番外編
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迅の誕生日が来た。ネタバレエスパータイプにサプライズは茶番と化するのでいつも皆で普通に宣言して祝ってる。今日は玉狛で誕生日ご飯とケーキが待っている。飾り付けなどするらしいので私はその間、迅を連れ出して川辺で遊ぶ役だ。なんで誕生日に川辺だってなりそうだけど人が多いところだとポンポコポンポコ未来が視えて疲れるかなぁと思ったからだ。暗躍趣味だって言ってるから慣れてるのかもしれないけど誕生日くらい大人しくしとけ。
「水切りであっちの岸まで近づいたほうが勝ちね」
「はいはい」
水切りはいい石を探すところから勝負は始まっている。真剣に石を探す私を迅は力が抜けたような顔で笑っていた。
「水切りは童心に帰りすぎでしょ」
「本当は水遊びしようと思ってたけどさすがにまだ寒かったからやめた」
「自分でやめてくれてよかったよ」
私が水遊びを選ぶアホな未来が視えてるような口調である。その未来間違ってますからね。選んでないからね。
「練習は五回まで」
「はいはい」
「ちなみに忍者パークで手裏剣投げしたとき的に命中して忍者に褒められた実績があります」
「水切りと手裏剣投げを同列に話す人初めてみたよ。そもそも手裏剣投げしたことある人初めてみたよ」
「初めての経験おめでとう。コツとか聞いてくれていいよ」
「コツは何でしょうか」
「力まないこと」
私がそう言うと迅はその辺にあった石を拾ってしゅっ! と見るからに適当に石を投げた。その石はポンポンポンポンと川の上を滑って向こうの岸に当たった。
「…………」
「…………」
「忍者の手柄だから! 迅の手柄じゃないから!」
「そうだね、忍者すごいね」
「生暖かい目やめろ!」
私が投げる間もなく終わった水切り大会。これは本当に水の中に入って水遊びする流れになるんじゃないだろうな……と少しおののきつつ、近くの生えてる細長い葉っぱで船を作ることにした。
「意外に作り方覚えてる」
「普段鶴も折れなさそうなのに」
「がに股の鶴贈ってあげる」
「絶対いらない」
迅は作り方を知らなかったらしく私のを見ながら見よう見まねで作っていた。一発で作れてた。手先がお器用でございますね。まだ水切りの件が尾を引いている。
「子供のとき笹舟流してどうするんだろ……私……って思いながら作ってた」
「鬱屈した思い出やめて」
「30個くらい作った」
「何でそんなこと思ってたのに30個も作っちゃったの」
「全部10メートルも保たなかった」
「ねえ今から笹舟流すんだよね?」
「何メートルで沈むか勝負です」
「進むかじゃないんだ……」
「船は沈むもの。泥船も沈むし」
「一緒にするな」
そんなわけで笹舟どっちが早く沈むかバトルが始まった。早く沈んだ方の勝ち。
「勝ち方が喜べないんだけど」
「テンションは自分で上げるもの」
いざ勝負!
と水につけて流して三秒。石につまづいて私の船が沈没した。
「……誰沈んだ方が勝ちって言ったの」
「数秒前のナマエです」
「全然テンション上がらない……」
「そりゃそうだよ」
本当に水遊びするかもしれない。1対1のイーブンになったのにこの後味の悪さ。釣り道具持ってくればよかった。それが一番平和だった。争うなんて野蛮人がやることです。開き直って普通に座っておしゃべりすることになった。やってることがいつもと変わらん。
「飾り付けどんな感じ?」
「まだ終わってない頃かな」
「見た目知ってる迅より私の方がサプライズ感でるな」
「確かに。でもおれの為にやってくれてることだから。それだけで嬉しいよ」
その言葉の通り嬉しそうに笑う迅。そうやって考えれるようになるまでどれくらい時間がかかったんだろう。ふとそう思った。
「これ誰にも言ったことないんですけど」
「なに?」
「私の脳みそが理系脳だったら医者の道進んでサイドエフェクトの緩和の研究するつもりだったよ」
「……」
迅は目を見開いている。これは私が医者になれるって未来が微塵もなかったからこその顔だな。どれだけ向いてなかったのか。よかった。普通に文系進んで。まあトリオン器官衰えるまでは戦闘員するから文系でもどうなるかまだ分かんないけど。
「そ、うなのか」
「まあ全く拓かれなかった未来だけどね」
「……」
迅は片膝を抱えてそこに額をくっつけた。これはしばらく話さないな。長い付き合いだから分かる。うーん、と背筋を伸ばして後ろに倒れる。汚れるけどまあいいや。空がきれい。別に雨でもめでたいのには変わらないけど迅の誕生日は晴れてよかったなと思った。迅の目の色だからかな。
「迅」
「……なぁに」
「生まれてきてくれてありがとね」
言うことは言っとこうの精神だった。それなのにやけに身動ぎする音がしてそっちを見ると迅は目を押さえていた。
「えっ泣かした?」
「堂々と聞かないでください」
「思ったこと言っただけだよ」
「だからでしょ」
情緒考えて、と言われてとりあえず起き上がってハンカチを探そうとしたらなくてこれが情緒……と納得してたら名前を呼ばれた。
「なに」
「一回しか言わないけど」
「もっと大盤振る舞いしとけ」
「一回しか言わないけど」
「はい」
「おれと出会ってくれてありがとう」
「……こちらこそ?」
私と迅が出会わない未来が想像つかなくて返事が疑問形になったけど、それでも迅は目尻を下げて笑っていた。
「水切りであっちの岸まで近づいたほうが勝ちね」
「はいはい」
水切りはいい石を探すところから勝負は始まっている。真剣に石を探す私を迅は力が抜けたような顔で笑っていた。
「水切りは童心に帰りすぎでしょ」
「本当は水遊びしようと思ってたけどさすがにまだ寒かったからやめた」
「自分でやめてくれてよかったよ」
私が水遊びを選ぶアホな未来が視えてるような口調である。その未来間違ってますからね。選んでないからね。
「練習は五回まで」
「はいはい」
「ちなみに忍者パークで手裏剣投げしたとき的に命中して忍者に褒められた実績があります」
「水切りと手裏剣投げを同列に話す人初めてみたよ。そもそも手裏剣投げしたことある人初めてみたよ」
「初めての経験おめでとう。コツとか聞いてくれていいよ」
「コツは何でしょうか」
「力まないこと」
私がそう言うと迅はその辺にあった石を拾ってしゅっ! と見るからに適当に石を投げた。その石はポンポンポンポンと川の上を滑って向こうの岸に当たった。
「…………」
「…………」
「忍者の手柄だから! 迅の手柄じゃないから!」
「そうだね、忍者すごいね」
「生暖かい目やめろ!」
私が投げる間もなく終わった水切り大会。これは本当に水の中に入って水遊びする流れになるんじゃないだろうな……と少しおののきつつ、近くの生えてる細長い葉っぱで船を作ることにした。
「意外に作り方覚えてる」
「普段鶴も折れなさそうなのに」
「がに股の鶴贈ってあげる」
「絶対いらない」
迅は作り方を知らなかったらしく私のを見ながら見よう見まねで作っていた。一発で作れてた。手先がお器用でございますね。まだ水切りの件が尾を引いている。
「子供のとき笹舟流してどうするんだろ……私……って思いながら作ってた」
「鬱屈した思い出やめて」
「30個くらい作った」
「何でそんなこと思ってたのに30個も作っちゃったの」
「全部10メートルも保たなかった」
「ねえ今から笹舟流すんだよね?」
「何メートルで沈むか勝負です」
「進むかじゃないんだ……」
「船は沈むもの。泥船も沈むし」
「一緒にするな」
そんなわけで笹舟どっちが早く沈むかバトルが始まった。早く沈んだ方の勝ち。
「勝ち方が喜べないんだけど」
「テンションは自分で上げるもの」
いざ勝負!
と水につけて流して三秒。石につまづいて私の船が沈没した。
「……誰沈んだ方が勝ちって言ったの」
「数秒前のナマエです」
「全然テンション上がらない……」
「そりゃそうだよ」
本当に水遊びするかもしれない。1対1のイーブンになったのにこの後味の悪さ。釣り道具持ってくればよかった。それが一番平和だった。争うなんて野蛮人がやることです。開き直って普通に座っておしゃべりすることになった。やってることがいつもと変わらん。
「飾り付けどんな感じ?」
「まだ終わってない頃かな」
「見た目知ってる迅より私の方がサプライズ感でるな」
「確かに。でもおれの為にやってくれてることだから。それだけで嬉しいよ」
その言葉の通り嬉しそうに笑う迅。そうやって考えれるようになるまでどれくらい時間がかかったんだろう。ふとそう思った。
「これ誰にも言ったことないんですけど」
「なに?」
「私の脳みそが理系脳だったら医者の道進んでサイドエフェクトの緩和の研究するつもりだったよ」
「……」
迅は目を見開いている。これは私が医者になれるって未来が微塵もなかったからこその顔だな。どれだけ向いてなかったのか。よかった。普通に文系進んで。まあトリオン器官衰えるまでは戦闘員するから文系でもどうなるかまだ分かんないけど。
「そ、うなのか」
「まあ全く拓かれなかった未来だけどね」
「……」
迅は片膝を抱えてそこに額をくっつけた。これはしばらく話さないな。長い付き合いだから分かる。うーん、と背筋を伸ばして後ろに倒れる。汚れるけどまあいいや。空がきれい。別に雨でもめでたいのには変わらないけど迅の誕生日は晴れてよかったなと思った。迅の目の色だからかな。
「迅」
「……なぁに」
「生まれてきてくれてありがとね」
言うことは言っとこうの精神だった。それなのにやけに身動ぎする音がしてそっちを見ると迅は目を押さえていた。
「えっ泣かした?」
「堂々と聞かないでください」
「思ったこと言っただけだよ」
「だからでしょ」
情緒考えて、と言われてとりあえず起き上がってハンカチを探そうとしたらなくてこれが情緒……と納得してたら名前を呼ばれた。
「なに」
「一回しか言わないけど」
「もっと大盤振る舞いしとけ」
「一回しか言わないけど」
「はい」
「おれと出会ってくれてありがとう」
「……こちらこそ?」
私と迅が出会わない未来が想像つかなくて返事が疑問形になったけど、それでも迅は目尻を下げて笑っていた。