番外編
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「アステロイドー!」
そう言って突っ込んで来た小さな物体。完全に死角から突っ込んで来たので倒れそうになった。「大人なのに足こしひんじゃくだね」と生意気を言う小さな頭をとりあえず掴んだ。
「いてて! なんて大人げない!」
「後ろからぶつかったら危ないだろう。それと年上にはどうしろと言ったのを覚えているか?」
「こびを売れ!」
「違う」
元気よく手を挙げてそれか。というかどこで習ったそんなこと。そう尋ねるとナマエは握られた頭をさすりながら口を開く。
「えぇー……ただで教えるのはちょっと」
「飴とチョコレートどっちがいい」
「りんどーさんが言ってたよ」
なんてちょろい子供なんだろう。将来は大丈夫だろうかと思いつつちょうだいと伸ばしてくる小さな手に飴を置く。「チョコはー?」とじゃれて来たが忍田は無視した。まずはナマエに余計なことを教えるなと林藤に釘を刺さなければ。
「むむっ、子供だからってなめてるね。子供をおこらしたら痛い目みるんだよ」
「年上には?」
「けいごをつかえ!」
「敬語」
「つかえです!」
ですを付けたら敬語になると勘違いしていることを訂正しながら基地の中を歩く。基地といってもまだまだ小さいものだが。
横にいる小さな女の子、ナマエは幹部の一人である最上が連れてきた子供だった。最上の同期である城戸がどこから連れてきたと最上に迫ったがのらりくらりと交わされたのはいつの話だっただろうか。今となっては(生意気なくらい)口が達者になったが、ここに来た当初はろくに言葉も話せない幼子だった。子供の成長は早いな、と若くして思う忍田。
「むー……大人とはずるい生き物だ」
顔をしかめてそう言ったナマエに忍田は笑みを零した。最上の教育のせいかそれとも元来のものかよくも悪くも素直な性格の子供に育った。城戸辺りは「悪ガキ」と称してるがなんだかんだ言って面倒を見ている。あの強面の城戸に飛びつく勢いでタックルしていたナマエを文句を言いながらも受け止めている光景をよく目にする。「……なにか用か」「今ならねくびをかけると思って」「おまえは暗殺者にでもなるつもりか」「なにそれ。ひっさつ仕事人の仲間?」「知らないならいい。そして寝首とは眠っているときのことだ」「ほうほう」「因みにそれは誰から教わった」「りんどーさん」……林藤はナマエをどうしたいのだろうかと疑問が生まれる。大方面白がって色々教えているのだろうが巻き込まれるこっちの身にもなれと言いたい。
「そういえば私に何か用があったんじゃないか?」
「ん……? そうだっけ……しのださんがわたしに用があったんじゃないの?」
「私に突っ込んできたのはおまえだろう」
何言ってんだこの人、という視線を向けてきたナマエにこの子供の適当さ加減は誰に似たんだろうと真剣に悩む忍田。この歳で言っていることが二転三転するのはどうなのか。
「あんねーさっき最上さんからナマエは太く長く生きるって言われた。どういういみ?」
「…………」
その言葉にひどく納得する忍田。憎まれっ子世に憚るという言葉を具現化したような子供だ。確実に図太く長く生きるだろう。育て親にそんなことを言われて哀れである。それを教える気にもなれず忍田は「大人になったら分かるようになる」とだけ返した。
「またそれかよー大人はずるい」
膨れっ面で文句を言うナマエ。それに宥めるようにして頭を撫でると「こんなことでほだされるほど子供と思うなよ」と言いつつも目を瞑って気持ちよさそうにしている。こういう所は素直で可愛げがある。
すると前方から見覚えのある人間が歩いてくる。その人物はナマエがいるのに気がつくと咥えていたタバコを灰皿ケースに入れた。
「よう、散歩中か」
「! りんどーさんだっアステロイドー!」
そう言って林藤に突っ込んで行ったナマエ。あれは彼女の中で流行っているのだろうか。
飛んできたナマエを受け止めながら林藤は口を開く。
「ナマエ 忍田と遊んでんのか?」
「うん、遊んでやってるよ」
「おい」
ナマエの言葉に林藤は笑い、忍田は小さく突っ込んだ。
「今日もかれいしゅーがするね」
「だからこれは加齢臭じゃなくてタバコの臭いだっつの。あと最上さんに加齢臭するとか言うなよ?」
「なんでー?」
「そういうところにナイーブな時期なんだよ」
「ナイーブ……オリーブの親せきか」
「そんなところだ」
「堂々と嘘を教えるな」
これによってナマエの勘違いが増長しているのかと思うと頭を抱えたくなった。確実に林藤はナマエの反応を見て楽しんでいる。
「林藤」
「いやーなんでも吸収するから面白くてなー」
「あ! きどさんだ」
わははと笑う林藤の横で城戸を見つけたナマエ。先ほどと同じように「アステロイドー!」と叫びながら城戸に突っ込んで行った。ナマエが来るのに気づいた城戸は顔を歪めながら片手でナマエを止めた。それに文句を言うナマエ。そして無視して歩き続ける城戸。二人はそのまま廊下を去っていった。
「いやぁあの強面が怖くないのはすげえな」
「あの子に怖いものなんてあるのか」
「ないだろうな」
間をおかず言った林藤の脳裏には将来の夢は? と質問すると「しはいしゃ!」と堂々と答えるナマエの姿。彼女がろくな大人にならないのは確実だ。そしてボーダーの大人たちが全員で最上を責める光景は異様だった。どんな教育をしているのだと。恐らくだが最上は悪くないと林藤は思っている。止めることはしなかったが。
「ま、元気でいてくれたら俺はなんでもいいよ」
「……そうだな」
そう言って二人は微笑んだ。
そう言って突っ込んで来た小さな物体。完全に死角から突っ込んで来たので倒れそうになった。「大人なのに足こしひんじゃくだね」と生意気を言う小さな頭をとりあえず掴んだ。
「いてて! なんて大人げない!」
「後ろからぶつかったら危ないだろう。それと年上にはどうしろと言ったのを覚えているか?」
「こびを売れ!」
「違う」
元気よく手を挙げてそれか。というかどこで習ったそんなこと。そう尋ねるとナマエは握られた頭をさすりながら口を開く。
「えぇー……ただで教えるのはちょっと」
「飴とチョコレートどっちがいい」
「りんどーさんが言ってたよ」
なんてちょろい子供なんだろう。将来は大丈夫だろうかと思いつつちょうだいと伸ばしてくる小さな手に飴を置く。「チョコはー?」とじゃれて来たが忍田は無視した。まずはナマエに余計なことを教えるなと林藤に釘を刺さなければ。
「むむっ、子供だからってなめてるね。子供をおこらしたら痛い目みるんだよ」
「年上には?」
「けいごをつかえ!」
「敬語」
「つかえです!」
ですを付けたら敬語になると勘違いしていることを訂正しながら基地の中を歩く。基地といってもまだまだ小さいものだが。
横にいる小さな女の子、ナマエは幹部の一人である最上が連れてきた子供だった。最上の同期である城戸がどこから連れてきたと最上に迫ったがのらりくらりと交わされたのはいつの話だっただろうか。今となっては(生意気なくらい)口が達者になったが、ここに来た当初はろくに言葉も話せない幼子だった。子供の成長は早いな、と若くして思う忍田。
「むー……大人とはずるい生き物だ」
顔をしかめてそう言ったナマエに忍田は笑みを零した。最上の教育のせいかそれとも元来のものかよくも悪くも素直な性格の子供に育った。城戸辺りは「悪ガキ」と称してるがなんだかんだ言って面倒を見ている。あの強面の城戸に飛びつく勢いでタックルしていたナマエを文句を言いながらも受け止めている光景をよく目にする。「……なにか用か」「今ならねくびをかけると思って」「おまえは暗殺者にでもなるつもりか」「なにそれ。ひっさつ仕事人の仲間?」「知らないならいい。そして寝首とは眠っているときのことだ」「ほうほう」「因みにそれは誰から教わった」「りんどーさん」……林藤はナマエをどうしたいのだろうかと疑問が生まれる。大方面白がって色々教えているのだろうが巻き込まれるこっちの身にもなれと言いたい。
「そういえば私に何か用があったんじゃないか?」
「ん……? そうだっけ……しのださんがわたしに用があったんじゃないの?」
「私に突っ込んできたのはおまえだろう」
何言ってんだこの人、という視線を向けてきたナマエにこの子供の適当さ加減は誰に似たんだろうと真剣に悩む忍田。この歳で言っていることが二転三転するのはどうなのか。
「あんねーさっき最上さんからナマエは太く長く生きるって言われた。どういういみ?」
「…………」
その言葉にひどく納得する忍田。憎まれっ子世に憚るという言葉を具現化したような子供だ。確実に図太く長く生きるだろう。育て親にそんなことを言われて哀れである。それを教える気にもなれず忍田は「大人になったら分かるようになる」とだけ返した。
「またそれかよー大人はずるい」
膨れっ面で文句を言うナマエ。それに宥めるようにして頭を撫でると「こんなことでほだされるほど子供と思うなよ」と言いつつも目を瞑って気持ちよさそうにしている。こういう所は素直で可愛げがある。
すると前方から見覚えのある人間が歩いてくる。その人物はナマエがいるのに気がつくと咥えていたタバコを灰皿ケースに入れた。
「よう、散歩中か」
「! りんどーさんだっアステロイドー!」
そう言って林藤に突っ込んで行ったナマエ。あれは彼女の中で流行っているのだろうか。
飛んできたナマエを受け止めながら林藤は口を開く。
「ナマエ 忍田と遊んでんのか?」
「うん、遊んでやってるよ」
「おい」
ナマエの言葉に林藤は笑い、忍田は小さく突っ込んだ。
「今日もかれいしゅーがするね」
「だからこれは加齢臭じゃなくてタバコの臭いだっつの。あと最上さんに加齢臭するとか言うなよ?」
「なんでー?」
「そういうところにナイーブな時期なんだよ」
「ナイーブ……オリーブの親せきか」
「そんなところだ」
「堂々と嘘を教えるな」
これによってナマエの勘違いが増長しているのかと思うと頭を抱えたくなった。確実に林藤はナマエの反応を見て楽しんでいる。
「林藤」
「いやーなんでも吸収するから面白くてなー」
「あ! きどさんだ」
わははと笑う林藤の横で城戸を見つけたナマエ。先ほどと同じように「アステロイドー!」と叫びながら城戸に突っ込んで行った。ナマエが来るのに気づいた城戸は顔を歪めながら片手でナマエを止めた。それに文句を言うナマエ。そして無視して歩き続ける城戸。二人はそのまま廊下を去っていった。
「いやぁあの強面が怖くないのはすげえな」
「あの子に怖いものなんてあるのか」
「ないだろうな」
間をおかず言った林藤の脳裏には将来の夢は? と質問すると「しはいしゃ!」と堂々と答えるナマエの姿。彼女がろくな大人にならないのは確実だ。そしてボーダーの大人たちが全員で最上を責める光景は異様だった。どんな教育をしているのだと。恐らくだが最上は悪くないと林藤は思っている。止めることはしなかったが。
「ま、元気でいてくれたら俺はなんでもいいよ」
「……そうだな」
そう言って二人は微笑んだ。