番外編
名前変換
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恋愛シミュレーションゲームをする事になった。先ほどまでホラーゲームをしていたのだがメンバーが影浦、北添、荒船、当真という盛り上がりに欠けたメンバー(騒ぐのがナマエと北添しかいなかった)だったので「別のにしよーぜ」と気分転換を狙ったものだった。無難に○○乱闘系をしておけば良かったのだが数時間前にやり尽くしている。
「一人しか出来ないけど誰がプレイする?」
「影浦でいいじゃん。これで女心をしれ」
「おめーにそれを言われるのは釈然としねえな」
「舐めるなよ。めちゃくちゃ分かるわ女心」
「それを女が言うのか……」
荒船の言葉は聞かなかったことにしたらしく意気揚々と北添からコントローラーを受け取るナマエ。画面が切り替わりメニューを操作していくと名前設定にたどり着いた。
「あっそうか男の名前か。ナマエさんどうするの?」
「適当でいいだろ」
「じゃあ影浦で」
「ふざけんな」
影浦の反論も聞かなかったらしい。無視して【か げ う ら】と苗字を入れていく。そして名前の欄にスペースキーが動いたところでナマエの手が止まった。斜め後ろにいた当真はその理由に瞬時に気づいた。名前が分からないのだ。確かに「影浦」「カゲ」と呼ばれるばかりで下の名前を呼ぶ者はボーダーにはいない。きっと自分の名前も覚えていないだろうと思いつつ、どうするのか当真はにやつきながら見つめる。ナマエはしばらく動きが止まっていたが、コントローラーを操作し始めた。
【か げ お】
「誰だっ!!」
怒鳴ったのはもちろん影浦だった。名前を使うなとは言ったもののこの仕打ちは予想してなかったのだろう。いや誰も予想はしていなかった。影浦とナマエ以外は腹を抱えて笑っている。「てめーらも笑ってんじゃねーよ!」本人から批判の声が上がるも他三人は今は話せる状態じゃない。
「えーヒロイン7人もいるの? 迷う~」
しかもナマエはヒロイン設定のページを捲ってマイペースに楽しんでいる。影浦の声は全く聞いていない。それどころか「誰がタイプなのかげお」と火に油をぶっこんでいる。名前は違えどやはり画面上の主人公は影浦のことらしい。
「高校の同級生先輩後輩にバイト先の大学生に、ええ……先生もいるの? それはちょっと駄目じゃないか。教え子ですよ教え子」
真面目に話すナマエの姿に笑いが増長する。「だっ大学生でいいんじゃないですか」笑いすぎて荒船の声が震えている。彼がこんなに笑うのも珍しい。
「悩んでも仕方ないし大学生で決定」
「もう好きにしろ……」
はじまる前から影浦のHPが減っている。そういうゲームでは全くないのだが。
そして始まったかげおの物語。同時に三人の笑いも収まった。
「なんかすっごいかげおのキャラ薄いんだけど……その癖すごい女の子達から話しかけられる……」
「そういうゲームですし」
「フェロモンでも出してるの?」
「俺を見ながらいうな」
「姉さんそれ裏ルートで七股できるぜ」
「えええ……悪い男だなかげお」
「だから俺を見ながらいうな」
一々突っ込みながらのゲームプレイのせいか先に進むのが遅い。その上好感度を上げる選択肢で「褒める、怒る、慰める……影浦なら怒るか」と明らかな間違いでも堂々と選択するせいでなかなか好感度が上がらない。むしろ下がっている。
「好感度が最低値にいきそう」
「貶してしかないですからね」
「だってこれは影浦の物語だし」
「その設定いい加減に忘れろや」
ぐだぐだしながら続けて数時間。やっとエンディングに向かっていっている。「ハッピーエンドは無理そうだね」という北添の言葉に当真は内心ひやりと汗をかいた。何を隠そう、というか全く隠してはないがこのゲームを持ってきたのは当真である。暇つぶしにいいだろと軽い気持ちで持ってきたこの恋愛ゲームは何個もエンディングのある有名なものである。選択肢やプレゼントで点数化されてエンディングを迎えるものなのだが、ひとつだけ人前でプレイするのは憚られるエンディングがある。まあいわゆる闇落ちルートというやつだ。そして困ったことに現在進行形でそのエンディングに向かっていっている。攻略本必須なエンディングを無意識でピンポイントに選んでいくナマエに若干引きつつも、脳内ではどうするか思考を巡らせていく。闇落ちルートといってもキャラによって差があるのだが、ナマエと荒船が選んだ大学生キャラはこう……画面が肌色になるのだ。あとは察してほしい。
「……姉さんちょっと休憩しねーか?」
「これまだ先が長いの?」
「めちゃくちゃ長い」
「まじかこれ以上好感度下がっていくの。すでにめちゃくちゃ嫌われてんのに」
裏では違う意味で好かれてんだけどな、心で返す当真。「ちょっと小腹好いたね」「私もー売店いこうよ北添」ナイスゾエ! 当真は内心ガッツポーズをした。
「適当に買ってくるー」と二人で緩く作戦室から出て行ったのを確認して当真はコントローラーを手にした。ほぼ早送りである。
「は? どうした」
「ここで進めとかないと気まずくなるぞ」
「何言ってんだおま……どんなゲーム持ってきてんだ当真コラ!」
「よりによってあの馬鹿にやらせてんじゃねーよ!!」
「姉さんがピンポイントでやばいエンディング選んだだけだっつーの!」
隠しルートといえるエンディングが。初見で見つけるのはほぼ不可能なレベルの。他は健全だというのになんて引きの悪い。いやある意味いいのか。
ぎゃーぎゃー言いながらスタッフロールまで進めた当真たち。帰ってきたナマエと北添からはぶーぶー文句を言われたが色んな疲労感が蓄積した三人に言い返す気力はなかった。
「一人しか出来ないけど誰がプレイする?」
「影浦でいいじゃん。これで女心をしれ」
「おめーにそれを言われるのは釈然としねえな」
「舐めるなよ。めちゃくちゃ分かるわ女心」
「それを女が言うのか……」
荒船の言葉は聞かなかったことにしたらしく意気揚々と北添からコントローラーを受け取るナマエ。画面が切り替わりメニューを操作していくと名前設定にたどり着いた。
「あっそうか男の名前か。ナマエさんどうするの?」
「適当でいいだろ」
「じゃあ影浦で」
「ふざけんな」
影浦の反論も聞かなかったらしい。無視して【か げ う ら】と苗字を入れていく。そして名前の欄にスペースキーが動いたところでナマエの手が止まった。斜め後ろにいた当真はその理由に瞬時に気づいた。名前が分からないのだ。確かに「影浦」「カゲ」と呼ばれるばかりで下の名前を呼ぶ者はボーダーにはいない。きっと自分の名前も覚えていないだろうと思いつつ、どうするのか当真はにやつきながら見つめる。ナマエはしばらく動きが止まっていたが、コントローラーを操作し始めた。
【か げ お】
「誰だっ!!」
怒鳴ったのはもちろん影浦だった。名前を使うなとは言ったもののこの仕打ちは予想してなかったのだろう。いや誰も予想はしていなかった。影浦とナマエ以外は腹を抱えて笑っている。「てめーらも笑ってんじゃねーよ!」本人から批判の声が上がるも他三人は今は話せる状態じゃない。
「えーヒロイン7人もいるの? 迷う~」
しかもナマエはヒロイン設定のページを捲ってマイペースに楽しんでいる。影浦の声は全く聞いていない。それどころか「誰がタイプなのかげお」と火に油をぶっこんでいる。名前は違えどやはり画面上の主人公は影浦のことらしい。
「高校の同級生先輩後輩にバイト先の大学生に、ええ……先生もいるの? それはちょっと駄目じゃないか。教え子ですよ教え子」
真面目に話すナマエの姿に笑いが増長する。「だっ大学生でいいんじゃないですか」笑いすぎて荒船の声が震えている。彼がこんなに笑うのも珍しい。
「悩んでも仕方ないし大学生で決定」
「もう好きにしろ……」
はじまる前から影浦のHPが減っている。そういうゲームでは全くないのだが。
そして始まったかげおの物語。同時に三人の笑いも収まった。
「なんかすっごいかげおのキャラ薄いんだけど……その癖すごい女の子達から話しかけられる……」
「そういうゲームですし」
「フェロモンでも出してるの?」
「俺を見ながらいうな」
「姉さんそれ裏ルートで七股できるぜ」
「えええ……悪い男だなかげお」
「だから俺を見ながらいうな」
一々突っ込みながらのゲームプレイのせいか先に進むのが遅い。その上好感度を上げる選択肢で「褒める、怒る、慰める……影浦なら怒るか」と明らかな間違いでも堂々と選択するせいでなかなか好感度が上がらない。むしろ下がっている。
「好感度が最低値にいきそう」
「貶してしかないですからね」
「だってこれは影浦の物語だし」
「その設定いい加減に忘れろや」
ぐだぐだしながら続けて数時間。やっとエンディングに向かっていっている。「ハッピーエンドは無理そうだね」という北添の言葉に当真は内心ひやりと汗をかいた。何を隠そう、というか全く隠してはないがこのゲームを持ってきたのは当真である。暇つぶしにいいだろと軽い気持ちで持ってきたこの恋愛ゲームは何個もエンディングのある有名なものである。選択肢やプレゼントで点数化されてエンディングを迎えるものなのだが、ひとつだけ人前でプレイするのは憚られるエンディングがある。まあいわゆる闇落ちルートというやつだ。そして困ったことに現在進行形でそのエンディングに向かっていっている。攻略本必須なエンディングを無意識でピンポイントに選んでいくナマエに若干引きつつも、脳内ではどうするか思考を巡らせていく。闇落ちルートといってもキャラによって差があるのだが、ナマエと荒船が選んだ大学生キャラはこう……画面が肌色になるのだ。あとは察してほしい。
「……姉さんちょっと休憩しねーか?」
「これまだ先が長いの?」
「めちゃくちゃ長い」
「まじかこれ以上好感度下がっていくの。すでにめちゃくちゃ嫌われてんのに」
裏では違う意味で好かれてんだけどな、心で返す当真。「ちょっと小腹好いたね」「私もー売店いこうよ北添」ナイスゾエ! 当真は内心ガッツポーズをした。
「適当に買ってくるー」と二人で緩く作戦室から出て行ったのを確認して当真はコントローラーを手にした。ほぼ早送りである。
「は? どうした」
「ここで進めとかないと気まずくなるぞ」
「何言ってんだおま……どんなゲーム持ってきてんだ当真コラ!」
「よりによってあの馬鹿にやらせてんじゃねーよ!!」
「姉さんがピンポイントでやばいエンディング選んだだけだっつーの!」
隠しルートといえるエンディングが。初見で見つけるのはほぼ不可能なレベルの。他は健全だというのになんて引きの悪い。いやある意味いいのか。
ぎゃーぎゃー言いながらスタッフロールまで進めた当真たち。帰ってきたナマエと北添からはぶーぶー文句を言われたが色んな疲労感が蓄積した三人に言い返す気力はなかった。