本編
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「エネドラッド、早く。おそい。早く」
「うるせえ雑魚ッ!」
「その姿で言われても。ゴキブリホイホイの中に放り込むぞ雑魚」
お互いを雑魚雑魚言い合いながら向き合ってトランプをする一人と一匹。それを横目で見た後、再びモニターへと視線を戻す。キーボードをカタカタと打つ音と共に「ダウト」「くそッおい早くカード集めろ」「そんなことも出来ないのか雑魚」「不自由なの見えねぇのか雑魚」という罵り合いをBGMに仕事を続ける。実際ラッドの手足でトランプをするという十分器用なことをしているのだが、ナマエはエネドラに対して容赦がなかった。そもそも二人でダウトをして面白いのかという点は置いておく。
ナマエの全身検査の結果をまとめ終わった寺島は手を休めてドリンクを飲んだ。異常なし、完全健康体。身体が縮まるという異常な現象が起こったにも関わらずこの結果か。どこまで頑丈なんだと細目でナマエを眺める寺島。そしてこの異常現象を巻き起こした張本人は現在他のことにかかりきりだ。面倒起こすなら最後まで片付けていってくれと内心毒づいた。
「ナマエ、検査の結果。全く問題なし。献血にでも行ったらどう」
「気が向いたらねぇ」
絶対行かないな。そう確信しつつテーブルの上に検査結果の紙を置いた。
「雷蔵さん飲み物もらっていい?」
「冷蔵庫から勝手に取って」
「ありがとー」
慣れた様子で冷蔵庫を触るナマエ。週二、三で通っているのだから当たり前と言えば当たり前だが。
「赤吉さん、エネドラッドがズルしないか見てて」
「ばう!」
「そんなみみっちい事するかカス」
「ゴキブリの化身の言うことは信じない」
「誰がゴキブリだァ!」
余りにもナマエがエネドラの事をゴキブリ、ゴキブリと称すものだから本人も気になったのか「おい、ゴキブリってなんだ」と質問してきたのだ。そしてその画像を見せたときからエネドラはああやって強く否定するようになった。ネイバーでも得体の知れないあの気持ち悪さを感じたらしい。
「…………」
それにしても馴染むのが早い。現在夜の10時。ちょうど12時間前にナマエとエネドラは初対面した。「ゴキブリがいる!! 趣味悪過ぎだよ雷蔵さん!!」「何だこの馬鹿面雑魚は」「ゴキブリが喋った!? 雷蔵さんの趣味どうなってんの!」「俺は関係ない」と中々強烈な対面だったわけだがもうすでにゲームをするような仲だ。……まあそれに至るまでに少しばかりあったが。
『てめえみたいに危機感ねェ奴が兵士なんて次攻められたらミデンも終わりだろうなァ』
そう言ったエネドラに対し、しばらく間を空けてナマエは口を開いた。
『私はともかく他がしっかりしてるから』
『は、人任せか』
『そうだねぇ……まあ、私が出来るのは、おまえがした事を一生忘れないってことくらいかな』
珍しく嫌悪を含んだ声色で、それでも口調を崩さずそう言うものだから寺島は一瞬反応が遅れた。エネドラがした事─六名のボーダー職員の殺害。その事が頭に浮かんだ寺島はガタリと席から立ち上がった。まさかエネドラを殺すつもりか、そう思ったのだ。……しかし、
『何やってんの。早くカード引けよノロマ』
『…………てめェは何なんだ』
エネドラの何とも言えないといった言葉、口調に寺島は完全に同意した。直ぐにいつもの雰囲気に戻ったナマエは「カードも選べないのかノロマめ」とエネドラに早くカード引けよと追い討ちをかける。……つまりおまえがしたことは許さないがグダグダ文句を言うつもりもないと。ナマエの反応からそう察した寺島ははぁ、と少し大きめに息を吐いた。焦らすな。
「あの動物野郎って絶対根暗でしょ。家でひとりで話してそう」
「ハッ想像したら傑作だな」
「記録で見たスーパーゴリラマンは男にもてそう」
「ゴリラって何だ」
「最強の霊長類」
あのやり取りがあった上でこれだ。切り替えが早いというか何というか。
そして意外にもこの二人は会話が続くのだ。他の隊員が聞き取りをした際にはエネドラの気分でのらりくらりとかわされていたのだが、ナマエとは罵り合いも挟まれるが言葉のキャッチボールは続く。内容は問えないが。この光景から尋問役はナマエで進めるべきかという案も出たが「話の腰がすぐ折れて面倒くさくなるだけですよ」という菊地原の言葉でなしとなった。別にナマエでも大丈夫と思うけど、と先ほどのやり取りを含め寺島は思ったのだが口には出さなかった。
「んーじゃああの黒髪の黒トリガーは何なの。ずっと遠征艇に引きこもってたけど」
「ああ゛……? 別におまえには関係ねーだろ」
「唯一あの黒トリガーに首飛ばされたのが私ですけど」
そう、こうやってただの好奇心で質問するナマエには何の下心も策略もない。こういった人間のほうが時には上手くいくのだ。
アフトクラトルの情報を吐くことに何の躊躇も見せなかったエネドラが唯一口を割らなかったのがあの黒髪の黒トリガーの事だ。「アレのことは話さねえ」の一点張りだ。エネドラが殺されたことに酷く憤慨していた様子から見るにただの同僚というわけではないだろう。エネドラも同様にあの男には仲間意識を持っていた、というのがボーダーの判断だ。だとしたら今まで以上に口を割るのは困難だ。だからナマエとの会話で何か知り得たら良かったのだが──
「ケッ知るか。てめえの顔がムカついたんだろ」
やはりそう上手くいくものではない。寺島は密かに息を吐き、残りの仕事を進めようとキーボードに手を置いた。
「人の顔ムカつくムカつくっておまえらそれ流行ってんのか」
「はァ? どういうことだ」
「あの黒トリガーにも言われた」
「…………」
ナマエの言葉に思案するかのように言葉を噤むエネドラ。しばらくしてエネドラはナマエの後ろでちょろちょろしていたラービット二体へ視線をやり口を開いた。
「おい、こいつらのコントロールシステムはどうなってる」
「コントロールシステム……? 何じゃそら」
「は? トリオン兵には付いてんだろ」
「専門外のことは知らん。なんか懐かれたから拾った」
「はァア!?」
あ、それあんまり言っちゃ駄目なやつ。
何せこの二体のラービットがナマエに懐いたというとんでも話はまだ解明されてないのだ。更にいうならコントロールシステムというトリオン兵を制御するための装置が何故かこの二体には存在しなかった。まだまだ謎が残るこのラービットの情報を無闇に話すのはいただけない。おそらくエネドラは奪ったトリオン兵をボーダーが再利用していると勘違いしていたのだから。
「…………そうかよ」
しかし寺島の不安とは裏腹にエネドラはそれ以上追及することはなかった。その事に違和感を持ちつつ「ナマエ、そろそろ任務」と釘を刺し、話を終了させた。
「はーい。次はもっと腕、ん? 前足? ……まあいいや、色々磨いとけよ。雑魚過ぎて話にならん」
「潰すぞクソ雑魚!」
「やれるもんならやってみろゴキ雑魚」
「…………」
まだやるつもりか。
下手なこと漏らす前に出禁にしようと心に決めた寺島だった。
「うるせえ雑魚ッ!」
「その姿で言われても。ゴキブリホイホイの中に放り込むぞ雑魚」
お互いを雑魚雑魚言い合いながら向き合ってトランプをする一人と一匹。それを横目で見た後、再びモニターへと視線を戻す。キーボードをカタカタと打つ音と共に「ダウト」「くそッおい早くカード集めろ」「そんなことも出来ないのか雑魚」「不自由なの見えねぇのか雑魚」という罵り合いをBGMに仕事を続ける。実際ラッドの手足でトランプをするという十分器用なことをしているのだが、ナマエはエネドラに対して容赦がなかった。そもそも二人でダウトをして面白いのかという点は置いておく。
ナマエの全身検査の結果をまとめ終わった寺島は手を休めてドリンクを飲んだ。異常なし、完全健康体。身体が縮まるという異常な現象が起こったにも関わらずこの結果か。どこまで頑丈なんだと細目でナマエを眺める寺島。そしてこの異常現象を巻き起こした張本人は現在他のことにかかりきりだ。面倒起こすなら最後まで片付けていってくれと内心毒づいた。
「ナマエ、検査の結果。全く問題なし。献血にでも行ったらどう」
「気が向いたらねぇ」
絶対行かないな。そう確信しつつテーブルの上に検査結果の紙を置いた。
「雷蔵さん飲み物もらっていい?」
「冷蔵庫から勝手に取って」
「ありがとー」
慣れた様子で冷蔵庫を触るナマエ。週二、三で通っているのだから当たり前と言えば当たり前だが。
「赤吉さん、エネドラッドがズルしないか見てて」
「ばう!」
「そんなみみっちい事するかカス」
「ゴキブリの化身の言うことは信じない」
「誰がゴキブリだァ!」
余りにもナマエがエネドラの事をゴキブリ、ゴキブリと称すものだから本人も気になったのか「おい、ゴキブリってなんだ」と質問してきたのだ。そしてその画像を見せたときからエネドラはああやって強く否定するようになった。ネイバーでも得体の知れないあの気持ち悪さを感じたらしい。
「…………」
それにしても馴染むのが早い。現在夜の10時。ちょうど12時間前にナマエとエネドラは初対面した。「ゴキブリがいる!! 趣味悪過ぎだよ雷蔵さん!!」「何だこの馬鹿面雑魚は」「ゴキブリが喋った!? 雷蔵さんの趣味どうなってんの!」「俺は関係ない」と中々強烈な対面だったわけだがもうすでにゲームをするような仲だ。……まあそれに至るまでに少しばかりあったが。
『てめえみたいに危機感ねェ奴が兵士なんて次攻められたらミデンも終わりだろうなァ』
そう言ったエネドラに対し、しばらく間を空けてナマエは口を開いた。
『私はともかく他がしっかりしてるから』
『は、人任せか』
『そうだねぇ……まあ、私が出来るのは、おまえがした事を一生忘れないってことくらいかな』
珍しく嫌悪を含んだ声色で、それでも口調を崩さずそう言うものだから寺島は一瞬反応が遅れた。エネドラがした事─六名のボーダー職員の殺害。その事が頭に浮かんだ寺島はガタリと席から立ち上がった。まさかエネドラを殺すつもりか、そう思ったのだ。……しかし、
『何やってんの。早くカード引けよノロマ』
『…………てめェは何なんだ』
エネドラの何とも言えないといった言葉、口調に寺島は完全に同意した。直ぐにいつもの雰囲気に戻ったナマエは「カードも選べないのかノロマめ」とエネドラに早くカード引けよと追い討ちをかける。……つまりおまえがしたことは許さないがグダグダ文句を言うつもりもないと。ナマエの反応からそう察した寺島ははぁ、と少し大きめに息を吐いた。焦らすな。
「あの動物野郎って絶対根暗でしょ。家でひとりで話してそう」
「ハッ想像したら傑作だな」
「記録で見たスーパーゴリラマンは男にもてそう」
「ゴリラって何だ」
「最強の霊長類」
あのやり取りがあった上でこれだ。切り替えが早いというか何というか。
そして意外にもこの二人は会話が続くのだ。他の隊員が聞き取りをした際にはエネドラの気分でのらりくらりとかわされていたのだが、ナマエとは罵り合いも挟まれるが言葉のキャッチボールは続く。内容は問えないが。この光景から尋問役はナマエで進めるべきかという案も出たが「話の腰がすぐ折れて面倒くさくなるだけですよ」という菊地原の言葉でなしとなった。別にナマエでも大丈夫と思うけど、と先ほどのやり取りを含め寺島は思ったのだが口には出さなかった。
「んーじゃああの黒髪の黒トリガーは何なの。ずっと遠征艇に引きこもってたけど」
「ああ゛……? 別におまえには関係ねーだろ」
「唯一あの黒トリガーに首飛ばされたのが私ですけど」
そう、こうやってただの好奇心で質問するナマエには何の下心も策略もない。こういった人間のほうが時には上手くいくのだ。
アフトクラトルの情報を吐くことに何の躊躇も見せなかったエネドラが唯一口を割らなかったのがあの黒髪の黒トリガーの事だ。「アレのことは話さねえ」の一点張りだ。エネドラが殺されたことに酷く憤慨していた様子から見るにただの同僚というわけではないだろう。エネドラも同様にあの男には仲間意識を持っていた、というのがボーダーの判断だ。だとしたら今まで以上に口を割るのは困難だ。だからナマエとの会話で何か知り得たら良かったのだが──
「ケッ知るか。てめえの顔がムカついたんだろ」
やはりそう上手くいくものではない。寺島は密かに息を吐き、残りの仕事を進めようとキーボードに手を置いた。
「人の顔ムカつくムカつくっておまえらそれ流行ってんのか」
「はァ? どういうことだ」
「あの黒トリガーにも言われた」
「…………」
ナマエの言葉に思案するかのように言葉を噤むエネドラ。しばらくしてエネドラはナマエの後ろでちょろちょろしていたラービット二体へ視線をやり口を開いた。
「おい、こいつらのコントロールシステムはどうなってる」
「コントロールシステム……? 何じゃそら」
「は? トリオン兵には付いてんだろ」
「専門外のことは知らん。なんか懐かれたから拾った」
「はァア!?」
あ、それあんまり言っちゃ駄目なやつ。
何せこの二体のラービットがナマエに懐いたというとんでも話はまだ解明されてないのだ。更にいうならコントロールシステムというトリオン兵を制御するための装置が何故かこの二体には存在しなかった。まだまだ謎が残るこのラービットの情報を無闇に話すのはいただけない。おそらくエネドラは奪ったトリオン兵をボーダーが再利用していると勘違いしていたのだから。
「…………そうかよ」
しかし寺島の不安とは裏腹にエネドラはそれ以上追及することはなかった。その事に違和感を持ちつつ「ナマエ、そろそろ任務」と釘を刺し、話を終了させた。
「はーい。次はもっと腕、ん? 前足? ……まあいいや、色々磨いとけよ。雑魚過ぎて話にならん」
「潰すぞクソ雑魚!」
「やれるもんならやってみろゴキ雑魚」
「…………」
まだやるつもりか。
下手なこと漏らす前に出禁にしようと心に決めた寺島だった。