本編
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城戸さんにお呼ばれしたのでボーダー基地までやって来た。陽太郎が雷神丸を貸そうとしてくれたが丁重にお断りした。雷神丸に乗ってしまったら色々アウトだと思う。年齢的に。それなのに私が十九歳だと確実に忘れているレイジさんは「用が終わったらラウンジで待っていろ。迎えに行く」と五百円玉を渡した。ケーキでも食べて待っててねということらしい。激甘である。お札を渡さない辺りがなんだかリアル。ちなみに烏丸は出掛ける際に防犯ブザーを首にかけてきた。あいつは普通にふざけてる。帰ったらあいつの前で鳴らす。
そう心で決意し米屋に買ってもらったイチゴオレを飲む。栞ちゃんから連絡がいったらしく早朝に玉狛にやって来た米屋。ひと通り爆笑した後、ボーダー基地まで連れてきてもらった。因みに道中で出会った風間さん、くまちゃん、荒船らからは「……はぁ」「あとで作戦室に来てください! 一緒にお菓子食べましょう」「俺に近づかないでください」といった反応をもらった。帰りに那須隊と荒船隊の作戦室に寄ることが決定した。
「城戸さんまだ時間かかるから待ってろって」
「オレももうすぐ任務なんで抜けるけど大丈夫っすか?」
「おまえも子供扱いか……」
この姿はとんでもなく庇護欲をそそるらしい。おかしいな、現役のときは結構雑に扱われてたのに。
「風間さん辺りが小さくなったら大惨事だな。見たくねぇ」
「あれ以上小さくなったら風間さんの存在がなくなるぞ」
「それ本人に聞かれたら真っ二つだな~」
そんなことをダラダラ話していると前方から見覚えのある人間が歩いて来た。それに気づいた米屋は私に静かに意味ありげな視線を向けてきた。任せろ。
イチゴオレ片手にその人物、出水の元へ走る。ここで「お兄ちゃ~ん! 遊んでー!」と荒船のときと同じように嫌がらせするつもりだったのに出水の目の前で転けてしまった。くそ、歩幅が違いすぎるんだ。
「ぬわっ!? だ、大丈夫か……?」
ぬわってなんだ。
心の中で出水にツッコミつつゆったりと顔をあげる。オロオロしながら私に怪我がないか確認していた。「あっ頭大丈夫か!?」と何回も聞いてくるのはやめろ。
「大丈夫。あ、膝が……」
「イチゴオレ買ってやるから泣くなよ!?」
「…………」
こいつ子供の扱いが下手すぎないか。ジト目で出水を見るがそれに気づくことなく自販機に向かう出水。自販機の横で待っていた米屋に気づくと「子供の怪我ってどうやって治るんだ……イチゴオレで大丈夫か、」と真顔で質問しだす始末。可哀想になってきたので本日二本目のイチゴオレを貰ってネタばらしをした。めっちゃくちゃ怒られた。
「イチゴオレで怪我治るわけねーだろ。子供をなんだと思ってんだ」
「うるせえ! つーかなんで小さくなってんだよ!」
「持病だよ」
「嘘つけ!!」
「はらいてえ……っ」
「笑いすぎだ槍バカ!」
阿鼻叫喚。
冬島テロリストの話を掻い摘まんで説明すると「大変な事になってんのにどさくさに紛れて人の反応みて楽しんでんじゃねえよ!!」と再び怒られた。
「あー楽しかった。じゃ、オレ任務だから」
「おーがんばって。ありがとね」
「気にすんな」
私の頭をわしゃわしゃして米屋は去っていった。同い年なのにこいつらの対応の差は何なんだろうか。ベンチにどさりと座った出水に視線をやる。
「今からランク戦やんのに無駄に疲れた……」
「出水の反応が一番良かったよ」
「嬉しくねえよ」
「万能イチゴオレあげるから元気だせよ」
「殴るぞ」
そう言いつつもイチゴオレを受け取る出水。素直だなこいつ。
携帯を取り出して城戸さんにメールを打つ。指が短いから打つのにも一苦労だ。冬島さんに解毒薬を早く作るようせっつこう。そう思い、指を進めていると携帯に影がかかる。
「どこまでも非常識な人間だなおまえは」
顔を上げるとポケットに手を入れ見下すような視線を向けてくる人物が目の前にいた。反射的に舌打ちを返して口を開く。
「こんな所で話してる暇あんならさっさと友達作れよマダムキラー」
防犯ブザー鳴らしていいかな
***
「どこまでも非常識な人間だなおまえは」
整った顔を歪め、憎々しげにそう言った二宮。眼光は鋭く、心なしか殺気も感じる。完全に敵に向ける眼差しである。そしてそれを一身に受けた四、五歳くらいの子供は怖じ気づくこともなく、頭の後ろに手をやり口を開いた。
「こんな所で話してる暇あんならさっさと友達作れよマダムキラー」
「馬鹿のような呼び方を止めろ。なんだそのみっともない姿は」
「事故だよ」
「そんな妙竹林な事故があってたまるか」
「あるんですー頭の固い二宮さんには分からないと思うけどあるんですー」
「…………」
二宮の殺気が膨れ上がった。こいつ殺したいと無の表情がそう言っている。そして二人のやりとりを静かに見守っていた出水は頭に手をやり、重々しく息を吐いた。相変わらず仲が悪い。
同じポジション、同世代、数年来の付き合い。それにも関わらずこの二人の相性は最悪だった。顔を合わせば悪口の応酬、どちらかの話題を振れば舌打ち、任務が被ったときは地獄絵図。そして被害を被るのは周りの人間。迷惑極まりなかった。
「この忙しい時期に何を遊んでいる」
「バカなの? 二宮さんバカなの? 好き好んでこの恰好でいるわけないじゃんバカか」
「いい機会だ。その歪んだ思考回路を作り直せ」
「性格ねじ曲がり野郎に言われたくないけどね」
「……………」
「……………」
二人の間にブリザードが見える出水。なぜこうなった。
そもそも二宮は人に悪口を言われようが嫌われようが涼しい顔をして流すくせに何故それができない。そしてナマエは三輪や城戸といった扱い難い人種にもヘラヘラしながら絡みに行くのに二宮に対してだけは常に攻撃表示である。なぜだ。
出水がボーダーに入隊したときから二人はこうだった。理由を聞こうとして二宮からは無言のアステロイド、ナマエからは怒りのメテオラを食らったことは一生忘れない。どちらも理不尽にも程がある。つーか仲悪いくせにこういうときだけ結託してんじゃねえよ! というのがまだ幼かった出水の言葉である。
ハァ、と大げさなくらいに再び息を吐いた出水に気づくことなく言葉の殴り合いを続ける二人。青年と幼女の罵倒など色んな意味で見るに堪えない。「二宮さんが子供を虐めてる……!? でもあの子供も結構いうな……てかどこかでこの光景見たような……」という驚愕と困惑を含めた周囲の視線も痛い。いつ頃終わるのかなぁ……と遠い目をし出した出水。そんな中、朗報かどうか判断が難しいがこの殴り合いを終わらせたのはナマエだった。
「つーか二宮さんなんかと話してる暇ないんだよね。城戸さんのとこ行かないと」
「性懲りもなく何か壊したのか貴様」
「ちげーよ任務のことだよ。そして二宮さんこそ呼び出し=器物損壊って思考回路やめろ!」
そう叫びながら去って行くナマエ。その背中に向かって「その妙竹林な格好は何時まで続くんだ」と投げかけた二宮に対し「冬島さんが灰原哀になるまでだよ!!」と想像したら悲惨なことになる捨て台詞を吐いて消えていった。想像してしまった出水は「師匠あのやろう……」と憎々しげに呟いた。
「……ちっ」
ナマエが去っていった方向に舌打ちをした二宮はぐるりと回り、一人でスタスタ歩き出した。
「え、二宮さん、おれとランク戦は?」
「気が削がれた。文句ならあの阿呆に言え」
反論する余地もなくナマエとは反対方向に去っていった二宮。ひとりその場に残された出水は「まじかよ……」と力無く呟く。同じポジションのせいかナマエと二宮の殴り合いによく遭遇もとい巻き込まれる出水。あの米屋でさえも「ナマエさんと二宮さんのケンカは遠慮するわ」と苦笑いするほどだ。不憫で仕方ない。
三度目になるため息をついた出水はブースに行く気にもなれず、帰宅しようと足を進めた。そして顔を上げ、ふと呟いた。
「………そういえばよく師匠って分かったな二宮さん」
チビになってたのに。
そう心で決意し米屋に買ってもらったイチゴオレを飲む。栞ちゃんから連絡がいったらしく早朝に玉狛にやって来た米屋。ひと通り爆笑した後、ボーダー基地まで連れてきてもらった。因みに道中で出会った風間さん、くまちゃん、荒船らからは「……はぁ」「あとで作戦室に来てください! 一緒にお菓子食べましょう」「俺に近づかないでください」といった反応をもらった。帰りに那須隊と荒船隊の作戦室に寄ることが決定した。
「城戸さんまだ時間かかるから待ってろって」
「オレももうすぐ任務なんで抜けるけど大丈夫っすか?」
「おまえも子供扱いか……」
この姿はとんでもなく庇護欲をそそるらしい。おかしいな、現役のときは結構雑に扱われてたのに。
「風間さん辺りが小さくなったら大惨事だな。見たくねぇ」
「あれ以上小さくなったら風間さんの存在がなくなるぞ」
「それ本人に聞かれたら真っ二つだな~」
そんなことをダラダラ話していると前方から見覚えのある人間が歩いて来た。それに気づいた米屋は私に静かに意味ありげな視線を向けてきた。任せろ。
イチゴオレ片手にその人物、出水の元へ走る。ここで「お兄ちゃ~ん! 遊んでー!」と荒船のときと同じように嫌がらせするつもりだったのに出水の目の前で転けてしまった。くそ、歩幅が違いすぎるんだ。
「ぬわっ!? だ、大丈夫か……?」
ぬわってなんだ。
心の中で出水にツッコミつつゆったりと顔をあげる。オロオロしながら私に怪我がないか確認していた。「あっ頭大丈夫か!?」と何回も聞いてくるのはやめろ。
「大丈夫。あ、膝が……」
「イチゴオレ買ってやるから泣くなよ!?」
「…………」
こいつ子供の扱いが下手すぎないか。ジト目で出水を見るがそれに気づくことなく自販機に向かう出水。自販機の横で待っていた米屋に気づくと「子供の怪我ってどうやって治るんだ……イチゴオレで大丈夫か、」と真顔で質問しだす始末。可哀想になってきたので本日二本目のイチゴオレを貰ってネタばらしをした。めっちゃくちゃ怒られた。
「イチゴオレで怪我治るわけねーだろ。子供をなんだと思ってんだ」
「うるせえ! つーかなんで小さくなってんだよ!」
「持病だよ」
「嘘つけ!!」
「はらいてえ……っ」
「笑いすぎだ槍バカ!」
阿鼻叫喚。
冬島テロリストの話を掻い摘まんで説明すると「大変な事になってんのにどさくさに紛れて人の反応みて楽しんでんじゃねえよ!!」と再び怒られた。
「あー楽しかった。じゃ、オレ任務だから」
「おーがんばって。ありがとね」
「気にすんな」
私の頭をわしゃわしゃして米屋は去っていった。同い年なのにこいつらの対応の差は何なんだろうか。ベンチにどさりと座った出水に視線をやる。
「今からランク戦やんのに無駄に疲れた……」
「出水の反応が一番良かったよ」
「嬉しくねえよ」
「万能イチゴオレあげるから元気だせよ」
「殴るぞ」
そう言いつつもイチゴオレを受け取る出水。素直だなこいつ。
携帯を取り出して城戸さんにメールを打つ。指が短いから打つのにも一苦労だ。冬島さんに解毒薬を早く作るようせっつこう。そう思い、指を進めていると携帯に影がかかる。
「どこまでも非常識な人間だなおまえは」
顔を上げるとポケットに手を入れ見下すような視線を向けてくる人物が目の前にいた。反射的に舌打ちを返して口を開く。
「こんな所で話してる暇あんならさっさと友達作れよマダムキラー」
防犯ブザー鳴らしていいかな
***
「どこまでも非常識な人間だなおまえは」
整った顔を歪め、憎々しげにそう言った二宮。眼光は鋭く、心なしか殺気も感じる。完全に敵に向ける眼差しである。そしてそれを一身に受けた四、五歳くらいの子供は怖じ気づくこともなく、頭の後ろに手をやり口を開いた。
「こんな所で話してる暇あんならさっさと友達作れよマダムキラー」
「馬鹿のような呼び方を止めろ。なんだそのみっともない姿は」
「事故だよ」
「そんな妙竹林な事故があってたまるか」
「あるんですー頭の固い二宮さんには分からないと思うけどあるんですー」
「…………」
二宮の殺気が膨れ上がった。こいつ殺したいと無の表情がそう言っている。そして二人のやりとりを静かに見守っていた出水は頭に手をやり、重々しく息を吐いた。相変わらず仲が悪い。
同じポジション、同世代、数年来の付き合い。それにも関わらずこの二人の相性は最悪だった。顔を合わせば悪口の応酬、どちらかの話題を振れば舌打ち、任務が被ったときは地獄絵図。そして被害を被るのは周りの人間。迷惑極まりなかった。
「この忙しい時期に何を遊んでいる」
「バカなの? 二宮さんバカなの? 好き好んでこの恰好でいるわけないじゃんバカか」
「いい機会だ。その歪んだ思考回路を作り直せ」
「性格ねじ曲がり野郎に言われたくないけどね」
「……………」
「……………」
二人の間にブリザードが見える出水。なぜこうなった。
そもそも二宮は人に悪口を言われようが嫌われようが涼しい顔をして流すくせに何故それができない。そしてナマエは三輪や城戸といった扱い難い人種にもヘラヘラしながら絡みに行くのに二宮に対してだけは常に攻撃表示である。なぜだ。
出水がボーダーに入隊したときから二人はこうだった。理由を聞こうとして二宮からは無言のアステロイド、ナマエからは怒りのメテオラを食らったことは一生忘れない。どちらも理不尽にも程がある。つーか仲悪いくせにこういうときだけ結託してんじゃねえよ! というのがまだ幼かった出水の言葉である。
ハァ、と大げさなくらいに再び息を吐いた出水に気づくことなく言葉の殴り合いを続ける二人。青年と幼女の罵倒など色んな意味で見るに堪えない。「二宮さんが子供を虐めてる……!? でもあの子供も結構いうな……てかどこかでこの光景見たような……」という驚愕と困惑を含めた周囲の視線も痛い。いつ頃終わるのかなぁ……と遠い目をし出した出水。そんな中、朗報かどうか判断が難しいがこの殴り合いを終わらせたのはナマエだった。
「つーか二宮さんなんかと話してる暇ないんだよね。城戸さんのとこ行かないと」
「性懲りもなく何か壊したのか貴様」
「ちげーよ任務のことだよ。そして二宮さんこそ呼び出し=器物損壊って思考回路やめろ!」
そう叫びながら去って行くナマエ。その背中に向かって「その妙竹林な格好は何時まで続くんだ」と投げかけた二宮に対し「冬島さんが灰原哀になるまでだよ!!」と想像したら悲惨なことになる捨て台詞を吐いて消えていった。想像してしまった出水は「師匠あのやろう……」と憎々しげに呟いた。
「……ちっ」
ナマエが去っていった方向に舌打ちをした二宮はぐるりと回り、一人でスタスタ歩き出した。
「え、二宮さん、おれとランク戦は?」
「気が削がれた。文句ならあの阿呆に言え」
反論する余地もなくナマエとは反対方向に去っていった二宮。ひとりその場に残された出水は「まじかよ……」と力無く呟く。同じポジションのせいかナマエと二宮の殴り合いによく遭遇もとい巻き込まれる出水。あの米屋でさえも「ナマエさんと二宮さんのケンカは遠慮するわ」と苦笑いするほどだ。不憫で仕方ない。
三度目になるため息をついた出水はブースに行く気にもなれず、帰宅しようと足を進めた。そして顔を上げ、ふと呟いた。
「………そういえばよく師匠って分かったな二宮さん」
チビになってたのに。