番外編
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・赤ずきんパロっぽいなにか
・性別の壁は超えるもの
・猟師は一行しかでない
「これをおばあさんに届けてくれ赤ずきん」
「自分で行ってよお母さん」
「飯抜きになるがいいか」
「任せなさいお母さん」
筋肉もりもりなお母さんから貰ったバスケットにはケーキと葡萄酒が入っていた。病気になってしまったおばあさんに届けてほしいらしい。なんとも病人に優しくない中身だったので「嫁姑の仲は冷え切ってるの?」と赤ずきんは素直に訊ねた。お母さんは「いいから早くいけ」と赤ずきんを家から追い出した。寄り道せずに帰ってくるようにと付け加えて。
「ご飯を引き合いに出すなんて卑怯だ」
赤ずきんはそうボヤいて森の奥へ足を進めていく。おばあさんの家は幼い頃からよく行っていたために、一人でも迷うことはない。だが注意点もある。ここはオオカミが出没するのだ。「悪いことをしたらオオカミに食われるぞ」赤ずきんが何かしたらこれを言われることが多かった。しかしその昔、お母さんと共にオオカミと遭遇した際に、お母さん自慢の筋肉で見事撃退してしまったせいであまり説得力がなかった。当の赤ずきんはというと「筋肉は一番の武力……」と引いていた。ドン引きだった。家にやばいのがいる……なんで専業主婦やってるの……。むしろお母さんの方が恐怖の対象だった。
幸い赤ずきんのお母さんは見た目に反して温厚だったため、赤ずきんはすくすくのびのびと育った。「嫁の貰い手はあるだろうか」お母さんがそう悩むほどにのびのび育った。そんな母の悩みを知ることなく、赤ずきんはふんふん鼻で歌いながら森を歩く。
「おばあさんも病気になるんだねぇ」
赤ずきんのおばあさんは目つきが悪く、爆発したような髪の毛が特徴だった。赤ずきんが話しかけると「ああ?」と大抵返ってくる。柄がすごく悪い。その上ナイフ片手にビュンビュン動き回る。老人やめているなぁと常々思っていたために、病気だと言われてもピンと来ない。「病気って嘘で実は私に会いたかったのかな」赤ずきんはプラス思考の持ち主だった。
「多分あと100年は生きるだろうし」
「いや無理だろう流石に」
「いやいや。こないだ「馬鹿孫どけこらぁ!」っていってライフル銃向けられたも……ん、」
背後に誰かいる。大抵こういう場合、背後にいるのは敵ポジションの人物なのだ。最終兵器母もいない。殺意を纏わせたら熊をも逃げて帰る祖母もいない。赤ずきんは恐る恐る振り返った。
「…………なんだオオカミか」
「思っていた反応と大分違う」
そこにいたのは黒毛のオオカミだった。端正な面立ちをしていたが、どこか疲れた色が見える。勝手に訳すなら「まじかこいつ」と顔が言っている。
「さっさと巣に帰らないと葡萄酒の瓶で顔面ひっぱたくよ」
「殺意が高いな……」
「やられる前に殺れっておばあさんがいってた」
帰れと言った割りに殺る気満々の赤ずきんにオオカミは口元が引きつりそうになる。ビロード生地の赤い頭巾を被った女の子は可憐で可愛いと森のなかで噂になっていた。噂は噂だった。誰だこんな噂流したのはとオオカミは少し文句を言いたくなった。
「私食べでも美味しくないからな。オオカミの肉も固くて美味しくないっておばあさんがいってたし。………このやり取り不毛じゃない? だって美味しくないんだよ? 帰ろ?」
赤ずきんはひらめいた! みたいな顔をしていた。圧倒的強者の立場にいるはずなのに何故か諭されはじめたオオカミ。違う、そうじゃない。オオカミは咳払いをした。
「別に俺はあんたを食べようと出てきたわけじゃない」
「散歩? じゃあばいばい」
「違う。ばいばいもしない」
「わがままなオオカミだな……」
迷惑そうな顔をされた。心から解せなかったが突っ込んでいたらキリがない。オオカミは話続ける。
「昔、あんたの親がボコ殴りにしたオオカミがいただろう。その陰で隠れていたオオカミが俺だ」
「………………………………ああっ」
間が長かった。思い出さないんじゃないかと不安に思ったが杞憂に終わった。よかった。
「そのとき逃がしてくれた礼をずっといいたかったんだ」
子オオカミだった頃。狩りを教えてやると連れ出されたときに出会ったのが最初の出会いだった。その教えてやると言っていた父親は見事に返り討ちにあい、自分もそうなるんじゃないかと草の陰に隠れていたときだ。
『お母さんはやく帰ろう』
青ざめた顔で母親の服をひっぱる赤ずきんの視線は隠れていたオオカミに向いていた。そのあと『にげて』と口が動いたのも分かった。それだけだ。それだけだが、オオカミにとってはずっと忘れられない出来事になった。
「ありがとう」
色んな思いを込めてそう伝える。「いいって気にすんな。じゃあばいばい」びっくりするぐらい簡単に返された。この赤ずきん本当に空気が読めない。……仕方ないのでこちらも好き勝手にすることにした。
「俺は人間は食べないことにしている。今まで食べたこともない」
「へー」
「オオカミは成体になったら群れから離れる。番を探すためだ」
「大変だね」
「ああ。だからあんたと一緒になるまで俺は群れに戻れないし群れを作ることも出来ない」
「ほうほう………うん?」
「まあ別に帰れなくてもいいんだが」
「はい?」
「人間界の知識もあるから問題はない」
おや……オオカミの様子が……
赤ずきんはオオカミから一歩下がった。すると律儀に一歩詰めてくるオオカミ。更に一歩下がる赤ずきん。詰めてくるオオカミ。繰り返していくうちに木まで追いやられていった。
赤ずきんはそのとき思った。「あっ食われる」と。
その数十秒後、ぎっくり腰になって寝込んでいたはずのおばあさんと猟師のカキザキが現れて赤ずきんの貞操は守られた。終わり。
・性別の壁は超えるもの
・猟師は一行しかでない
「これをおばあさんに届けてくれ赤ずきん」
「自分で行ってよお母さん」
「飯抜きになるがいいか」
「任せなさいお母さん」
筋肉もりもりなお母さんから貰ったバスケットにはケーキと葡萄酒が入っていた。病気になってしまったおばあさんに届けてほしいらしい。なんとも病人に優しくない中身だったので「嫁姑の仲は冷え切ってるの?」と赤ずきんは素直に訊ねた。お母さんは「いいから早くいけ」と赤ずきんを家から追い出した。寄り道せずに帰ってくるようにと付け加えて。
「ご飯を引き合いに出すなんて卑怯だ」
赤ずきんはそうボヤいて森の奥へ足を進めていく。おばあさんの家は幼い頃からよく行っていたために、一人でも迷うことはない。だが注意点もある。ここはオオカミが出没するのだ。「悪いことをしたらオオカミに食われるぞ」赤ずきんが何かしたらこれを言われることが多かった。しかしその昔、お母さんと共にオオカミと遭遇した際に、お母さん自慢の筋肉で見事撃退してしまったせいであまり説得力がなかった。当の赤ずきんはというと「筋肉は一番の武力……」と引いていた。ドン引きだった。家にやばいのがいる……なんで専業主婦やってるの……。むしろお母さんの方が恐怖の対象だった。
幸い赤ずきんのお母さんは見た目に反して温厚だったため、赤ずきんはすくすくのびのびと育った。「嫁の貰い手はあるだろうか」お母さんがそう悩むほどにのびのび育った。そんな母の悩みを知ることなく、赤ずきんはふんふん鼻で歌いながら森を歩く。
「おばあさんも病気になるんだねぇ」
赤ずきんのおばあさんは目つきが悪く、爆発したような髪の毛が特徴だった。赤ずきんが話しかけると「ああ?」と大抵返ってくる。柄がすごく悪い。その上ナイフ片手にビュンビュン動き回る。老人やめているなぁと常々思っていたために、病気だと言われてもピンと来ない。「病気って嘘で実は私に会いたかったのかな」赤ずきんはプラス思考の持ち主だった。
「多分あと100年は生きるだろうし」
「いや無理だろう流石に」
「いやいや。こないだ「馬鹿孫どけこらぁ!」っていってライフル銃向けられたも……ん、」
背後に誰かいる。大抵こういう場合、背後にいるのは敵ポジションの人物なのだ。最終兵器母もいない。殺意を纏わせたら熊をも逃げて帰る祖母もいない。赤ずきんは恐る恐る振り返った。
「…………なんだオオカミか」
「思っていた反応と大分違う」
そこにいたのは黒毛のオオカミだった。端正な面立ちをしていたが、どこか疲れた色が見える。勝手に訳すなら「まじかこいつ」と顔が言っている。
「さっさと巣に帰らないと葡萄酒の瓶で顔面ひっぱたくよ」
「殺意が高いな……」
「やられる前に殺れっておばあさんがいってた」
帰れと言った割りに殺る気満々の赤ずきんにオオカミは口元が引きつりそうになる。ビロード生地の赤い頭巾を被った女の子は可憐で可愛いと森のなかで噂になっていた。噂は噂だった。誰だこんな噂流したのはとオオカミは少し文句を言いたくなった。
「私食べでも美味しくないからな。オオカミの肉も固くて美味しくないっておばあさんがいってたし。………このやり取り不毛じゃない? だって美味しくないんだよ? 帰ろ?」
赤ずきんはひらめいた! みたいな顔をしていた。圧倒的強者の立場にいるはずなのに何故か諭されはじめたオオカミ。違う、そうじゃない。オオカミは咳払いをした。
「別に俺はあんたを食べようと出てきたわけじゃない」
「散歩? じゃあばいばい」
「違う。ばいばいもしない」
「わがままなオオカミだな……」
迷惑そうな顔をされた。心から解せなかったが突っ込んでいたらキリがない。オオカミは話続ける。
「昔、あんたの親がボコ殴りにしたオオカミがいただろう。その陰で隠れていたオオカミが俺だ」
「………………………………ああっ」
間が長かった。思い出さないんじゃないかと不安に思ったが杞憂に終わった。よかった。
「そのとき逃がしてくれた礼をずっといいたかったんだ」
子オオカミだった頃。狩りを教えてやると連れ出されたときに出会ったのが最初の出会いだった。その教えてやると言っていた父親は見事に返り討ちにあい、自分もそうなるんじゃないかと草の陰に隠れていたときだ。
『お母さんはやく帰ろう』
青ざめた顔で母親の服をひっぱる赤ずきんの視線は隠れていたオオカミに向いていた。そのあと『にげて』と口が動いたのも分かった。それだけだ。それだけだが、オオカミにとってはずっと忘れられない出来事になった。
「ありがとう」
色んな思いを込めてそう伝える。「いいって気にすんな。じゃあばいばい」びっくりするぐらい簡単に返された。この赤ずきん本当に空気が読めない。……仕方ないのでこちらも好き勝手にすることにした。
「俺は人間は食べないことにしている。今まで食べたこともない」
「へー」
「オオカミは成体になったら群れから離れる。番を探すためだ」
「大変だね」
「ああ。だからあんたと一緒になるまで俺は群れに戻れないし群れを作ることも出来ない」
「ほうほう………うん?」
「まあ別に帰れなくてもいいんだが」
「はい?」
「人間界の知識もあるから問題はない」
おや……オオカミの様子が……
赤ずきんはオオカミから一歩下がった。すると律儀に一歩詰めてくるオオカミ。更に一歩下がる赤ずきん。詰めてくるオオカミ。繰り返していくうちに木まで追いやられていった。
赤ずきんはそのとき思った。「あっ食われる」と。
その数十秒後、ぎっくり腰になって寝込んでいたはずのおばあさんと猟師のカキザキが現れて赤ずきんの貞操は守られた。終わり。