番外編
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いつも通り窓際の席で米屋と昼飯をとっていたら教室の前を二人のよく知る人物が通って行った。
「さっさと歩けよこらぁ!」
「逃げようとしても無駄だからな」
「ヤンキー特有のその結束力ってどうなってるの? 生まれたときから備わってるの? それともヤンキーになる過程で身に付くの?」
「無駄口叩くな!」
「だったらこの両脇がっちりセットやめて……目立つ……裏庭までこれとか……」
片腕ずつ掴まれてズルズルと引きずられていったナマエ。本人の言葉通りそれはもう目立っていた。なぜならナマエの腕をがっちりと掴んで引きずっていった二人の姿が360度どこからどう見てもヤンキーだったからだ。見た目は平凡な一般生徒のナマエとは真逆のピンクに金と見事に派手に染まった髪色の女生徒たち。目立たないわけがなかった。
「…………師匠によく似た女が捕らわれた宇宙人状態で運ばれてたな」
「ナマエさん何だよなぁ残念なことに」
米屋の言葉にとりあえず持っていたコロッケパンの袋を置いた。米屋は現実逃避をさせてくれないらしい。出水は深々と息をついて口を開く。
「トラブルメイカーってさぁ……師匠のためにある言葉だよな」
力の入った心からの言葉に「きっと動きを止めると死ぬんだろうな」と米屋。冬の旬魚に例えられた自分の師匠に複雑な思いを抱きつつ携帯を取り出す。嵐山、生駒、柿崎、迅。電話帳に表示された四つの名前をしばらく見つめて柿崎の名前を押した。3コールほどで電話は繋がった。
《どうした? 出水》
「師匠が派手な髪した女ヤンキーたちに拉致られてたんですけど」
《…………そうか、》
相づちのように聞こえるが恐らく状況を整理しようとしているのだろう。仕方ない、自分でもきっとそうなる。「何でだ……何でそうなる……」という苦悩に満ちた柿崎の声に出水は心の中で謝罪を返した。
《確か隣のクラスに派手なグループがいたな……ナマエはピンク髪の子と前のクラスが一緒だった》
「友達って感じではなかったですけど」
《悪い。あいつの交流関係は謎が多いから俺には分からない》
三年間学校生活を共にしても分からない謎の多い交流関係とは。
「………もしかしてイジメ、じゃないですよね?」
女ヤンキーたちの荒い言動に一瞬過ぎった考え。あれ、もしかしてこれってヤバいやつじゃないか? ヤンキーに無理やり連れて行かれるって普通に裏庭でリンチって図じゃないか?
今更ながらに焦りだした出水。ふてぶてしいナマエの姿に思考が鈍って連れて行かれるナマエを見送ってしまった。背中に嫌な汗が流れる。……が、
《うちの学年でそんな無駄なことをするやつはいない》
「…………」
ボーダーの中でも常識人に類する柿崎の言葉とは思えなかった。イジメを無駄って。いやあんなもの無駄だしクソだが言葉の選択がおかしい気がする。電話口から「誰かナマエの行方知ってるかー?」と柿崎の呼びかけが届く。「拉致られてたよー」のんびりした声が返ってきた。三年生大丈夫か。そう思いつつ電話を切った。
「大丈夫なのか? 結局」
「みてーだけど理由はわからねー」
「じゃあ飯食い終わったら裏庭いくか」
ナマエ<飯。米屋 もたいがいだ。微妙に落ちつかないのは出水だけらしい。そう思いつつパンをかじった。味はさっきよりしなかった。
***
「だからさぁストレートにいけばいいじゃん」
「おまえと一緒にすんじゃねーよ!」
「てめーの非常識さ持ってくんじゃねー!」
「非常識……? 初めて言われた」
「「嘘つけ!!!」」
ああなんか大丈夫そう。
裏庭で三人で三角形を作ってしゃがみ込んで話している姿を見て思った。なんなら主導権はナマエが持ってそうだ。つまりいつも通り。
「じゃあどうすんの。諦めたらそこで試合終了ですよ」
「安西先生馬鹿にすんじゃねえよ」
「スラダン舐めてんなてめー」
「舐めてないよ桜木軍団」
「誰が桜木軍団だ!」
「二人しかいねーわ!」
「あと三人集めてこい」
「うるせー!」
見た目も派手だし口調も荒いが、恐らくナマエに振り回されている気がする。師匠って誰でも態度変わんねーな……となんだか気が抜けた。米屋は「ナマエさん怖いもの知らずだなー」とケラケラ笑っている。というかもしかしてあれは普通に友達なのか? そんな疑惑が立った。なぜならナマエが「じゃあどうするかなー」と頭を傾げて悩んでいるような姿勢をとっている。脅されてとっている態度のようには見えない。本当にどういう交友関係だ。
「普通に話すの無理?」
「ふざけんな! 無理に決まってるだろ!」
「なんで緊張するのか意味が分からん」
「お、おまえは友達で同じボーダー隊員だからそう思うだけだ」
「私と嵐山の初対面「あ? その髪型流行ってんの?」「どうだろうなあ。いつも通っている所に任せているからな」で髪型の話で一時間くらい話してたけど。自己紹介するの忘れて」
「それはおまえが図太いんだっつーの!」
「つーか自慢かてめー!」
「これ自慢になるの……?」
怪訝な顔をするナマエに「たりめーだ!」と声を揃えるヤンキー二人組。……なんとなく話が読めてきた。
「あの二人、嵐山さんのファンか」
「そういう流れかよ」
はー……と息をつく。とりあえずイジメじゃないなら何でもいい。……そもそもイジメられて黙ってるような性格してないか。
ポリポリ頭をかいて「もういくか」と米屋に言うが、米屋は楽しそうに「もうちょっと見よーぜ」と言っている。悪趣味だろうが、と返そうとしたときだった。ナマエが口を開いた。
「でも嵐山は応援してくれてる存在がいるって直接知る方が喜ぶと思うよ」
「…………本当か?」
「うん、元気でるよ。たまに私にも話しかけてくるコアなボーダーファンいるから何となく分かる」
「嵐山はその比じゃないだろ。毎日応援の声の数が届くくらい人気の嵐山隊の隊長だ」
「数が多くても少なくてもその声ひとつひとつに真剣に向き合うくらいの熱血漢舐めんな」
「…………」
「がんばれ」
バシッ! とナマエが笑って二人の肩を叩いた音が響く。ヤンキー二人組は「いてーわ!」と返していたが、その声は明るかった。
「……師匠って嵐山さんのことよく見てるよな」
「そら15のときから一緒だからな。ザキさんもだけど」
「……あの世代仲いいよな」
「ヤキモチ焼くな焼くな」
「!? 焼くかんなもんッ!」
出水はバッ! と米屋の方を見てそう主張したが「はいはい」と流された。
「焼いてねーからな!? 聞いてるか槍バカ!?」
「さっさと歩けよこらぁ!」
「逃げようとしても無駄だからな」
「ヤンキー特有のその結束力ってどうなってるの? 生まれたときから備わってるの? それともヤンキーになる過程で身に付くの?」
「無駄口叩くな!」
「だったらこの両脇がっちりセットやめて……目立つ……裏庭までこれとか……」
片腕ずつ掴まれてズルズルと引きずられていったナマエ。本人の言葉通りそれはもう目立っていた。なぜならナマエの腕をがっちりと掴んで引きずっていった二人の姿が360度どこからどう見てもヤンキーだったからだ。見た目は平凡な一般生徒のナマエとは真逆のピンクに金と見事に派手に染まった髪色の女生徒たち。目立たないわけがなかった。
「…………師匠によく似た女が捕らわれた宇宙人状態で運ばれてたな」
「ナマエさん何だよなぁ残念なことに」
米屋の言葉にとりあえず持っていたコロッケパンの袋を置いた。米屋は現実逃避をさせてくれないらしい。出水は深々と息をついて口を開く。
「トラブルメイカーってさぁ……師匠のためにある言葉だよな」
力の入った心からの言葉に「きっと動きを止めると死ぬんだろうな」と米屋。冬の旬魚に例えられた自分の師匠に複雑な思いを抱きつつ携帯を取り出す。嵐山、生駒、柿崎、迅。電話帳に表示された四つの名前をしばらく見つめて柿崎の名前を押した。3コールほどで電話は繋がった。
《どうした? 出水》
「師匠が派手な髪した女ヤンキーたちに拉致られてたんですけど」
《…………そうか、》
相づちのように聞こえるが恐らく状況を整理しようとしているのだろう。仕方ない、自分でもきっとそうなる。「何でだ……何でそうなる……」という苦悩に満ちた柿崎の声に出水は心の中で謝罪を返した。
《確か隣のクラスに派手なグループがいたな……ナマエはピンク髪の子と前のクラスが一緒だった》
「友達って感じではなかったですけど」
《悪い。あいつの交流関係は謎が多いから俺には分からない》
三年間学校生活を共にしても分からない謎の多い交流関係とは。
「………もしかしてイジメ、じゃないですよね?」
女ヤンキーたちの荒い言動に一瞬過ぎった考え。あれ、もしかしてこれってヤバいやつじゃないか? ヤンキーに無理やり連れて行かれるって普通に裏庭でリンチって図じゃないか?
今更ながらに焦りだした出水。ふてぶてしいナマエの姿に思考が鈍って連れて行かれるナマエを見送ってしまった。背中に嫌な汗が流れる。……が、
《うちの学年でそんな無駄なことをするやつはいない》
「…………」
ボーダーの中でも常識人に類する柿崎の言葉とは思えなかった。イジメを無駄って。いやあんなもの無駄だしクソだが言葉の選択がおかしい気がする。電話口から「誰かナマエの行方知ってるかー?」と柿崎の呼びかけが届く。「拉致られてたよー」のんびりした声が返ってきた。三年生大丈夫か。そう思いつつ電話を切った。
「大丈夫なのか? 結局」
「みてーだけど理由はわからねー」
「じゃあ飯食い終わったら裏庭いくか」
ナマエ<飯。
***
「だからさぁストレートにいけばいいじゃん」
「おまえと一緒にすんじゃねーよ!」
「てめーの非常識さ持ってくんじゃねー!」
「非常識……? 初めて言われた」
「「嘘つけ!!!」」
ああなんか大丈夫そう。
裏庭で三人で三角形を作ってしゃがみ込んで話している姿を見て思った。なんなら主導権はナマエが持ってそうだ。つまりいつも通り。
「じゃあどうすんの。諦めたらそこで試合終了ですよ」
「安西先生馬鹿にすんじゃねえよ」
「スラダン舐めてんなてめー」
「舐めてないよ桜木軍団」
「誰が桜木軍団だ!」
「二人しかいねーわ!」
「あと三人集めてこい」
「うるせー!」
見た目も派手だし口調も荒いが、恐らくナマエに振り回されている気がする。師匠って誰でも態度変わんねーな……となんだか気が抜けた。米屋は「ナマエさん怖いもの知らずだなー」とケラケラ笑っている。というかもしかしてあれは普通に友達なのか? そんな疑惑が立った。なぜならナマエが「じゃあどうするかなー」と頭を傾げて悩んでいるような姿勢をとっている。脅されてとっている態度のようには見えない。本当にどういう交友関係だ。
「普通に話すの無理?」
「ふざけんな! 無理に決まってるだろ!」
「なんで緊張するのか意味が分からん」
「お、おまえは友達で同じボーダー隊員だからそう思うだけだ」
「私と嵐山の初対面「あ? その髪型流行ってんの?」「どうだろうなあ。いつも通っている所に任せているからな」で髪型の話で一時間くらい話してたけど。自己紹介するの忘れて」
「それはおまえが図太いんだっつーの!」
「つーか自慢かてめー!」
「これ自慢になるの……?」
怪訝な顔をするナマエに「たりめーだ!」と声を揃えるヤンキー二人組。……なんとなく話が読めてきた。
「あの二人、嵐山さんのファンか」
「そういう流れかよ」
はー……と息をつく。とりあえずイジメじゃないなら何でもいい。……そもそもイジメられて黙ってるような性格してないか。
ポリポリ頭をかいて「もういくか」と米屋に言うが、米屋は楽しそうに「もうちょっと見よーぜ」と言っている。悪趣味だろうが、と返そうとしたときだった。ナマエが口を開いた。
「でも嵐山は応援してくれてる存在がいるって直接知る方が喜ぶと思うよ」
「…………本当か?」
「うん、元気でるよ。たまに私にも話しかけてくるコアなボーダーファンいるから何となく分かる」
「嵐山はその比じゃないだろ。毎日応援の声の数が届くくらい人気の嵐山隊の隊長だ」
「数が多くても少なくてもその声ひとつひとつに真剣に向き合うくらいの熱血漢舐めんな」
「…………」
「がんばれ」
バシッ! とナマエが笑って二人の肩を叩いた音が響く。ヤンキー二人組は「いてーわ!」と返していたが、その声は明るかった。
「……師匠って嵐山さんのことよく見てるよな」
「そら15のときから一緒だからな。ザキさんもだけど」
「……あの世代仲いいよな」
「ヤキモチ焼くな焼くな」
「!? 焼くかんなもんッ!」
出水はバッ! と米屋の方を見てそう主張したが「はいはい」と流された。
「焼いてねーからな!? 聞いてるか槍バカ!?」