番外編
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・高校生のとき
「遅くまで遊ぶんじゃない」
そう冷たい声で言われ、楽しかったはずなのに一気にテンションが下がった。そのせいかいつもなら「ごめんね~」と軽く返せるのになぜかカチンときてしまい、つい言い返してしまった。
「城戸さんに『うっさいよ関係ないじゃん』とか言っちゃった!! 気まずい! 気まずいよ風間さん!!!」
「大事な話じゃなかったのか」
「大事な話だよ。あれから城戸さんが私に口うるさく言わなくなった」
「良かったな」
「良くないッ!」
明らかに態度が違う城戸さん。私が何をやっても怒ることもないし呆れた様子も見せないし溜め息もつかない。異常だ。気持ち悪い。
やらかした……と頭を抱える私に対し、風間さんはりんごジュースをストローでのんびり飲んでいる。他人事だと思ってるなこの人。
「大学生になったからって余裕ですか。言っとくけど18才過ぎて身長伸びる人なんかほとんどいないからね」
「おまえは俺にケンカを売るために呼び出したのか」
「ごめんなさい帰らないで」
けっこう本気で悩んでるから! と半ば叫ぶように言うと「ファミレスで騒ぐな」とチョップをひとつ貰い、ため息をついて風間さんは再び腰を下ろした。
「いつものようにヘラヘラと適当に返せなかったのか」
「ヘラヘラって……なんかイラッときたんだもん」
普段から任務以外で夜出歩くなとか言われるけどあのときみたいに苛立ったことはない。「城戸さん過保護ぉ!」と茶化したくらいだ。もれなくヤクザばりの鋭い眼光をいただいたけど。死ぬかと思った。
城戸さんが悪いわけがない。何だかんだ言って付き合いは長い。心配して言ってくれたのは分かってる。数え切れないくらい迷惑かけてきて未だにそう言ってくれるなんてヤクザ顔のくせに中身は仏のようなものだ。三度どころじゃないからね。幼少期のやんちゃ含めたらキリないからね。
……そこまで分かってるのに何故かあのときは押さえが効かなかった。やらかしたと思ってもすぐに謝れなかった。そして今は完全に色んなタイミングを逃した状態だ。あまりの気まずさに風間さんを衝動的に呼び出したくらいである。
「なんであのときすぐに謝らなかったんだ……時間経つとさらに気まずいわ……」
「………」
「え、なにその目」
「ただの反抗期だろうそれは」
そう言ってさて話は終わったと言わんばかりにメニューを持ち出した風間さん。いや、ちょっと待って。
「反抗期ってあれでしょ『まじ親うぜー』なやつでしょ。え、城戸さん私の親……?」
「似たようなものだろう。すみませんカツカレーお願いします」
「近所の、何だかんだ言って構ってくれるおじさんポジション何だけど城戸さんって」
「近所のおじさんがわざわざ後見人に名乗りでるか。すみませんカツカレー大盛りで」
「前から思ってたけど風間さんって結構マイペースだよね」
というか私への態度がおざなり過ぎる。
好物が食べられると機嫌の良さそうな風間さん。くっそ、相談場所まちがえた。頬杖をつきながらブツブツ文句を言ってたが、風間さんはカツカレーのことしか頭にないらしくスルーされた。もう知らん。自分でなんとかせねば。
「……反抗期かぁ……」
改めて口に出すと違和感がある。「年がら年中反抗的だよね。誰に似たのそれ」と迅に言われたのは中学生のとき。そう言えばあんくらいの迅は今と比べたらだいぶ尖っていた。あれは反抗期だったのかもしれない。………あれ、年がら年中反抗的ってことはずっと反抗期なの私。全く成長してないの?
考えすぎて意味分からなくなってきた。ぐぬぬ、と頭を抱える。知恵熱でそう。
「一周まわって城戸さん怒らせたくなってきた。これも反抗期か」
「それはただの悪質な好奇心だ」
反抗期って難しい。
「んー……どうやったら謝れるかなぁ。というか謝ったら負けな気がしてきたなぁ」
「おい」
「嘘だよ。どうやったら治るの? 無意味に城戸さんに反抗するのはちょっとあれだから」
四十代は色々とナイーブな時期らしいからストレスを与えたくはない。急に薄くなるらしいからね。城戸さんの頭が涼しくなるのは避けたい。そう言うと「おまえは……」と風間さんが呆れたように息をついた。
「心配する場所はそこじゃない。こんな時でもズレているのかおまえは。今までどうやって生きてきたんだ」
「とりあえず馬鹿にされてることは理解した」
「うるさい立ち上がるな」
立っただけでうるさいって言われた。釈然としないが「……ずれてるってなんですか」と小さい声で質問する。風間さんは真っ直ぐに私に視線を向け口を開いた。
「反抗期なんて治そうと思って治るもんじゃない。心が成長するのに必要なことだ。そもそもおまえが心配しているのは城戸指令との関係の方だろう」
「…………城戸さんまだ怒ってるかな」
べちゃべちゃなホットケーキを食べても無表情だった城戸さん。思いのほか攻撃力のあった雪玉を頭に食らっても無表情だった城戸さん。三者面談で先生が私の悪行を暴露したとき無表情で怒りを抑えていた城戸さん。………あのときの城戸さんは無表情だったけど明らかに動揺していた。
息をついて眉間のシワを親指で伸ばす。こんなに悩むことは中々ないから癖になったら困る。そう思いつつ携帯を取り出してメールを作成し、送った。
「直接会って謝る」
「そうか」
「風間さんありがとう。ちゃんと謝ってこれからも反抗期していくねって宣言する」
「……いいんじゃないか」
反抗する相手がいるのはいいことだと風間さんは目元を緩ませてそう言った。大学生になっても風間さんはなんだかんだ言って面倒を見てくれるようだ。太刀川さんに教えなければと考えていると携帯が震え、そこに表示されたメッセージに思わず笑ってしまった。
「『この間は強く言い過ぎた。夜はおまえの好きなものを頼め』だって」
おまえが不機嫌になったら絶対に焼き肉連れて行ってたんだよなーという林藤さんの言葉は本当らしい。ご機嫌とりの方法が昔と全く変わってなくて笑いが止まらなくなった。焼き肉はおいしかった。
(風間さんも反抗したくなったら私が相手してあげるからね)
(その予定は永遠にないから安心しろ)
「遅くまで遊ぶんじゃない」
そう冷たい声で言われ、楽しかったはずなのに一気にテンションが下がった。そのせいかいつもなら「ごめんね~」と軽く返せるのになぜかカチンときてしまい、つい言い返してしまった。
「城戸さんに『うっさいよ関係ないじゃん』とか言っちゃった!! 気まずい! 気まずいよ風間さん!!!」
「大事な話じゃなかったのか」
「大事な話だよ。あれから城戸さんが私に口うるさく言わなくなった」
「良かったな」
「良くないッ!」
明らかに態度が違う城戸さん。私が何をやっても怒ることもないし呆れた様子も見せないし溜め息もつかない。異常だ。気持ち悪い。
やらかした……と頭を抱える私に対し、風間さんはりんごジュースをストローでのんびり飲んでいる。他人事だと思ってるなこの人。
「大学生になったからって余裕ですか。言っとくけど18才過ぎて身長伸びる人なんかほとんどいないからね」
「おまえは俺にケンカを売るために呼び出したのか」
「ごめんなさい帰らないで」
けっこう本気で悩んでるから! と半ば叫ぶように言うと「ファミレスで騒ぐな」とチョップをひとつ貰い、ため息をついて風間さんは再び腰を下ろした。
「いつものようにヘラヘラと適当に返せなかったのか」
「ヘラヘラって……なんかイラッときたんだもん」
普段から任務以外で夜出歩くなとか言われるけどあのときみたいに苛立ったことはない。「城戸さん過保護ぉ!」と茶化したくらいだ。もれなくヤクザばりの鋭い眼光をいただいたけど。死ぬかと思った。
城戸さんが悪いわけがない。何だかんだ言って付き合いは長い。心配して言ってくれたのは分かってる。数え切れないくらい迷惑かけてきて未だにそう言ってくれるなんてヤクザ顔のくせに中身は仏のようなものだ。三度どころじゃないからね。幼少期のやんちゃ含めたらキリないからね。
……そこまで分かってるのに何故かあのときは押さえが効かなかった。やらかしたと思ってもすぐに謝れなかった。そして今は完全に色んなタイミングを逃した状態だ。あまりの気まずさに風間さんを衝動的に呼び出したくらいである。
「なんであのときすぐに謝らなかったんだ……時間経つとさらに気まずいわ……」
「………」
「え、なにその目」
「ただの反抗期だろうそれは」
そう言ってさて話は終わったと言わんばかりにメニューを持ち出した風間さん。いや、ちょっと待って。
「反抗期ってあれでしょ『まじ親うぜー』なやつでしょ。え、城戸さん私の親……?」
「似たようなものだろう。すみませんカツカレーお願いします」
「近所の、何だかんだ言って構ってくれるおじさんポジション何だけど城戸さんって」
「近所のおじさんがわざわざ後見人に名乗りでるか。すみませんカツカレー大盛りで」
「前から思ってたけど風間さんって結構マイペースだよね」
というか私への態度がおざなり過ぎる。
好物が食べられると機嫌の良さそうな風間さん。くっそ、相談場所まちがえた。頬杖をつきながらブツブツ文句を言ってたが、風間さんはカツカレーのことしか頭にないらしくスルーされた。もう知らん。自分でなんとかせねば。
「……反抗期かぁ……」
改めて口に出すと違和感がある。「年がら年中反抗的だよね。誰に似たのそれ」と迅に言われたのは中学生のとき。そう言えばあんくらいの迅は今と比べたらだいぶ尖っていた。あれは反抗期だったのかもしれない。………あれ、年がら年中反抗的ってことはずっと反抗期なの私。全く成長してないの?
考えすぎて意味分からなくなってきた。ぐぬぬ、と頭を抱える。知恵熱でそう。
「一周まわって城戸さん怒らせたくなってきた。これも反抗期か」
「それはただの悪質な好奇心だ」
反抗期って難しい。
「んー……どうやったら謝れるかなぁ。というか謝ったら負けな気がしてきたなぁ」
「おい」
「嘘だよ。どうやったら治るの? 無意味に城戸さんに反抗するのはちょっとあれだから」
四十代は色々とナイーブな時期らしいからストレスを与えたくはない。急に薄くなるらしいからね。城戸さんの頭が涼しくなるのは避けたい。そう言うと「おまえは……」と風間さんが呆れたように息をついた。
「心配する場所はそこじゃない。こんな時でもズレているのかおまえは。今までどうやって生きてきたんだ」
「とりあえず馬鹿にされてることは理解した」
「うるさい立ち上がるな」
立っただけでうるさいって言われた。釈然としないが「……ずれてるってなんですか」と小さい声で質問する。風間さんは真っ直ぐに私に視線を向け口を開いた。
「反抗期なんて治そうと思って治るもんじゃない。心が成長するのに必要なことだ。そもそもおまえが心配しているのは城戸指令との関係の方だろう」
「…………城戸さんまだ怒ってるかな」
べちゃべちゃなホットケーキを食べても無表情だった城戸さん。思いのほか攻撃力のあった雪玉を頭に食らっても無表情だった城戸さん。三者面談で先生が私の悪行を暴露したとき無表情で怒りを抑えていた城戸さん。………あのときの城戸さんは無表情だったけど明らかに動揺していた。
息をついて眉間のシワを親指で伸ばす。こんなに悩むことは中々ないから癖になったら困る。そう思いつつ携帯を取り出してメールを作成し、送った。
「直接会って謝る」
「そうか」
「風間さんありがとう。ちゃんと謝ってこれからも反抗期していくねって宣言する」
「……いいんじゃないか」
反抗する相手がいるのはいいことだと風間さんは目元を緩ませてそう言った。大学生になっても風間さんはなんだかんだ言って面倒を見てくれるようだ。太刀川さんに教えなければと考えていると携帯が震え、そこに表示されたメッセージに思わず笑ってしまった。
「『この間は強く言い過ぎた。夜はおまえの好きなものを頼め』だって」
おまえが不機嫌になったら絶対に焼き肉連れて行ってたんだよなーという林藤さんの言葉は本当らしい。ご機嫌とりの方法が昔と全く変わってなくて笑いが止まらなくなった。焼き肉はおいしかった。
(風間さんも反抗したくなったら私が相手してあげるからね)
(その予定は永遠にないから安心しろ)