番外編
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※モブ目線
隣の家の女子大生は少し変わっている。
「お隣さんは玉子焼き派ですか? だし巻き卵派ですか?」
朝のゴミ出し時。「おはよう」という言葉を被せるように上記の質問を投げかけられた。ゆるっゆるの話題とは裏腹に何故か深刻そうな顔をしている隣人に「あー玉子焼きかなぁ」と言うと「そうですか。私はやっぱり目玉焼きが一番です」と返ってきた。二択じゃなかった。なんで選択肢に目玉焼き入れなかった。
「てかなんで卵の話」
「今朝方、山原家でいつ買ったか定かではない卵が発掘されました」
「捨てようね」
深刻そうな顔をしていた理由はこれか。どう処理(料理)するか悩んでいたのか。腹こわすぞ。つーか好みの話じゃなかったのかよ紛らわしい。
俺の言葉に「うーん……もったいないお化け出たらやだなぁ……」と口をむぅとさせながら呟く隣人。あなたお化け信じてるような女の子じゃないでしょ、と言おうとしたが「ああ、武器に使えばいいか」という物騒な言葉が聞こえたので口を噤んだ。もったいないお化けが激怒しそうだがそれでいいのか。そして卵を武器って……投げる気か。女子大生が卵投げる機会なんてないだろ。……この子ならやりそうだなぁ……やだなぁ……女子大生ってもっときゃぴきゃぴしてると思ってた……。
この隣人が引っ越して来たのは去年の春。警戒区域ぎりぎりの場所で俺以外に住んでる人間がいないという廃マンションならぬ廃アパート化していたアパート。家賃がめちゃくちゃ安いくらいしか利点がないアパートに女の子が引っ越してきたときはべらぼうに驚いた。家出少女とか駆け落ちとかそういった訳あり住人じゃないだろうな、と警戒していたが挨拶に来たのはどこにでもいそうな女の子で。警戒して損した、普通そうな子で良かったと思っていたのは最初の3日間だけだった。
まず類は友を呼ぶというやつか、彼女の知人は変な人間が多い。
「おいこら師匠! 居留守使うな! いるのは分かってんだよ!」
まず彼女を師匠と呼ぶ真ん中分けの高校生。結構な頻度で彼はやってくる。高校生の知り合いがいるのか、と最初は思ったが彼女自身が去年まで高校生だったから何ら可笑しくない。可笑しくはないが何故彼女は師匠と呼ばれているのか。度々一緒になる朝のゴミ出し時にそれとなく聞いて見ると「師匠って言いたい年頃なんですよ」と欠伸混じりに返ってきた。至極どうでもよさそうだった。
「こらー! 出てきなさいナマエ! あんたまた馬鹿なことやらかしたでしょ!!」
お嬢様学校の制服を着た長い髪の可愛い女の子。これだけ聞くと清楚や可憐といったイメージが出てくると思われるが全くそんなことない。隣の家の扉を遠慮なくガンガン叩く姿は結構怖い。アパートの前ですれ違ったときはお淑やかに挨拶してくれたから余計に怖かった。ゴミ出しのときにそれとなく聞いてみると「大丈夫ですよ。武器持ってないときは結構チョロいですから」と大分気になる言葉が返ってきた。武器持ってないときってなに。
「出てこいコラァ! 今度という今度は許さねえぞ!」
煙草を咥えた金髪の男。字面からしてすでに怖い。更に付け加えるなら目つきもよくない。借金取りさながらの形相でやってくる金髪の男。何であんな大人しそうな子に……と戦々恐々としていたのだが「騒がしくしてしまってスミマセン。ご迷惑おかけしました」と軽く頭を下げられてからはそのイメージはなくなった。普通にいい人そうだった。その次の日、彼が怒っていた理由を聞いてみると「ストレス社会ですからねぇ……」と目を逸らされながら言われた。何かしたんだな。
……とまあ、たった三人でこの濃さだ。怒鳴り込み勢で占めているが他にはチャラそうな茶髪の男やらサメのような目つきのもじゃもじゃの高校生やら絶対カタギじゃないだろっていうこめかみ辺りに傷がある男やら。個性の塊みたいな人々が彼女の家にやってくる。以前どういう知り合いなのか聞いたら「あー……ボランティアサークルみたいな感じです」と返ってきた。絶対嘘だ。あの傷の人は絶対嘘だ。そもそも彼女自身がボランティアをしているイメージがない。絶対嘘だ。
そして隣人になってからもうそろそろ一年が経つというのに女子大生で甘いもの好き、ボランティア団体に入っている(仮)という事くらいしか知らなかった。割と謎も多い。夜はいないことも多く、ほとんどバイトで留守にしているらしい。女の子が夜のバイトって危ないよ、と軽い忠告をしたときに返ってきた言葉が「大丈夫大丈夫。何もないときは座ってボーッと夜を過ごすだけのバイトなんで」だった。色んな意味で危ないバイトだった。親は知ってるの……? と冷や汗を流しながら聞くと「親公認です」と返ってきた。その日からこの話題を出すことは止めた。
「あ、そう言えば勤め先の試作品のパンが」
「食べます」
……まあなんであれ、勤め先の余り物を一緒に食べてくれる人間がいるというのは普通に嬉しいものだ。たとえちょっと頭のネジが吹っ飛んでいるような女の子でも。
「これパンじゃなくてプリンですよ。パンが主役じゃなくてプリンが主役ですよ」
「プリンが好物なんだよね、今の雇い主」
「可愛いな雇い主。私の知ってるパン屋さんは戦闘力25億くらいの戦闘民族ですよ」
「それもうパン屋さんじゃないね」
なにそのスーパーサイヤ人。
隣の家の女子大生は少し変わっている。
「お隣さんは玉子焼き派ですか? だし巻き卵派ですか?」
朝のゴミ出し時。「おはよう」という言葉を被せるように上記の質問を投げかけられた。ゆるっゆるの話題とは裏腹に何故か深刻そうな顔をしている隣人に「あー玉子焼きかなぁ」と言うと「そうですか。私はやっぱり目玉焼きが一番です」と返ってきた。二択じゃなかった。なんで選択肢に目玉焼き入れなかった。
「てかなんで卵の話」
「今朝方、山原家でいつ買ったか定かではない卵が発掘されました」
「捨てようね」
深刻そうな顔をしていた理由はこれか。どう処理(料理)するか悩んでいたのか。腹こわすぞ。つーか好みの話じゃなかったのかよ紛らわしい。
俺の言葉に「うーん……もったいないお化け出たらやだなぁ……」と口をむぅとさせながら呟く隣人。あなたお化け信じてるような女の子じゃないでしょ、と言おうとしたが「ああ、武器に使えばいいか」という物騒な言葉が聞こえたので口を噤んだ。もったいないお化けが激怒しそうだがそれでいいのか。そして卵を武器って……投げる気か。女子大生が卵投げる機会なんてないだろ。……この子ならやりそうだなぁ……やだなぁ……女子大生ってもっときゃぴきゃぴしてると思ってた……。
この隣人が引っ越して来たのは去年の春。警戒区域ぎりぎりの場所で俺以外に住んでる人間がいないという廃マンションならぬ廃アパート化していたアパート。家賃がめちゃくちゃ安いくらいしか利点がないアパートに女の子が引っ越してきたときはべらぼうに驚いた。家出少女とか駆け落ちとかそういった訳あり住人じゃないだろうな、と警戒していたが挨拶に来たのはどこにでもいそうな女の子で。警戒して損した、普通そうな子で良かったと思っていたのは最初の3日間だけだった。
まず類は友を呼ぶというやつか、彼女の知人は変な人間が多い。
「おいこら師匠! 居留守使うな! いるのは分かってんだよ!」
まず彼女を師匠と呼ぶ真ん中分けの高校生。結構な頻度で彼はやってくる。高校生の知り合いがいるのか、と最初は思ったが彼女自身が去年まで高校生だったから何ら可笑しくない。可笑しくはないが何故彼女は師匠と呼ばれているのか。度々一緒になる朝のゴミ出し時にそれとなく聞いて見ると「師匠って言いたい年頃なんですよ」と欠伸混じりに返ってきた。至極どうでもよさそうだった。
「こらー! 出てきなさいナマエ! あんたまた馬鹿なことやらかしたでしょ!!」
お嬢様学校の制服を着た長い髪の可愛い女の子。これだけ聞くと清楚や可憐といったイメージが出てくると思われるが全くそんなことない。隣の家の扉を遠慮なくガンガン叩く姿は結構怖い。アパートの前ですれ違ったときはお淑やかに挨拶してくれたから余計に怖かった。ゴミ出しのときにそれとなく聞いてみると「大丈夫ですよ。武器持ってないときは結構チョロいですから」と大分気になる言葉が返ってきた。武器持ってないときってなに。
「出てこいコラァ! 今度という今度は許さねえぞ!」
煙草を咥えた金髪の男。字面からしてすでに怖い。更に付け加えるなら目つきもよくない。借金取りさながらの形相でやってくる金髪の男。何であんな大人しそうな子に……と戦々恐々としていたのだが「騒がしくしてしまってスミマセン。ご迷惑おかけしました」と軽く頭を下げられてからはそのイメージはなくなった。普通にいい人そうだった。その次の日、彼が怒っていた理由を聞いてみると「ストレス社会ですからねぇ……」と目を逸らされながら言われた。何かしたんだな。
……とまあ、たった三人でこの濃さだ。怒鳴り込み勢で占めているが他にはチャラそうな茶髪の男やらサメのような目つきのもじゃもじゃの高校生やら絶対カタギじゃないだろっていうこめかみ辺りに傷がある男やら。個性の塊みたいな人々が彼女の家にやってくる。以前どういう知り合いなのか聞いたら「あー……ボランティアサークルみたいな感じです」と返ってきた。絶対嘘だ。あの傷の人は絶対嘘だ。そもそも彼女自身がボランティアをしているイメージがない。絶対嘘だ。
そして隣人になってからもうそろそろ一年が経つというのに女子大生で甘いもの好き、ボランティア団体に入っている(仮)という事くらいしか知らなかった。割と謎も多い。夜はいないことも多く、ほとんどバイトで留守にしているらしい。女の子が夜のバイトって危ないよ、と軽い忠告をしたときに返ってきた言葉が「大丈夫大丈夫。何もないときは座ってボーッと夜を過ごすだけのバイトなんで」だった。色んな意味で危ないバイトだった。親は知ってるの……? と冷や汗を流しながら聞くと「親公認です」と返ってきた。その日からこの話題を出すことは止めた。
「あ、そう言えば勤め先の試作品のパンが」
「食べます」
……まあなんであれ、勤め先の余り物を一緒に食べてくれる人間がいるというのは普通に嬉しいものだ。たとえちょっと頭のネジが吹っ飛んでいるような女の子でも。
「これパンじゃなくてプリンですよ。パンが主役じゃなくてプリンが主役ですよ」
「プリンが好物なんだよね、今の雇い主」
「可愛いな雇い主。私の知ってるパン屋さんは戦闘力25億くらいの戦闘民族ですよ」
「それもうパン屋さんじゃないね」
なにそのスーパーサイヤ人。