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「鋼ちゃーん」
「ん、なんだ名前」
「鼻血でた」
その瞬間、名前と背中合わせに座っていた村上は勢いよく名前の肩を持ち、身体を反転させた。そして自分の服の裾で名前の鼻を押さえる。逆の手では素早くティッシュ箱を掴み、器用に片手で小さく千切る。そしてそれを名前の鼻に押し込んだ。
「ふごっ」
「上を向くな、少し下に顔を……あぁ真上を向くなっ」
「顔ついた」
「洗いに行くぞ」
真上を向いたせいで顔にまで血がついたらしい。ティッシュを名前の鼻に当てた状態で村上と名前は洗面所まで向かって行った。
この一連の流れを見ていた別役太一は相変わらず変わらないの二人のやりとりにため息をついた。
「もーなんなんですかあの二人。ここ公共の場ですよ!」
「あはは……」
太一の言葉に苦笑しながら頬を掻く来馬。
鈴鳴第一のスナイパーである名字名前は一言で言えばどんくさい。すぐ転び、ぶつかり、流血する。彼女にとって電信柱は電波を送受信するものではなくただの障害物でしかない。なぜおまえボーダーに入った? と言われるレベルである。実際のところ、戦闘になれば普段の動きが嘘のように動けるのだが、日常生活は何かに呪われたかのようにどんくさくなる。
「止まったか?」
「うい」
「口もゆすいでおけ」
んー、と村上の言葉に素直に従い、口をゆすぐ名前。その後ろでタオルを用意する村上。用意周到である。
名前と幼なじみである村上は名前のどんくささに慣れていた。幼少期から一日三回は転び、一日五回は(人・物問わず)ぶつかり、忘れ物は毎日の恒例行事と化していた。普通の人間だったら気をつけようとなにかしらの努力をしたり、落ち込んだりするのだが当の本人は「毎日賑やかでいいよね」と異常なほどにポジティブだった。そして幼なじみの村上も「これも個性の一つだ」とこれまたポジティブ思考だった。
そんなとき起きたネイバー侵攻。どんくさいというスキルに加え、名前はトリオン量が多い人間だった。トリオン兵に狙われ続けた名前を見て流石に洒落にならないと感じた村上はボーダーに入隊した。が、村上が守ろうとした張本人が「鋼ちゃんがやるならわたしもやるー」となんとも緩い理由でボーダーに入隊。名前に関しては思考がポジティブ化する村上は「自衛も出来るようになるし近くにいたら助けられるしいいか」とあっさり入隊を認めた。
「ふごっ!」
「! どうした」
「コップで前歯うった……」
「欠けてないか? 見せてみろ」
それでも過保護は治らなかったが。彼の真面目な性分もあり、半ば本気で自分がいないと名前は死ぬと考えている節がある。周りから言わせてみたらアホかと一刀両断される考えだ。現に彼らの同級生の荒船は真顔でそう言った。「あれ以上甘やかしたらろくな大人にならねーぞ」という言葉にも「別に甘やかしてはないよ。俺の仕事だからやってるだけだ」と極々普通の顔で返した。仕事ってなんだと思った荒船だがそれ以上追求することはしなかった。賢明な判断である。
「あ、この間のランキングでやっと五位になったよ」
「ああ知ってる。おめでとう」
「あとは佐鳥を抜くだけ」
がんばる、と緩い笑みを浮かべる名前に村上も口角を上げ、名前の頭に手を置いた。
どんくさい名前だが、実際のところスナイパー五位の実力を持っていた。しかし、入隊の件と同様に「鋼ちゃんアタッカーの中で七位なの? わたしも個人ランクでおんなじ順位目指すー」と村上と同じが良かったという他の人間に聞かれたら怒られそうな理由だった。「スナイパーを舐めているのか」「いいじゃねえか可愛くて。ほら名前ー、お祝いに飯奢ってやるぞー」「当真ありがとう~」といったやり取りが実際あった。名前の師匠は当真であるため名前も感覚派スナイパーだった。そして師匠と同じく奈良坂とはすこぶる相性が悪いが本人は気づいていない。人間関係にもどんくさいのは影響している。
「この間佐鳥とのランク戦で6対4だったから次は勝つ」
「この間……ああ、ライトニング二刀流で佐鳥を追いかけ回してたやつか」
スナイパーの基本を丸々無視した異質勝負な上、佐鳥を追いかけている名前は笑顔だったため試合を見ていた人間は全員引いていた。「楽しかったね佐鳥」「もう先輩とランク戦したくない!」「なんで泣いてるの?」試合後の佐鳥は半泣きだった。それを思い出した村上はほどほどにしてやったらどうだ? と口を開こうとしたが先に名前が口を開く。
「もうちょっとで鋼ちゃんとおんなじだね。楽しみだなぁ」
「…………そうだな」
あまりにも嬉しそうにそう言うので村上はそう返答するしかなかった。佐鳥すまない、と心の中で謝る村上。これでも名前に甘いことに気づいていない村上は完全に毒されている。
(鋼! )
(どうした荒船)
(おまえ一回でいいから名前を怒れ! )
(? なにかあったのか)
(なにかじゃねえよ! あいつスナイパーのくせに前に出るわ弧月相手にライトニングで殴りかかってくるわむちゃくちゃなんだよッ! )
(元気でいいじゃないか)
(おまえはあいつの父親か! )
「ん、なんだ名前」
「鼻血でた」
その瞬間、名前と背中合わせに座っていた村上は勢いよく名前の肩を持ち、身体を反転させた。そして自分の服の裾で名前の鼻を押さえる。逆の手では素早くティッシュ箱を掴み、器用に片手で小さく千切る。そしてそれを名前の鼻に押し込んだ。
「ふごっ」
「上を向くな、少し下に顔を……あぁ真上を向くなっ」
「顔ついた」
「洗いに行くぞ」
真上を向いたせいで顔にまで血がついたらしい。ティッシュを名前の鼻に当てた状態で村上と名前は洗面所まで向かって行った。
この一連の流れを見ていた別役太一は相変わらず変わらないの二人のやりとりにため息をついた。
「もーなんなんですかあの二人。ここ公共の場ですよ!」
「あはは……」
太一の言葉に苦笑しながら頬を掻く来馬。
鈴鳴第一のスナイパーである名字名前は一言で言えばどんくさい。すぐ転び、ぶつかり、流血する。彼女にとって電信柱は電波を送受信するものではなくただの障害物でしかない。なぜおまえボーダーに入った? と言われるレベルである。実際のところ、戦闘になれば普段の動きが嘘のように動けるのだが、日常生活は何かに呪われたかのようにどんくさくなる。
「止まったか?」
「うい」
「口もゆすいでおけ」
んー、と村上の言葉に素直に従い、口をゆすぐ名前。その後ろでタオルを用意する村上。用意周到である。
名前と幼なじみである村上は名前のどんくささに慣れていた。幼少期から一日三回は転び、一日五回は(人・物問わず)ぶつかり、忘れ物は毎日の恒例行事と化していた。普通の人間だったら気をつけようとなにかしらの努力をしたり、落ち込んだりするのだが当の本人は「毎日賑やかでいいよね」と異常なほどにポジティブだった。そして幼なじみの村上も「これも個性の一つだ」とこれまたポジティブ思考だった。
そんなとき起きたネイバー侵攻。どんくさいというスキルに加え、名前はトリオン量が多い人間だった。トリオン兵に狙われ続けた名前を見て流石に洒落にならないと感じた村上はボーダーに入隊した。が、村上が守ろうとした張本人が「鋼ちゃんがやるならわたしもやるー」となんとも緩い理由でボーダーに入隊。名前に関しては思考がポジティブ化する村上は「自衛も出来るようになるし近くにいたら助けられるしいいか」とあっさり入隊を認めた。
「ふごっ!」
「! どうした」
「コップで前歯うった……」
「欠けてないか? 見せてみろ」
それでも過保護は治らなかったが。彼の真面目な性分もあり、半ば本気で自分がいないと名前は死ぬと考えている節がある。周りから言わせてみたらアホかと一刀両断される考えだ。現に彼らの同級生の荒船は真顔でそう言った。「あれ以上甘やかしたらろくな大人にならねーぞ」という言葉にも「別に甘やかしてはないよ。俺の仕事だからやってるだけだ」と極々普通の顔で返した。仕事ってなんだと思った荒船だがそれ以上追求することはしなかった。賢明な判断である。
「あ、この間のランキングでやっと五位になったよ」
「ああ知ってる。おめでとう」
「あとは佐鳥を抜くだけ」
がんばる、と緩い笑みを浮かべる名前に村上も口角を上げ、名前の頭に手を置いた。
どんくさい名前だが、実際のところスナイパー五位の実力を持っていた。しかし、入隊の件と同様に「鋼ちゃんアタッカーの中で七位なの? わたしも個人ランクでおんなじ順位目指すー」と村上と同じが良かったという他の人間に聞かれたら怒られそうな理由だった。「スナイパーを舐めているのか」「いいじゃねえか可愛くて。ほら名前ー、お祝いに飯奢ってやるぞー」「当真ありがとう~」といったやり取りが実際あった。名前の師匠は当真であるため名前も感覚派スナイパーだった。そして師匠と同じく奈良坂とはすこぶる相性が悪いが本人は気づいていない。人間関係にもどんくさいのは影響している。
「この間佐鳥とのランク戦で6対4だったから次は勝つ」
「この間……ああ、ライトニング二刀流で佐鳥を追いかけ回してたやつか」
スナイパーの基本を丸々無視した異質勝負な上、佐鳥を追いかけている名前は笑顔だったため試合を見ていた人間は全員引いていた。「楽しかったね佐鳥」「もう先輩とランク戦したくない!」「なんで泣いてるの?」試合後の佐鳥は半泣きだった。それを思い出した村上はほどほどにしてやったらどうだ? と口を開こうとしたが先に名前が口を開く。
「もうちょっとで鋼ちゃんとおんなじだね。楽しみだなぁ」
「…………そうだな」
あまりにも嬉しそうにそう言うので村上はそう返答するしかなかった。佐鳥すまない、と心の中で謝る村上。これでも名前に甘いことに気づいていない村上は完全に毒されている。
(鋼! )
(どうした荒船)
(おまえ一回でいいから名前を怒れ! )
(? なにかあったのか)
(なにかじゃねえよ! あいつスナイパーのくせに前に出るわ弧月相手にライトニングで殴りかかってくるわむちゃくちゃなんだよッ! )
(元気でいいじゃないか)
(おまえはあいつの父親か! )