この世界の端っこで
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文字書きが出来るようになったので求人をキバナの家に届けて貰うようにしてもらった。けどキバナに見つかるやいなや没収された。
「なんで!」
「お前はまだこの世界の常識が分かっていない。異世界人ってバレてもいいのか?」
依然キバナに言われたことを思い出す。さらわれる、実験対象……。背筋がぞっとした。
「……そんなに私なじんでない?」
「ポケモンを知らないなんて有り得ないからな」
元の世界でいえば犬ってなに? って言ってるようなものなのかな。確かにそれは珍しいですまないレベルだ。箱入り娘ともまた違う。それに最近まで文字の読みとりも書くこともままならなかった。なんならまだ読むのは遅いし、字も下手くそだ。まだ働く段階じゃないのか……と落ち込む私の頭をキバナはポンポンと叩く。
「トレーナーズスクールを出たら就職先の斡旋もしてもらえるし、オレの伝手もある。焦らなくていいんだナマエ」
「ううーん……」
「そんなに早くオレ様を一人暮らしに戻したいのか?」
キバナの言葉に目を瞬いているとキバナは笑って「お前との生活、楽しいんだぜ?」と言った。
「お前は違うのか?」
「違わ、ない」
「ならこれはいらないな」
求人を持ってキバナは自分の部屋に行った。なんか丸め込まれた気がするけど、この世界の住人の、それにキバナの言葉だ。一番信頼している人の言葉。
「よし。出来ることからやろう」
まずは読みとりと書きとりをスムーズに出来るようになろう。そう思って使わせてもらっている客間に戻って、キバナの実家から送ってもらった軽い読み物を何冊も読み込んだ。
「…………どっかに行くのはまだ早いっつーの」
キバナが苦い顔をしてゴミ箱に求人を捨てていることも知らず、私は夕暮れまで読みふけっていた。
そして次の日の朝食時。
キバナから「ん」と渡されたのはスマホだった。途端に席から立ち上がって警戒する私にキバナは呆れたように「ロトムは入ってない」と言った。
「それに前にオレ様が使ってた型だから機種代もかかってない」
「スマホとは通信費がかかるものです」
「そういうと思って格安会社のにした。昼飯代と変わらねーから受け取れ」
「ぐぬぬ……」
「連絡とれないほうが不便だ。お前今度トレーナーズスクールの遠足行くだろ? 心配なんだよ」
キバナはそう言ってたれ目を下げる。
トレーナーズスクールの遠足とは二泊三日でエンジンシティ側のワイルドエリアでテントを張って寝泊まりをするイベントだ。ワイルドエリア=危険のイメージがあった私はそのイベント正気か? と思ったんだけどエンジンシティ側のワイルドエリアはトレーナーなら入ることが出来て、スクールに通っている生徒でも同伴があれば入っていいらしい。ただしエンジンシティの入り口近くにテントは張る。これは絶対だそうだ。
「オレを安心させると思って、な?」
「……ありがとうございます」
スマホを受け取るとキバナは目を細めてにぱっと笑った。キバナのこの笑い方はなんか心がそわそわしてダメだ。ぐぬぬ……となっていると「早く朝飯食うぞ」とキバナはご機嫌に言った。
しれっとロトムをスマホに入れようとしたキバナにそれは断固拒否した。勝手に動くスマホなんて落ちつかないなんてものじゃない。
****
遠足当日になった。エンジンシティのポケモンセンター前で集合だ。そこで二人一組でチームを組むことになっている。三日間一緒に過ごす仲間である。ただし相手は12歳。7歳差はキツいと思ってたけど組む子はよく私と話す子で、先生が気を回してくれたのだと思った。
「ねーちゃんよろしくな」
「タカナリよろしく」
タカナリは手を顔の横で挙げたので反射的にチョキを出すと「じゃんけんじゃねー!」と私の手のひらをとってパン! と叩いた。
「ねーちゃん戦えないから守ってやるよ」
「それは本当によろしく」
タカナリはスクールでトップの成績なので頼りになる。12歳に頼る19歳とは本当に情けないけどポケモン関連は「出来る」とか「大丈夫」とか過信したら駄目とキバナから口酸っぱく言われている。ポケモンは優しくて、強くて、怖い存在なんだとキバナは言う。あんなに多くのポケモンと暮らすキバナが言うんだから絶対にキバナの言葉は忘れてはいけない。なんなら怖いはよく知っている。強制サバイバルは忘れられない。
「エンジンシティのジムトレーナーがサポートに来てくれるんだよなー。おれカブさんのファンなんだよ」
「ほう、カブさんのファンとはお目が高い」
カブさんって誰だろう。
「ねーちゃんもそう思う? おれのパートナーはガーディだからカブさんみたいなウインディにするのが夢なんだ」
ガーディは分かる。イワンコと同じで犬っぽいポケモンだ。犬っぽいポケモン同士で気が合うのかよく一緒に遊んでいる。
「ジムチャレンジの最初の壁って言われてるカブさんに次こそ勝つんだ」
「ジムチャレンジ……」
確か一年に一回ある催しだったはず。それで各地を回ってポケモンバトルをするんだとか。勝ち残ったジムチャレンジャーは……どうなるんだっけ? 北に行くのは覚えてる。なんか北に行くだけだと罰ゲームみたいに聞こえるな。なんだっけ。
「はーい集合。チームと一緒にいますね?」
「「「はーい」」」
「じゃあ今回お世話になるジムトレーナーの皆さんを紹介するから静かに聞いてください」
そこで現れたのは赤いユニフォームに身を包んだ男女10人くらい。そして同じユニフォームの肩にタオルをかけた貫禄のある男性が現れてから静かにと言われてたスクールの子達は悲鳴をあげた。「カブさん!?」とタカナリが叫んでる。
「ジムリーダーが何で……」
「ジムリーダー?」
なんじゃそら。そう思ってたらポケモンセンターから見慣れたパーカーを着た背の高い男が現れて悲鳴は一層高くなった。
「おーおー元気だな」
八重歯を出して笑うのはキバナだった。誰かが「ナックルシティのジムリーダーが何で!?」と言う。……もしかしてキバナはすごい人なのでは? そんな疑惑の目でキバナを見ているとパチッと目があって、にぱっと笑った。その顔やめろ。
「なんで!」
「お前はまだこの世界の常識が分かっていない。異世界人ってバレてもいいのか?」
依然キバナに言われたことを思い出す。さらわれる、実験対象……。背筋がぞっとした。
「……そんなに私なじんでない?」
「ポケモンを知らないなんて有り得ないからな」
元の世界でいえば犬ってなに? って言ってるようなものなのかな。確かにそれは珍しいですまないレベルだ。箱入り娘ともまた違う。それに最近まで文字の読みとりも書くこともままならなかった。なんならまだ読むのは遅いし、字も下手くそだ。まだ働く段階じゃないのか……と落ち込む私の頭をキバナはポンポンと叩く。
「トレーナーズスクールを出たら就職先の斡旋もしてもらえるし、オレの伝手もある。焦らなくていいんだナマエ」
「ううーん……」
「そんなに早くオレ様を一人暮らしに戻したいのか?」
キバナの言葉に目を瞬いているとキバナは笑って「お前との生活、楽しいんだぜ?」と言った。
「お前は違うのか?」
「違わ、ない」
「ならこれはいらないな」
求人を持ってキバナは自分の部屋に行った。なんか丸め込まれた気がするけど、この世界の住人の、それにキバナの言葉だ。一番信頼している人の言葉。
「よし。出来ることからやろう」
まずは読みとりと書きとりをスムーズに出来るようになろう。そう思って使わせてもらっている客間に戻って、キバナの実家から送ってもらった軽い読み物を何冊も読み込んだ。
「…………どっかに行くのはまだ早いっつーの」
キバナが苦い顔をしてゴミ箱に求人を捨てていることも知らず、私は夕暮れまで読みふけっていた。
そして次の日の朝食時。
キバナから「ん」と渡されたのはスマホだった。途端に席から立ち上がって警戒する私にキバナは呆れたように「ロトムは入ってない」と言った。
「それに前にオレ様が使ってた型だから機種代もかかってない」
「スマホとは通信費がかかるものです」
「そういうと思って格安会社のにした。昼飯代と変わらねーから受け取れ」
「ぐぬぬ……」
「連絡とれないほうが不便だ。お前今度トレーナーズスクールの遠足行くだろ? 心配なんだよ」
キバナはそう言ってたれ目を下げる。
トレーナーズスクールの遠足とは二泊三日でエンジンシティ側のワイルドエリアでテントを張って寝泊まりをするイベントだ。ワイルドエリア=危険のイメージがあった私はそのイベント正気か? と思ったんだけどエンジンシティ側のワイルドエリアはトレーナーなら入ることが出来て、スクールに通っている生徒でも同伴があれば入っていいらしい。ただしエンジンシティの入り口近くにテントは張る。これは絶対だそうだ。
「オレを安心させると思って、な?」
「……ありがとうございます」
スマホを受け取るとキバナは目を細めてにぱっと笑った。キバナのこの笑い方はなんか心がそわそわしてダメだ。ぐぬぬ……となっていると「早く朝飯食うぞ」とキバナはご機嫌に言った。
しれっとロトムをスマホに入れようとしたキバナにそれは断固拒否した。勝手に動くスマホなんて落ちつかないなんてものじゃない。
****
遠足当日になった。エンジンシティのポケモンセンター前で集合だ。そこで二人一組でチームを組むことになっている。三日間一緒に過ごす仲間である。ただし相手は12歳。7歳差はキツいと思ってたけど組む子はよく私と話す子で、先生が気を回してくれたのだと思った。
「ねーちゃんよろしくな」
「タカナリよろしく」
タカナリは手を顔の横で挙げたので反射的にチョキを出すと「じゃんけんじゃねー!」と私の手のひらをとってパン! と叩いた。
「ねーちゃん戦えないから守ってやるよ」
「それは本当によろしく」
タカナリはスクールでトップの成績なので頼りになる。12歳に頼る19歳とは本当に情けないけどポケモン関連は「出来る」とか「大丈夫」とか過信したら駄目とキバナから口酸っぱく言われている。ポケモンは優しくて、強くて、怖い存在なんだとキバナは言う。あんなに多くのポケモンと暮らすキバナが言うんだから絶対にキバナの言葉は忘れてはいけない。なんなら怖いはよく知っている。強制サバイバルは忘れられない。
「エンジンシティのジムトレーナーがサポートに来てくれるんだよなー。おれカブさんのファンなんだよ」
「ほう、カブさんのファンとはお目が高い」
カブさんって誰だろう。
「ねーちゃんもそう思う? おれのパートナーはガーディだからカブさんみたいなウインディにするのが夢なんだ」
ガーディは分かる。イワンコと同じで犬っぽいポケモンだ。犬っぽいポケモン同士で気が合うのかよく一緒に遊んでいる。
「ジムチャレンジの最初の壁って言われてるカブさんに次こそ勝つんだ」
「ジムチャレンジ……」
確か一年に一回ある催しだったはず。それで各地を回ってポケモンバトルをするんだとか。勝ち残ったジムチャレンジャーは……どうなるんだっけ? 北に行くのは覚えてる。なんか北に行くだけだと罰ゲームみたいに聞こえるな。なんだっけ。
「はーい集合。チームと一緒にいますね?」
「「「はーい」」」
「じゃあ今回お世話になるジムトレーナーの皆さんを紹介するから静かに聞いてください」
そこで現れたのは赤いユニフォームに身を包んだ男女10人くらい。そして同じユニフォームの肩にタオルをかけた貫禄のある男性が現れてから静かにと言われてたスクールの子達は悲鳴をあげた。「カブさん!?」とタカナリが叫んでる。
「ジムリーダーが何で……」
「ジムリーダー?」
なんじゃそら。そう思ってたらポケモンセンターから見慣れたパーカーを着た背の高い男が現れて悲鳴は一層高くなった。
「おーおー元気だな」
八重歯を出して笑うのはキバナだった。誰かが「ナックルシティのジムリーダーが何で!?」と言う。……もしかしてキバナはすごい人なのでは? そんな疑惑の目でキバナを見ているとパチッと目があって、にぱっと笑った。その顔やめろ。