本編
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「ナマエーなんで浦島太郎は玉手箱をあけたんだ?」
「開けるなっていわれたら開けたくなるからだよ。押すな押すなと一緒」
「じゃあなんで乙姫さまは開けちゃいけない玉手箱をわたしたんだ?」
「乙姫さまがドSだったからだよ」
「そうなのか!」
「おとぎ話に余計な着色を加えるんじゃない」
「おとぎ話なんて元々夢もクソもないじゃん。乙姫さまも鮫だったって話あるし」
「! おっ乙姫さまは鮫なのか!」
「一説ではねー。それに年取る道具を人にあげるなんて多分乙姫さまはジジセンだったんだろーね」
「……鮫……ジジセン……」
「誰かあいつから絵本を取り上げろ」
木崎の言葉に即座に動いた迅。絵本とナマエを回収する。陽太郎は烏丸が慰めていた。迅に無理やり抱っこされたナマエは何がダメだったか分からないらしく「鮫じゃなくてワニだっけ?」と首を傾げていた。そうじゃない。
時計の針は十一時を回っていた。いつもなら寝ている陽太郎だが、自分と同じ大きさになったナマエにテンションが上がったらしく中々寝ようせず、リビングへ降りてきた。曰わく「おれの方がお兄さんだからな!」とのことだ。そして寝られない陽太郎のためだと立ち上がったのがナマエだった。「寝物語を聞かせてやろう」と陽太郎を連れて部屋へ向かった。そして嫌な予感しかしなかった迅、木崎、烏丸も共に陽太郎の部屋にやってきた。そしてあの結果である。陽太郎は「乙姫さまは悪いやつだったのか……!」と少し泣きそうだ。
「陽太郎、姫って名がつくからって信用しちゃだめだよ。かぐや姫もなかなか悪い女だからね」
「な、なにをしたんだ……! かぐや姫は!」
「陽太郎、今度絵本持ってきてやるから今日は寝ろ」
そしてナマエさんの話は聞かなくていい、と真顔の烏丸と陽太郎を寝かしつけようと陽太郎のお腹をポンポン叩く木崎。入口近くではおとぎ話は正確に話すようにと言い聞かせる迅。見た感じではだだをこねる子供二人を宥める大人三人組の光景だ。実際は子供(詐欺)に振り回されるその他多数であるが。
「だいたいね、昔も似たようなので駿を泣かせたでしょ? いい加減にしろよ」
「……なんだっけそれ」
「ごんぎつね」
「ああ。でもあれは話の通りに話した気がする」
「栗ご飯とうなぎが食膳に並んでるときにする話じゃないって言ってんの!」
約一年前。ボーダーに入隊した緑川の最初のトラウマがごんぎつねである。昔話でよく知られているごんぎつね。若者のうなぎを逃がしたキツネが罪滅ぼしに若者の家に栗や松茸を贈る。しかし最期は若者がまた悪戯にきたと勘違いし、キツネを射殺してしまう話。そんな話を食堂で話すものだから緑川はガチ泣き、そして食堂にいた隊員および職員に広範囲に被害が及んだ。その場にいた者はどこからともなく来た罪悪感から胃を攻撃されたと語った。
「だって緑川が栗ご飯きらいって言うから。好き嫌いはいかんよ」
至極真っ当な事を言ってるのだが、その気遣いによって栗ご飯がトラウマという少年と大人たちが生まれた。全くの逆効果である。余談だがあの日以来、ボーダー基地の食堂で栗ご飯が出ることがなくなった。理由は言うまでもない。
一通り泣かされた緑川は真っ赤になった目で「あんたなんか嫌いだ!」と捨て台詞を吐いて走って行った。まだ少し泣いていた。そして緑川がナマエに対して突っかかり始めたのはこの一件からである。なんであいつ私ばっかり突っかかるの? と常々首を傾げているナマエだが完全に自業自得だった。
あの時の駿は可哀想だったな……と記憶を振り返りながらしゃがみこんで視線を合わせる。パチパチ瞬きを繰り返し瞼をこすり始めた。
「眠いの?」
「ねむくない」
眠いらしい。舌足らずの言葉に苦笑する。小南と寝るんだったなと思いつつ脇に手を入れて抱き上げる。特に抵抗もなかったが「さすがゆうかいはん」と寝ぼけながら何故か感心したような声を上げたので頬を軽く抓っておいた。誰が誘拐犯だ。
木崎と烏丸に一声かけて陽太郎の部屋を出た。小南の部屋まで足を進めるが人のいる気配はない。そうだ、女の風呂は長いんだった。仕方なしに小南の部屋の前でしゃがみ込む迅。
「あ、寝た」
少し口を開けて寝息をたてる姿はいつもと変わらない。ここまで色気のない寝顔は初めてだとドン引きしたような表情で言ったのは太刀川である。失礼極まりない言葉だが「太刀川さんに色気ふりまくなら犬に求婚した方がマシ」というのがナマエの言い分である。つまりお互い気にしていないのだ。付き合いの長さ故だろう。何だかんだいって仲いいよなぁと心で呟きつつも頭に浮かんだのは全力で罵りあいをするナマエと太刀川の姿だった。……うん、似た者同士だからね。迅は考えることをやめた。
「べくしっ!」
「くしゃみまで色気ないのか……」
子供の姿で色気なんか出されたら困るが仮にも二十歳なりかけの女がこれでいいのだろうか。複雑な心境の中、迅は立ち上がり自分の部屋に向かう。このままじゃ風邪ひきそうだ。小南が帰ってきたら引き渡そう、と自分のベッドに突っ込んだ。
「おやすみ」
「開けるなっていわれたら開けたくなるからだよ。押すな押すなと一緒」
「じゃあなんで乙姫さまは開けちゃいけない玉手箱をわたしたんだ?」
「乙姫さまがドSだったからだよ」
「そうなのか!」
「おとぎ話に余計な着色を加えるんじゃない」
「おとぎ話なんて元々夢もクソもないじゃん。乙姫さまも鮫だったって話あるし」
「! おっ乙姫さまは鮫なのか!」
「一説ではねー。それに年取る道具を人にあげるなんて多分乙姫さまはジジセンだったんだろーね」
「……鮫……ジジセン……」
「誰かあいつから絵本を取り上げろ」
木崎の言葉に即座に動いた迅。絵本とナマエを回収する。陽太郎は烏丸が慰めていた。迅に無理やり抱っこされたナマエは何がダメだったか分からないらしく「鮫じゃなくてワニだっけ?」と首を傾げていた。そうじゃない。
時計の針は十一時を回っていた。いつもなら寝ている陽太郎だが、自分と同じ大きさになったナマエにテンションが上がったらしく中々寝ようせず、リビングへ降りてきた。曰わく「おれの方がお兄さんだからな!」とのことだ。そして寝られない陽太郎のためだと立ち上がったのがナマエだった。「寝物語を聞かせてやろう」と陽太郎を連れて部屋へ向かった。そして嫌な予感しかしなかった迅、木崎、烏丸も共に陽太郎の部屋にやってきた。そしてあの結果である。陽太郎は「乙姫さまは悪いやつだったのか……!」と少し泣きそうだ。
「陽太郎、姫って名がつくからって信用しちゃだめだよ。かぐや姫もなかなか悪い女だからね」
「な、なにをしたんだ……! かぐや姫は!」
「陽太郎、今度絵本持ってきてやるから今日は寝ろ」
そしてナマエさんの話は聞かなくていい、と真顔の烏丸と陽太郎を寝かしつけようと陽太郎のお腹をポンポン叩く木崎。入口近くではおとぎ話は正確に話すようにと言い聞かせる迅。見た感じではだだをこねる子供二人を宥める大人三人組の光景だ。実際は子供(詐欺)に振り回されるその他多数であるが。
「だいたいね、昔も似たようなので駿を泣かせたでしょ? いい加減にしろよ」
「……なんだっけそれ」
「ごんぎつね」
「ああ。でもあれは話の通りに話した気がする」
「栗ご飯とうなぎが食膳に並んでるときにする話じゃないって言ってんの!」
約一年前。ボーダーに入隊した緑川の最初のトラウマがごんぎつねである。昔話でよく知られているごんぎつね。若者のうなぎを逃がしたキツネが罪滅ぼしに若者の家に栗や松茸を贈る。しかし最期は若者がまた悪戯にきたと勘違いし、キツネを射殺してしまう話。そんな話を食堂で話すものだから緑川はガチ泣き、そして食堂にいた隊員および職員に広範囲に被害が及んだ。その場にいた者はどこからともなく来た罪悪感から胃を攻撃されたと語った。
「だって緑川が栗ご飯きらいって言うから。好き嫌いはいかんよ」
至極真っ当な事を言ってるのだが、その気遣いによって栗ご飯がトラウマという少年と大人たちが生まれた。全くの逆効果である。余談だがあの日以来、ボーダー基地の食堂で栗ご飯が出ることがなくなった。理由は言うまでもない。
一通り泣かされた緑川は真っ赤になった目で「あんたなんか嫌いだ!」と捨て台詞を吐いて走って行った。まだ少し泣いていた。そして緑川がナマエに対して突っかかり始めたのはこの一件からである。なんであいつ私ばっかり突っかかるの? と常々首を傾げているナマエだが完全に自業自得だった。
あの時の駿は可哀想だったな……と記憶を振り返りながらしゃがみこんで視線を合わせる。パチパチ瞬きを繰り返し瞼をこすり始めた。
「眠いの?」
「ねむくない」
眠いらしい。舌足らずの言葉に苦笑する。小南と寝るんだったなと思いつつ脇に手を入れて抱き上げる。特に抵抗もなかったが「さすがゆうかいはん」と寝ぼけながら何故か感心したような声を上げたので頬を軽く抓っておいた。誰が誘拐犯だ。
木崎と烏丸に一声かけて陽太郎の部屋を出た。小南の部屋まで足を進めるが人のいる気配はない。そうだ、女の風呂は長いんだった。仕方なしに小南の部屋の前でしゃがみ込む迅。
「あ、寝た」
少し口を開けて寝息をたてる姿はいつもと変わらない。ここまで色気のない寝顔は初めてだとドン引きしたような表情で言ったのは太刀川である。失礼極まりない言葉だが「太刀川さんに色気ふりまくなら犬に求婚した方がマシ」というのがナマエの言い分である。つまりお互い気にしていないのだ。付き合いの長さ故だろう。何だかんだいって仲いいよなぁと心で呟きつつも頭に浮かんだのは全力で罵りあいをするナマエと太刀川の姿だった。……うん、似た者同士だからね。迅は考えることをやめた。
「べくしっ!」
「くしゃみまで色気ないのか……」
子供の姿で色気なんか出されたら困るが仮にも二十歳なりかけの女がこれでいいのだろうか。複雑な心境の中、迅は立ち上がり自分の部屋に向かう。このままじゃ風邪ひきそうだ。小南が帰ってきたら引き渡そう、と自分のベッドに突っ込んだ。
「おやすみ」