本編
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「…………はあ、」
「ため息つくくらい嫌なら早く言ってくれませんかね」
顔を見合わせて早々にため息をつかれた。疲れてるならやっぱりレイジさんにお願いしたのに。そう言うと「疲れていません。呆れてはいますけど」と返ってきた。もっと酷い理由だった。ええ……どれだ、どれに呆れてるんだと頭を捻っていると、烏丸は地面に膝をついて私と視線を合わせた。
「風邪ひきますよ」
そう言って自分のマフラーを取って私の首に巻いた。それに目を瞬かせているとふっと口角を上げて私の頭をぽんぽんと叩き、立ち上がった。あ、薄着してたからか……。
「烏丸も鼻の頭赤くなってるじゃん」
「大丈夫です」
「ば、バカは風邪ひかないって諏訪さんに言われたよ」
「ナマエさんはバカというより阿呆です」
「あんまり変わらんわ! ……や、そうじゃなくて」
あーだこーだ言ってるうちに直通通路の入口までやってきた。烏丸がトリガーをかざして中へ入る。冷気が遮断されて温かい。……温かいせいで少し欠伸が漏れた。そして目ざとく烏丸がそれに気づく。
「眠いですか」
「全然大丈夫」
「ナマエさんが大丈夫っていうときは大抵大丈夫じゃありません」
「……迎えにきてもらったのに眠いとか」
「今は子どもなんですから仕方ないでしょ」
よいしょ、とかけ声を出して抱っこされた。柚宇ちゃんのときと違って視線が高い。そして烏丸の歩く振動が眠気を誘う。どうしよう。物凄く甘やかされている。
「……あまり甘やかさないで」
「何でですか」
「これ以上駄目人間になったら私が困る」
素直にそう言うと喉を鳴らして笑われた。
「いいですよこのくらい。甘えてください。抱っこしてたら温かいし」
「うーん……」
「そもそも普段の犯行も言動も派手で突拍子もなくて自分の欲望のままに生きてるのに今更しおらしくされても困ります」
「よおし、元に戻ったらおぼえておけ」
何だか聞き捨てならないことを言われた気がするが頭が回らなくなってきたのも事実だ。くそう、と言葉を漏らしつつ烏丸の首に手を回した。あ、フィットしておちつく。
「………ちゃんと覚えておきますから早く戻ってください」
「んー……?」
「いいえ」
なんでもありません、と頭を撫でられる。なんだこの寝かしつけ上手。すごく眠くなってきた。……なんか前もこんなこと、あったような……、
「……小さいときもこうやって抱っこされてた気がする」
「最上さんですか? それともボス?」
「うーん、何か凄くイヤな顔されてたような……」
「じゃあ城戸司令ですね」
じゃあって何だじゃあって。おまえの中の城戸さんのイメージはどうなってる。烏丸の言葉に少し笑いながらも瞼はどんどん閉じていく。
「う……ん、でも、なんか……すごく、幸せだった……」
あれは何歳のときだっただろうか。理由は忘れたけどだだをこねてずっと抱きついていた。その人はしかめっ面を崩さなかったけど無理やり私の手を離そうともしなかった。烏丸みたいに慣れた手つきではなかったけど、優しい手だった。
「………………ナマエ、」
優しい声だった。
───力いっぱいしがみついてるな
──……………。
─無理やり剥がそうか?
──……。すみません、電話とってもらえますか
────とりまるくんが基地に泊まるなんて珍しいね~
─何かごめんな京介
──いえ、
「………………」
ぱちりと目が覚め、真っ先に視界に入ったのはモサモサとした黒髪。そしてそのモサモサに回した自分の腕。もみじみたいな形でぷにぷにしていた手ではなくて、骨格がしっかりしている大人の手だ。あ……? と自分の状況を理解しようと身体を動かす。そして固まった。
ふくきてない。
「…………」
健やかな寝息をたてているモサモサの黒髪。もとい烏丸。おでこ全開でいつもより何だか幼い。いやそんなのどうでもいい。
恐る恐る布団の中を覗くと自分は変わらずだったが烏丸はきっちり服を着ていた。良かった。大丈夫だった。良かった。高校生に手出したかと思った。良かった。てか何でこのタイミングで戻るかな。解毒薬いらなかったし。普通に戻ったよ。
そっと布団から抜け出してクローゼットから服を借りる。迅の持っていた物と似ていたからここは迅の部屋かと一瞬思ったが、ぼんちあげのダンボールがないから違う。ああ、ほとんど使われてない烏丸の部屋か。ほとんど泊まらないでちゃんと家に帰るため幽霊部屋みたいになってるという噂の。そして帰らなかった理由は………うん。ごめんなさい。
「…………ん、」
後ろからくぐもった声がしたので大げさに肩を揺らす。ゆっくり恐る恐る振り返ると半分ほど目を開けた烏丸が私をぼんやりとした表情で見ていた。
「………ナマエ、さん……? 子どもじゃない……」
「あ、はい。戻ったようです、はい」
「……よかった……、ロ、コンに、なら……なくて………」
そこで言葉が切れて再び瞼を閉じた烏丸。ほっとした様子の烏丸に心配をかけてしまったと少しだけ反省する。諸悪の根源は冬島さんだから少しだけ、反省する。そしてロ○ンって何だ。ポケ○ンか。
「…………」
眉間の力が抜けて穏やかに眠る烏丸の枕元には昨日私の首に巻いてくれたマフラーがぽつりと置かれていた。ちょうど私が寝ていたところだ。四つん這いで進み、上から烏丸の顔を眺める。まつげ長い。鼻高い。肌きれい。どこから見てもイケメンだ。
「………これはモテるわなぁ……」
中身もいい男だもん。普通にモテるわ。世の道理だわ。
「ため息つくくらい嫌なら早く言ってくれませんかね」
顔を見合わせて早々にため息をつかれた。疲れてるならやっぱりレイジさんにお願いしたのに。そう言うと「疲れていません。呆れてはいますけど」と返ってきた。もっと酷い理由だった。ええ……どれだ、どれに呆れてるんだと頭を捻っていると、烏丸は地面に膝をついて私と視線を合わせた。
「風邪ひきますよ」
そう言って自分のマフラーを取って私の首に巻いた。それに目を瞬かせているとふっと口角を上げて私の頭をぽんぽんと叩き、立ち上がった。あ、薄着してたからか……。
「烏丸も鼻の頭赤くなってるじゃん」
「大丈夫です」
「ば、バカは風邪ひかないって諏訪さんに言われたよ」
「ナマエさんはバカというより阿呆です」
「あんまり変わらんわ! ……や、そうじゃなくて」
あーだこーだ言ってるうちに直通通路の入口までやってきた。烏丸がトリガーをかざして中へ入る。冷気が遮断されて温かい。……温かいせいで少し欠伸が漏れた。そして目ざとく烏丸がそれに気づく。
「眠いですか」
「全然大丈夫」
「ナマエさんが大丈夫っていうときは大抵大丈夫じゃありません」
「……迎えにきてもらったのに眠いとか」
「今は子どもなんですから仕方ないでしょ」
よいしょ、とかけ声を出して抱っこされた。柚宇ちゃんのときと違って視線が高い。そして烏丸の歩く振動が眠気を誘う。どうしよう。物凄く甘やかされている。
「……あまり甘やかさないで」
「何でですか」
「これ以上駄目人間になったら私が困る」
素直にそう言うと喉を鳴らして笑われた。
「いいですよこのくらい。甘えてください。抱っこしてたら温かいし」
「うーん……」
「そもそも普段の犯行も言動も派手で突拍子もなくて自分の欲望のままに生きてるのに今更しおらしくされても困ります」
「よおし、元に戻ったらおぼえておけ」
何だか聞き捨てならないことを言われた気がするが頭が回らなくなってきたのも事実だ。くそう、と言葉を漏らしつつ烏丸の首に手を回した。あ、フィットしておちつく。
「………ちゃんと覚えておきますから早く戻ってください」
「んー……?」
「いいえ」
なんでもありません、と頭を撫でられる。なんだこの寝かしつけ上手。すごく眠くなってきた。……なんか前もこんなこと、あったような……、
「……小さいときもこうやって抱っこされてた気がする」
「最上さんですか? それともボス?」
「うーん、何か凄くイヤな顔されてたような……」
「じゃあ城戸司令ですね」
じゃあって何だじゃあって。おまえの中の城戸さんのイメージはどうなってる。烏丸の言葉に少し笑いながらも瞼はどんどん閉じていく。
「う……ん、でも、なんか……すごく、幸せだった……」
あれは何歳のときだっただろうか。理由は忘れたけどだだをこねてずっと抱きついていた。その人はしかめっ面を崩さなかったけど無理やり私の手を離そうともしなかった。烏丸みたいに慣れた手つきではなかったけど、優しい手だった。
「………………ナマエ、」
優しい声だった。
───力いっぱいしがみついてるな
──……………。
─無理やり剥がそうか?
──……。すみません、電話とってもらえますか
────とりまるくんが基地に泊まるなんて珍しいね~
─何かごめんな京介
──いえ、
「………………」
ぱちりと目が覚め、真っ先に視界に入ったのはモサモサとした黒髪。そしてそのモサモサに回した自分の腕。もみじみたいな形でぷにぷにしていた手ではなくて、骨格がしっかりしている大人の手だ。あ……? と自分の状況を理解しようと身体を動かす。そして固まった。
ふくきてない。
「…………」
健やかな寝息をたてているモサモサの黒髪。もとい烏丸。おでこ全開でいつもより何だか幼い。いやそんなのどうでもいい。
恐る恐る布団の中を覗くと自分は変わらずだったが烏丸はきっちり服を着ていた。良かった。大丈夫だった。良かった。高校生に手出したかと思った。良かった。てか何でこのタイミングで戻るかな。解毒薬いらなかったし。普通に戻ったよ。
そっと布団から抜け出してクローゼットから服を借りる。迅の持っていた物と似ていたからここは迅の部屋かと一瞬思ったが、ぼんちあげのダンボールがないから違う。ああ、ほとんど使われてない烏丸の部屋か。ほとんど泊まらないでちゃんと家に帰るため幽霊部屋みたいになってるという噂の。そして帰らなかった理由は………うん。ごめんなさい。
「…………ん、」
後ろからくぐもった声がしたので大げさに肩を揺らす。ゆっくり恐る恐る振り返ると半分ほど目を開けた烏丸が私をぼんやりとした表情で見ていた。
「………ナマエ、さん……? 子どもじゃない……」
「あ、はい。戻ったようです、はい」
「……よかった……、ロ、コンに、なら……なくて………」
そこで言葉が切れて再び瞼を閉じた烏丸。ほっとした様子の烏丸に心配をかけてしまったと少しだけ反省する。諸悪の根源は冬島さんだから少しだけ、反省する。そしてロ○ンって何だ。ポケ○ンか。
「…………」
眉間の力が抜けて穏やかに眠る烏丸の枕元には昨日私の首に巻いてくれたマフラーがぽつりと置かれていた。ちょうど私が寝ていたところだ。四つん這いで進み、上から烏丸の顔を眺める。まつげ長い。鼻高い。肌きれい。どこから見てもイケメンだ。
「………これはモテるわなぁ……」
中身もいい男だもん。普通にモテるわ。世の道理だわ。