番外編
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「え、烏丸の彼女? ……なんか普通」
ボーダー外の人間──バイト先、学校、他校の元同級生。まあ学校は同級生以外の上の学年はナマエを知ってるのでこんなことを言う人間はいないのだが、たいていこういう言葉が返ってくる。普通? どこが。……どこが? 脳裏にはプレゼントだと言って斧を持ち歩くナマエの姿があった。なのでナマエのどこが普通なのか本気で分からないが、こういった場面での“普通”はほめ言葉ではないと察したので「そうか」といつもただ流していた。
「俺は好きなんだけどな」
この言葉と一緒に。
ただの事実を言うと茶化すものも謝ってくるものも女子なら機嫌が悪くなるものもいた。適当に相手して機嫌が悪くなった相手は心の中で注意していた。ナマエに何かするかもしれない、と。あの人はなぜか同性に強く出られないというか、弱いというか……まあそれでも相手を巻き込んで結局自分のペースにしているので大丈夫だとは思うが、注意しておいて損はない。
対してナマエを知る相手の反応はだいたいこう分かれる。まず同じ学校の先輩。
「山原先輩!? あの山原先輩!? 教頭先生のヅラを拝借して借り物競争走りきったあの山原先輩!?」
「山原先輩!? ボーダー隊員の!? バレンタインに学校全体でチョコパーティー開いて独り身にはチョコを、カップルにはカカオっぽいの投げたあの山原先輩!?」
「山原先輩!? あの問題児先輩!? いやあああ!! 烏丸くんが山原先輩に毒される!!」
だいたい阿鼻叫喚だった。まあこれは烏丸に恋人が出来たと発覚したときもそうだったのだが。にしても後輩に化け物のように扱われていて一周まわって笑った。あの山原先輩!? を揃って口にするのだから。
そしてボーダー隊員。多すぎるので一部抜粋する。古寺、諏訪、嵐山、犬飼を参照する。
「ナマエさん……? ナマエさんだよね……? え? え? ……え?」
「京介おめーその歳でマニアックな趣味してんな。ちょうどいいから放すなよ。そしてどうにかしろ」
「おめでとう京介。こっちも嬉しくなるなあ」
「ほ、ほんとにナマエさんをゲットしてる……っ! あはは! 烏丸くん、ポケモンマスターの才能あるんじゃない?」
たいてい古寺の反応と一緒な人間が多かった。理解が追いつきませんといった顔をするのだ。あとはドン引き勢、爆笑勢が続き、素直に祝ってくれるのは一部だ。ナマエの同級生はだいたい祝ってくれた。「苦労すると思うけど」が頭につくが。
そんなことを脳裏に浮かべつつ一番奥の廊下で向き合っている相手が口を開く。
「烏丸くんが好きです。付き合ってください」
「気持ちは嬉しいが恋人がいる」
「知ってる。知ってるけど……普通じゃん。私の方が顔可愛いし、歳も同じだし、色々合ってると思う!」
「…………」
ああ、あの“普通”は顔のことを言っていたのか。あの破天荒な性格じゃなくて。場違いにそう思った。そう思ったが、首を傾げる。
(俺の恋人のほうが可愛いと思うが)
口に出したら逆恨みされそうだったので、寸でのところで押さえた。所謂イケてる女子グループに属する人間はなにをするか分からない。それにナマエを侮辱するようなことを平気で言えるような相手だ。訂正しても無駄だろう。
「俺は恋人のことを絶対離さないし、離してほしくない。一緒に歳をとってずっと一緒に笑っていられる相手だと思っている。この世で一番愛してるんだ。他の人間は目に入らない」
「っ、」
「気持ちは受け取れない。ごめんな」
そう言ってその場から離れた。ふぅ、と息をつく。こういうとき、ナマエと同い年でなくてよかったなと思うようになった。烏丸への告白は恋人発覚からしばらく経っても減っていない。同級生だったらナマエに何かしようとする人間も出てくるかもしれない。まあ今のところ、烏丸が告白されたらナマエが「ふーーん」と言って拗ねてくっついてくるぐらいだ。可愛い。
ナマエの拗ねた顔を思い出して顔をほころばせながら角を曲がるとそこにいたのは隠岐だった。気まずげな顔をしていた。
「……見ました?」
「見てもーたなあ。ごめんなあ烏丸くん」
「いや、学校なんてどこかしらに人いるんで仕方ないすよ」
「せやけどなぁ。おれもはよ立ち去ればよかったし」
「じゃあナマエさんには内緒にしてください。それでおしまいってことで」
「もちろん言わへんけど、ナマエさん意外と気にするんやな」
「いや、クリスマス前で告白ラッシュが続いたせいでご機嫌斜めなんです。拗ねた顔可愛いと思って少し調子に乗りました」
「煽ってもーたんやな……」
苦笑する隠岐に頷く。あれは少しやりすぎた。いや、でも可愛いものは可愛いのだ。可愛くていいのだがそれで変な方向にキレられて突飛な行動をされたら困る。なので最近は煽るのは控えていた。明日は約束のクリスマスだし。
「……にしても熱烈やなあ烏丸くん」
「? なにがです?」
「愛してるんだって言うとったやん。高校生で好きは言えても愛してるはなかなか言えんで」
「そうですか?」
「そうですよ?」
勝手に口から出てくるから気にしたことがなかった。
そう言うと隠岐は穏やかな目をして「ええなあ」と言った。
「ええなあ。そんな人と会えて、両想いになれて、付き合って。よかったなあ烏丸くん」
「…………はい」
しみじみと優しくそう言われるとなんだか胸の奥から溢れてくるものがあった。……ナマエの顔がみたい。ふとそう思った。
ブーブーブー
すると学ランのポケットに入れていた携帯が鳴る。表示を見ると『ナマエさん』の文字。
「ナマエさん? どうしましたか」
電話とった瞬間に隠岐に電話を優先していいか聞くのを忘れていたのに気づく。ぺこりと頭を下げると隠岐は気にしないといった風に手を振った。
『モテモテの烏丸くん』
「はい?」
『告白ラッシュの烏丸くん』
……見られてた? 一瞬そう思ってしまうほどにタイミングが完璧だった。
『ナマエさん、クリパに誘われました』
「は?」
『ふん! ざまーみろ! ナマエさんにも誘ってくる人間いるんだからな!』
「断りました? 断りましたよね? 相手誰ですか? どんな顔してましたか? 連絡先知ってます?」
『ひえ』
「ナマエさん? 断りましたよね?」
『断りました!!!』
「詳しくは明日聞きます。今日は忙しくて連絡とれないので。2日分覚悟していてください」
『ごめんなさいでした』
「許しません」
そう言って電話を切った。単純に昼休みの終わりが迫っていたから切ったのだが、多分ナマエは頭を抱えているだろう。そう仕組んだのもあるが。
「ナマエさんどないしたん?」
「ヤキモチ妬かせようと可愛いことしてきたんで意地悪しました」
「……振り回されてるんやろなぁて思てたけど、意外と烏丸くんもやるんやなあ」
「やられっぱなしは男としてなしでしょう」
「せやな」
ナマエさんご愁傷様と空中に向かって言う隠岐。さて、どうしてやろうかと明日のクリスマスがさらに楽しみになった烏丸だった。
ボーダー外の人間──バイト先、学校、他校の元同級生。まあ学校は同級生以外の上の学年はナマエを知ってるのでこんなことを言う人間はいないのだが、たいていこういう言葉が返ってくる。普通? どこが。……どこが? 脳裏にはプレゼントだと言って斧を持ち歩くナマエの姿があった。なのでナマエのどこが普通なのか本気で分からないが、こういった場面での“普通”はほめ言葉ではないと察したので「そうか」といつもただ流していた。
「俺は好きなんだけどな」
この言葉と一緒に。
ただの事実を言うと茶化すものも謝ってくるものも女子なら機嫌が悪くなるものもいた。適当に相手して機嫌が悪くなった相手は心の中で注意していた。ナマエに何かするかもしれない、と。あの人はなぜか同性に強く出られないというか、弱いというか……まあそれでも相手を巻き込んで結局自分のペースにしているので大丈夫だとは思うが、注意しておいて損はない。
対してナマエを知る相手の反応はだいたいこう分かれる。まず同じ学校の先輩。
「山原先輩!? あの山原先輩!? 教頭先生のヅラを拝借して借り物競争走りきったあの山原先輩!?」
「山原先輩!? ボーダー隊員の!? バレンタインに学校全体でチョコパーティー開いて独り身にはチョコを、カップルにはカカオっぽいの投げたあの山原先輩!?」
「山原先輩!? あの問題児先輩!? いやあああ!! 烏丸くんが山原先輩に毒される!!」
だいたい阿鼻叫喚だった。まあこれは烏丸に恋人が出来たと発覚したときもそうだったのだが。にしても後輩に化け物のように扱われていて一周まわって笑った。あの山原先輩!? を揃って口にするのだから。
そしてボーダー隊員。多すぎるので一部抜粋する。古寺、諏訪、嵐山、犬飼を参照する。
「ナマエさん……? ナマエさんだよね……? え? え? ……え?」
「京介おめーその歳でマニアックな趣味してんな。ちょうどいいから放すなよ。そしてどうにかしろ」
「おめでとう京介。こっちも嬉しくなるなあ」
「ほ、ほんとにナマエさんをゲットしてる……っ! あはは! 烏丸くん、ポケモンマスターの才能あるんじゃない?」
たいてい古寺の反応と一緒な人間が多かった。理解が追いつきませんといった顔をするのだ。あとはドン引き勢、爆笑勢が続き、素直に祝ってくれるのは一部だ。ナマエの同級生はだいたい祝ってくれた。「苦労すると思うけど」が頭につくが。
そんなことを脳裏に浮かべつつ一番奥の廊下で向き合っている相手が口を開く。
「烏丸くんが好きです。付き合ってください」
「気持ちは嬉しいが恋人がいる」
「知ってる。知ってるけど……普通じゃん。私の方が顔可愛いし、歳も同じだし、色々合ってると思う!」
「…………」
ああ、あの“普通”は顔のことを言っていたのか。あの破天荒な性格じゃなくて。場違いにそう思った。そう思ったが、首を傾げる。
(俺の恋人のほうが可愛いと思うが)
口に出したら逆恨みされそうだったので、寸でのところで押さえた。所謂イケてる女子グループに属する人間はなにをするか分からない。それにナマエを侮辱するようなことを平気で言えるような相手だ。訂正しても無駄だろう。
「俺は恋人のことを絶対離さないし、離してほしくない。一緒に歳をとってずっと一緒に笑っていられる相手だと思っている。この世で一番愛してるんだ。他の人間は目に入らない」
「っ、」
「気持ちは受け取れない。ごめんな」
そう言ってその場から離れた。ふぅ、と息をつく。こういうとき、ナマエと同い年でなくてよかったなと思うようになった。烏丸への告白は恋人発覚からしばらく経っても減っていない。同級生だったらナマエに何かしようとする人間も出てくるかもしれない。まあ今のところ、烏丸が告白されたらナマエが「ふーーん」と言って拗ねてくっついてくるぐらいだ。可愛い。
ナマエの拗ねた顔を思い出して顔をほころばせながら角を曲がるとそこにいたのは隠岐だった。気まずげな顔をしていた。
「……見ました?」
「見てもーたなあ。ごめんなあ烏丸くん」
「いや、学校なんてどこかしらに人いるんで仕方ないすよ」
「せやけどなぁ。おれもはよ立ち去ればよかったし」
「じゃあナマエさんには内緒にしてください。それでおしまいってことで」
「もちろん言わへんけど、ナマエさん意外と気にするんやな」
「いや、クリスマス前で告白ラッシュが続いたせいでご機嫌斜めなんです。拗ねた顔可愛いと思って少し調子に乗りました」
「煽ってもーたんやな……」
苦笑する隠岐に頷く。あれは少しやりすぎた。いや、でも可愛いものは可愛いのだ。可愛くていいのだがそれで変な方向にキレられて突飛な行動をされたら困る。なので最近は煽るのは控えていた。明日は約束のクリスマスだし。
「……にしても熱烈やなあ烏丸くん」
「? なにがです?」
「愛してるんだって言うとったやん。高校生で好きは言えても愛してるはなかなか言えんで」
「そうですか?」
「そうですよ?」
勝手に口から出てくるから気にしたことがなかった。
そう言うと隠岐は穏やかな目をして「ええなあ」と言った。
「ええなあ。そんな人と会えて、両想いになれて、付き合って。よかったなあ烏丸くん」
「…………はい」
しみじみと優しくそう言われるとなんだか胸の奥から溢れてくるものがあった。……ナマエの顔がみたい。ふとそう思った。
ブーブーブー
すると学ランのポケットに入れていた携帯が鳴る。表示を見ると『ナマエさん』の文字。
「ナマエさん? どうしましたか」
電話とった瞬間に隠岐に電話を優先していいか聞くのを忘れていたのに気づく。ぺこりと頭を下げると隠岐は気にしないといった風に手を振った。
『モテモテの烏丸くん』
「はい?」
『告白ラッシュの烏丸くん』
……見られてた? 一瞬そう思ってしまうほどにタイミングが完璧だった。
『ナマエさん、クリパに誘われました』
「は?」
『ふん! ざまーみろ! ナマエさんにも誘ってくる人間いるんだからな!』
「断りました? 断りましたよね? 相手誰ですか? どんな顔してましたか? 連絡先知ってます?」
『ひえ』
「ナマエさん? 断りましたよね?」
『断りました!!!』
「詳しくは明日聞きます。今日は忙しくて連絡とれないので。2日分覚悟していてください」
『ごめんなさいでした』
「許しません」
そう言って電話を切った。単純に昼休みの終わりが迫っていたから切ったのだが、多分ナマエは頭を抱えているだろう。そう仕組んだのもあるが。
「ナマエさんどないしたん?」
「ヤキモチ妬かせようと可愛いことしてきたんで意地悪しました」
「……振り回されてるんやろなぁて思てたけど、意外と烏丸くんもやるんやなあ」
「やられっぱなしは男としてなしでしょう」
「せやな」
ナマエさんご愁傷様と空中に向かって言う隠岐。さて、どうしてやろうかと明日のクリスマスがさらに楽しみになった烏丸だった。