本編
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B級のランク戦がそろそろ始まる。いつもは暇つぶし程度に眺めているくらいだけど今回は違う。
「うーん……再生機器買おうかな……ああでも今回だけだもんなぁ」
玉狛第二が晴れてランク戦デビュー。これを見逃すわけにはいかない。玉狛で録画したやつを家で見るには再生する機械が必要だ。そのあと再生機を技術部であーだこーだしたら私の家のテレビでも見られるようになるらしい。でも私の家にはまだないのだ。玉狛のソファーでうんうん言いながら電化製品のチラシを見る。……なんでこんなに値段に差があるんだ。どれ買えばいいの。悩んでいるとリビングに烏丸がやって来た。
「なに見てるんすか」
「家電のチラシー」
「家電オンチなのに見てて楽しいですか?」
「うっさいな」
にやつきながらそう言った烏丸を睨む。引っ越しをしたときに家にガスコンロを置くところがない! とヘルプで迅を要請したところ、何故か来たのは烏丸で。真顔で「IH完備じゃないですかここ」と言われたのは末代までの恥だ。ガスコンロ民なんだよ私は。IHなんて知らん。フライパンとか全部無駄になったわ。
「なにか買うんすか? ナマエさんは一人で買いにいかないほうがいいですよ」
「うるせー! さっさと修業に戻れ!」
「修はレイジさん達とランニングに行ったんで」
そう言って冷蔵庫から飲み物を取り出して私の横に座った。持っているチラシを覗き込んで来る。
「ああ……ハードディスクですか」
「……なんで分かったの」
「ナマエさんしょっちゅうジブリのDVD持って来るから分かりますよ」
何を今さら、みたいな口調で言う烏丸。そんなに来てないだろ、と思ったけど一時期毎週のように玉狛に通い詰めてたときがあったことを思い出した。「これ前も見たぞ!」と騒ぐ陽太郎を無理やり抱っこしながら視聴してたのでその期間、陽太郎が私を避けるようになっていた。悲しくなってすぐ止めた。そして本部の視聴覚室を占領しだしたのはその頃だ。懐かしい。
しみじみ思い出に浸っていると横の烏丸が携帯を弄りながら口を開いた。
「今度一緒に見に行きますか? 電器屋に」
「烏丸ってバイト戦士じゃん。時間ないでしょ」
「時間くらい作りますよ」
いつ頃が都合いいですか、と聞いてくる烏丸。その顔をジッと見ながら思考を巡らす。A級隊員で任務こなしてバイト複数掛け持ちで後輩の修業も見ているイケメン。そして先輩の面倒も見ようとしている。なんだこのハイスペック。おまえまだ16だろもっと遊べよ。……私が16才のとき何してたっけ。ぱっと思い浮かんだのは太刀川さんと並んで反省文を書かされている光景だった。びっくりした今と変わんない。
「…………烏丸、」
「なんですか」
「ちゃんと友達いるの?」
「張り倒しますよ」
目を細めてそう言った烏丸にとりあえず謝る。「なんでナマエさんが俺の友人の有無を心配するんすか」「心配はしてないけど」「………」無言で頬を抓られた。
「いや友達と遊んでるとこ見ないから」
「まぁ……任務とバイトばっかりですけど」
「だから彼女作んないのか。この間告白してきた女の子美人だったのに」
「…………なんでナマエさんが知ってるんすか」
あれなんかこれデジャヴ。
真顔で迫ってくる烏丸にストップをかけて米屋と出水たちとのやりとりを見せる。
米屋:また京介が告られてんよ
出水:くっそイケメン死ね
米屋:二年の吹奏楽部のやつだな
出水:年上にも好かれてんのかよあいつ!
米屋:無愛想なのがクールに見えんのかねー
出水:ムカつくから師匠に写真
米屋:隠し撮りかよ
山原:おまえら暇人か。美人じゃん
出水:師匠の隠し撮り写真もあるぜ。爆睡しててブッサイクなのが
山原:殺すぞ
「……………」
私の携帯を片手に眉を顰める烏丸。おい携帯ミシミシいってんだけど。
「なにやってんすか」
「私に言わないであいつらに言って」
「隠し撮り写真って」
「あー嫌なら消すよ」
「ナマエさんのです」
「そっちかよ!」
何に怒ってるんだこいつは。なに考えてるか分からんやつだと思いつつ携帯を取り返した。別に寝顔なんてどうでもいいけど出水が所持しているというのがムカつく。おそらくこの間の夜間任務が一緒になったときに太刀川隊と仮眠がてら仮眠室で寝たときのものだ。今度会ったら携帯ぶっ壊そうと決めてそれから会えてないのが残念だ。
「男のいる空間に堂々と寝ないでください。本部の仮眠室なら仕切りあるでしょ」
「壊れてたの」
「そもそも太刀川の作戦室で国近先輩とナマエさんも一緒に寝ればよかったじゃないですか」
「寝相悪いから」
一緒のベッドで寝るなんて柚宇ちゃんに申し訳ない。そう言うとますます烏丸は眉を寄せた。
「女性なんですから少しは気をつけてください」
「いや太刀川さん達だって」
「男じゃないですか」
「あいつら「ナマエを女として見る? 逆立ちしてもムリだわー」って笑い飛ばしてきたけど」
「…………」
黙るな。
男とか女とかそれ以前に人のことなんだと思ってるんだ。なんか腹立ってきたな。太刀川隊って今日任務入ってたっけ。柚宇ちゃんとのメッセージを遡っているとその手を掴まれて止められる。顔を上げると………般若がいた。
「用事思い出した」
「逃げるな」
肩を掴まれててソファーに逆戻り。右側と背中にはソファー、左側には烏丸、前方は私が逃げられないよう烏丸が足を伸ばした。オワタ。
「烏丸くんお花摘みに行ってもいいかな」
「この状態でよく言えますね」
「この状態だからだよ近いし怖いんだよおまえ!」
「後で俺が連れていってあげましょうか」
「ごめん嘘だからその顔やめて」
美形が怒ると怖いのは本当だった。慣れてないぶん城戸さんより怖いこの人。
後輩のまだ見ぬ顔を見てしまって戦慄していると烏丸は般若顔のまま口を開く。
「心配かけるなって言いましたよね」
「え、あれって戦闘中とかそんなんじゃないの」
「十日も保たないってどういうことですか」
「あ、無視ですか」
「真面目に聞いてくれ」
「はい」
やりとりを続けている内にだんだん表情が元に戻っていくのに気づき、内心ほっとしながら烏丸を見る。やっぱり近い。最近烏丸との距離感がおかしいな。
「……この距離でも警戒しないってどんだけですか」
「いや近いとは思いますけど」
「あんたの場合それで終わりでしょ」
「そうだね」
「………」
素直に答えると烏丸は頭を押さえて顔を背けた。どうしたんですか烏丸くん。大丈夫ー? と聞くと上から恨ましげにジッと睨まれた。
「……男でこの状態だったら、簡単に、」
「簡単に?」
「…………………………ナマエさんのこと殺せます」
「烏丸さん私のこと殺す気なんですか」
「殺すわけないでしょ」
そう言い私の頬を右手で一瞬引っ張る。そして烏丸はソファーから立ち上がった。
「とにかく男と一緒の空間で寝るなんて金輪際しないでください」
「あーうんわかった」
「次は本気で怒りますから」
そう言い残して烏丸はリビングから去っていった。…………さっきの本気じゃなかったの? あれ以上怒った烏丸を想像すると背筋がゾッとした。美形は怒らすなと忠告メールを出水と米屋に送ると「おれらもイケメンだろ」とアホなメッセージが返ってきた。しかしその返信になんだか心が落ちついたので「雰囲気って大事だね。ありがとう」と返すとしつこく電話が鳴り続けた。無視した。
「うーん……再生機器買おうかな……ああでも今回だけだもんなぁ」
玉狛第二が晴れてランク戦デビュー。これを見逃すわけにはいかない。玉狛で録画したやつを家で見るには再生する機械が必要だ。そのあと再生機を技術部であーだこーだしたら私の家のテレビでも見られるようになるらしい。でも私の家にはまだないのだ。玉狛のソファーでうんうん言いながら電化製品のチラシを見る。……なんでこんなに値段に差があるんだ。どれ買えばいいの。悩んでいるとリビングに烏丸がやって来た。
「なに見てるんすか」
「家電のチラシー」
「家電オンチなのに見てて楽しいですか?」
「うっさいな」
にやつきながらそう言った烏丸を睨む。引っ越しをしたときに家にガスコンロを置くところがない! とヘルプで迅を要請したところ、何故か来たのは烏丸で。真顔で「IH完備じゃないですかここ」と言われたのは末代までの恥だ。ガスコンロ民なんだよ私は。IHなんて知らん。フライパンとか全部無駄になったわ。
「なにか買うんすか? ナマエさんは一人で買いにいかないほうがいいですよ」
「うるせー! さっさと修業に戻れ!」
「修はレイジさん達とランニングに行ったんで」
そう言って冷蔵庫から飲み物を取り出して私の横に座った。持っているチラシを覗き込んで来る。
「ああ……ハードディスクですか」
「……なんで分かったの」
「ナマエさんしょっちゅうジブリのDVD持って来るから分かりますよ」
何を今さら、みたいな口調で言う烏丸。そんなに来てないだろ、と思ったけど一時期毎週のように玉狛に通い詰めてたときがあったことを思い出した。「これ前も見たぞ!」と騒ぐ陽太郎を無理やり抱っこしながら視聴してたのでその期間、陽太郎が私を避けるようになっていた。悲しくなってすぐ止めた。そして本部の視聴覚室を占領しだしたのはその頃だ。懐かしい。
しみじみ思い出に浸っていると横の烏丸が携帯を弄りながら口を開いた。
「今度一緒に見に行きますか? 電器屋に」
「烏丸ってバイト戦士じゃん。時間ないでしょ」
「時間くらい作りますよ」
いつ頃が都合いいですか、と聞いてくる烏丸。その顔をジッと見ながら思考を巡らす。A級隊員で任務こなしてバイト複数掛け持ちで後輩の修業も見ているイケメン。そして先輩の面倒も見ようとしている。なんだこのハイスペック。おまえまだ16だろもっと遊べよ。……私が16才のとき何してたっけ。ぱっと思い浮かんだのは太刀川さんと並んで反省文を書かされている光景だった。びっくりした今と変わんない。
「…………烏丸、」
「なんですか」
「ちゃんと友達いるの?」
「張り倒しますよ」
目を細めてそう言った烏丸にとりあえず謝る。「なんでナマエさんが俺の友人の有無を心配するんすか」「心配はしてないけど」「………」無言で頬を抓られた。
「いや友達と遊んでるとこ見ないから」
「まぁ……任務とバイトばっかりですけど」
「だから彼女作んないのか。この間告白してきた女の子美人だったのに」
「…………なんでナマエさんが知ってるんすか」
あれなんかこれデジャヴ。
真顔で迫ってくる烏丸にストップをかけて米屋と出水たちとのやりとりを見せる。
米屋:また京介が告られてんよ
出水:くっそイケメン死ね
米屋:二年の吹奏楽部のやつだな
出水:年上にも好かれてんのかよあいつ!
米屋:無愛想なのがクールに見えんのかねー
出水:ムカつくから師匠に写真
米屋:隠し撮りかよ
山原:おまえら暇人か。美人じゃん
出水:師匠の隠し撮り写真もあるぜ。爆睡しててブッサイクなのが
山原:殺すぞ
「……………」
私の携帯を片手に眉を顰める烏丸。おい携帯ミシミシいってんだけど。
「なにやってんすか」
「私に言わないであいつらに言って」
「隠し撮り写真って」
「あー嫌なら消すよ」
「ナマエさんのです」
「そっちかよ!」
何に怒ってるんだこいつは。なに考えてるか分からんやつだと思いつつ携帯を取り返した。別に寝顔なんてどうでもいいけど出水が所持しているというのがムカつく。おそらくこの間の夜間任務が一緒になったときに太刀川隊と仮眠がてら仮眠室で寝たときのものだ。今度会ったら携帯ぶっ壊そうと決めてそれから会えてないのが残念だ。
「男のいる空間に堂々と寝ないでください。本部の仮眠室なら仕切りあるでしょ」
「壊れてたの」
「そもそも太刀川の作戦室で国近先輩とナマエさんも一緒に寝ればよかったじゃないですか」
「寝相悪いから」
一緒のベッドで寝るなんて柚宇ちゃんに申し訳ない。そう言うとますます烏丸は眉を寄せた。
「女性なんですから少しは気をつけてください」
「いや太刀川さん達だって」
「男じゃないですか」
「あいつら「ナマエを女として見る? 逆立ちしてもムリだわー」って笑い飛ばしてきたけど」
「…………」
黙るな。
男とか女とかそれ以前に人のことなんだと思ってるんだ。なんか腹立ってきたな。太刀川隊って今日任務入ってたっけ。柚宇ちゃんとのメッセージを遡っているとその手を掴まれて止められる。顔を上げると………般若がいた。
「用事思い出した」
「逃げるな」
肩を掴まれててソファーに逆戻り。右側と背中にはソファー、左側には烏丸、前方は私が逃げられないよう烏丸が足を伸ばした。オワタ。
「烏丸くんお花摘みに行ってもいいかな」
「この状態でよく言えますね」
「この状態だからだよ近いし怖いんだよおまえ!」
「後で俺が連れていってあげましょうか」
「ごめん嘘だからその顔やめて」
美形が怒ると怖いのは本当だった。慣れてないぶん城戸さんより怖いこの人。
後輩のまだ見ぬ顔を見てしまって戦慄していると烏丸は般若顔のまま口を開く。
「心配かけるなって言いましたよね」
「え、あれって戦闘中とかそんなんじゃないの」
「十日も保たないってどういうことですか」
「あ、無視ですか」
「真面目に聞いてくれ」
「はい」
やりとりを続けている内にだんだん表情が元に戻っていくのに気づき、内心ほっとしながら烏丸を見る。やっぱり近い。最近烏丸との距離感がおかしいな。
「……この距離でも警戒しないってどんだけですか」
「いや近いとは思いますけど」
「あんたの場合それで終わりでしょ」
「そうだね」
「………」
素直に答えると烏丸は頭を押さえて顔を背けた。どうしたんですか烏丸くん。大丈夫ー? と聞くと上から恨ましげにジッと睨まれた。
「……男でこの状態だったら、簡単に、」
「簡単に?」
「…………………………ナマエさんのこと殺せます」
「烏丸さん私のこと殺す気なんですか」
「殺すわけないでしょ」
そう言い私の頬を右手で一瞬引っ張る。そして烏丸はソファーから立ち上がった。
「とにかく男と一緒の空間で寝るなんて金輪際しないでください」
「あーうんわかった」
「次は本気で怒りますから」
そう言い残して烏丸はリビングから去っていった。…………さっきの本気じゃなかったの? あれ以上怒った烏丸を想像すると背筋がゾッとした。美形は怒らすなと忠告メールを出水と米屋に送ると「おれらもイケメンだろ」とアホなメッセージが返ってきた。しかしその返信になんだか心が落ちついたので「雰囲気って大事だね。ありがとう」と返すとしつこく電話が鳴り続けた。無視した。