本編
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基地の中をプラプラ歩いているナマエ。そして角に曲がる寸前である人物と出会い「あ、風間さ……」と言いかけて止める。ナマエは両肩に乗っていた赤吉と黒山をそっとポケットに突っ込んで立ち去ろうとするが後ろから襟首を掴まれて止められた。
「なぜ逃げる」
「いやなんか急に諏訪さんに会いたくなって」
「一時間くらい前におまえが諏訪とラウンジで騒いでいたのを見たが」
「間違えた荒船だった。最近荒船とは縁があるからね仲良くしようかなーって思って」
「荒船が哀れだ。止めろ」
「どういう意味だ」
詰め寄るナマエに顔を歪める風間。その脳裏には「あの人の手綱握っていて下さい。本当に」と怨ましげに言ってきた荒船の姿。なぜ俺に言うんだという問いに対し「ナマエさんが言うことを聞く人って風間さんくらいですよ」という言葉が返ってきた。そんなわけがない。五回言って一回聞けば既に奇跡の部類に入る。口で言っても体で覚えさせようとしても無駄だった。風間はナマエより犬のほうが賢いとさえ思っている。ご褒美があれば努力してくれる犬に比べ、ご褒美があればご褒美だけを持っていくのがナマエだ。本当に質が悪い。
「それより何故そいつらを連れている。むやみに連れ回すなと言われただろう」
風間はナマエの奇形に膨らんだポケットを見ながらそう言った。ナマエが拾って来た新型トリオン兵は基本的に本部の技術部預かりだ。どんなにナマエに懐いていると言っても敵側のトリオン兵だったのだ。当たり前だがある程度の制約があった。
「いやっ、やっぱり適度な散歩はいるかなーって……」
それなのに全ての元凶はどこまでも脳天気だった。トリオン兵に散歩など必要があるはずがない。ペット気分にもほどがある。その上言葉に詰まったのも風間に見つかった、やべぇ……という気持ちからであって基地の中で連れ回していることへの罪悪感からではない。
「そいつらが万が一暴れ出した場合、おまえじゃ対処出来ないだろう」
「えー暴れないって大丈夫大丈夫ー」
軽い口調に風間は頭を押さえたくなった。迅の予知でこの二体がナマエに逆らうことはないと言われたがそれも百パーセントとは言えない。確実なものなどないのだ。それなのにこの異様な自信はなんだ。その上「赤吉さん黒山くんいい子だもんねー」「ぐわー」「ばう」とひょっこり頭を出したラービットと会話をする始末。あの戦闘中のラービットの姿を知っているためどうしても違和感を拭いきれない風間だった。
「おまえのその自信はなんだ」
「んー、ご先祖様がそう言ってる」
「先祖どころか肉親の顔も知らないだろう」
「じゃあ天国の最上さんが言ってる」
そう言って笑うナマエに風間はそっと息を吐いた。
当初風間は拾われたもの同士としてラービット達に固執しているのかと思っていた。今ではただ単に気に入ったからだと分かりきっているが。彼女には血の繋がった肉親がいない。育ての親の最上に拾われたと言っていたのだ。その言葉に孤児院生まれなのかと察し、なんて返そうか言葉を選んでいた風間に対し、当時のナマエは今と変わらず軽い口調でこう言った。
『孤児院じゃなくて山で拾ったんだって。山の原っぱで拾ったから苗字が山原って安直だよね』
笑いながらそう言ったナマエ。その言葉に親に山へ捨てられたと安易に予想がついた風間は顔を歪めた。しかしナマエは「いや~拾われたの春で良かったわぁ」と茶を啜りながら呑気に言うものだから風間の怒りはすぐさま飛んでいった。
「おまえ……少しは怒りを覚えないのか」
「産みの親といってもねぇ知らない人だし。私にはもう関係ないからねぇ」
どうでもいいやと茶を片手に団子を頬張りだしたナマエに風間はそれ以上その話題を続けることはなかった。強がりではなく本心から言っている言葉だったからだ。
「………」
「どしたの風間さん」
お腹へった? と顔を傾げるナマエと結局ポケットから出てきて肩へ向かって一生懸命よじ登っているラービット達。その気が抜ける光景に改めてよくこのような性格になったなとしみじみ思う風間。過去が過去なだけによくスレなかったと思う。もちろん人格的問題は多数存在しているが、明るく元気な人間に育ったのは間違いない。
「お、桜子ちゃんから電話だ」
「桜子……ああ海老名隊の」
「ほいほーい? ん、大丈夫! 暇してたから」
「おい」
小さく突っ込んだ風間。しかしナマエには届かずスルーされる。そしてぴょんと風間の肩に飛び乗った赤いラービットに励まされるように叩かれた。何故トリオン兵に励まされている、と苦い顔をした。一方ナマエは武富桜子と話を続ける。
「インタビュー? B級のランク戦の? 私が?」
その不穏な言葉に今年のランク戦は荒れるな、と確信した風間は本日何回目か分からないため息をついた。
「なぜ逃げる」
「いやなんか急に諏訪さんに会いたくなって」
「一時間くらい前におまえが諏訪とラウンジで騒いでいたのを見たが」
「間違えた荒船だった。最近荒船とは縁があるからね仲良くしようかなーって思って」
「荒船が哀れだ。止めろ」
「どういう意味だ」
詰め寄るナマエに顔を歪める風間。その脳裏には「あの人の手綱握っていて下さい。本当に」と怨ましげに言ってきた荒船の姿。なぜ俺に言うんだという問いに対し「ナマエさんが言うことを聞く人って風間さんくらいですよ」という言葉が返ってきた。そんなわけがない。五回言って一回聞けば既に奇跡の部類に入る。口で言っても体で覚えさせようとしても無駄だった。風間はナマエより犬のほうが賢いとさえ思っている。ご褒美があれば努力してくれる犬に比べ、ご褒美があればご褒美だけを持っていくのがナマエだ。本当に質が悪い。
「それより何故そいつらを連れている。むやみに連れ回すなと言われただろう」
風間はナマエの奇形に膨らんだポケットを見ながらそう言った。ナマエが拾って来た新型トリオン兵は基本的に本部の技術部預かりだ。どんなにナマエに懐いていると言っても敵側のトリオン兵だったのだ。当たり前だがある程度の制約があった。
「いやっ、やっぱり適度な散歩はいるかなーって……」
それなのに全ての元凶はどこまでも脳天気だった。トリオン兵に散歩など必要があるはずがない。ペット気分にもほどがある。その上言葉に詰まったのも風間に見つかった、やべぇ……という気持ちからであって基地の中で連れ回していることへの罪悪感からではない。
「そいつらが万が一暴れ出した場合、おまえじゃ対処出来ないだろう」
「えー暴れないって大丈夫大丈夫ー」
軽い口調に風間は頭を押さえたくなった。迅の予知でこの二体がナマエに逆らうことはないと言われたがそれも百パーセントとは言えない。確実なものなどないのだ。それなのにこの異様な自信はなんだ。その上「赤吉さん黒山くんいい子だもんねー」「ぐわー」「ばう」とひょっこり頭を出したラービットと会話をする始末。あの戦闘中のラービットの姿を知っているためどうしても違和感を拭いきれない風間だった。
「おまえのその自信はなんだ」
「んー、ご先祖様がそう言ってる」
「先祖どころか肉親の顔も知らないだろう」
「じゃあ天国の最上さんが言ってる」
そう言って笑うナマエに風間はそっと息を吐いた。
当初風間は拾われたもの同士としてラービット達に固執しているのかと思っていた。今ではただ単に気に入ったからだと分かりきっているが。彼女には血の繋がった肉親がいない。育ての親の最上に拾われたと言っていたのだ。その言葉に孤児院生まれなのかと察し、なんて返そうか言葉を選んでいた風間に対し、当時のナマエは今と変わらず軽い口調でこう言った。
『孤児院じゃなくて山で拾ったんだって。山の原っぱで拾ったから苗字が山原って安直だよね』
笑いながらそう言ったナマエ。その言葉に親に山へ捨てられたと安易に予想がついた風間は顔を歪めた。しかしナマエは「いや~拾われたの春で良かったわぁ」と茶を啜りながら呑気に言うものだから風間の怒りはすぐさま飛んでいった。
「おまえ……少しは怒りを覚えないのか」
「産みの親といってもねぇ知らない人だし。私にはもう関係ないからねぇ」
どうでもいいやと茶を片手に団子を頬張りだしたナマエに風間はそれ以上その話題を続けることはなかった。強がりではなく本心から言っている言葉だったからだ。
「………」
「どしたの風間さん」
お腹へった? と顔を傾げるナマエと結局ポケットから出てきて肩へ向かって一生懸命よじ登っているラービット達。その気が抜ける光景に改めてよくこのような性格になったなとしみじみ思う風間。過去が過去なだけによくスレなかったと思う。もちろん人格的問題は多数存在しているが、明るく元気な人間に育ったのは間違いない。
「お、桜子ちゃんから電話だ」
「桜子……ああ海老名隊の」
「ほいほーい? ん、大丈夫! 暇してたから」
「おい」
小さく突っ込んだ風間。しかしナマエには届かずスルーされる。そしてぴょんと風間の肩に飛び乗った赤いラービットに励まされるように叩かれた。何故トリオン兵に励まされている、と苦い顔をした。一方ナマエは武富桜子と話を続ける。
「インタビュー? B級のランク戦の? 私が?」
その不穏な言葉に今年のランク戦は荒れるな、と確信した風間は本日何回目か分からないため息をついた。