番外編
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「あ、ゴル……荒船ー」
今ゴルゴって言おうとしただろ。
顔をしかめながら振り返ると案の定ナマエさんの姿。緩く手を振りながら俺の下に歩いてくる。先日の一件から顔を合わせるのを避けていたのに油断した。内心舌打ちしたい気分になりながら「どうしました」と一応要件を聞く。先輩じゃなかったら確実に無視する。
「いやね、携帯を一度ならず二度も拾ってもらったからお礼しに来た」
「いえ、気にしないでください」
本気で気にしないでくれ。さっきから視界にチラチラうつる物体が異彩を放っている。ナマエさんの肩に担がれている無駄にデカい物体。嫌な予感しかしない。
「いえいえお構いなく。ほいどーぞ」
お構いなくじゃねえよそれは俺の台詞だ。突っ込みたいのを我慢して「それなんですか」と質問すると「斧」と簡潔に返ってきた。形からして薄々思っていたがふざけんな。あんた風間さんとの話し合いでサバイバルナイフにしたんじゃなかったのか。サバイバルナイフもいらないけどな。
「最初はナイフにしようと思ってたんだけど感謝の大きさを表すなら斧だよねってなった」
「ちなみにそれ誰と話し合ったんですか」
「太刀川さん」
ろくでもないのとタッグ組みやがった。あの人がナマエさんの奇行を止めるはずがない。面白がっている太刀川さんの顔しか頭に浮かばなくて舌打ちが出た。ナマエさんは律儀にも斧の説明をしていて気づいてなかったが。普段あんなに適当なくせにこんなときだけマメなんだよ。
「持ってくるとき職質されたけどボーダーで使うって言ったら見逃されたわ。いやぁボーダー様々だね」
職権乱用やめろ。ボーダー何やってんだって思われるだろ。この人が古株の隊員で今までよくボーダーの評判落ちなかったな。根付さんの苦悩が目に浮かぶ。
「まあ薪割りでもおやじ狩りにでも使って」
「俺の家と俺のことを大分バカにしてますよね」
「してねーよ失礼な」
どっちがだ。
……この数分のやりとりでなんでこんなにも疲れないといけないんだ。普段ギャーギャー言いながらも関わってる出水や諏訪さん辺りはどうやってこの人のことを対処しているんだ。
「えー……せっかく買ってきたのに」
受け取らない俺に対し少し残念そうに言うナマエさん。ナマエさん以外なら多少の罪悪感は湧くんだろうが、視界に入る斧が邪魔してくれてそんなことを一切思わなくなる。
「しょうがない、城戸さんにでもあげよう」
「ちょっと待て」
立ち去ろうとしたナマエさんの斧を担いでない方の肩を掴んで止める。なぜそうなる。言っちゃあれだがあんな風貌の人間が斧なんか持っていたら有無を言わさず捕まるぞ。そのチョイスわざとか。
「お、欲しくなった?」
「ちげーよ。いい加減斧から離れろ」
「斧から離れる……じゃあやっぱナイフか」
「言い方変える。刃物類を贈ろうとする思考を消せ」
敬語が吹っ飛んだがもうこの人ならどうでもいい。
「ええ……おまえ我が儘だな」
なぜ俺がいい加減しろよって顔されなきゃいけない。この人が女じゃなかったら確実に殴っている。
強く握られた右手を必死にほぐして深呼吸する。そして全く関係ないがこの人と同じ高校じゃなくてよかったと今本気で思った。当真や鋼はこの人が在学中はどうしていたのだろうか。同じ学校ってだけであいつらのことを尊敬してしまいそうだ。
「うーん……刃物もダメ……それは難しいなぁ。本当にいいの?」
「悩む要素が分からねえよ。もう何もいらないからそっとしといて下さい」
「……わかった」
確実に納得してない顔でそう言ったナマエさんに一抹の不安を残しながらその日は別れた。
そして後日、その予想は当たった。
「っ!?」
「あ、本当だ喜んでる」
「良かったですねナマエさん」
のんびり話す鋼とナマエさんに本気で殺意が湧く。が、今はそれどころじゃない。二人が抱いている物体から目を離さないようにするだけで必死だった。
「な、なんで犬なんて連れてんだ……!」
「当真に荒船の好みを聞いたら犬って教えてくれた」
「家族が犬アレルギーなんだってな。今日は遠慮しないで遊んで帰ってくれ」
当真、あいつぶっ殺す!!
(当真ぁああああ!! )
(お、もうバレたか)
(バレたかじゃねえよ! )
(ナマエさんだけじゃなくて鋼まで巻き込みやがって……! )
(あのふたりいろんな意味で素直でおもしれーよな)
(面白くねえよ! )
今ゴルゴって言おうとしただろ。
顔をしかめながら振り返ると案の定ナマエさんの姿。緩く手を振りながら俺の下に歩いてくる。先日の一件から顔を合わせるのを避けていたのに油断した。内心舌打ちしたい気分になりながら「どうしました」と一応要件を聞く。先輩じゃなかったら確実に無視する。
「いやね、携帯を一度ならず二度も拾ってもらったからお礼しに来た」
「いえ、気にしないでください」
本気で気にしないでくれ。さっきから視界にチラチラうつる物体が異彩を放っている。ナマエさんの肩に担がれている無駄にデカい物体。嫌な予感しかしない。
「いえいえお構いなく。ほいどーぞ」
お構いなくじゃねえよそれは俺の台詞だ。突っ込みたいのを我慢して「それなんですか」と質問すると「斧」と簡潔に返ってきた。形からして薄々思っていたがふざけんな。あんた風間さんとの話し合いでサバイバルナイフにしたんじゃなかったのか。サバイバルナイフもいらないけどな。
「最初はナイフにしようと思ってたんだけど感謝の大きさを表すなら斧だよねってなった」
「ちなみにそれ誰と話し合ったんですか」
「太刀川さん」
ろくでもないのとタッグ組みやがった。あの人がナマエさんの奇行を止めるはずがない。面白がっている太刀川さんの顔しか頭に浮かばなくて舌打ちが出た。ナマエさんは律儀にも斧の説明をしていて気づいてなかったが。普段あんなに適当なくせにこんなときだけマメなんだよ。
「持ってくるとき職質されたけどボーダーで使うって言ったら見逃されたわ。いやぁボーダー様々だね」
職権乱用やめろ。ボーダー何やってんだって思われるだろ。この人が古株の隊員で今までよくボーダーの評判落ちなかったな。根付さんの苦悩が目に浮かぶ。
「まあ薪割りでもおやじ狩りにでも使って」
「俺の家と俺のことを大分バカにしてますよね」
「してねーよ失礼な」
どっちがだ。
……この数分のやりとりでなんでこんなにも疲れないといけないんだ。普段ギャーギャー言いながらも関わってる出水や諏訪さん辺りはどうやってこの人のことを対処しているんだ。
「えー……せっかく買ってきたのに」
受け取らない俺に対し少し残念そうに言うナマエさん。ナマエさん以外なら多少の罪悪感は湧くんだろうが、視界に入る斧が邪魔してくれてそんなことを一切思わなくなる。
「しょうがない、城戸さんにでもあげよう」
「ちょっと待て」
立ち去ろうとしたナマエさんの斧を担いでない方の肩を掴んで止める。なぜそうなる。言っちゃあれだがあんな風貌の人間が斧なんか持っていたら有無を言わさず捕まるぞ。そのチョイスわざとか。
「お、欲しくなった?」
「ちげーよ。いい加減斧から離れろ」
「斧から離れる……じゃあやっぱナイフか」
「言い方変える。刃物類を贈ろうとする思考を消せ」
敬語が吹っ飛んだがもうこの人ならどうでもいい。
「ええ……おまえ我が儘だな」
なぜ俺がいい加減しろよって顔されなきゃいけない。この人が女じゃなかったら確実に殴っている。
強く握られた右手を必死にほぐして深呼吸する。そして全く関係ないがこの人と同じ高校じゃなくてよかったと今本気で思った。当真や鋼はこの人が在学中はどうしていたのだろうか。同じ学校ってだけであいつらのことを尊敬してしまいそうだ。
「うーん……刃物もダメ……それは難しいなぁ。本当にいいの?」
「悩む要素が分からねえよ。もう何もいらないからそっとしといて下さい」
「……わかった」
確実に納得してない顔でそう言ったナマエさんに一抹の不安を残しながらその日は別れた。
そして後日、その予想は当たった。
「っ!?」
「あ、本当だ喜んでる」
「良かったですねナマエさん」
のんびり話す鋼とナマエさんに本気で殺意が湧く。が、今はそれどころじゃない。二人が抱いている物体から目を離さないようにするだけで必死だった。
「な、なんで犬なんて連れてんだ……!」
「当真に荒船の好みを聞いたら犬って教えてくれた」
「家族が犬アレルギーなんだってな。今日は遠慮しないで遊んで帰ってくれ」
当真、あいつぶっ殺す!!
(当真ぁああああ!! )
(お、もうバレたか)
(バレたかじゃねえよ! )
(ナマエさんだけじゃなくて鋼まで巻き込みやがって……! )
(あのふたりいろんな意味で素直でおもしれーよな)
(面白くねえよ! )