番外編
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「せんせい、権力者ってどうやってなるの?」
「…………」
普段から物静かで大きな声も主張もしない京介。そんな京介が「ねえねえ、せんせい」とエプロンをくいっくいっと軽く引っ張ってきたので珍しいなぁと思いつつ膝をつき、「なぁに?」と聞き返したことが上記の質問に繋がる。
「け、権力者って何だか分かってる?」
「うん。力をもった人のことでしょ。おだのぶながとか」
幼稚園児って織田信長知ってるの……てかちゃんと意味分かってる……? と軽く戦慄しながらどう答えるか頭を回転させる。……が、正解などあるわけもなく、話を逸らして有耶無耶にすることにした。大人は万能ではないのだ。
「うーん、何で権力者になりたいのかな。先生は京介くんはそのままでいいと思うけどなぁ」
「ナマエが結婚するなら権力者がいいっていってた」
ちゃんと意味分かってるの!? と先ほどと同じ感想が出たが衝撃は先ほどの10倍はあった。そして名が上がった一人の子どもの姿を頭に浮かべる。「ああ……あの子か……」と一気に衝撃がおさまってきたのは喜んでいいところなのか。
肉親がいないデリケートな環境にいる子だから気にかけてあげてね、と年配の先生にそう言われ、少し不安になったクラス替えの春。お父さんお母さんへのイベントは大なり小なり多いため、色々アドバイスを貰っていたのだが、先輩方からの助言は未だに活用されたことはない。タメにならなかったとかではなく、そんな暇もなかったのだ。
「ナマエちゃんってお父さんとお母さんいないんでしょー?」
「いないけどもがみさんとゆかいな仲間たちがいるよー」
子どもの無邪気で残酷な言葉にも気にした様子はなく、
「お母さんへってもがみさんときどさんのどっちかを描いたらオカマさんになっちゃうかな? どっちも描いてもいいかな?」
描く対象がいないことへの悲しみよりもオカマへの好奇心が勝ち、
「せんせい、わたし赤ちゃんのとき木の根っこのところにいたんだって。だからわたし……妖怪かもしれない」
おでこに目が出たら教えてね、とワクワクドキドキした顔でお願いしに来たり……とこちらが励ましたり気を使ったりする暇がない。デリケートな環境にいる筈なのにナマエは何ともたくましい園児だった。
そしてそんなナマエと一番の仲良しが京介だった。性格は真逆を表したかのように違うのだが、気づけばだいたい一緒にいる。一緒にいることでナマエちゃんほどじゃなくていいから、本当にいいから、少し活発になってくれたら嬉しいなぁと思っていたところに「結婚」という言葉。そういう好きだったの……可愛いなぁ……でも権力者かぁ……と複雑な心境をどうしたらいいか悩んでいたところ、話題の張本人がやってきた。
「なにやってるのーあいびき?」
「ちがうよ」
即座に入った否定。権力者といいこの子どもたちの謎の語彙力に普段の会話が気になってきたところだが、ナマエの言葉にむっすりした京介を放っておくわけにはいかない。
「京介くんの一番はナマエちゃんだよ。ね?」
「……うん」
「じゃあわたしとあいびきしよー」
「………うん」
恥ずかしいけど頑張って頷きましたと言わんばかりに頬を染める京介に無邪気に手を差し出すナマエ。微笑ましい光景にニコニコしているとナマエが口を開いた。
「でも権力者じゃないと結婚しないけどいーい?」
「……せんせーどうやって権力者になればいいの?」
「あああ……」
冒頭に戻る。
「…………」
普段から物静かで大きな声も主張もしない京介。そんな京介が「ねえねえ、せんせい」とエプロンをくいっくいっと軽く引っ張ってきたので珍しいなぁと思いつつ膝をつき、「なぁに?」と聞き返したことが上記の質問に繋がる。
「け、権力者って何だか分かってる?」
「うん。力をもった人のことでしょ。おだのぶながとか」
幼稚園児って織田信長知ってるの……てかちゃんと意味分かってる……? と軽く戦慄しながらどう答えるか頭を回転させる。……が、正解などあるわけもなく、話を逸らして有耶無耶にすることにした。大人は万能ではないのだ。
「うーん、何で権力者になりたいのかな。先生は京介くんはそのままでいいと思うけどなぁ」
「ナマエが結婚するなら権力者がいいっていってた」
ちゃんと意味分かってるの!? と先ほどと同じ感想が出たが衝撃は先ほどの10倍はあった。そして名が上がった一人の子どもの姿を頭に浮かべる。「ああ……あの子か……」と一気に衝撃がおさまってきたのは喜んでいいところなのか。
肉親がいないデリケートな環境にいる子だから気にかけてあげてね、と年配の先生にそう言われ、少し不安になったクラス替えの春。お父さんお母さんへのイベントは大なり小なり多いため、色々アドバイスを貰っていたのだが、先輩方からの助言は未だに活用されたことはない。タメにならなかったとかではなく、そんな暇もなかったのだ。
「ナマエちゃんってお父さんとお母さんいないんでしょー?」
「いないけどもがみさんとゆかいな仲間たちがいるよー」
子どもの無邪気で残酷な言葉にも気にした様子はなく、
「お母さんへってもがみさんときどさんのどっちかを描いたらオカマさんになっちゃうかな? どっちも描いてもいいかな?」
描く対象がいないことへの悲しみよりもオカマへの好奇心が勝ち、
「せんせい、わたし赤ちゃんのとき木の根っこのところにいたんだって。だからわたし……妖怪かもしれない」
おでこに目が出たら教えてね、とワクワクドキドキした顔でお願いしに来たり……とこちらが励ましたり気を使ったりする暇がない。デリケートな環境にいる筈なのにナマエは何ともたくましい園児だった。
そしてそんなナマエと一番の仲良しが京介だった。性格は真逆を表したかのように違うのだが、気づけばだいたい一緒にいる。一緒にいることでナマエちゃんほどじゃなくていいから、本当にいいから、少し活発になってくれたら嬉しいなぁと思っていたところに「結婚」という言葉。そういう好きだったの……可愛いなぁ……でも権力者かぁ……と複雑な心境をどうしたらいいか悩んでいたところ、話題の張本人がやってきた。
「なにやってるのーあいびき?」
「ちがうよ」
即座に入った否定。権力者といいこの子どもたちの謎の語彙力に普段の会話が気になってきたところだが、ナマエの言葉にむっすりした京介を放っておくわけにはいかない。
「京介くんの一番はナマエちゃんだよ。ね?」
「……うん」
「じゃあわたしとあいびきしよー」
「………うん」
恥ずかしいけど頑張って頷きましたと言わんばかりに頬を染める京介に無邪気に手を差し出すナマエ。微笑ましい光景にニコニコしているとナマエが口を開いた。
「でも権力者じゃないと結婚しないけどいーい?」
「……せんせーどうやって権力者になればいいの?」
「あああ……」
冒頭に戻る。