番外編
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「すぐそこのお家のおじちゃんがね、庭の柿あげるよーっていってたよ」
「よかったね」
「うん。だからきょうすけも一緒にいこ」
かにえ先生にあげると息巻いていた柿が手に入ることにナマエはご機嫌だった。そのご機嫌なナマエに手を差し出された京介はしばらく悩んだ。多分断ったらタカシくんをひっぱってでも連れて行くだろう。タカシくんが無理だったとしてもひとりで突っ走りそうな勢いだ。そのくらいテンションが高い。どうしようか。
「きょうすけ行かない? じゃあタカシくん誘おう」
「いく」
即答だった。だっておもしろくない。
少しの罪悪感と共にナマエと裏口に回る。「この時間はご飯持ってきてくれるおじさんたちが使うから鍵あいてるんだよ。楽勝だね」スパイのようなことを言い出したナマエ。手慣れすぎてないか。かにえ先生の苦労が目に見えた。そのことに更に罪悪感がわく京介。「幼稚園おわってからもらって明日渡したら?」「さんまは鮮度が大事ってアキラとリョウがいってたよ」アキラとリョウめ余計なことを。秋刀魚と柿は違うだろうという突っ込みは今のナマエには効かないというのに。
「本当にすぐそこ?」
「うんすぐそこ」
なら大丈夫かな……? そう判断した京介は五分前の自分を責めたくなった。
「あれ? おじちゃんの家がない」
「ナマエ、これは迷ったっていうんだよ」
「なんてこった」
こちらの台詞だ。
迷った自覚が全くないナマエの手をギュッと握る。これではぐれたら悲惨なことになる。「てわけしておじちゃんの家さがす?」この状態で何故目的を全うしようとするのか。
「だめ。ナマエは絶対おれの手はなしちゃだめ」
「そういうのそくばくって言うんだよ」
「そくばくでもいいからはなしちゃだめ」
「えーまあいっかー」
返事がとことん軽い。事の大事さを分かっていない。京介の脳裏にはすすり泣くかにえ先生の姿があった。「もお! ナマエちゃんはもおおお」泣きながら怒っている。早く帰らなければ。
「かにえ先生が寂しがってるから早く帰ろう」
「えっそれはいち大事だ。かえろきょうすけ」
この言葉で素直に帰る選択になるくらいに好いているくせに本当に望んでいることは分からないらしい。そんなことを思いながらナマエの手を引っ張って歩く。……が、途中からよく分からない道に入ってしまったらしく、足が止まってしまう。迷ったら動くなという言葉は幼稚園児が知るわけもない。京介は思わず眉を寄せる。反対にナマエは変わらずのん気に首を傾げていた。
「あれ? この道しってる気がする」
あまり信用がない言葉だった。なぜなら最初に迷ったときにその台詞を聞いた。
「うーん、多分こっち」
「……大丈夫?」
「うん。大丈夫だよきょうすけ、ふたりだからこわくないよ」
「……うん、ありがとうナマエ」
「いいってことよ」
元を辿ればナマエが原因だ。それでもその言葉を聞いて安心した京介は繋いでいるナマエの手をぎゅっとした。
「冬は手をつなぐとあったかいね」
「うん」
「でも大人はあんまりつながないよね。なんでかなあ」
「……大人だから?」
「大人ってふべんだよね。うーん、きょうすけと手つなげないなら大人じゃなくていいや」
「……大人になってもつなごうよ」
「ほんと?」
「ほんと」
「うそついたら本気ビンタね」
「いいよ」
「だったら大人になってもいいかも」
さらりと意見を変えたナマエ。その感覚でまた意見を変えそうな予感がしたが、未来の約束に京介はほのかに胸を踊らせた。
(あれ? これわたしの家だ)
(は? ナマエ? ……おーい忍田ーナマエ帰ってきたぞー)
(あ、しのださんとりんどーさんだ。ただいまー)
(ただいまじゃない! さっき幼稚園から連絡があったぞ! )
(帰ったらただいまを言いなさいってしのださんがいったのに……やっぱ大人はだめだねきょうすけ)
(ちゃんとあやまったほうがいいと思うよナマエ)
このあとめちゃくちゃ怒られた
「よかったね」
「うん。だからきょうすけも一緒にいこ」
かにえ先生にあげると息巻いていた柿が手に入ることにナマエはご機嫌だった。そのご機嫌なナマエに手を差し出された京介はしばらく悩んだ。多分断ったらタカシくんをひっぱってでも連れて行くだろう。タカシくんが無理だったとしてもひとりで突っ走りそうな勢いだ。そのくらいテンションが高い。どうしようか。
「きょうすけ行かない? じゃあタカシくん誘おう」
「いく」
即答だった。だっておもしろくない。
少しの罪悪感と共にナマエと裏口に回る。「この時間はご飯持ってきてくれるおじさんたちが使うから鍵あいてるんだよ。楽勝だね」スパイのようなことを言い出したナマエ。手慣れすぎてないか。かにえ先生の苦労が目に見えた。そのことに更に罪悪感がわく京介。「幼稚園おわってからもらって明日渡したら?」「さんまは鮮度が大事ってアキラとリョウがいってたよ」アキラとリョウめ余計なことを。秋刀魚と柿は違うだろうという突っ込みは今のナマエには効かないというのに。
「本当にすぐそこ?」
「うんすぐそこ」
なら大丈夫かな……? そう判断した京介は五分前の自分を責めたくなった。
「あれ? おじちゃんの家がない」
「ナマエ、これは迷ったっていうんだよ」
「なんてこった」
こちらの台詞だ。
迷った自覚が全くないナマエの手をギュッと握る。これではぐれたら悲惨なことになる。「てわけしておじちゃんの家さがす?」この状態で何故目的を全うしようとするのか。
「だめ。ナマエは絶対おれの手はなしちゃだめ」
「そういうのそくばくって言うんだよ」
「そくばくでもいいからはなしちゃだめ」
「えーまあいっかー」
返事がとことん軽い。事の大事さを分かっていない。京介の脳裏にはすすり泣くかにえ先生の姿があった。「もお! ナマエちゃんはもおおお」泣きながら怒っている。早く帰らなければ。
「かにえ先生が寂しがってるから早く帰ろう」
「えっそれはいち大事だ。かえろきょうすけ」
この言葉で素直に帰る選択になるくらいに好いているくせに本当に望んでいることは分からないらしい。そんなことを思いながらナマエの手を引っ張って歩く。……が、途中からよく分からない道に入ってしまったらしく、足が止まってしまう。迷ったら動くなという言葉は幼稚園児が知るわけもない。京介は思わず眉を寄せる。反対にナマエは変わらずのん気に首を傾げていた。
「あれ? この道しってる気がする」
あまり信用がない言葉だった。なぜなら最初に迷ったときにその台詞を聞いた。
「うーん、多分こっち」
「……大丈夫?」
「うん。大丈夫だよきょうすけ、ふたりだからこわくないよ」
「……うん、ありがとうナマエ」
「いいってことよ」
元を辿ればナマエが原因だ。それでもその言葉を聞いて安心した京介は繋いでいるナマエの手をぎゅっとした。
「冬は手をつなぐとあったかいね」
「うん」
「でも大人はあんまりつながないよね。なんでかなあ」
「……大人だから?」
「大人ってふべんだよね。うーん、きょうすけと手つなげないなら大人じゃなくていいや」
「……大人になってもつなごうよ」
「ほんと?」
「ほんと」
「うそついたら本気ビンタね」
「いいよ」
「だったら大人になってもいいかも」
さらりと意見を変えたナマエ。その感覚でまた意見を変えそうな予感がしたが、未来の約束に京介はほのかに胸を踊らせた。
(あれ? これわたしの家だ)
(は? ナマエ? ……おーい忍田ーナマエ帰ってきたぞー)
(あ、しのださんとりんどーさんだ。ただいまー)
(ただいまじゃない! さっき幼稚園から連絡があったぞ! )
(帰ったらただいまを言いなさいってしのださんがいったのに……やっぱ大人はだめだねきょうすけ)
(ちゃんとあやまったほうがいいと思うよナマエ)
このあとめちゃくちゃ怒られた