春うららか
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「ぎんーチュンチュン」
「ん? ああ、雀か」
縁側で胡座をかいた上に乗った幼児が空を指をさして雀がいると教えてくれる。「すぅめ?」と銀時の言葉をくり返す幼児─ナマエが可愛くて頬が緩んだ。
「お前、もうそれスルメの発音になってんぞ」
「ぎん、すぅめ」
なぜか銀時を指さすナマエ。
「なにそれ。俺がスルメって言ってんの? 存在がスルメって言いたいの?」
「あーい!」
「うんって言ったんだけどこの子ォ!」
嘆く銀時にきゃっきゃっ笑うナマエに「Sか? これはSの片鱗か? 許さないよ。絶対許さないから」と真顔で迫る。絶対にノーマルな女の子に育てるからな。そう心で誓う銀時の背中に声をかける人間がいた。穏やかな低い声。松陽だった。
「銀時の反応をみて楽しんでいるんですよ」
「これはSの片鱗か?」
「幼児のお遊びにSだのMだの持ってくるんじゃありません」
「とと、すぅめ」
「ほら、私にもスルメって言ってますよ」
「雀を指さしてますけど」
「空ですよきっと。空飛ぶスルメ、いいじゃないですか」
「適当なこと言ってんな」
銀時の上からどいて「ととー」と松陽のところにとてとて歩いて行くナマエ。くそ、やっぱり兄ちゃんより父ちゃんか。悔しく思いながら「今日のお散歩は俺だからな」と釘を刺しておいた。それでも松陽は朗らかに笑っている。
「最近のナマエのブームですからね。色んなものを見て回ってる」
「ぎん、すぅめ」
「銀時はスルメがブームになってない?」
「なってないなってない」
ほら、授業ですよと言って踵を返した松陽。なんか授業受ける気しねーな。サボるか。そう思ってたら途中まで松陽に着いていっていたナマエが戻ってきた。そして外を指さした。
「んっ!」
「おー気が合うな、ナマエちゃん。俺も散歩の気分だ」
抱っこしたら「ん゛ー」と嫌がられた。自分で歩きたいらしい。でもここから早く出ないと松陽に見つかるのでそのまま抱っこした。ナマエは不機嫌になってペチペチ叩いてきた。
「ほら鳩いるぞ」
「ぽっぽ、ないない」
「鳩片づけるの? 殺せって?」
「ぎん、ないない」
「ナマエちゃん、ちゃんと後で歩かせてあげるからお兄ちゃんないないしないで」
「あぃ?」
「とぼけてるんだけどこの子」
にしても喋る喋る。可愛いけどお兄ちゃんはないないしないしスルメでもないからね。そんなことを話しながら途中からナマエのお散歩時間を過ごした。そして神社についた。そこでナマエは大きく欠伸をして「ねんね」と木を指さした。
「え? 木の上で寝んの?」
「ねんね!」
「あーもうはいはい」
抱っこ紐を取り出して抱っこする。あんまり要求を聞き過ぎると駄目だと松陽には言われてるがこのくらいはいいだろう。多分。木の枝の上に寝転んでその上にナマエを乗せるとうむうむ唸った後、すやすや眠り始めた。銀時もうとうとしていると、誰かが来た気配がする。まあ静かなのでいいか。……と思ってたらもう一人来た。
「また塾で大暴れしたらしいな。これで何度目だ」
……話なげーなあいつら。神社でそんなに話すことあるか? 侍がどうたら言っているが。まあどうでもいいか。
「高杉、ウチの弟が世話になったらしいな」
そしたらまたギャラリーが増えやがった。次は大所帯だ。うるせーなあいつら。ナマエが起きるだろうが。片目を開けると木刀を持って大人数で二人をやろうとしていた。はあ、と息をついて間に刀を投げた。
「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ。発情期かてめーら。稽古なら寺子屋でやんな。学校のサボリ方も習ってねェのかゆとりども。しらねェなら教えてやろうか」
そう言って枝の上に立ち上がってひょいと飛び降りた。顔面の上に。
「寝ろ。この健やかな寝顔のように」
ナマエの頭をポンポン叩いて逆の手で鼻くそをほじる。
「侍がハンパやってんな。やる時は思いきりやる。サボる時は思いきりサボる。俺がつき合ってやるよ。ナマエちゃんと一緒にみんなで寝ようぜ」
「誰が寝るかァ!! 許さんぞ貴様!!」
六人か、このままでも大丈夫だろ。と木刀を奪う算段をつけていると銀時に向かってきていた奴らは背後から拳骨をされて地に伏した。その背後から拳骨した人物は……松陽だった。
「……銀時、よくぞいいました。そう……侍たる者ハンパはいけない。多勢で少数をいじめるなどもっての外。ですが銀時、」
松陽は銀時の前までやってきて抱っこ紐をといてナマエを片手に抱えた。そして逆の手をグーにする。
「君達ハンパ者がサボリを覚えるなんて100年早い」
コツン。そんな軽い音とは反対にドゴォ! と銀時は松陽の拳骨で地面に埋まった。
「ぶべらッ!!」
「ぅー? とと?」
「ああ、起こしてしまいましたね。ナマエ」
「おあよ」
「はいおはようございます」
「んー」
「自分で歩きますか」
松陽はナマエを下ろす。そしてナマエは気絶した銀時をみて「ぎん、ぼこぼこ!」とたんこぶを指さしてケラケラ笑った。ぼこぼこはたんこぶの意味だろうがボコボコの意味でも通るな……とそれを見ていた桂は引いていた。松陽の拳骨にも引いていたが。そんな松陽はくるりと背を向けて片手で銀時の首根っこを持ち、片手でナマエと手を繋いだ。
「喧嘩両成敗です……君達も早く彼等を連れて学校へお帰んなさい。小さなお侍さん」
そう言って松陽はズルズル銀時を引きずって歩いて行った。その後ろ姿に桂がふとあることに気づいた。
「……あ……あれは、そうかあれが噂にきいた……近頃白髪の子供と幼子を連れた侍が私塾をひらき、金もとらずに貧しい子供達に手習いを教えているときいたが……あれが松下村塾の吉田松陽」
「ばーばい」
「あっばいばい」
ナマエが振り返ってにぱっと笑って手を振ってきたのでつられて手を振る桂だった。
それが銀時、ナマエ、松陽と高杉、桂の出会いだった。
「ん? ああ、雀か」
縁側で胡座をかいた上に乗った幼児が空を指をさして雀がいると教えてくれる。「すぅめ?」と銀時の言葉をくり返す幼児─ナマエが可愛くて頬が緩んだ。
「お前、もうそれスルメの発音になってんぞ」
「ぎん、すぅめ」
なぜか銀時を指さすナマエ。
「なにそれ。俺がスルメって言ってんの? 存在がスルメって言いたいの?」
「あーい!」
「うんって言ったんだけどこの子ォ!」
嘆く銀時にきゃっきゃっ笑うナマエに「Sか? これはSの片鱗か? 許さないよ。絶対許さないから」と真顔で迫る。絶対にノーマルな女の子に育てるからな。そう心で誓う銀時の背中に声をかける人間がいた。穏やかな低い声。松陽だった。
「銀時の反応をみて楽しんでいるんですよ」
「これはSの片鱗か?」
「幼児のお遊びにSだのMだの持ってくるんじゃありません」
「とと、すぅめ」
「ほら、私にもスルメって言ってますよ」
「雀を指さしてますけど」
「空ですよきっと。空飛ぶスルメ、いいじゃないですか」
「適当なこと言ってんな」
銀時の上からどいて「ととー」と松陽のところにとてとて歩いて行くナマエ。くそ、やっぱり兄ちゃんより父ちゃんか。悔しく思いながら「今日のお散歩は俺だからな」と釘を刺しておいた。それでも松陽は朗らかに笑っている。
「最近のナマエのブームですからね。色んなものを見て回ってる」
「ぎん、すぅめ」
「銀時はスルメがブームになってない?」
「なってないなってない」
ほら、授業ですよと言って踵を返した松陽。なんか授業受ける気しねーな。サボるか。そう思ってたら途中まで松陽に着いていっていたナマエが戻ってきた。そして外を指さした。
「んっ!」
「おー気が合うな、ナマエちゃん。俺も散歩の気分だ」
抱っこしたら「ん゛ー」と嫌がられた。自分で歩きたいらしい。でもここから早く出ないと松陽に見つかるのでそのまま抱っこした。ナマエは不機嫌になってペチペチ叩いてきた。
「ほら鳩いるぞ」
「ぽっぽ、ないない」
「鳩片づけるの? 殺せって?」
「ぎん、ないない」
「ナマエちゃん、ちゃんと後で歩かせてあげるからお兄ちゃんないないしないで」
「あぃ?」
「とぼけてるんだけどこの子」
にしても喋る喋る。可愛いけどお兄ちゃんはないないしないしスルメでもないからね。そんなことを話しながら途中からナマエのお散歩時間を過ごした。そして神社についた。そこでナマエは大きく欠伸をして「ねんね」と木を指さした。
「え? 木の上で寝んの?」
「ねんね!」
「あーもうはいはい」
抱っこ紐を取り出して抱っこする。あんまり要求を聞き過ぎると駄目だと松陽には言われてるがこのくらいはいいだろう。多分。木の枝の上に寝転んでその上にナマエを乗せるとうむうむ唸った後、すやすや眠り始めた。銀時もうとうとしていると、誰かが来た気配がする。まあ静かなのでいいか。……と思ってたらもう一人来た。
「また塾で大暴れしたらしいな。これで何度目だ」
……話なげーなあいつら。神社でそんなに話すことあるか? 侍がどうたら言っているが。まあどうでもいいか。
「高杉、ウチの弟が世話になったらしいな」
そしたらまたギャラリーが増えやがった。次は大所帯だ。うるせーなあいつら。ナマエが起きるだろうが。片目を開けると木刀を持って大人数で二人をやろうとしていた。はあ、と息をついて間に刀を投げた。
「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ。発情期かてめーら。稽古なら寺子屋でやんな。学校のサボリ方も習ってねェのかゆとりども。しらねェなら教えてやろうか」
そう言って枝の上に立ち上がってひょいと飛び降りた。顔面の上に。
「寝ろ。この健やかな寝顔のように」
ナマエの頭をポンポン叩いて逆の手で鼻くそをほじる。
「侍がハンパやってんな。やる時は思いきりやる。サボる時は思いきりサボる。俺がつき合ってやるよ。ナマエちゃんと一緒にみんなで寝ようぜ」
「誰が寝るかァ!! 許さんぞ貴様!!」
六人か、このままでも大丈夫だろ。と木刀を奪う算段をつけていると銀時に向かってきていた奴らは背後から拳骨をされて地に伏した。その背後から拳骨した人物は……松陽だった。
「……銀時、よくぞいいました。そう……侍たる者ハンパはいけない。多勢で少数をいじめるなどもっての外。ですが銀時、」
松陽は銀時の前までやってきて抱っこ紐をといてナマエを片手に抱えた。そして逆の手をグーにする。
「君達ハンパ者がサボリを覚えるなんて100年早い」
コツン。そんな軽い音とは反対にドゴォ! と銀時は松陽の拳骨で地面に埋まった。
「ぶべらッ!!」
「ぅー? とと?」
「ああ、起こしてしまいましたね。ナマエ」
「おあよ」
「はいおはようございます」
「んー」
「自分で歩きますか」
松陽はナマエを下ろす。そしてナマエは気絶した銀時をみて「ぎん、ぼこぼこ!」とたんこぶを指さしてケラケラ笑った。ぼこぼこはたんこぶの意味だろうがボコボコの意味でも通るな……とそれを見ていた桂は引いていた。松陽の拳骨にも引いていたが。そんな松陽はくるりと背を向けて片手で銀時の首根っこを持ち、片手でナマエと手を繋いだ。
「喧嘩両成敗です……君達も早く彼等を連れて学校へお帰んなさい。小さなお侍さん」
そう言って松陽はズルズル銀時を引きずって歩いて行った。その後ろ姿に桂がふとあることに気づいた。
「……あ……あれは、そうかあれが噂にきいた……近頃白髪の子供と幼子を連れた侍が私塾をひらき、金もとらずに貧しい子供達に手習いを教えているときいたが……あれが松下村塾の吉田松陽」
「ばーばい」
「あっばいばい」
ナマエが振り返ってにぱっと笑って手を振ってきたのでつられて手を振る桂だった。
それが銀時、ナマエ、松陽と高杉、桂の出会いだった。
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