本編
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「あああ……何をやってるんだ」
ボクがあれだけ相手したのに、と額に手を当ててブツブツ言う唯我。何だかんだ言って修くんのことを気に入っていたらしい。めずらしい。
夜の部のB級ランク戦。二宮隊、影浦隊、東隊、玉狛第二の四つ巴戦。さっそく落とされたのは修くんだった。東さんの変態スナイプで。修くん落ち込んでそう。大丈夫、東さんの射撃は変態だから。気にしないでいいんだよ、変態だから。普段はお茶目で頼れる常識人だけど射撃は変態だから。
「あー……大丈夫かメガネくん」
「変態だから大丈夫」
「は?」
「間違えた」
思わず口に出てしまった。横で「変態ってなんだよ! え……メガネくんってそっちなのか……?」と引いたような顔をする出水。修くんに対するあらぬ噂が立つ前に訂正を入れておく。迅だったら放っておくけどさすがに「快進撃を続ける玉狛第二の隊長は被虐性愛者だった! つまりドM!」なんて噂が立ったら可哀想だ。しかもまだ中学生。扉を開くのが早すぎる。迅だったら放っておくけど。嵐山だったら嵐山じゃなくて周りの人間が怒るから一応訂正はする。迅は知らん。
「マップいじるの流行ってるんですか?」
「東さんにしては珍しいよな」
「いや東さんじゃなくて小荒井でしょ絶対」
どーせ面白そうとか楽しそうとかそんな理由だ。あいつの好奇心は嫌いじゃない。そういう挑戦心大事。そう言いながらうんうん頷いていると「師匠は思い立ったらすぐ行動して色々やらかすもんな。そりゃ小荒井の気持ち分かるな」と生意気言う出水の頭にチョップする。ついでに納得したと言わんばかりに何度も頷いていた唯我にもチョップする。泣かれた。
「唯我って叩くとすぐ涙出るよね。そういう仕組み? もっとやっていい?」
「この加虐性愛者をどうにかしてください! 出水先輩!」
****
後ろで「ピコハンでやるから! 痛くないから!」「ボクはモグラ叩きじゃない!」「金持ちでもモグラ叩き知ってるんだね、おらぁ!」「痛い!!」と騒ぐ師匠と唯我。試合観戦どうなった。メガネくんやられたら興味なしか。そもそも唯我はトリオン体だから痛くねーだろ。あれか、心が痛いってやつか。師匠がフルスイングで唯我の頭をぶん殴ったからか。ピコハンの可愛らしい音が一切しなかったせいか。
「いやぁこうして見るとトリオン体って凄いよね。ご飯食べれるし汗かくし涙出るしで」
「ボクを見ながらしみじみ言わないでください……」
もうやだこの先輩……弁護士を呼んでくれ……とすすり泣く唯我。法なんかくそくらえって人間に対して何いってんだあいつ。「唯我の不幸は太刀川隊にぶち込まれたことと、太刀川隊の作戦室に入り浸るナマエさんがいたことだな」と笑いながら米屋が言っていたのをふと思い出した。あながち間違ってない。半分は自業自得だが。
唯我実験に飽きたのかピコハンを元の場所にきちんと戻して再びソファーに座る師匠。唯我はそのままだった。師匠の脳内は唯我<ピコハンらしい。
「つまらぬものを……殴ってしまった……」
さすがに酷い。
石川五ェ門している師匠に「後でいいからちゃんと慰めてやれよ」というと「覚えてたらね」と軽い口調で返ってきた。絶対忘れるなこの人。普通は忘れないんだけどな。
「どれどれ……ちっ、まだ生きてる。早くトベよ」
そしてこの切り替えの早さ。全く関係ないが師匠は長生きするだろうな、と思った。ギネス載るくらい長生きしそう。師匠の言葉が届いたのか犬飼さんが影浦さんに落とされるし。続いて「よしよし後で飴ちゃんあげよう影浦。残りも殺れ」と悪い顔をする師匠。残り……二宮さんか。考えるまでもなかった。
「師匠はどこが勝つと思ってんの」
「二宮隊」
そう思っていたら意外にも私情抜きで戦況を見ていたらしい。……まあ伊達に長年ボーダー隊員してないし、何だかんだ言って戦況の流れを見る力はある。
「………が負けたらいいのになぁ」
気のせいだった。
「B級二位二宮隊ってゴロ悪いけど気分は最高だよね。影浦たちには頑張ってほしいわー」
私情まみれだ。清々しいほど私情まみれだった。どんだけ仲悪いんだよと何回思ったか分からない感想を心の中で言う。水と油。ハブとマングース。あの人たちって同じ人間なのかと思ってしまうレベルだ。常に冷戦状態。別に仲良くなってほしいとは思わない(というか無理)が、少しくらい歩み寄ってはくれないか。もう足の先を合わせるくらいでいいから。同じ方角を向くだけでいいから。……難易度たけー。無理だな。
「……何でそんなに仲悪いんだ……」
零れるように口に出た言葉。何回これを言ったことか。これを言うと「仲が悪いのに理由なんかあるか」「顔がむかつく」といつも不機嫌な顔をされる。その返答に壊滅的に反りが合わないんだろうな、と自分の中で解釈していたのだが、今日は不機嫌な顔と共に違う言葉が返ってきた。
「二宮さんが悪い」
「え、」
「二宮さんが、悪い」
二回繰り返された言葉。その言葉を言った師匠はいつも通り不機嫌そうな顔だ。だがどこか違和感があった。なんかこう……悲しそうというか、寂しそうというか……どういう意味だと投げかけようとした瞬間にランク戦終了のブザーが鳴った。
「玉狛第二八位まで落ちたか。まーこれからだよね。じゃ任務行ってくる」
そう言って肩を回しながらおれの顔を一切見ないで作戦室から出て行った師匠。これ以上聞くなと釘を刺された気分だ。腑に落ちない。腑に落ちないし師匠の態度も気になる。……気になるんだが、
「…………………唯我、師匠もう出て行ったぜ」
「あの人に人の心はあるんですか……っ!」
やはり忘れられていた唯我は震えながら泣き始めた。……シリアスになりきれないんだよな師匠の話って。
ボクがあれだけ相手したのに、と額に手を当ててブツブツ言う唯我。何だかんだ言って修くんのことを気に入っていたらしい。めずらしい。
夜の部のB級ランク戦。二宮隊、影浦隊、東隊、玉狛第二の四つ巴戦。さっそく落とされたのは修くんだった。東さんの変態スナイプで。修くん落ち込んでそう。大丈夫、東さんの射撃は変態だから。気にしないでいいんだよ、変態だから。普段はお茶目で頼れる常識人だけど射撃は変態だから。
「あー……大丈夫かメガネくん」
「変態だから大丈夫」
「は?」
「間違えた」
思わず口に出てしまった。横で「変態ってなんだよ! え……メガネくんってそっちなのか……?」と引いたような顔をする出水。修くんに対するあらぬ噂が立つ前に訂正を入れておく。迅だったら放っておくけどさすがに「快進撃を続ける玉狛第二の隊長は被虐性愛者だった! つまりドM!」なんて噂が立ったら可哀想だ。しかもまだ中学生。扉を開くのが早すぎる。迅だったら放っておくけど。嵐山だったら嵐山じゃなくて周りの人間が怒るから一応訂正はする。迅は知らん。
「マップいじるの流行ってるんですか?」
「東さんにしては珍しいよな」
「いや東さんじゃなくて小荒井でしょ絶対」
どーせ面白そうとか楽しそうとかそんな理由だ。あいつの好奇心は嫌いじゃない。そういう挑戦心大事。そう言いながらうんうん頷いていると「師匠は思い立ったらすぐ行動して色々やらかすもんな。そりゃ小荒井の気持ち分かるな」と生意気言う出水の頭にチョップする。ついでに納得したと言わんばかりに何度も頷いていた唯我にもチョップする。泣かれた。
「唯我って叩くとすぐ涙出るよね。そういう仕組み? もっとやっていい?」
「この加虐性愛者をどうにかしてください! 出水先輩!」
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後ろで「ピコハンでやるから! 痛くないから!」「ボクはモグラ叩きじゃない!」「金持ちでもモグラ叩き知ってるんだね、おらぁ!」「痛い!!」と騒ぐ師匠と唯我。試合観戦どうなった。メガネくんやられたら興味なしか。そもそも唯我はトリオン体だから痛くねーだろ。あれか、心が痛いってやつか。師匠がフルスイングで唯我の頭をぶん殴ったからか。ピコハンの可愛らしい音が一切しなかったせいか。
「いやぁこうして見るとトリオン体って凄いよね。ご飯食べれるし汗かくし涙出るしで」
「ボクを見ながらしみじみ言わないでください……」
もうやだこの先輩……弁護士を呼んでくれ……とすすり泣く唯我。法なんかくそくらえって人間に対して何いってんだあいつ。「唯我の不幸は太刀川隊にぶち込まれたことと、太刀川隊の作戦室に入り浸るナマエさんがいたことだな」と笑いながら米屋が言っていたのをふと思い出した。あながち間違ってない。半分は自業自得だが。
唯我実験に飽きたのかピコハンを元の場所にきちんと戻して再びソファーに座る師匠。唯我はそのままだった。師匠の脳内は唯我<ピコハンらしい。
「つまらぬものを……殴ってしまった……」
さすがに酷い。
石川五ェ門している師匠に「後でいいからちゃんと慰めてやれよ」というと「覚えてたらね」と軽い口調で返ってきた。絶対忘れるなこの人。普通は忘れないんだけどな。
「どれどれ……ちっ、まだ生きてる。早くトベよ」
そしてこの切り替えの早さ。全く関係ないが師匠は長生きするだろうな、と思った。ギネス載るくらい長生きしそう。師匠の言葉が届いたのか犬飼さんが影浦さんに落とされるし。続いて「よしよし後で飴ちゃんあげよう影浦。残りも殺れ」と悪い顔をする師匠。残り……二宮さんか。考えるまでもなかった。
「師匠はどこが勝つと思ってんの」
「二宮隊」
そう思っていたら意外にも私情抜きで戦況を見ていたらしい。……まあ伊達に長年ボーダー隊員してないし、何だかんだ言って戦況の流れを見る力はある。
「………が負けたらいいのになぁ」
気のせいだった。
「B級二位二宮隊ってゴロ悪いけど気分は最高だよね。影浦たちには頑張ってほしいわー」
私情まみれだ。清々しいほど私情まみれだった。どんだけ仲悪いんだよと何回思ったか分からない感想を心の中で言う。水と油。ハブとマングース。あの人たちって同じ人間なのかと思ってしまうレベルだ。常に冷戦状態。別に仲良くなってほしいとは思わない(というか無理)が、少しくらい歩み寄ってはくれないか。もう足の先を合わせるくらいでいいから。同じ方角を向くだけでいいから。……難易度たけー。無理だな。
「……何でそんなに仲悪いんだ……」
零れるように口に出た言葉。何回これを言ったことか。これを言うと「仲が悪いのに理由なんかあるか」「顔がむかつく」といつも不機嫌な顔をされる。その返答に壊滅的に反りが合わないんだろうな、と自分の中で解釈していたのだが、今日は不機嫌な顔と共に違う言葉が返ってきた。
「二宮さんが悪い」
「え、」
「二宮さんが、悪い」
二回繰り返された言葉。その言葉を言った師匠はいつも通り不機嫌そうな顔だ。だがどこか違和感があった。なんかこう……悲しそうというか、寂しそうというか……どういう意味だと投げかけようとした瞬間にランク戦終了のブザーが鳴った。
「玉狛第二八位まで落ちたか。まーこれからだよね。じゃ任務行ってくる」
そう言って肩を回しながらおれの顔を一切見ないで作戦室から出て行った師匠。これ以上聞くなと釘を刺された気分だ。腑に落ちない。腑に落ちないし師匠の態度も気になる。……気になるんだが、
「…………………唯我、師匠もう出て行ったぜ」
「あの人に人の心はあるんですか……っ!」
やはり忘れられていた唯我は震えながら泣き始めた。……シリアスになりきれないんだよな師匠の話って。