この世界の端っこで
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鎧の孤島でトレーニングをしているときだった。鍛錬平原で相棒のジュラルドンといるとガルーラが近づいてきた。バトルかと様子を見ているとガルーラは自分のお腹の袋をポンポン叩くだけでバトルの体勢に入っていない。もぞもぞ動いている袋に子供が入って怪我でもしているのか、と思ったが子供は顔を出している。そしてよく見たらガルーラの隣にイワンコもいた。イワンコは心配そうに眉を下げて袋を見ている。ガルーラは「ガル、ガル、ガルル」と穏やかな声を出して袋を撫でた。
「ううう……信じないもんね! もうここから出ないもんね!」
そしたら袋から声がした。は? と反射的にキバナから声が出たが、袋の中の人物? には届かなかったらしい。
「ここが私の安住地だから! おやっさんこれからもよろしくね!」
「ガルぅ」
安住地呼ばわりされたガルーラは困った顔をした。そしておやっさん呼ばわりしているが、ガルーラはメスしかいない。
ガルーラに「近づいていいか?」と訊ねるとコクンと頷かれたので歩いて膨らんだ袋の下へ行く。そして袋を撫でてから中を覗きこんだ。
「おやっさん、外なんかみたくな……い……」
「…………」
そこには砂埃が顔についた女がいた。なんでだ。色んな疑問が一斉にわいたが、とりあえず飲み込んで質問する。
「お前のガルーラか?」
「ガルーラってなに?」
「このポケモンだ」
「ポケモンってなに」
「…………」
女の信じられない言葉に唖然としていると女は「というか」と言って袋から立ち上がった。
「第一村人ぉ!!!」
そしてキバナに抱きついてきた。ぎょっとしたが、女の声は涙ぐんでいて、というか現在進行形で嗚咽を漏らして泣いている。キバナとの身長差からえらいことになっているが、つーかまだ女の下半身はガルーラの袋に入ったままだが、女が泣いてたら男は黙って胸を貸すものだ。ポンポンと頭を撫でて空を仰いだ。
キバナを見て出た第一村人という言葉。砂埃が身体中についている状態。そしてなによりも「ポケモンってなに?」という有り得ない言葉。
たまにいる。極稀にいる。ポケモンの能力に巻き込まれて記憶が吹っ飛んだり、今までいた場所と違う場所に飛ばされてしまう現象。ポケモン事故と呼ばれるそれはどの地方でも頭を悩まされている現象だ。
「ガラル地方って分かるか?」
「しっしらないぃ」
「そうかぁ。お前のいた場所は?」
「日本」
知らねえなぁ。
これはもうポケモン事故だろう。その元凶のポケモンの事まで忘れちまってなんて不憫な。その状態で飛ばされたのならどれだけ怖かっただろうか。女から見たら謎の生物が闊歩するこの島で。ガルーラは遭難した子供を育てたという記録がある。この所在なさげな女をほっとけなかったのだろう。そしてずっとガルーラの隣で座っているイワンコもそうなんだろう。イワンコは昔から人と暮らしてきたポケモンでトレーナーが悲しんでいると離れないという。女をトレーナーと認めたのかもしれない。女には一向に伝わっていないが。
「ううっ、ううー人間がいる……っ!」
「おう」
「デッカい鳥に追いかけられたり、牛がモー! って怒ったり、両手が刃物のやつに威嚇されたりぃ!!」
散々な目に合ってるなこの女。ポケモンの知識があってもトレーナーじゃない人間だったら普通に怖い。
「ありがとうぉ! 第一村人ぉ!」
「オレ様はキバナだ」
「えっ……自分を様付け……」
「おい、なんでガルーラの袋に戻る」
「ジャイアン以外で初めてみた」
「誰だそいつは」
「映画のときは良い奴ぶってるけど普段はクズです」
「一緒にすんな」
まあ涙が止まったからいいか。
袋に手を突っ込んで女を取り出して抱き上げる。ボロボロの裸足だったのでそのまま横抱きにした。
「オレが保護してやる。がんばったな」
「……ジャイアン」
「ジャイアン言うなキバナだ」
ジュラルドンをボールに戻すと女は「カチコチ動物が消えた!?」と騒ぎ出して吹き出してしまった。そりゃあ合金ポケモンと言われているが感想はそれか。ポケモンの知識がないと言うのはなかなか新鮮な発想をするもんだなとキバナは思った。
「イワンコ、お前はどうする」
「ワン!」
「そうか」
真っ直ぐに女を見て鳴いたので予備のモンスターボールを女に渡した。
「なにこれ」
「モンスターボールだ」
「名前が物騒なんですけど」
「それをこのイワンコに当ててみろ」
「動物虐待!?」
違う。そんな痛がるまで当てろとは言っていない。女はキバナの言葉におののいてぺっ! とボールを下に落とした。
「こら」
「だってぶつけろとか言うから。……あっ」
「あ」
落ちたボールにイワンコが自分の手でボタンを押してから中に入っていった。ボールはしばらく揺れて止まった。
「わんこが吸収された!! ずっと一緒にいてくれたわんこが!!」
ぎゃあああ! と騒ぐ女をよそにボールを回収してボディバッグに入れた。落ちついたら渡そう。初めての自分のポケモン。意図せずその場面に出会えて頬が緩む。等の本人は全く分かっていないが。
「わんこ……わんこ……」
「イワンコは無事だ」
「イワンコって言うのあのわんこ」
「まああだ名がわんこでもいいと思うけどな」
そう言ってフライゴンをボールから出す。女は再び騒いでキバナの首に腕を伸ばしてきたが、今から飛ぶのでちょうどいい。
ひょいとフライゴンに乗って「ナックルシティに帰るぞ」と指示するとフライゴンは綺麗な鳴き声を上げて上空へと飛んだ。
「空、飛んで……」
「おい、意識は飛ばすな」
「脳みそ爆発しそう。あっナマエって言いますこんにちは」
「お前自己紹介の仕方独特って言われたことないか?」
「ないねぇ」
ポケモン事故に会った女ことナマエはキバナの膝に平然と乗りながら「あ、おやっさんに挨拶してない」と呟いた。オレ、モテるんだけどコイツどうでもよさそう。キバナはそう思った。
「ううう……信じないもんね! もうここから出ないもんね!」
そしたら袋から声がした。は? と反射的にキバナから声が出たが、袋の中の人物? には届かなかったらしい。
「ここが私の安住地だから! おやっさんこれからもよろしくね!」
「ガルぅ」
安住地呼ばわりされたガルーラは困った顔をした。そしておやっさん呼ばわりしているが、ガルーラはメスしかいない。
ガルーラに「近づいていいか?」と訊ねるとコクンと頷かれたので歩いて膨らんだ袋の下へ行く。そして袋を撫でてから中を覗きこんだ。
「おやっさん、外なんかみたくな……い……」
「…………」
そこには砂埃が顔についた女がいた。なんでだ。色んな疑問が一斉にわいたが、とりあえず飲み込んで質問する。
「お前のガルーラか?」
「ガルーラってなに?」
「このポケモンだ」
「ポケモンってなに」
「…………」
女の信じられない言葉に唖然としていると女は「というか」と言って袋から立ち上がった。
「第一村人ぉ!!!」
そしてキバナに抱きついてきた。ぎょっとしたが、女の声は涙ぐんでいて、というか現在進行形で嗚咽を漏らして泣いている。キバナとの身長差からえらいことになっているが、つーかまだ女の下半身はガルーラの袋に入ったままだが、女が泣いてたら男は黙って胸を貸すものだ。ポンポンと頭を撫でて空を仰いだ。
キバナを見て出た第一村人という言葉。砂埃が身体中についている状態。そしてなによりも「ポケモンってなに?」という有り得ない言葉。
たまにいる。極稀にいる。ポケモンの能力に巻き込まれて記憶が吹っ飛んだり、今までいた場所と違う場所に飛ばされてしまう現象。ポケモン事故と呼ばれるそれはどの地方でも頭を悩まされている現象だ。
「ガラル地方って分かるか?」
「しっしらないぃ」
「そうかぁ。お前のいた場所は?」
「日本」
知らねえなぁ。
これはもうポケモン事故だろう。その元凶のポケモンの事まで忘れちまってなんて不憫な。その状態で飛ばされたのならどれだけ怖かっただろうか。女から見たら謎の生物が闊歩するこの島で。ガルーラは遭難した子供を育てたという記録がある。この所在なさげな女をほっとけなかったのだろう。そしてずっとガルーラの隣で座っているイワンコもそうなんだろう。イワンコは昔から人と暮らしてきたポケモンでトレーナーが悲しんでいると離れないという。女をトレーナーと認めたのかもしれない。女には一向に伝わっていないが。
「ううっ、ううー人間がいる……っ!」
「おう」
「デッカい鳥に追いかけられたり、牛がモー! って怒ったり、両手が刃物のやつに威嚇されたりぃ!!」
散々な目に合ってるなこの女。ポケモンの知識があってもトレーナーじゃない人間だったら普通に怖い。
「ありがとうぉ! 第一村人ぉ!」
「オレ様はキバナだ」
「えっ……自分を様付け……」
「おい、なんでガルーラの袋に戻る」
「ジャイアン以外で初めてみた」
「誰だそいつは」
「映画のときは良い奴ぶってるけど普段はクズです」
「一緒にすんな」
まあ涙が止まったからいいか。
袋に手を突っ込んで女を取り出して抱き上げる。ボロボロの裸足だったのでそのまま横抱きにした。
「オレが保護してやる。がんばったな」
「……ジャイアン」
「ジャイアン言うなキバナだ」
ジュラルドンをボールに戻すと女は「カチコチ動物が消えた!?」と騒ぎ出して吹き出してしまった。そりゃあ合金ポケモンと言われているが感想はそれか。ポケモンの知識がないと言うのはなかなか新鮮な発想をするもんだなとキバナは思った。
「イワンコ、お前はどうする」
「ワン!」
「そうか」
真っ直ぐに女を見て鳴いたので予備のモンスターボールを女に渡した。
「なにこれ」
「モンスターボールだ」
「名前が物騒なんですけど」
「それをこのイワンコに当ててみろ」
「動物虐待!?」
違う。そんな痛がるまで当てろとは言っていない。女はキバナの言葉におののいてぺっ! とボールを下に落とした。
「こら」
「だってぶつけろとか言うから。……あっ」
「あ」
落ちたボールにイワンコが自分の手でボタンを押してから中に入っていった。ボールはしばらく揺れて止まった。
「わんこが吸収された!! ずっと一緒にいてくれたわんこが!!」
ぎゃあああ! と騒ぐ女をよそにボールを回収してボディバッグに入れた。落ちついたら渡そう。初めての自分のポケモン。意図せずその場面に出会えて頬が緩む。等の本人は全く分かっていないが。
「わんこ……わんこ……」
「イワンコは無事だ」
「イワンコって言うのあのわんこ」
「まああだ名がわんこでもいいと思うけどな」
そう言ってフライゴンをボールから出す。女は再び騒いでキバナの首に腕を伸ばしてきたが、今から飛ぶのでちょうどいい。
ひょいとフライゴンに乗って「ナックルシティに帰るぞ」と指示するとフライゴンは綺麗な鳴き声を上げて上空へと飛んだ。
「空、飛んで……」
「おい、意識は飛ばすな」
「脳みそ爆発しそう。あっナマエって言いますこんにちは」
「お前自己紹介の仕方独特って言われたことないか?」
「ないねぇ」
ポケモン事故に会った女ことナマエはキバナの膝に平然と乗りながら「あ、おやっさんに挨拶してない」と呟いた。オレ、モテるんだけどコイツどうでもよさそう。キバナはそう思った。