好きを煮詰めた他人のぼくら
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補足&掩蔽訓練。今日こそは当真先輩を当てる! と意気込んだ結果、当真先輩に逆に当てられ後は孝ちゃんに当てられた。しかも当真先輩は頭。ヘッドショット。訓練じゃなかったら一発退場だ。ぐぬぬとなりながら訓練後、当真先輩のところに突っ込んだ。
「今日も当てられなかったです!」
「名字は被弾二発か。まあ頑張ったじゃねーの」
「今日は調子良かったのに……」
「当真さん、名前お疲れ様です」
「お疲れさん隠岐」
「孝ちゃんおつかれー」
「おつかれさん。ほっぺにマークついてかわええなぁ」
「これ孝ちゃんがやったんだよ」
「名前おるなぁって狙ってみてん」
マークのついたほっぺたをむにむにされる。孝ちゃんを見つけられなかったので孝ちゃんには私の番号のついたマークはない。なんか悔しい。私も孝ちゃんにマークつけたかった。
「隙あらばくっついてんなおまえら」
「荒船先輩っお疲れ様です! あっ、私の番号!」
「当てられちまったな」
「うふふー当てちまいました」
「腕のいい師匠で俺も鼻が高いな?」
「もうーっそれやめてください!」
荒船先輩がアタッカーからスナイパーに転身したとき、色々アドバイスを聞かれたのだ。向上心の塊のような先輩なので私以外にも聞いてたのにこうやって師匠扱いされている。主にからかい目的で。
「私に弟子なんて、弟子なんて……」
「ちょっとワクワクしとる顔やなぁ」
「満更でもなさそうだな」
「いいじゃねーの。おまえの腕なら弟子とれるだろ」
「えっ! 本当ですか当真先輩!」
「スナイパーランキング一桁にいるんだからいけるだろ」
「!?」
「なんで驚いてんだ?」
「名前、自分の順位知らんやったな?」
荒船先輩と孝ちゃんの言葉に目を見開く。そうなの!?
「里見もそうだが何で自分のランキング知らないんだ」
「訓練が楽しくて……」
「これと決めたら一直線やからなぁ」
「モチベーション上がるかもっ……当真先輩! 次は絶対に当てます!」
「おー。楽しみにしとくぜ」
当真先輩に頭をぽふぽふされる。歯牙にもかけられてないぞこれ。悔しい。訓練がんばる。
「隠岐は名字が他の男に頭撫でられても嫉妬とかしないんだな」
荒船先輩が意外そうに言う。ぽふぽふされながら孝ちゃんの顔をみるといつも通りニコニコしてた。
「可愛い頭は誰でも撫でたくなるでしょ」
「あーそういう考えか。バカップルめ」
「まあ人によりますわ。名前を純粋に可愛がってくれとる人は分かるんで」
孝ちゃんはなんだか嬉しそうに話している。
「誰なら駄目?」
「誰なら……ボーダー隊員は大抵大丈夫やな」
「初期隊員なのに後輩っぽさが抜けねーからなぁ名字は」
「当真先輩それは聞き捨てなりません! さとけんと私、どっちが先輩度高いですか!」
「それは比較が悪いな」
「おまえらどっちも根っこが呑気だからな」
「孝ちゃん……」
「すまん名前。その比較は比較にならんわ」
さとけん、私たちは呑気コンビらしいですよ。少し遠くで半崎くんや太一くん達と話してるさとけんに心で問いかけてみた。もちろん伝わらなかった。
****
「訓練後のアイスは美味しい……」
「おれの一口食べてみる? うまいで」
「いるー私のもあげる」
「ありがとぉな」
孝ちゃんの抹茶アイスを食べてみる。苦味と甘さのバランスがとてもよいです。私は普通にバニラアイスだ。一周まわってこれに落ち着く。
「名前、端っこついとる」
「んー?」
「んーこっちのが早いわ」
孝ちゃんの親指で拭われてビックリしてアイス落とすかと思った。
「とりかたがなんだかえっち……」
「イヤやった?」
「ヤじゃないです」
「素直でかわええ」
「孝ちゃんにされることでイヤなこと一個もないよ」
「……それはおれを喜ばせすぎやわ」
頬を少し赤らめた孝ちゃん。喜ばせすぎ。うん? いいことだ。にこにこしてるとバン! とテーブルを叩かれた。
「おい! このバカップルどうにかしろ!」
「いつもこうだぜ~カゲ」
「じゃあ連れてくんなっ!」
「俺達にとったら名字は可愛い後輩だからな。隠岐はともかく」
「飯くらい普通に奢るだろ」
「うちじゃなくていいっつってんだよ!」
「影浦先輩のお家のお好み焼きは日本一ですから!」
私がそう言うと影浦先輩はなんだかムズムズしたような顔になって「隠岐ってめーが自重しろ!」と孝ちゃんに怒鳴った。
私、孝ちゃん、当真先輩、荒船先輩、穂刈先輩。お腹空いたねって話になって、奢ってやると言ってもらえて、じゃあ影浦先輩の家で~という流れだった。今はデザートのアイス食べている。お好み焼きはいつも通りとても美味しかったです。豚玉を食べた。美味しくてほっぺが落ちるかと思った。荒船先輩が同じくアイスを食べながら影浦先輩に話しかける。
「カゲ、おまえ同じ学校なら慣れてるんじゃないのか?」
「こんなもん慣れてたまるかっ」
「正隊員のスナイパーは皆平気な顔してっからある意味新鮮だな」
「毒されたって言えるけどな。オレたちが」
「酷い言われようやわ~なあ?」
「ねー?」
まるで私たちが悪いことしてるみたいな。私と孝ちゃんの会話に「こいつらに悪意が一切ないのがな」と荒船先輩が言う。
「名字のアホはともかく隠岐は分かってんだろうが」
「アホって言われた」
「アホやないのになぁ」
「そうですアホじゃないです影浦先輩」
「ばーか」
「次はバカって言われた……」
もしや影浦先輩に好かれてない疑惑が立ってしょんぼりしてると「照れ隠しやから気にせんでええんやで?」と孝ちゃんに頭を撫でられた。
「照れ隠し」
「変な方向にこじらせんな隠岐!」
「カゲは名字みたいな素直で真っ直ぐなタイプは気に入ってる方だろ」
「余計なこというな! 荒船!」
「……つまり?」
「嫌われてへんからアイス食べとき。溶けるで?」
はっとしてアイスに視線をやると少しだけ溶けていた。もったいない。嫌われてないならうきうきで食べられる。アイス美味しい。
「隠岐にギャーギャーうるせー女共にこいつのバカップルぶり突きつけたら平和になるってのに」
「それが最近様子が違ってるぞ。カゲ」
「あん?」
「隠岐だけじゃなくてカップル推しになったらしい。名字含めて」
「なんだそりゃ」
「そう言えば最近呼び出しが減ったような気ぃしてたんですよね」
「このバカップル推してどうするんだよ」
「尊いらしいぞ。一周回って」
「バカばっかりかうちの学校は!」
再びバン! とテーブルを叩く影浦先輩。アイスに夢中で話全然聞いてなかった。なんで怒ってるんだろう。孝ちゃんの方を向くと影浦先輩とは反対に嬉しそうに笑っていた。これは良いことがあったときの孝ちゃんの顔だ。
「孝ちゃん良いことあった?」
「あったで。悩みの種が一つ減ってん」
「よかったねぇ」
「よかったわぁ本当に」
孝ちゃんが嬉しいなら私も嬉しい。顔が綻んでいたら「おまえら鏡みたいだな」と荒船先輩に言われて孝ちゃんと顔を見合わせる。そして同時に笑い出したのであながち間違ってないなぁと幸せな気分になった。