番外編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【チョコレートください】
分かりやすく馬鹿な看板を掲げた人物が知り合いだったときの失望やら絶望やらを影浦は身を持って体感した。
「あ、影浦」
「こっちくんな」
「そういえばまだ影浦のクラス回ってなかったわ」
「こっちくんなって言ってんだよ!」
影浦の主張を丸ごと無視したナマエの右手には【チョコレートください】の文字がでかでかと書かれた看板。ダンボール製。ついでに言うと紐で四方を括った箱を首から下げている。
「影浦のクラスって誰がいたっけ」
「……………ゾエと水上」
ナマエが突っ込み所満載の格好をしているせいで廊下をすれ違う人間が二度見必須状態だった。視線が痛い。いつもの不快なものではない。だがある意味いつも以上に不快だった。何故この馬鹿は俺の隣を歩きやがる。そう思ったがそれを言ったらこの馬鹿な格好のことも突っ込まなくてはいけない。それは癪だ。その上時折哀れむような目をする者がいるのも腹が立つ。
「あっ山原先輩だ! なにそれ~」
「バレンタイン飽食中」
「なにそれ意味わかんないウケる」
「ウケたならチョコちょーだい」
「いいよー」
「山原おまえなにやっとんの」
「バレンタイン飽食中。チョコくれ」
「おれがもらいたいぐらいだわ」
「あっ……他のお菓子でもいいよ」
「哀れむのか強請るのかどっちかにしろ。ほら飴」
「山原先輩なにをやってるんですか!」
「えっうちの学校ってお菓子OKでしょ」
「そうですけど山原先輩が何かしようとするときはロクなことがありませんから!」
「ひどい……気張りすぎよ新生徒会長」
「誰のせいですか……!」
後輩に同級生に生徒会。男女問わず話しかけてきては箱にお菓子が溜まっていっていた。もちろん関わりたくないオーラ全開の者もいたが。生徒会長なんて少し涙くんでいた。「山原先輩があと半月で卒業だなんて……!」「嬉しいの? 悔しいの?」「どっちもです。あなたの悪行を一つも正せませんでしたから」「悪行て」何をしたんだと思わず聞いてしまうほどの形相だった。
「よく分かんないけど生徒会と風紀委員会には目の敵にされてる。風紀委員とか本当に意味わからん。一切着崩したりしてないのに」
この人間が何もしていないわけがない。強いて言えば一切なにも理解していないとこだ。どちらかというと真面目とはいえない影浦がそう思った。
「それどうすんだ」
影浦のクラスにつく前に一杯になった箱。基本的に他人からどう思われようがどうでもいい影浦だが、この馬鹿と一緒に教室に入るのは嫌だった。早く自分のクラス帰れ。
「箱代えてくる。これで四つ目だし」
「…………」
だがそう上手くはいかないらしい。
「……なんでチョコなんか集めてんだよ」
「生駒がチョコくれチョコくれうるさいからいっそのこと学校中から集めればいいじゃんってなって。生駒は一年の教室から回ってるよ」
「受験生がなにやってんだ」
「息抜きだよ」
「そもそもそんなに集めても食い切れねーだろうが」
「…………」
「てめーらは馬鹿か!」
「馬鹿に馬鹿って言われた……」
「うるせー馬鹿!」
最初から最後まで馬鹿尽くしだった。時間を返せと影浦は心から思った。
(えー本日放課後、三年B組でチョコパーを行います。バレンタインに寂しい思いをしている独り身だけ参加可能です。カップルはくんな。おやつを持ってきてくれる人は辛いものを持ってきてください。チョコ集めすぎたから辛いの食べたい。カップルはくんな。カカオ投げるぞ)
(ナマエ、もうゴン太きたで)
(えー放送室の前で激怒している権田川ゴン太先生は早く職員室へ戻ってください)
(ゴン太の下の名前ってゴン太ちゃうやろ)
(あれ? そういえばなんだっけ)
分かりやすく馬鹿な看板を掲げた人物が知り合いだったときの失望やら絶望やらを影浦は身を持って体感した。
「あ、影浦」
「こっちくんな」
「そういえばまだ影浦のクラス回ってなかったわ」
「こっちくんなって言ってんだよ!」
影浦の主張を丸ごと無視したナマエの右手には【チョコレートください】の文字がでかでかと書かれた看板。ダンボール製。ついでに言うと紐で四方を括った箱を首から下げている。
「影浦のクラスって誰がいたっけ」
「……………ゾエと水上」
ナマエが突っ込み所満載の格好をしているせいで廊下をすれ違う人間が二度見必須状態だった。視線が痛い。いつもの不快なものではない。だがある意味いつも以上に不快だった。何故この馬鹿は俺の隣を歩きやがる。そう思ったがそれを言ったらこの馬鹿な格好のことも突っ込まなくてはいけない。それは癪だ。その上時折哀れむような目をする者がいるのも腹が立つ。
「あっ山原先輩だ! なにそれ~」
「バレンタイン飽食中」
「なにそれ意味わかんないウケる」
「ウケたならチョコちょーだい」
「いいよー」
「山原おまえなにやっとんの」
「バレンタイン飽食中。チョコくれ」
「おれがもらいたいぐらいだわ」
「あっ……他のお菓子でもいいよ」
「哀れむのか強請るのかどっちかにしろ。ほら飴」
「山原先輩なにをやってるんですか!」
「えっうちの学校ってお菓子OKでしょ」
「そうですけど山原先輩が何かしようとするときはロクなことがありませんから!」
「ひどい……気張りすぎよ新生徒会長」
「誰のせいですか……!」
後輩に同級生に生徒会。男女問わず話しかけてきては箱にお菓子が溜まっていっていた。もちろん関わりたくないオーラ全開の者もいたが。生徒会長なんて少し涙くんでいた。「山原先輩があと半月で卒業だなんて……!」「嬉しいの? 悔しいの?」「どっちもです。あなたの悪行を一つも正せませんでしたから」「悪行て」何をしたんだと思わず聞いてしまうほどの形相だった。
「よく分かんないけど生徒会と風紀委員会には目の敵にされてる。風紀委員とか本当に意味わからん。一切着崩したりしてないのに」
この人間が何もしていないわけがない。強いて言えば一切なにも理解していないとこだ。どちらかというと真面目とはいえない影浦がそう思った。
「それどうすんだ」
影浦のクラスにつく前に一杯になった箱。基本的に他人からどう思われようがどうでもいい影浦だが、この馬鹿と一緒に教室に入るのは嫌だった。早く自分のクラス帰れ。
「箱代えてくる。これで四つ目だし」
「…………」
だがそう上手くはいかないらしい。
「……なんでチョコなんか集めてんだよ」
「生駒がチョコくれチョコくれうるさいからいっそのこと学校中から集めればいいじゃんってなって。生駒は一年の教室から回ってるよ」
「受験生がなにやってんだ」
「息抜きだよ」
「そもそもそんなに集めても食い切れねーだろうが」
「…………」
「てめーらは馬鹿か!」
「馬鹿に馬鹿って言われた……」
「うるせー馬鹿!」
最初から最後まで馬鹿尽くしだった。時間を返せと影浦は心から思った。
(えー本日放課後、三年B組でチョコパーを行います。バレンタインに寂しい思いをしている独り身だけ参加可能です。カップルはくんな。おやつを持ってきてくれる人は辛いものを持ってきてください。チョコ集めすぎたから辛いの食べたい。カップルはくんな。カカオ投げるぞ)
(ナマエ、もうゴン太きたで)
(えー放送室の前で激怒している権田川ゴン太先生は早く職員室へ戻ってください)
(ゴン太の下の名前ってゴン太ちゃうやろ)
(あれ? そういえばなんだっけ)