本編
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「ヘイヘイ! ホームランだぜ! 塁回らないでいいの~??」
「うるせーナマエ!! バレーにベースはないんだよばーか! ばーか!」
「バレーはコートにボールが入らないと点にならないって知らないのかサーブ外したばーかばーか!」
「はいはい次こっちサーブね~」
「バレー部が本気でサーブ入れるのはダメだと思います!」
「勝負事にバレー部も何もないんだよ~」
「そのサーブ山原が抗議します! 先生そこんところどうですか!」
「早くサーブしてください」
体育館を真ん中で区切った女子側のコートがうるさい。六限目なのに女子は体力あんな……とバスケ中の男子の一人がぼやいた。女子というか群を抜いてうるさい奴がいるせいで全体の熱が上がっている。そのうるさい奴をよく知っている休憩中の嵐山は「ナマエは元気だな」と好意的な感想を述べ「あいつは何で味方を煽ってるの」と同じく休憩中の迅は苦笑を漏らした。体育館を区切った後ろ側のコートを使っている男子生徒達は、試合がない者は二階の観覧席に登っていた。合同体育の為、下で休むのはスペースが狭かったのだ。上からだと体育館全体の様子が分かりやすい。現在試合中の柿崎の姿もよく見えた。あ、シュート外した。
「かっきー! その距離でシュート外すのださいよ!」
「おまえは自分の試合に集中しろ!」
ナマエの煽りは隣のコートにまで及んでいた。「俺らより応援団っぽいな」生駒の呑気な感想に迅は首を傾げた。応援というかあれはただの野次。しかしその野次が効いたのか男子側のコートも何だか盛り上がってきた。「いけかっきーシュートだ!」「かっきーカッコイぃー!」「さすがかっきー!」「おまえらまでかっきーかっきー言うな!」被害は柿崎に偏っているが、六限目の体育でダルいダルいと言っていた面々は元気になっていた。
「ナマエはカワイイな」
「この流れでなんで?」
生駒の呟きに迅が突っ込む。本当に流れも何もなくて迅は困惑した。あいつ野次とバレーしかしてないよ? バレーもいつも通りギャーギャー騒いでいて「いった~い」とか「こわ~い」とかは一切ない。「このボール、生きてる……!」とか意味の分からない事を言っている。何でもかんでもカワイイというのは知っているが流石にこれは首を傾げざる得ない。迅はたいていの女子に対しては可愛いな~と思うタイプの人間だが、ナマエの言動に関して言えば可愛い~~なんて思ったことは一度もない。頭を抱えることは多いが。
「カワイイやろ。元気で明るくて」
元気で明るいは分かるがバレーの試合中に「ほらほらピッチャー(サーバーの事)ビビってんのか!」と煽る女子はどう考えても可愛くない。元気は元気だが方向性に問題がある。迅からは一向に同意を得られないと思った生駒は嵐山へ話題を振る。そして驚いたことに「そうだな」と同意の言葉が返ってきた。
「本気で言ってる?」
「ああ。俺もナマエは可愛いと思うぞ」
「二対一やな」
「いや完全に少数派だと思うよ」
「柿崎もカワイイ言うと思うで」
「じゃあ三対一だな」
「勝ち負けなのこれ?」
同級生達の言葉に迅は太刀川を召喚したくなった。家族を可愛くないと罵りたいのではなく、理解しがたい現象に頭が追いつかない為に。太刀川ならきっと「大丈夫かおまえら」と言うに違いない。
「そもそも生駒っちはどういう意味で言ってるの」
「カワイイはカワイイ」
「か、のじょにしたい系ではな、」
「なってくれたら嬉しい系」
「!??」
衝撃が走った。そんな顔だった。しかし表情はともかく熱量が変わらない生駒にすぐに気づくと迅は「ああ、」と納得したような声を出した。
「生駒っちのはもし告白されたら普通につきあうって意味?」
「うん」
「推しメン的な」
生駒が頷くと「だよな」と迅は力が抜けたように息をついた。
***
高校生の時から思っていたが、ナマエは可愛いという形容詞を使われることが全くといっていいほどない。同じ隊の水上や隠岐も「ナマエさんは可愛いというか……」と言葉を濁した。なんでやカワイイやろ、といつも通り生駒は返すのだが納得のいく反応をもらえない。見た目などではなく普段の言動故に可愛いという言葉よりも「なにをやってるんだ!」という感想と衝動が一気に来るせいなのだが、生駒はイマイチそれが分かっていなかった。
「烏丸くん、ナマエのどういうとこがカワイイと思う?」
「教えたくないです」
即答だった。だが生駒は満足した。教えたくないということはカワイイと思っているということだからだ。
生駒はナマエを気に入っている。いつも賑やかなところがすごく好きだ。ナマエが何かしていると周りにも一気に明るくなって賑やかになる。ある種の才能だと思っている。その中心で楽しそうにしているナマエはすごくカワイイ。そう思っている。なかなか分かってもらえないが。だから生駒は烏丸くんめっちゃ見る目あるなと感動していた。がんばれと心から応援している。
「……生駒さんはナマエさんの事可愛いと思っているんすか?」
「うん。めっちゃカワイイわ」
「………………どういう意味で?」
「彼女になってくれたら嬉しい意味で」
玉狛はみんな同じこと聞くな。生駒はのんびりとそう思った。
生駒は全く気づいていなかった。同い年である迅と烏丸は違うことに。迅は生駒の含まれている意味(ただし恋愛感情はない。いわゆる推しメン。でも告白されたら喜ぶ)にすぐに気づいたが烏丸はそうはいかない。
また増えた……と苦々しく心で呟く烏丸の脳裏には犬飼の顔があった。
「うるせーナマエ!! バレーにベースはないんだよばーか! ばーか!」
「バレーはコートにボールが入らないと点にならないって知らないのかサーブ外したばーかばーか!」
「はいはい次こっちサーブね~」
「バレー部が本気でサーブ入れるのはダメだと思います!」
「勝負事にバレー部も何もないんだよ~」
「そのサーブ山原が抗議します! 先生そこんところどうですか!」
「早くサーブしてください」
体育館を真ん中で区切った女子側のコートがうるさい。六限目なのに女子は体力あんな……とバスケ中の男子の一人がぼやいた。女子というか群を抜いてうるさい奴がいるせいで全体の熱が上がっている。そのうるさい奴をよく知っている休憩中の嵐山は「ナマエは元気だな」と好意的な感想を述べ「あいつは何で味方を煽ってるの」と同じく休憩中の迅は苦笑を漏らした。体育館を区切った後ろ側のコートを使っている男子生徒達は、試合がない者は二階の観覧席に登っていた。合同体育の為、下で休むのはスペースが狭かったのだ。上からだと体育館全体の様子が分かりやすい。現在試合中の柿崎の姿もよく見えた。あ、シュート外した。
「かっきー! その距離でシュート外すのださいよ!」
「おまえは自分の試合に集中しろ!」
ナマエの煽りは隣のコートにまで及んでいた。「俺らより応援団っぽいな」生駒の呑気な感想に迅は首を傾げた。応援というかあれはただの野次。しかしその野次が効いたのか男子側のコートも何だか盛り上がってきた。「いけかっきーシュートだ!」「かっきーカッコイぃー!」「さすがかっきー!」「おまえらまでかっきーかっきー言うな!」被害は柿崎に偏っているが、六限目の体育でダルいダルいと言っていた面々は元気になっていた。
「ナマエはカワイイな」
「この流れでなんで?」
生駒の呟きに迅が突っ込む。本当に流れも何もなくて迅は困惑した。あいつ野次とバレーしかしてないよ? バレーもいつも通りギャーギャー騒いでいて「いった~い」とか「こわ~い」とかは一切ない。「このボール、生きてる……!」とか意味の分からない事を言っている。何でもかんでもカワイイというのは知っているが流石にこれは首を傾げざる得ない。迅はたいていの女子に対しては可愛いな~と思うタイプの人間だが、ナマエの言動に関して言えば可愛い~~なんて思ったことは一度もない。頭を抱えることは多いが。
「カワイイやろ。元気で明るくて」
元気で明るいは分かるがバレーの試合中に「ほらほらピッチャー(サーバーの事)ビビってんのか!」と煽る女子はどう考えても可愛くない。元気は元気だが方向性に問題がある。迅からは一向に同意を得られないと思った生駒は嵐山へ話題を振る。そして驚いたことに「そうだな」と同意の言葉が返ってきた。
「本気で言ってる?」
「ああ。俺もナマエは可愛いと思うぞ」
「二対一やな」
「いや完全に少数派だと思うよ」
「柿崎もカワイイ言うと思うで」
「じゃあ三対一だな」
「勝ち負けなのこれ?」
同級生達の言葉に迅は太刀川を召喚したくなった。家族を可愛くないと罵りたいのではなく、理解しがたい現象に頭が追いつかない為に。太刀川ならきっと「大丈夫かおまえら」と言うに違いない。
「そもそも生駒っちはどういう意味で言ってるの」
「カワイイはカワイイ」
「か、のじょにしたい系ではな、」
「なってくれたら嬉しい系」
「!??」
衝撃が走った。そんな顔だった。しかし表情はともかく熱量が変わらない生駒にすぐに気づくと迅は「ああ、」と納得したような声を出した。
「生駒っちのはもし告白されたら普通につきあうって意味?」
「うん」
「推しメン的な」
生駒が頷くと「だよな」と迅は力が抜けたように息をついた。
***
高校生の時から思っていたが、ナマエは可愛いという形容詞を使われることが全くといっていいほどない。同じ隊の水上や隠岐も「ナマエさんは可愛いというか……」と言葉を濁した。なんでやカワイイやろ、といつも通り生駒は返すのだが納得のいく反応をもらえない。見た目などではなく普段の言動故に可愛いという言葉よりも「なにをやってるんだ!」という感想と衝動が一気に来るせいなのだが、生駒はイマイチそれが分かっていなかった。
「烏丸くん、ナマエのどういうとこがカワイイと思う?」
「教えたくないです」
即答だった。だが生駒は満足した。教えたくないということはカワイイと思っているということだからだ。
生駒はナマエを気に入っている。いつも賑やかなところがすごく好きだ。ナマエが何かしていると周りにも一気に明るくなって賑やかになる。ある種の才能だと思っている。その中心で楽しそうにしているナマエはすごくカワイイ。そう思っている。なかなか分かってもらえないが。だから生駒は烏丸くんめっちゃ見る目あるなと感動していた。がんばれと心から応援している。
「……生駒さんはナマエさんの事可愛いと思っているんすか?」
「うん。めっちゃカワイイわ」
「………………どういう意味で?」
「彼女になってくれたら嬉しい意味で」
玉狛はみんな同じこと聞くな。生駒はのんびりとそう思った。
生駒は全く気づいていなかった。同い年である迅と烏丸は違うことに。迅は生駒の含まれている意味(ただし恋愛感情はない。いわゆる推しメン。でも告白されたら喜ぶ)にすぐに気づいたが烏丸はそうはいかない。
また増えた……と苦々しく心で呟く烏丸の脳裏には犬飼の顔があった。