本編
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「なぜおまえなんだ」
「第一声それかよ」
ヒュースの入隊日。不慣れだろうしネイバーのあれもあるしで「ヒュースの付き添いよろしくな~」と緩く林藤さんから(「まかせたぞ」これは陽太郎)頼まれたのだが、当のヒュースの反応がこれだった。すっごい不服そう。玉狛第二の試合を会場でみる予定だったのをやめたんだぞ。もっと敬え。
「カラスマやキザキはどうした」
「来れないから私が呼ばれたんだよ」
「おまえは玉狛の人間じゃないだろう」
「…………」
「その顔はやめろ」
玉狛の人間ならいいの? なにそれデレ? と凝視してたら苦々しい顔をされた。今さらそんな顔されてもツンデレにしか見えないぞ。二代目ツンデレの座はこいつのものか。因みに初代ツンデレ王は木虎だ。私には一切デレてくれないけど。嵐山や綾辻ちゃんといるときにほんのりみるくらいだ。1対1では絶対にない。ヒュースもそんなかんじになりそう。デレる気配が微塵もない。
そんな事を思いつつ入隊式の会場まで歩く。前の遊真と千佳ちゃんのときは入隊式そのものは見なかったからな。入隊式は前に嵐山の手伝いしたとき以来だ。
「ついたよ。多分ここ」
多分という言葉に眉を寄せたヒュースだったけど白い隊服の群衆をみて渋々といった顔で「分かった。おまえはもう帰っていい」といった。そこ渋々ながらもお礼言うところだろ。
なんだか帰りたくない気持ちが増したので参観日の保護者気分でヒュースを見守ることにした。黒い隊服のせいか顔立ちのせいか最初からめだっていたヒュースだが、私の「ヒュースちゃん見てるわよ~リラックスリラックス~」という台詞で視線を一身に集めることになった。ヒュースは苦虫を噛み潰したのお手本のような顔になっていた。
ヒュースとそんな雑談を一方的にしていたら忍田さんが壇上に上がって挨拶を始めた。入学式にあるような長々しい話じゃなくて、簡潔に分かりやすくこちらを鼓舞するような事を話す忍田さん。内容の素晴らしさに思わず拍手すると視線がこちらに集まった。
「…………私からは以上だ。この先は嵐山隊に一任する」
隣にいるヒュースに気づいてここに私服姿の私がいる理由はすぐに察したらしい。でもそれを差し引いても「おまえは本当に……」という顔が隠し切れていない。拍手しただけですよ。
なんだか微妙に歯切れが悪い空気が蔓延しつつ嵐山隊が壇上の下までやってきた。木虎がめちゃくちゃこっち見ている気がする。
「ヒュース見られてるよ」
「オレではなくておまえだ」
「あの顔って何を言ってると思う?」
「馬鹿は帰れ」
「ヒュースの気持ちじゃなくて」
そのままポジションに分かれて入隊指導をやるらしい。訓練室までぞろぞろしながら歩く。
「ポジション何にするの?」
「アタッカー」
じゃあ嵐山の方か。あれ、嵐山ってヒュースがネイバーって知ってるのかな。というかどこまで知ってるんだっけ。聞きたいけど人が多い場所で話すわけにもいかない。林藤さんに教えてもらったヒュースの設定もうろ覚えだ。クローニンの隠し子でいいんだっけ?
「B級まで上がるには何をすればいい」
「最初に体育の体力測定的なことして」
「体育の体力測定ってなんだ」
「え、知らないの? えっシャトルランしたことは?」
「シャトルラン?」
首を傾げるヒュース。遊真やエネドラットもだけど微妙に通じないんだよね。ローマ字とかゴリラとかゴキブリとか。……なんか凄いどうでもいい話しかしてないな。特にエネドラット。
「おい、シャトルランとはなんだ」
「音楽に合わせて走るんだよ」
「それに何の意味がある」
「瞬発力と持久力を計るんだよ」
たぶん。
口に出さずに言うと「そうか」と納得したような顔をするヒュース。初っ端から歴代二位の記録を出すことになるヒュースが嵐山に「シャトルランはいつするんだ?」と訊ねるのはこの十分後である。言うまでもなくヒュースの機嫌はめちゃくちゃ悪くなった。悪かったと思ってる。
***
「彼すごいな」
「ていうか入隊した日にB級に上がれるんだね」
そして現B級隊員達を連続でぶった切るやつなんて今までいただろうか。遊真といいヒュースといい目立ちたがり屋か。ネイバーってそういう習性なの?
「ん? ……おっ」
「なにやってんの生駒」
肩を叩かれて振り返った嵐山のほっぺに指をさす生駒。なぜか凛々しい顔をしてる。
「ふたりで並んでなにしとるん」
「ヒュースの……っていや生駒も何してるの」
「烏丸くんに怒られるで」
「今その名前を出すな!」
「京介がどうしたんだ?」
「どうもしない!」
不思議そうな顔をする嵐山。まずはほっぺに刺さってる指の方を気にして。「携帯落としたぞナマエ」本当に気にしないで。
携帯を拾って熱くなった頬を手の甲で押さえていたら「イコさん!」と言いながら小新井がブースから顔を出した。
「ほら、呼ばれてるよ」
「せやけどナマエとの恋バナも」
「ここでそれ以上いったら絶交」
「絶交はいややな。すまん」
「おう。さっさといけ」
「おう。あとでな」
「あとではないから」
手で生駒を追い払う。ブースに入っていったのを確認してはあ、と息を吐くと隣の嵐山が笑う気配がした。
「京介に告白されたのか?」
再び携帯を落とした。
「…………………なんで?」
「京介はナマエのことが好きだろう」
「…………………なんで?」
「最初は気づかなかったんだが、よくナマエの事を見てたからな」
「…………………なんで?」
「ナマエの反応がいつもと違った」
なんでそう思ったの、なんで知ってるの、なんで告白されたって分かったの。私の言葉の足りない問いに全部的確に返答してくる嵐山。……15のときから一緒にいるからなぁ……。
そう思いつつ口を開く。
「………………相談があるのですが、」
「どうぞ」
喉が鳴ったのは気づかなかったことにした。
「……生駒は付き合えばいいって言うんですよ」
「うん」
「でもさぁ、なんかこう……切り替えかさ、」
「すぐにそういう風には見られないってことか?」
「…………」
言葉を切った私に視線を向ける嵐山。目がばっちり合う。しばらく間が空いて、嵐山はそっと笑った。
「ああ、すまん。逆なんだな」
「…………だってあいつすんごいグイグイ来るんだもん……」
恥ずかしくてどう切り替えたらいいか分からない。後輩の一人だったのに。
そう言うと嵐山は再び笑って「それは困ったなあ」と言った。
「第一声それかよ」
ヒュースの入隊日。不慣れだろうしネイバーのあれもあるしで「ヒュースの付き添いよろしくな~」と緩く林藤さんから(「まかせたぞ」これは陽太郎)頼まれたのだが、当のヒュースの反応がこれだった。すっごい不服そう。玉狛第二の試合を会場でみる予定だったのをやめたんだぞ。もっと敬え。
「カラスマやキザキはどうした」
「来れないから私が呼ばれたんだよ」
「おまえは玉狛の人間じゃないだろう」
「…………」
「その顔はやめろ」
玉狛の人間ならいいの? なにそれデレ? と凝視してたら苦々しい顔をされた。今さらそんな顔されてもツンデレにしか見えないぞ。二代目ツンデレの座はこいつのものか。因みに初代ツンデレ王は木虎だ。私には一切デレてくれないけど。嵐山や綾辻ちゃんといるときにほんのりみるくらいだ。1対1では絶対にない。ヒュースもそんなかんじになりそう。デレる気配が微塵もない。
そんな事を思いつつ入隊式の会場まで歩く。前の遊真と千佳ちゃんのときは入隊式そのものは見なかったからな。入隊式は前に嵐山の手伝いしたとき以来だ。
「ついたよ。多分ここ」
多分という言葉に眉を寄せたヒュースだったけど白い隊服の群衆をみて渋々といった顔で「分かった。おまえはもう帰っていい」といった。そこ渋々ながらもお礼言うところだろ。
なんだか帰りたくない気持ちが増したので参観日の保護者気分でヒュースを見守ることにした。黒い隊服のせいか顔立ちのせいか最初からめだっていたヒュースだが、私の「ヒュースちゃん見てるわよ~リラックスリラックス~」という台詞で視線を一身に集めることになった。ヒュースは苦虫を噛み潰したのお手本のような顔になっていた。
ヒュースとそんな雑談を一方的にしていたら忍田さんが壇上に上がって挨拶を始めた。入学式にあるような長々しい話じゃなくて、簡潔に分かりやすくこちらを鼓舞するような事を話す忍田さん。内容の素晴らしさに思わず拍手すると視線がこちらに集まった。
「…………私からは以上だ。この先は嵐山隊に一任する」
隣にいるヒュースに気づいてここに私服姿の私がいる理由はすぐに察したらしい。でもそれを差し引いても「おまえは本当に……」という顔が隠し切れていない。拍手しただけですよ。
なんだか微妙に歯切れが悪い空気が蔓延しつつ嵐山隊が壇上の下までやってきた。木虎がめちゃくちゃこっち見ている気がする。
「ヒュース見られてるよ」
「オレではなくておまえだ」
「あの顔って何を言ってると思う?」
「馬鹿は帰れ」
「ヒュースの気持ちじゃなくて」
そのままポジションに分かれて入隊指導をやるらしい。訓練室までぞろぞろしながら歩く。
「ポジション何にするの?」
「アタッカー」
じゃあ嵐山の方か。あれ、嵐山ってヒュースがネイバーって知ってるのかな。というかどこまで知ってるんだっけ。聞きたいけど人が多い場所で話すわけにもいかない。林藤さんに教えてもらったヒュースの設定もうろ覚えだ。クローニンの隠し子でいいんだっけ?
「B級まで上がるには何をすればいい」
「最初に体育の体力測定的なことして」
「体育の体力測定ってなんだ」
「え、知らないの? えっシャトルランしたことは?」
「シャトルラン?」
首を傾げるヒュース。遊真やエネドラットもだけど微妙に通じないんだよね。ローマ字とかゴリラとかゴキブリとか。……なんか凄いどうでもいい話しかしてないな。特にエネドラット。
「おい、シャトルランとはなんだ」
「音楽に合わせて走るんだよ」
「それに何の意味がある」
「瞬発力と持久力を計るんだよ」
たぶん。
口に出さずに言うと「そうか」と納得したような顔をするヒュース。初っ端から歴代二位の記録を出すことになるヒュースが嵐山に「シャトルランはいつするんだ?」と訊ねるのはこの十分後である。言うまでもなくヒュースの機嫌はめちゃくちゃ悪くなった。悪かったと思ってる。
***
「彼すごいな」
「ていうか入隊した日にB級に上がれるんだね」
そして現B級隊員達を連続でぶった切るやつなんて今までいただろうか。遊真といいヒュースといい目立ちたがり屋か。ネイバーってそういう習性なの?
「ん? ……おっ」
「なにやってんの生駒」
肩を叩かれて振り返った嵐山のほっぺに指をさす生駒。なぜか凛々しい顔をしてる。
「ふたりで並んでなにしとるん」
「ヒュースの……っていや生駒も何してるの」
「烏丸くんに怒られるで」
「今その名前を出すな!」
「京介がどうしたんだ?」
「どうもしない!」
不思議そうな顔をする嵐山。まずはほっぺに刺さってる指の方を気にして。「携帯落としたぞナマエ」本当に気にしないで。
携帯を拾って熱くなった頬を手の甲で押さえていたら「イコさん!」と言いながら小新井がブースから顔を出した。
「ほら、呼ばれてるよ」
「せやけどナマエとの恋バナも」
「ここでそれ以上いったら絶交」
「絶交はいややな。すまん」
「おう。さっさといけ」
「おう。あとでな」
「あとではないから」
手で生駒を追い払う。ブースに入っていったのを確認してはあ、と息を吐くと隣の嵐山が笑う気配がした。
「京介に告白されたのか?」
再び携帯を落とした。
「…………………なんで?」
「京介はナマエのことが好きだろう」
「…………………なんで?」
「最初は気づかなかったんだが、よくナマエの事を見てたからな」
「…………………なんで?」
「ナマエの反応がいつもと違った」
なんでそう思ったの、なんで知ってるの、なんで告白されたって分かったの。私の言葉の足りない問いに全部的確に返答してくる嵐山。……15のときから一緒にいるからなぁ……。
そう思いつつ口を開く。
「………………相談があるのですが、」
「どうぞ」
喉が鳴ったのは気づかなかったことにした。
「……生駒は付き合えばいいって言うんですよ」
「うん」
「でもさぁ、なんかこう……切り替えかさ、」
「すぐにそういう風には見られないってことか?」
「…………」
言葉を切った私に視線を向ける嵐山。目がばっちり合う。しばらく間が空いて、嵐山はそっと笑った。
「ああ、すまん。逆なんだな」
「…………だってあいつすんごいグイグイ来るんだもん……」
恥ずかしくてどう切り替えたらいいか分からない。後輩の一人だったのに。
そう言うと嵐山は再び笑って「それは困ったなあ」と言った。