよな。好きなんじゃねーの?』
『はあ?! そんなわけあるかあんな馬鹿! 俺はあの先生みたいな大人が好きなんだよ!』
『二宮くん先生のこと好きなの!? 禁断の恋だ! ねーみんなー! 二宮くんがー!!』
『ふざけんな馬鹿!』
二宮は静かに頭を押さえた。そして中学一年の自分を呪った。照れ隠しで言った言葉を鵜呑みにした中学一年の自分を。周りがはやし立てるからその気になった単純だった中学一年の自分を。思い出したくなかった事実に絶望しかない二宮。つまり自分の本当の初恋は……
「あ! ねえねえ二宮くん! 二宮くんがいなくても合コン来てもいいって! やったね!」
「ふざけんな馬鹿」
「え……急に罵倒された……情緒不安定……?」
やっぱり合コン行きたい? 友達つくろ? と誘ってくる名前を殴りたくて仕方のない二宮は「ふざけんな馬鹿」と再び返した。