番外編
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「ナマエ、俺と付き合ってくれるか?」
喧騒だらけのHR前の教室が一気に静寂に包まれた。その原因となった二名は一つの机を挟んで向き合って座っていた。もともと二人の席は前後となっているために片方が座った状態で身体を横にして話す光景はよく見る。……が、先ほどの言葉で親密というかなんというか、いつもとは違う光景に写った。視線を集めたナマエと嵐山は周りの動揺に気づくことなく話し続ける。
「……唐突すぎない?」
「前から言っていただろう」
前から言ってたの!?
クラスメイトたちは目を剥いだ。ちょっと待ておまえらいつからそんな甘い関係になった、と身体全体で訴えている。
「あー……そういえば……言ってたよう、な?」
「言っていたぞ。やっぱり聞き流していたな」
少しむっとしたような顔の嵐山。それに更にどやめきが起きた。なに嵐山のあの顔。あいつもそんな顔すんの? イヤミも笑顔で流す(気づいていない)嵐山が?
クラスメイトたちの動揺はピークに達した。音ひとつしなくなったこの教室に疑問思ったのか、別のクラスの人間が不思議そうな顔をして教室の前を通っていった。それくらいこの教室の雰囲気は異常だった。
「…………ナマエ、嵐山。ちゃんと言葉にして話さない?」
そんな空間に終止符を打ったのはナマエの隣の席で自分の腕を枕にしてくつろいでいた迅だった。だんだんと緊迫度を増していく教室に口を出さずにはいられなかった。だって二人を挟む机の上の雑誌が目に入ったのだから。
「言葉? 何を言っているんだ迅」
「てか寝てたんじゃないの」
「寝てたよ。寝かせてほしかったよ。でも周りの空気が寝かせてくれなかったの」
「……この人何を言ってるのかな」
「ごめんな。真横で話していたからうるさかっただろ」
「とりあえずものすごく食い違ってるね」
一人は引いたような顔をし、一人は申しなさげに眉を下げる。二人の反応は真逆といっていいほど違っている。が、共通して全く状況を理解していなかった。周りの視線気にして……ああ……この二人『周りの事は気にするな』を地でいく二人だった……そうか……そのせいでこんなカオスが……と鬱々と考えながら迅は口を開いた。
「どこに付き合ってもらう気だったの嵐山」
「ん? 両親の結婚記念日に日帰りの温泉旅行でもプレゼントしようと思ってな。ナマエに下見に付き合ってもらおうと頼んでいたんだ」
「別にいいんだけど本当に言ってた? 記憶が……」
「絶対に言ったぞ。温泉饅頭と温泉卵で手を打つって言っただろう?」
「うん言われてたわ」
忘れるなよ饅頭と卵、ああ分かってる、とやり取りを交わして温泉特集という雑誌を覗き込む二人。そして「なんだややこしい……」「そうだこれが山原と嵐山だ……」「すごくつかれた……」とドッと息を吐くクラスメイトたち。うん疲れるよね、わかるわかると頷く迅。そんな状態の教室に来たのは柿崎だった。
「…………なにがあった?」
「おはよう柿崎」
「おはよーかっきー。なんか寝不足なんだって」
「いや、寝不足だけでは説明がつかない疲労感がクラス中に漂っているんだが……」
大正解。
クラスの心がひとつになった瞬間だった。そしてこれが(嵐山告白事件in教室)が全てのはじまりだった。
****
「嵐山さん、ナマエさんに告白したんですか? 教室で」
「告白? 何の話だ?」
「あれ、穂刈髪減った?」
「どういう意味っすかナマエさん」
「おい、山原。てめー告白されたらしいな」
「初っぱなから何で喧嘩腰なんだよ。あれ、マスク変えた?」
「変えてねえ。つーか嵐山さんも趣味わりぃな」
「嵐山の悪口なら本人に言いなよ」
「おー姉さん。よかったな、これで孤独死の心配がなくなったぜ」
「何でおまえに孤独死の心配されなきゃいかん」
「嵐山さんなら安泰だろ」
「孫10人くらい出来そうだよね。嵐山って。あれ、リーゼントの向き変えた?」
「なっナマエ! 嵐山さんと、りょりょりょこう……!?」
「落ちついて光ちゃん」
「おめでとうございます。ナマエさん」
「えっ。あ、ありがとうございます。何で菓子折り……? 村上どうしたの……?」
「先に何も教えてくれなかったナマエさんなんかきらーい」
「なんで柚宇ちゃん! え、本当に……? え……?」
「師匠と嵐山さんが婚前旅行に行くって本当ですか迅さんッ!!?」
「違うから落ちつこうね出水」
三年の教室に乗り込んで来た出水をどうどうと宥める迅。あの教室での告白事件を他のクラスの者が目撃したらしく噂が立つようになってしまった。「嵐山と山原が付き合っている」「教室で熱烈な愛の告白があった」「もう結婚の約束もしているらしい」「婚前旅行の計画を立てていた」なにひとつ合っていない。そして噂が広まるスピードに迅はこめかみを掻く。2日で一年生である出水のところまで広まるとは。嵐山(ボーダーの顔)とナマエ(ボーダーの問題児)の影響力はすごいな……と密かに息をついた。
そして例の二人はと言うと「何か一年生の女の子に囲まれた……女子シールドされた……嵐山がどうこう言ってたから『空から嵐山が!』って言って逃げてきた」「どこのシータ? というか逃げられたの?」や「ナマエとの関係を最近よく聞かれるんだが何故だろう」「……何て答えたんだ?」「大切な子だと答えた」「ああああ」「ど、どうした柿崎!」など周囲の大騒ぎっぷりを全く気にしていない。と言うよりも気づいていない。周りを気にせず自分らしく生きましょう精神が遺憾なく発揮されていた。よってこの事件は迅と柿崎の心労が増えるだけのものとなっている。
「違う、違うから。告白もなかったし付き合ってもないし結婚の約束も婚前旅行も子供も出来てないしボーダーから追われる予定もないから」
「なんかすみません」
据わった目の迅に出水は謝った。なんか色々聞こえたけど(2日分の迅の苦悩)聞いたら迅を追い詰めるだけだと出水は察した。そしてちょうど教室に全ての元凶×2が帰ってきた。
「ただいまー。なんかゴン太に不純異性交遊と高飛びの心配された。大丈夫かなこの学校」
「俺とナマエはそんな関係じゃないのになぁ」
「ねぇ」
何でだろう~不思議だね~という顔で会話をするナマエと嵐山。そしてその背後でガラリと音を立てて開いた教室の扉。
「ナマエさん! 嵐山さんと結婚の約束までして子供まで出来たのにそれが実は迅さんの子供だったって本当ですかッ!?」
迅は静かに崩れ落ちた。
喧騒だらけのHR前の教室が一気に静寂に包まれた。その原因となった二名は一つの机を挟んで向き合って座っていた。もともと二人の席は前後となっているために片方が座った状態で身体を横にして話す光景はよく見る。……が、先ほどの言葉で親密というかなんというか、いつもとは違う光景に写った。視線を集めたナマエと嵐山は周りの動揺に気づくことなく話し続ける。
「……唐突すぎない?」
「前から言っていただろう」
前から言ってたの!?
クラスメイトたちは目を剥いだ。ちょっと待ておまえらいつからそんな甘い関係になった、と身体全体で訴えている。
「あー……そういえば……言ってたよう、な?」
「言っていたぞ。やっぱり聞き流していたな」
少しむっとしたような顔の嵐山。それに更にどやめきが起きた。なに嵐山のあの顔。あいつもそんな顔すんの? イヤミも笑顔で流す(気づいていない)嵐山が?
クラスメイトたちの動揺はピークに達した。音ひとつしなくなったこの教室に疑問思ったのか、別のクラスの人間が不思議そうな顔をして教室の前を通っていった。それくらいこの教室の雰囲気は異常だった。
「…………ナマエ、嵐山。ちゃんと言葉にして話さない?」
そんな空間に終止符を打ったのはナマエの隣の席で自分の腕を枕にしてくつろいでいた迅だった。だんだんと緊迫度を増していく教室に口を出さずにはいられなかった。だって二人を挟む机の上の雑誌が目に入ったのだから。
「言葉? 何を言っているんだ迅」
「てか寝てたんじゃないの」
「寝てたよ。寝かせてほしかったよ。でも周りの空気が寝かせてくれなかったの」
「……この人何を言ってるのかな」
「ごめんな。真横で話していたからうるさかっただろ」
「とりあえずものすごく食い違ってるね」
一人は引いたような顔をし、一人は申しなさげに眉を下げる。二人の反応は真逆といっていいほど違っている。が、共通して全く状況を理解していなかった。周りの視線気にして……ああ……この二人『周りの事は気にするな』を地でいく二人だった……そうか……そのせいでこんなカオスが……と鬱々と考えながら迅は口を開いた。
「どこに付き合ってもらう気だったの嵐山」
「ん? 両親の結婚記念日に日帰りの温泉旅行でもプレゼントしようと思ってな。ナマエに下見に付き合ってもらおうと頼んでいたんだ」
「別にいいんだけど本当に言ってた? 記憶が……」
「絶対に言ったぞ。温泉饅頭と温泉卵で手を打つって言っただろう?」
「うん言われてたわ」
忘れるなよ饅頭と卵、ああ分かってる、とやり取りを交わして温泉特集という雑誌を覗き込む二人。そして「なんだややこしい……」「そうだこれが山原と嵐山だ……」「すごくつかれた……」とドッと息を吐くクラスメイトたち。うん疲れるよね、わかるわかると頷く迅。そんな状態の教室に来たのは柿崎だった。
「…………なにがあった?」
「おはよう柿崎」
「おはよーかっきー。なんか寝不足なんだって」
「いや、寝不足だけでは説明がつかない疲労感がクラス中に漂っているんだが……」
大正解。
クラスの心がひとつになった瞬間だった。そしてこれが(嵐山告白事件in教室)が全てのはじまりだった。
****
「嵐山さん、ナマエさんに告白したんですか? 教室で」
「告白? 何の話だ?」
「あれ、穂刈髪減った?」
「どういう意味っすかナマエさん」
「おい、山原。てめー告白されたらしいな」
「初っぱなから何で喧嘩腰なんだよ。あれ、マスク変えた?」
「変えてねえ。つーか嵐山さんも趣味わりぃな」
「嵐山の悪口なら本人に言いなよ」
「おー姉さん。よかったな、これで孤独死の心配がなくなったぜ」
「何でおまえに孤独死の心配されなきゃいかん」
「嵐山さんなら安泰だろ」
「孫10人くらい出来そうだよね。嵐山って。あれ、リーゼントの向き変えた?」
「なっナマエ! 嵐山さんと、りょりょりょこう……!?」
「落ちついて光ちゃん」
「おめでとうございます。ナマエさん」
「えっ。あ、ありがとうございます。何で菓子折り……? 村上どうしたの……?」
「先に何も教えてくれなかったナマエさんなんかきらーい」
「なんで柚宇ちゃん! え、本当に……? え……?」
「師匠と嵐山さんが婚前旅行に行くって本当ですか迅さんッ!!?」
「違うから落ちつこうね出水」
三年の教室に乗り込んで来た出水をどうどうと宥める迅。あの教室での告白事件を他のクラスの者が目撃したらしく噂が立つようになってしまった。「嵐山と山原が付き合っている」「教室で熱烈な愛の告白があった」「もう結婚の約束もしているらしい」「婚前旅行の計画を立てていた」なにひとつ合っていない。そして噂が広まるスピードに迅はこめかみを掻く。2日で一年生である出水のところまで広まるとは。嵐山(ボーダーの顔)とナマエ(ボーダーの問題児)の影響力はすごいな……と密かに息をついた。
そして例の二人はと言うと「何か一年生の女の子に囲まれた……女子シールドされた……嵐山がどうこう言ってたから『空から嵐山が!』って言って逃げてきた」「どこのシータ? というか逃げられたの?」や「ナマエとの関係を最近よく聞かれるんだが何故だろう」「……何て答えたんだ?」「大切な子だと答えた」「ああああ」「ど、どうした柿崎!」など周囲の大騒ぎっぷりを全く気にしていない。と言うよりも気づいていない。周りを気にせず自分らしく生きましょう精神が遺憾なく発揮されていた。よってこの事件は迅と柿崎の心労が増えるだけのものとなっている。
「違う、違うから。告白もなかったし付き合ってもないし結婚の約束も婚前旅行も子供も出来てないしボーダーから追われる予定もないから」
「なんかすみません」
据わった目の迅に出水は謝った。なんか色々聞こえたけど(2日分の迅の苦悩)聞いたら迅を追い詰めるだけだと出水は察した。そしてちょうど教室に全ての元凶×2が帰ってきた。
「ただいまー。なんかゴン太に不純異性交遊と高飛びの心配された。大丈夫かなこの学校」
「俺とナマエはそんな関係じゃないのになぁ」
「ねぇ」
何でだろう~不思議だね~という顔で会話をするナマエと嵐山。そしてその背後でガラリと音を立てて開いた教室の扉。
「ナマエさん! 嵐山さんと結婚の約束までして子供まで出来たのにそれが実は迅さんの子供だったって本当ですかッ!?」
迅は静かに崩れ落ちた。