本編
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この人の周りは非常識なことばかり起こるな……と呆れ半分でハンバーグを頬張るナマエを見る烏丸。迅と共にやってきた陽太郎くらいの女の子。ちょうど玄関を通りがかった烏丸はどこの子ですか? と声をかけようとして止めた。いや、止めざるを得なかった。その女の子の両肩にはある意味因縁のある物体が二体、鎮座していたのだから。「ぐるる……」と唸り威嚇してきた小さなラービットたち。なぜいる。というか、この子供すごく見覚えがある。
「………………ナマエさん?」
「え、よく分かったね烏丸」
びっくりした、と笑うその子供の笑顔は見覚えどころじゃなくて。どういう事だと迅に視線をやるとすごい勢いで反らされた。そしてボソボソと語られる一連の事情。「こんな時期になにやってるんすか」と冷たい声が出たのは仕方ない。例え不可抗力(何故かこの言葉に酷く違和感を感じる)だとしても。
そして当の本人の開き直りようもすごかった。「うーん……蘭ちゃんみたいな待たせてる人いないからよかったわー」と陽太郎と背くらべをしながらのんびりとした口調でボヤいた。そして「あ、せっかくだから冬島さんに麻酔銃作ってもらえばよかった」と悔しそうな表情をしたあたり、現状に悲観した様子はない。なぜそうも楽観的にいられる。迅の方が疲労の色が強いというのはどういうことだ。
「ナマエさん、わたしのグラッセ食べますか?」
「むぐ、いいの千佳ちゃん」
「はい」
にこにこしながらナマエの皿にグラッセを移す千佳。そして嬉しそうに頬張るナマエ。可愛いなぁといった視線を向けられているのには気づいていない。完全に年下扱いだ。
「世の中には不思議なことがあるもんだな」
「ほぉだね」
「口に物を入れたまま喋るんじゃない」
そして玉狛のこの落ち着きようである。林藤は「こんな時代があったなそういえば」と懐かしがり、木崎は「たくさん食べて大きくなれ」と父親目線である。小南に至っては任務に行くギリギリまでナマエをかまい倒していた。一度家に取り帰った小南の昔の服で見事着せ替え人形に。そして一緒にお風呂に入る約束まで。よほどあの大きさのナマエが気に入ったらしい。当の本人は小南がいなくなってからすぐに風呂に直行していたが。そして「幼女って大変だわ」とその姿で言うのは止めてほしい。
「ナマエさん ほっぺにご飯粒ついてますよー」
「この体だと食べにくいの」
「人の膝を占領してわがまま言わないでよ」
「迅にはイス役がお似合いだよ」
「落とすよ」
「幼女虐待やろうって言いふらすね」
「本気でやめて」
座高が足らず、迅をイス代わりにして食事をするナマエ。陽太郎サイズの椅子は一つしかない。最初はお互いに嫌そうな顔をしていたが慣れたのか軽口の応酬を始めた。何だかんだ言って迅の順応性もたいがいである。
「ナマエさんの体はいつ元に戻るんだ?」
「解毒剤できるまで。あの半袖おじさん 絶対黒の組織の一員だ」
「黒の組織ってなんだ?」
「ボーダー以上にうさん臭い巨大な組織で殺人、誘拐、人体実験……なんでもやっちゃう危ない集団かな」
「おお……そんな組織があるのか」
それはぶっそうだな、と呟く遊真。それに対し「堂々と嘘を教えないでください……」と言いながら遊真に訂正をいれる修。「ひとつも嘘なんか言ってないよ」というナマエの言葉を聞かなかったふりをした辺り、ナマエの扱いに彼も慣れてきたらしい。毒されたとも言える。そもそも遊真のサイドエフェクトに引っかかってないあたり、ナマエには嘘を言っている自覚がないという恐ろしい事実があった。
「あ、赤吉さんも食べたいの?」
「ぐわ」
「じゃあ黒山くんと半分こね」
「ばう!」
そしてトリオン兵がハンバーグを食べるという異常な光景にもはや誰も突っ込まない。完全に毒されている。
「大学休みで良かったですね~。さすがにその身体では無理ですからね」
「逆にこの身体で授業受けて、何分で追い出されるかしたかった気もする」
「そんなチャレンジ精神いらないから」
どこまでもポジティブかつアクティブなナマエにひっそりと息をつく烏丸。事の重大さが全く分かっていない。どうするんだずっとその身体だったら。笑い事では済まないのにもしそのような状況になったとしても逞しく生きていきそうな節があるのが恐ろしい。「もう一回小学生とかイージーゲームすぎるわ! あはは!」と高らかに笑うナマエが簡単に想像が出来た烏丸はそっとこめかみに手をおいた。
「ナマエさんのその姿って何歳くらいなんですか」
「うーん……四、五歳くらいじゃないの? そこんとこどうなの林藤さん」
「その大きさは幼稚園の年中くらいだな。いやーあれから十年以上経つが、幼稚園脱走事件は忘れられねーなぁ。一週間に三回はやってたぞ」
「そんな歳から問題児ってどういうことなの? しかも常習犯って」
「それが全く身に覚えがないんだよねぇ。林藤さんたちの作り話じゃないのそれ」
「実話なんだよなぁこれが」
当時を思い出してか、わっはっはと笑う林藤に納得いかないといった顔をするナマエ。本当に覚えていないらしい。「幼稚園の先生がいつも半泣きで連絡してきたなー」「教師は高校でも泣かしていたな」「中学もね」「そういえば卒業式でも泣かれたわ」「それはきっと嬉し泣きですね」とわいわい喋るナマエたち。一方で「四歳……」と重々しい口調で呟く烏丸。温度差が酷い。
「……十二歳差って」
三歳差がはるかに可愛く見える。義務教育を通り越して高校卒業まで行く年数である。好意を持っていた相手が急に年下になった場合はどうしたらいいのか。そう頭で考えた烏丸だったが、どうやっても答えがでる気がしなかった。
そしてなんでこう人を悩ませてくれるんだと怒りを覚えてきた烏丸。今回のナマエは完全に被害者であるのに不憫なものである。
「(今、四歳だとして二十歳……いや十八まで後、十四年。そのとき俺は……三十……)」
ああ、これは犯罪だ。
そう頭の中で静かに呟いた烏丸。そして待つつもりでいた自分の思考回路に嫌気がさした。というより普通に気持ち悪い。何も知らない人間から見たら自分は完全にロリコンである。
「……お願いですから元に戻ってくださいね」
「? 言われなくても。この身体、不便で仕方ない」
「絶対ですよ」
いつになく押しの強い烏丸に疑問符を浮かべつつナマエは頷いた。
「………………ナマエさん?」
「え、よく分かったね烏丸」
びっくりした、と笑うその子供の笑顔は見覚えどころじゃなくて。どういう事だと迅に視線をやるとすごい勢いで反らされた。そしてボソボソと語られる一連の事情。「こんな時期になにやってるんすか」と冷たい声が出たのは仕方ない。例え不可抗力(何故かこの言葉に酷く違和感を感じる)だとしても。
そして当の本人の開き直りようもすごかった。「うーん……蘭ちゃんみたいな待たせてる人いないからよかったわー」と陽太郎と背くらべをしながらのんびりとした口調でボヤいた。そして「あ、せっかくだから冬島さんに麻酔銃作ってもらえばよかった」と悔しそうな表情をしたあたり、現状に悲観した様子はない。なぜそうも楽観的にいられる。迅の方が疲労の色が強いというのはどういうことだ。
「ナマエさん、わたしのグラッセ食べますか?」
「むぐ、いいの千佳ちゃん」
「はい」
にこにこしながらナマエの皿にグラッセを移す千佳。そして嬉しそうに頬張るナマエ。可愛いなぁといった視線を向けられているのには気づいていない。完全に年下扱いだ。
「世の中には不思議なことがあるもんだな」
「ほぉだね」
「口に物を入れたまま喋るんじゃない」
そして玉狛のこの落ち着きようである。林藤は「こんな時代があったなそういえば」と懐かしがり、木崎は「たくさん食べて大きくなれ」と父親目線である。小南に至っては任務に行くギリギリまでナマエをかまい倒していた。一度家に取り帰った小南の昔の服で見事着せ替え人形に。そして一緒にお風呂に入る約束まで。よほどあの大きさのナマエが気に入ったらしい。当の本人は小南がいなくなってからすぐに風呂に直行していたが。そして「幼女って大変だわ」とその姿で言うのは止めてほしい。
「ナマエさん ほっぺにご飯粒ついてますよー」
「この体だと食べにくいの」
「人の膝を占領してわがまま言わないでよ」
「迅にはイス役がお似合いだよ」
「落とすよ」
「幼女虐待やろうって言いふらすね」
「本気でやめて」
座高が足らず、迅をイス代わりにして食事をするナマエ。陽太郎サイズの椅子は一つしかない。最初はお互いに嫌そうな顔をしていたが慣れたのか軽口の応酬を始めた。何だかんだ言って迅の順応性もたいがいである。
「ナマエさんの体はいつ元に戻るんだ?」
「解毒剤できるまで。あの半袖おじさん 絶対黒の組織の一員だ」
「黒の組織ってなんだ?」
「ボーダー以上にうさん臭い巨大な組織で殺人、誘拐、人体実験……なんでもやっちゃう危ない集団かな」
「おお……そんな組織があるのか」
それはぶっそうだな、と呟く遊真。それに対し「堂々と嘘を教えないでください……」と言いながら遊真に訂正をいれる修。「ひとつも嘘なんか言ってないよ」というナマエの言葉を聞かなかったふりをした辺り、ナマエの扱いに彼も慣れてきたらしい。毒されたとも言える。そもそも遊真のサイドエフェクトに引っかかってないあたり、ナマエには嘘を言っている自覚がないという恐ろしい事実があった。
「あ、赤吉さんも食べたいの?」
「ぐわ」
「じゃあ黒山くんと半分こね」
「ばう!」
そしてトリオン兵がハンバーグを食べるという異常な光景にもはや誰も突っ込まない。完全に毒されている。
「大学休みで良かったですね~。さすがにその身体では無理ですからね」
「逆にこの身体で授業受けて、何分で追い出されるかしたかった気もする」
「そんなチャレンジ精神いらないから」
どこまでもポジティブかつアクティブなナマエにひっそりと息をつく烏丸。事の重大さが全く分かっていない。どうするんだずっとその身体だったら。笑い事では済まないのにもしそのような状況になったとしても逞しく生きていきそうな節があるのが恐ろしい。「もう一回小学生とかイージーゲームすぎるわ! あはは!」と高らかに笑うナマエが簡単に想像が出来た烏丸はそっとこめかみに手をおいた。
「ナマエさんのその姿って何歳くらいなんですか」
「うーん……四、五歳くらいじゃないの? そこんとこどうなの林藤さん」
「その大きさは幼稚園の年中くらいだな。いやーあれから十年以上経つが、幼稚園脱走事件は忘れられねーなぁ。一週間に三回はやってたぞ」
「そんな歳から問題児ってどういうことなの? しかも常習犯って」
「それが全く身に覚えがないんだよねぇ。林藤さんたちの作り話じゃないのそれ」
「実話なんだよなぁこれが」
当時を思い出してか、わっはっはと笑う林藤に納得いかないといった顔をするナマエ。本当に覚えていないらしい。「幼稚園の先生がいつも半泣きで連絡してきたなー」「教師は高校でも泣かしていたな」「中学もね」「そういえば卒業式でも泣かれたわ」「それはきっと嬉し泣きですね」とわいわい喋るナマエたち。一方で「四歳……」と重々しい口調で呟く烏丸。温度差が酷い。
「……十二歳差って」
三歳差がはるかに可愛く見える。義務教育を通り越して高校卒業まで行く年数である。好意を持っていた相手が急に年下になった場合はどうしたらいいのか。そう頭で考えた烏丸だったが、どうやっても答えがでる気がしなかった。
そしてなんでこう人を悩ませてくれるんだと怒りを覚えてきた烏丸。今回のナマエは完全に被害者であるのに不憫なものである。
「(今、四歳だとして二十歳……いや十八まで後、十四年。そのとき俺は……三十……)」
ああ、これは犯罪だ。
そう頭の中で静かに呟いた烏丸。そして待つつもりでいた自分の思考回路に嫌気がさした。というより普通に気持ち悪い。何も知らない人間から見たら自分は完全にロリコンである。
「……お願いですから元に戻ってくださいね」
「? 言われなくても。この身体、不便で仕方ない」
「絶対ですよ」
いつになく押しの強い烏丸に疑問符を浮かべつつナマエは頷いた。