本編
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「ちゃんと世話するから! 散歩もさせるし、芸も覚えさせるから! ねぇ城戸さーん!」
城戸さんのこめかみがピクピク動くのがここからでも分かる。一番近くにいるあいつは気づいてないらしい。なんておめでたいやつなんだ。
ネイバーの大規模侵攻から五日経った。さらわれたC級隊員の今後の対応、破壊された市街地の対応、優先すべきことを一通り片付けてやっとこの案件について話し合うときが来た。はっきり言って避けて通りたい話なんだがそうもいかなかった。……なんでこう面倒事を持ってくるかなぁ。
「悪さもしないよ! それに強いし。ねぇ赤吉さん、黒山くん」
「ぐお」「ばぅ」
ナマエの両肩に乗っている小さくなったラービットが同意するように鳴いた。そして「ほらいい子でしょ」とどや顔で城戸さんに言うナマエ。……ナマエが何かやるのは視えていたがこんな事になった原因はまだみえない。
ナマエが連れてきたラービットは一度技術部預かりになった。他のラービットと何が違うか調べるためだ。そこで分かったことは他のラービットと性能はほぼ変わらないが、作った工程や材質が違うということが分かった。技術者曰わく、この二体は製作者が違うらしい。それが何を関係しているかは今は分からない。だからこれからどうするか会議が開かれた。だがここ最近行われた会議と比べて緊張感の欠片もないのは確実にあいつのせいだろう。隣の風間さんが「早く終われ」と呟いたのが聞こえた。
「ナマエ、そのラービットにおまえが何かしたという可能性はないのか?」
「うーん……名前つけたこと?」
「それより前のことだ」
「えぇ……最初は逃げ回って、アステロイド避けられて、お腹空いたなぁと思って、嫌々戦って、もう二体来て、これオワタと思って、そしたら赤吉さんたちが叫んで、二体フルボッコ?」
「………」
ナマエが指を折りながら話す内容に忍田さんも何ともいえない顔をした。疑問が疑問を呼んだな。忍田さんの隣に座っているボスは先ほどから楽しそうに笑っている。「いやぁガキの頃からろくな事しねーと思ってたけどなぁ」と褒めてるのか貶してるのか。
「………」
「城戸さん黙ってないで答えてよ。鬼怒田さんは諦め……飼ってもいいって言ってたよ」
ナマエの言葉に鬼怒田さんは疲れきった顔で溜め息をついた。ただでさえも問題が山済みなのにここ数日ナマエに付きまとわれてたからな。心中察するよ。
「冬島さんにモニター? もどきとってもらったから敵側に情報も漏れないし」
「その辺は抜かりないから心配しなくて大丈夫だ」
そして完全にナマエ側に立った冬島さん。ボスとは違った意味であの人も楽しんでいる。あの人の興味はナマエに懐いたラービットだけだ。
「それにこのラービット達は他のトリオン兵とは確実に違う点がある。それを解明するまで様子見するのもいいと思うぞ」
「……違う点とは」
城戸さんの問いに冬島さんは口角を上げて説明を始めた。
「トリオン兵の行動はプログラミングで決まっている。全て戦闘のためのプログラミングだ。……が、ナマエのラービット達はトリオン兵なのに感情がある」
「感情だと……?」
怪訝な顔をした城戸さんに冬島さんは頷き、横のナマエは「へーそうなんだ」と呟いた。なぜおまえが知らないんだ。
「正確には感情に近い性能のプログラミングが組み込まれている。近いって言ってもその性能は人間のものとほぼ変わらない。戦争のための兵器にそんな事をする理由があるか?」
「……………」
冬島さんの言葉にその場にいた全員が口を紡いだ。
「戦争兵器に感情なんて不合理なものを組み込む理由があるか? だとしたら別の理由があるはずだ。ついでに言うとこのラービット達を作った技術者は凄い腕を持ってるな」
「ああ、出水が言ってた変人黒トリガー?」
映像に残っていた最後の黒トリガー。なぜかあのネイバーは戦闘に参加せずそのまま退却した。その上メガネくんが遠征艇に乗り込んだときも見逃したようだ。何が目的だったのかと模索するなか、ナマエはひとり怒っていた。
「あいつ私だけ首ちょんぱしやがって。しかもムカつく面って言いやがった……!」
ゆるさん、と怒りを燃やすナマエ。そう、ナマエだけ攻撃したことも謎だ。現場にいた出水は「師匠の顔が気にくわなかったんじゃないすか」と当てにならなかった。
「まぁとりあえずそれは置いといて、あちら側の技術は目まぐるしいものだ。研究のためにも保護する形を俺は進めたい」
「………おまえはどうなんだ迅」
視線が一斉におれに向く。中でもジト目で凝視するナマエに苦笑しながら口を開いた。
「ナマエに逆らうことはないよ、裏切ることもない」
それどころかナマエのことを守ろうとする未来さえある。理由がまだ分からないのが歯痒い。
ナマエはおれの言葉に顔を明るくして両肩に乗っていたラービット達を胴上げするように投げた。そして落とした。「あ、ごめん」と謝罪は軽かった。……大丈夫かな。
「………山原、それになにか起きた場合、責任はおまえに取ってもらう」
「りょーかーい」
ありがとー城戸さん、となんとも能天気に返したナマエにボスと冬島さん以外の全員の溜め息が重なった。
城戸さんのこめかみがピクピク動くのがここからでも分かる。一番近くにいるあいつは気づいてないらしい。なんておめでたいやつなんだ。
ネイバーの大規模侵攻から五日経った。さらわれたC級隊員の今後の対応、破壊された市街地の対応、優先すべきことを一通り片付けてやっとこの案件について話し合うときが来た。はっきり言って避けて通りたい話なんだがそうもいかなかった。……なんでこう面倒事を持ってくるかなぁ。
「悪さもしないよ! それに強いし。ねぇ赤吉さん、黒山くん」
「ぐお」「ばぅ」
ナマエの両肩に乗っている小さくなったラービットが同意するように鳴いた。そして「ほらいい子でしょ」とどや顔で城戸さんに言うナマエ。……ナマエが何かやるのは視えていたがこんな事になった原因はまだみえない。
ナマエが連れてきたラービットは一度技術部預かりになった。他のラービットと何が違うか調べるためだ。そこで分かったことは他のラービットと性能はほぼ変わらないが、作った工程や材質が違うということが分かった。技術者曰わく、この二体は製作者が違うらしい。それが何を関係しているかは今は分からない。だからこれからどうするか会議が開かれた。だがここ最近行われた会議と比べて緊張感の欠片もないのは確実にあいつのせいだろう。隣の風間さんが「早く終われ」と呟いたのが聞こえた。
「ナマエ、そのラービットにおまえが何かしたという可能性はないのか?」
「うーん……名前つけたこと?」
「それより前のことだ」
「えぇ……最初は逃げ回って、アステロイド避けられて、お腹空いたなぁと思って、嫌々戦って、もう二体来て、これオワタと思って、そしたら赤吉さんたちが叫んで、二体フルボッコ?」
「………」
ナマエが指を折りながら話す内容に忍田さんも何ともいえない顔をした。疑問が疑問を呼んだな。忍田さんの隣に座っているボスは先ほどから楽しそうに笑っている。「いやぁガキの頃からろくな事しねーと思ってたけどなぁ」と褒めてるのか貶してるのか。
「………」
「城戸さん黙ってないで答えてよ。鬼怒田さんは諦め……飼ってもいいって言ってたよ」
ナマエの言葉に鬼怒田さんは疲れきった顔で溜め息をついた。ただでさえも問題が山済みなのにここ数日ナマエに付きまとわれてたからな。心中察するよ。
「冬島さんにモニター? もどきとってもらったから敵側に情報も漏れないし」
「その辺は抜かりないから心配しなくて大丈夫だ」
そして完全にナマエ側に立った冬島さん。ボスとは違った意味であの人も楽しんでいる。あの人の興味はナマエに懐いたラービットだけだ。
「それにこのラービット達は他のトリオン兵とは確実に違う点がある。それを解明するまで様子見するのもいいと思うぞ」
「……違う点とは」
城戸さんの問いに冬島さんは口角を上げて説明を始めた。
「トリオン兵の行動はプログラミングで決まっている。全て戦闘のためのプログラミングだ。……が、ナマエのラービット達はトリオン兵なのに感情がある」
「感情だと……?」
怪訝な顔をした城戸さんに冬島さんは頷き、横のナマエは「へーそうなんだ」と呟いた。なぜおまえが知らないんだ。
「正確には感情に近い性能のプログラミングが組み込まれている。近いって言ってもその性能は人間のものとほぼ変わらない。戦争のための兵器にそんな事をする理由があるか?」
「……………」
冬島さんの言葉にその場にいた全員が口を紡いだ。
「戦争兵器に感情なんて不合理なものを組み込む理由があるか? だとしたら別の理由があるはずだ。ついでに言うとこのラービット達を作った技術者は凄い腕を持ってるな」
「ああ、出水が言ってた変人黒トリガー?」
映像に残っていた最後の黒トリガー。なぜかあのネイバーは戦闘に参加せずそのまま退却した。その上メガネくんが遠征艇に乗り込んだときも見逃したようだ。何が目的だったのかと模索するなか、ナマエはひとり怒っていた。
「あいつ私だけ首ちょんぱしやがって。しかもムカつく面って言いやがった……!」
ゆるさん、と怒りを燃やすナマエ。そう、ナマエだけ攻撃したことも謎だ。現場にいた出水は「師匠の顔が気にくわなかったんじゃないすか」と当てにならなかった。
「まぁとりあえずそれは置いといて、あちら側の技術は目まぐるしいものだ。研究のためにも保護する形を俺は進めたい」
「………おまえはどうなんだ迅」
視線が一斉におれに向く。中でもジト目で凝視するナマエに苦笑しながら口を開いた。
「ナマエに逆らうことはないよ、裏切ることもない」
それどころかナマエのことを守ろうとする未来さえある。理由がまだ分からないのが歯痒い。
ナマエはおれの言葉に顔を明るくして両肩に乗っていたラービット達を胴上げするように投げた。そして落とした。「あ、ごめん」と謝罪は軽かった。……大丈夫かな。
「………山原、それになにか起きた場合、責任はおまえに取ってもらう」
「りょーかーい」
ありがとー城戸さん、となんとも能天気に返したナマエにボスと冬島さん以外の全員の溜め息が重なった。