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「………カッコいいなぁ」
ぽつりと呟いた言葉にジト目で見てくる視線がひとつ。そして「話しかければいいだろ」という言葉が名前の胸を貫いた。
「だ、だって、三輪くんとお話してるんだもん! 邪魔できるわけないでしょ!」
「打倒三輪とか言ってたの誰だよ」
携帯を操作しながらそう言った出水の言葉に「う……」と言葉を詰まらせる名前。しかしその視線は教室の入口で三輪と話している米屋に向いていた。
こうやって米屋を眺める名前に付き合って二回目の冬がやってきた。一年前から驚くほど成長しない名前に半ば出水は疲れていた。米屋と一番距離の近い(と名前が勝手に思っている)三輪に嫉妬するほどなのに進展する気配がないからだ。
そして出水が疲れる理由はもう一つある。
「………」
小さな振動と共に送られてきたメッセージ。そこに表示された一文に出水はため息も出なかった。
《名字って電子辞書持ってるかな》
自分で聞け。
出水が米屋たちに視線を向けるとどうみても苛ついている三輪とチラチラこちらを伺っている米屋の姿。確実に名前のことを見ているが名前は机に顔を乗せて「うぐぅ……どうすべきか……」と唸っていた。タイミングが悪すぎる。なんなのおまえら。
こうも分かりやすい両思いは見たことがない。この二人の恋模様はクラスどころか学年中が知ってる。だが殆どの人間が急かすこともせずのほほんと見守っている状況だ。一部はあの飄々とした米屋が振り回されているのを見て楽しんでいる節はあるが邪魔や口添えなどはしない。そのため当の本人達はバレてないと思っている。アホだ。
そして唯一状況を分かっている(と思っている)出水と三輪は毎回この二人の恋愛事に巻き込まれていた。
「いい加減にしろ……そのくらい自分で聞け」
「ちょ、秀次! 見捨てないで!」
「くっつくな馬鹿!」
入口で騒ぐ米屋と三輪を見て「仲良しさんだ……」と羨ましそうな目を向ける名前。この負の連鎖が続いて一年。いい加減にしろと声を大にしていいたい。
「………名字、電子辞書持ってる?」
「え? あ、うん持ってるよ」
「米屋に貸してやって」
そう言うと五秒ほど真顔になり、立ち上がって「あ、ゅだあ!?」と奇声を発した。色々慣れている出水はそのまま話を続ける
「次当たるんだって」
「そ、それは大変だ……!」
米屋バカだからね! と堂々と言う名前。あいつに聞こえるぞ。
だが恥ずかしさよりも米屋の成績の方が心配になったらしくカバンから電子辞書を出して米屋たちに向かって行った。
そして二メートル手前ほどで止まった。距離感……と小さく呟いた出水に近くにいたクラスメートが苦笑を漏らす。
「よ、米屋」
「! 、名字」
身体に力を入れて構え出した二人。なにあいつら戦うの?
そして「辞書!」と単語だけを叫び電子辞書を右手に持って掲げる名前。意味が分かったらしい米屋は顔をこの上なく緩ませながら上下に首を振った。首振り人形かおまえは。
「………」
「…………」
そしてどうしようと言った顔をした名前と米屋。いや普通に渡せよ! というのは様子を伺っていたクラスメートたちの突っ込みだ。普通だったらここまで苦労しないというのが出水と三輪の感想だった。
膠着状態がしばらく続き、先に動いたのは米屋だった。
「じ、辞書貸してくんね?」
「まっ任せてください」
「ま、任されます」
なんだこの会話。
ギギギ、とブリキのおもちゃみたいに動いた名前は両手で辞書を持ち、米屋に差し出した。そして両手で受け取る米屋。卒業式さながらのそのやりとりは30秒ほどかけて行われた。なげーよ。呆れかえる出水だが二人はやり切った顔で満足そうだった。
「……ありがとな、」
「! うんっ」
そして幸せそうな顔をしてお互いを見合う。バックにお花畑を浮かべ始めた二人にずっと近くで見せつけられていた三輪が深くため息をついた。
(……名字って白米、好きなのか)
(は? )
(辞書に『米 好き どうする』って残ってた)
(………)
(おにぎりとかやったら喜ぶ、かね)
(………いいんじゃないか)
ぽつりと呟いた言葉にジト目で見てくる視線がひとつ。そして「話しかければいいだろ」という言葉が名前の胸を貫いた。
「だ、だって、三輪くんとお話してるんだもん! 邪魔できるわけないでしょ!」
「打倒三輪とか言ってたの誰だよ」
携帯を操作しながらそう言った出水の言葉に「う……」と言葉を詰まらせる名前。しかしその視線は教室の入口で三輪と話している米屋に向いていた。
こうやって米屋を眺める名前に付き合って二回目の冬がやってきた。一年前から驚くほど成長しない名前に半ば出水は疲れていた。米屋と一番距離の近い(と名前が勝手に思っている)三輪に嫉妬するほどなのに進展する気配がないからだ。
そして出水が疲れる理由はもう一つある。
「………」
小さな振動と共に送られてきたメッセージ。そこに表示された一文に出水はため息も出なかった。
《名字って電子辞書持ってるかな》
自分で聞け。
出水が米屋たちに視線を向けるとどうみても苛ついている三輪とチラチラこちらを伺っている米屋の姿。確実に名前のことを見ているが名前は机に顔を乗せて「うぐぅ……どうすべきか……」と唸っていた。タイミングが悪すぎる。なんなのおまえら。
こうも分かりやすい両思いは見たことがない。この二人の恋模様はクラスどころか学年中が知ってる。だが殆どの人間が急かすこともせずのほほんと見守っている状況だ。一部はあの飄々とした米屋が振り回されているのを見て楽しんでいる節はあるが邪魔や口添えなどはしない。そのため当の本人達はバレてないと思っている。アホだ。
そして唯一状況を分かっている(と思っている)出水と三輪は毎回この二人の恋愛事に巻き込まれていた。
「いい加減にしろ……そのくらい自分で聞け」
「ちょ、秀次! 見捨てないで!」
「くっつくな馬鹿!」
入口で騒ぐ米屋と三輪を見て「仲良しさんだ……」と羨ましそうな目を向ける名前。この負の連鎖が続いて一年。いい加減にしろと声を大にしていいたい。
「………名字、電子辞書持ってる?」
「え? あ、うん持ってるよ」
「米屋に貸してやって」
そう言うと五秒ほど真顔になり、立ち上がって「あ、ゅだあ!?」と奇声を発した。色々慣れている出水はそのまま話を続ける
「次当たるんだって」
「そ、それは大変だ……!」
米屋バカだからね! と堂々と言う名前。あいつに聞こえるぞ。
だが恥ずかしさよりも米屋の成績の方が心配になったらしくカバンから電子辞書を出して米屋たちに向かって行った。
そして二メートル手前ほどで止まった。距離感……と小さく呟いた出水に近くにいたクラスメートが苦笑を漏らす。
「よ、米屋」
「! 、名字」
身体に力を入れて構え出した二人。なにあいつら戦うの?
そして「辞書!」と単語だけを叫び電子辞書を右手に持って掲げる名前。意味が分かったらしい米屋は顔をこの上なく緩ませながら上下に首を振った。首振り人形かおまえは。
「………」
「…………」
そしてどうしようと言った顔をした名前と米屋。いや普通に渡せよ! というのは様子を伺っていたクラスメートたちの突っ込みだ。普通だったらここまで苦労しないというのが出水と三輪の感想だった。
膠着状態がしばらく続き、先に動いたのは米屋だった。
「じ、辞書貸してくんね?」
「まっ任せてください」
「ま、任されます」
なんだこの会話。
ギギギ、とブリキのおもちゃみたいに動いた名前は両手で辞書を持ち、米屋に差し出した。そして両手で受け取る米屋。卒業式さながらのそのやりとりは30秒ほどかけて行われた。なげーよ。呆れかえる出水だが二人はやり切った顔で満足そうだった。
「……ありがとな、」
「! うんっ」
そして幸せそうな顔をしてお互いを見合う。バックにお花畑を浮かべ始めた二人にずっと近くで見せつけられていた三輪が深くため息をついた。
(……名字って白米、好きなのか)
(は? )
(辞書に『米 好き どうする』って残ってた)
(………)
(おにぎりとかやったら喜ぶ、かね)
(………いいんじゃないか)